二次創作小説(新・総合)

プロローグ ( No.1 )
日時: 2022/05/30 13:01
名前: HAL (ID: 9i/i21IK)

──もしも、複数の世界達の中心に、その全てと繋がることの出来る世界があったなら。


今回お送りする物語は、そんな夢のような空想の世界を舞台とする。

通常では絶対に起こりえない”世界同士の干渉”。それを間接的に、大々的に、滞りなく実行する為に。物語の著者──即ち、この夢世界における最初の、或いは唯一の住民『HAL』は、この明らかに異端イレギュラーであろう世界を構築する。



──基盤構築はこれくらいで大丈夫だろうか。

どれ程の時間を要したかは分からないが、最低限の世界……というよりは、今はまだ空間と言った方が近しい場所が出来上がった。ただただ真っ白な空間の中には、世界を繋ぐために用意した、色彩豊かながらも重々しい雰囲気を漂わせる4つの巨大な扉が立てられていた。

「何をお招きする事になるかまでは分かりませんからね、この位は必要でしょう」


著者は不敵な笑みを浮かべながら、次の作業に取り掛かる。

世界を繋ぐとは話したものの、ただただ世界を繋いだだけでは、繋がれた側の世界には全くもって認知されないものである。逆に、認知度か高すぎるような事があれば、今度はたちまち今用意しただけの空間では足りないほどの人足になるだろう。──故に、この世界への来場者を選別する必要があった。


選別には様々な手法やトリガーがあるものだが、今回著者が選んだのは──とある拙い1曲だった。……いや、正確には”今この場で即興で作り上げた旋律”だった。
突発的に作ったということもあり音色の重厚さは欠けているものの、常人が聴く分には”速い”と感じざるを得ないテンポと、そのリズムに合わさった強烈なキックが、間違いなく一部の者達の心には響くだろう、と。……いや。或いは彼自身が、そういった楽曲の良さを分かってくれる人を求めていたと言ってもいいのかもしれない。



最終調整を済ませたところで、いよいよこの曲を4つの世界に同時に解き放つ事となる。
選別方法は至ってシンプル。それぞれの世界において”1番最初にこの曲を聴いた者”をこの地に招待する事になっている。
この選択により誰が訪れるのか。問題児、或いは人ならざる者がやってくるリスクもあったりと、とにかく懸念点が多い手法なのだが、当の本人からすれば、それは些細な事に過ぎないのである。


「……さて。それでは始めましょうか。私からは見えない場所で物語を待ち望んでいる皆様の為にもね。──これが、私の紡ぐ新たな物語です」

プロローグ ( No.2 )
日時: 2023/06/17 17:40
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

──ここは、1つ目の世界。

1つの巨大な王国が実質的な統治を行うようになった、ある意味平穏が約束されたような世界である。

さて、そんな王国からそこそこ離れた場所に、海沿いの小さな村があった。若い者達は仕事や自由を求めて王国の方へと旅立つ事がザラだったからか、この村でも少子高齢化が進んでいるようだ。それでも、この村からは他の村以上に活気に満ち溢れているという話が相次いでいた。
前評判だけで話を進めるのも野暮なので、ここは1つ、現在の村の風景を覗いてみることにしよう……











『みんなぁーーーーー!! 今日も阪奈のライブに来てくれて、本当にありがとうーーーーー!!』

\ウォオオオオオオオオオッ!!!/


……ここは村の中央にある大広間。普段は寄合所や活発な人の往来によって盛り上がることが多い場所なのだが、実はここが一番大いに盛り上がるのは、今のように【ゲリラライブ】が開催された時だったりする。

即席で作られた簡素な壇上では、先程の大音量のボイスから察せられるように、1人の少女が元気に歌って、踊って、周囲の観客を魅了させていた。


──彼女の名前は狩野かの 阪奈はんな
皆さんもお気づきの通り、彼女がこの物語の1人目の主人公となる。





「ただいまぁーーー!いやぁー今日も歌った歌った!!」
「おかえりなさいですニャ、旦ニャ様!」


ゲリラライブを無事に成功させ、大歓声の余韻に浸ったまま家に帰ってきた阪奈。そんな彼女を出迎えてくれたのは……1匹の”喋る”ネコだった。


「いつも身の回りの家事とかをやってくれてありがとうね、ルミニャ!」
「いえいえですニャ。これもルームサービスとしての仕事ですからニャ」


ルームサービスであるルミニャに感謝の言葉を述べながら、阪奈は先程まで着ていたライブ用の衣装から普段着へと着替える。それと同時に、近くに置いてあったCDプレーヤーで曲を選び始めた。



彼女には夢があった。あのような熱烈なゲリラライブを行っている事からも分かるように、一流の”トップアイドル”となり、世界中の人達を魅了する事を目標としていた。
ともすれば、家でもアイドルとしての訓練を怠る訳にはいかなかった。家にいる間は、自分がライブで歌う曲の練習をする為にも、よく自分の歌唱曲をBGMのような形で流すことが日常となっていた。勿論今日もそのつもりだったのだが……ここで海雪はある異変に気づく。


「……あれっ、私こんな曲なんて入れてたっけ? 曲名は、えーーっと……なんて読むんだろう、コレ……? 『C-Ref』なんて、変な名前だなぁ……」


CDプレーヤーの選曲一覧。その1番最後のところに、今まで見たことも聴いたこともなかったような曲が新しく紛れ込んでいたのである。
奇妙に思った阪奈は、1度ルミニャに確認をしてみる。


「ねぇルミニャ。今日私のCDプレーヤーに新曲が入ってたんだけど、もしかしてルミニャが入れたの?」
「えっ?わたくしめは今日はCDプレーヤーの操作はしていなかったのですが……どうかなさいましたかニャ……?」
「うーん、そっか…… いや、大丈夫だよ。心配かけてゴメンね!」


どうやらルミニャが勝手に入れた曲ではないらしい。となると、途端に怪しさが際立つようになってしまった訳だが……阪奈としては、怪しさよりも好奇心の方が勝っていた。

実はここだけの話、阪奈にはまだオリジナルのアイドルソングが無かった。ライブで歌っていたのは、全て他の人がリリースした曲であり、彼女が今行っているライブは言わばカバー曲オンリーのお遊戯会に近しいものであった。それであれ程の人気を博しているのだから阪奈のポテンシャルが尋常ではない事は確かだったのだが、やはりオリジナル曲なくしてアイドルは語れなかった。彼女の周囲に曲を書ける人が居なかった為に、彼女は今まで本格的なアイドルを自称することもままならなかったのだ。

……だが今。匿名の人物からではあるものの、誰も聴いたことのない新曲を頂いたのである。

──この新曲を、阪奈のアイドル活動に利用しない手はなかった。



勇気を出して、阪奈は『C-Ref』を再生する。


曲を聴いた素直な感想を述べさせてもらうと、アイドルソングにするにしては異常な程に、喧しくけたたましいサウンドだなぁと感じた。しかし、アップテンポかつノリノリな楽曲というのは阪奈のアイドル路線自体には確かに合致していた。この音楽さえあれば、私は……!!


……しかし、どうしてだろうか? これ程までにうるさいような、メロディーの筈、なのに……なん、だか……身体が……眠、く…………


曲を聴き終える事なく、阪奈は意識を手放す。しかし、ルミニャがこの異常事態に直ぐに気づくことはなかった。……何故なら、音を立てて倒れる筈の彼女の身体ごと、何処かへと飛ばされてしまったのだから。



────────────────────



──ここは、2つ目の世界。

1つ先に話しておくと、今回紹介する4つの世界の中では、この世界が最も読者たちの住まう世界に近しいと言えるだろう。……というか、地球である。(爆


そんな地球の中でも、特に話の舞台となるのが──こちら、長い歴史を誇る事以外特に語ることのない【千将高校】である。


この時期は、夏の甲子園野球大会が幕を下ろし、新たな世代へと夢が受け継がれるようになる。長い歴史を誇る千将高校も、勿論例外なく次期キャプテンが選ばれる事となった。



「……という訳でだ。是非ともウチの次のキャプテンとして、君を推薦したいんだ。芳賀くん」
芳賀「……えっ、俺がですか……?」


千将高校野球部の次期キャプテンとして選出されたこの男──芳賀はが 九瓏くろう
彼こそが、この物語における2人目の主人公である。


「当たり前だろ? 此度の夏の甲子園でも、俺たち3年生のメンバーも大勢いる中で、お前だけが2年生ながらもスタメンに選ばれたんだぞ?実力の高さは部員の誰もが認めているはずだ」
九瓏「なっ……なるほど……」


先程、現キャプテンが話したように、九瓏は千将高校2年生の他のメンバーと比べても、試合における貢献度が段違いだった。
的確な選球眼と確かなミート力により出塁率が高かっただけでなく、足の速さと相手の目を盗む能力に長けていたからか盗塁数、及び本塁生還率も目を見張るものがあった。更に言えば、これらの能力が甲子園大会でも十分に通用したというのが最大の強みと言えるだろう。


九瓏「……分かりました。俺、新キャプテンとして、今度こそ必ず、千将高校を甲子園優勝まで導きます!!」






──その日の帰り道の事だった。


九瓏「はぁ……やっぱりこうなっちまったか……」


……九瓏は1人、溜め息をつきながら帰路についていた。

実力の違いなどは分かっていたので、なんとなく必然的に自分が主将を務めることにはなるのだろう、とは思っていた。だが本音を言わせてもらうと、本当は九瓏自身としては”キャプテンを務めたくはなかった”というのが真意である。
……先に弁解しておくと、これは何も九瓏が極度のあがり症だからとか、そういった精神的負担が理由ではない事は明かしておこう。


九瓏「……っ! いかんいかん! こんな開幕から不安になっててどうする! 1度息抜きを挟んだ方が良いかもしれんな……」



どれほど払おうと払いきれない不安を払拭すべく、九瓏が息抜きと称してやってきたのは……
──なんとゲームセンターだった。

ゲームセンターとは一言で言っても、施設内には息抜きの手段が幾つかあったりする。カラオケやボウリング、スポッチャやダーツにクレーンゲームなど様々な手段があったりするのだが、九瓏が最も息抜きに効果的としていたのが……





九瓏「おっ、良かった良かった。やっぱり今日も空いてたか……『GuitarFreaks』」


……なんと、K〇NAMI社の音ゲーの中でも古参の方に分類される、あのGuitarFreaksだったのである。いや、チョイス渋すぎません??


そんな事などお構い無しに、九瓏は早速ギターを模した機器を肩にかける。これで準備万端、といったところか。


九瓏「とはいえ、どの曲を選ぼうか…… 今日はサクッとプレイして早いとこ帰りたいから、出来れば高難度は避けたかったんだが……ん?これは……」


お金を入れてプレイ開始。早速選曲画面に移った訳なのだが……ここで九瓏はある事に気づいた。

普通、何かしらの新曲が追加されれば、事前に告知などが用意されてある事が殆どである。
ところが、本日は新曲が追加されるお知らせなど一切なかったはずなのに、今の選曲画面には──確かに全く見たことのない新曲が1曲。しかも条件付き隠し曲とかそういうのではなく、堂々とデフォルトで実装されていたのである。


九瓏「なんだ、この曲? 完全シークレット追加曲なんてあるのかよ…… ……まぁ有り得なくもないか。どうせK〇NMAIが事前告知を忘れたとかそういうオチだろ……」


深く考えすぎても時間の無駄なので、ここは一旦この話は置いておくことにした。
……とはいえ、完全新曲ともなると、やはりプレイせずにはいられない。自然と身体は、その曲を選択していた。

……これは、選曲画面にて完全新曲『C-Ref』にカーソルを合わせた時に流れた楽曲の一部を聴いて九瓏が思ったことなのだが、ギタドラ収録曲にしてはギター成分が少なめなのでは……?というのが正直な第一印象だった。むしろ典型的なハードコアだったので、どちらかといえばIIDXやボルテの方が相性が良いようにも感じられた。



まぁ、こうした様々な感情も、音ゲー中になれば一旦全て忘れる事になる。その位集中して取り組まない限り、こうした古参KONAMI音ゲーは攻略出来ない事が殆どなのである。

そしていざ演奏スタート……したのだが、何かがおかしい。曲の開幕からけたたましいハードコアサウンドが流れ、ギター旋律もその流れに身を任せるように敷き詰められているのだが……何故か一向に譜面が流れてこないのである。……しかし、九瓏がその異変に気づくことはなかった。


何故なら──彼は曲が始まってから十数秒ともしない内に意識を失い、身体は何処かへ倒れることも無く、跡形もなく消え去ってしまっていたのだから。

プロローグ ( No.3 )
日時: 2023/06/17 19:37
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

──ここは、3つ目の世界……

と言おうとしたのだが、訂正させてもらう。こちらも思いっきり地球である。2つ目の世界と違いはない。(大問題発言)

しかし物語の舞台は流石に違う。



こちらは日本上の何処かにあると言われている、舞ヶ原音楽大学附属舞ヶ原高等学校──通称「まいまい」。(但し、略称は大体舞ヶ原である)


音楽大学附属高校という点からもわかる様に、この学校には将来的にミュージシャンなどの音楽関係の職に就くことを希望する生徒が集まっている。

そんな学園だからか、学校の七不思議とはまた異なる独特の謎の噂もあるのだという。

曰く『学園フェスで最高のパフォーマンスを披露することで、謎の評価点数を貰える』らしい。


そんな出自不明の噂だが、それでもわらにも縋る思いでバンドを組む者達は毎年いるのだそう。

つまり、3人目の主人公もそんな噂に導かれて音楽活動を……








「……っと。宿題終ーわり。あとは……今日はもう帰るか」



……してる訳ではありませんでした。←


深紅色の髪を掻きむしりながら帰り道を歩くこの男──名を、緋桐ひぎり じんと言った。
彼こそが本作3人目の主人公である。





あっという間に家に着いてしまった迅は、自室に籠るや直ぐに自分のノートパソコンを開いた。ここまでの光景を見ているだけでは、とても舞ヶ原に入学した生徒とは思えないような行動ぶりだが……何も彼は音楽に興味が無いわけではない。


「さてと、それじゃあ今日も頑張ってみますか」


PC内のとあるツールを立ち上げて作業を開始する。

市販のイヤホンで両耳を塞ぎ、周囲の環境音をシャットアウトする。目を見開いた瞬間、もはやそこは自分だけの空間と化していた。



ここまで来ると何となく想定がつくかもしれないが、迅の目指している道は作曲、及び演奏者である。
別に歌唱力に自信が無いわけではないのだが、本人が作曲・清聴していてノリが良くなるのは大体インスト(歌詞の無い)楽曲なのだそう。


舞ヶ原高校に入学できたことを考慮すると、迅はこうした音楽の方面での才能があったのかと思いきや、別にそんな事はなく、実のところただの凡人である。


──なんなら彼、現在絶賛「スランプ」真っ最中であった。


己の想像力をフル回転させて新譜を作り上げようとするのだが、どうにも二番煎じ感が強かったりインパクトが欠けてしまった楽曲が出来上がってしまうのであった。


「……まだ答えは見えてこない、か」


一通り思案したものを試したのだが、満足の行く一手にはならなかった。集中力が切れてしまった迅は、そのまま後方のベッドに寝転がってしまった。

実を言うと、このスランプは彼の貴重な高校2年生の夏休みの殆どを喰らい潰してしまった。どんな棒の振り方だよ。


とはいえ、他に何かする事もないのも事実。宿題は先回しで終えてましたもんね……

仕方なく迅は、かつて自身が作ってきた幾つもの試作楽曲を眺めていた。
……尚、この中で実際に世に出してみたのはたった3曲である。他は大体リスペクト元がモロバレだったり、改善の余地が多くあって公開するにはまだ惜しいもの達ばかりであった。


……が、しかし。作曲群の最後に着いたところで、迅は突然手を止めた。それどころか、顔からは次第に冷や汗が垂れ始めていた。


「……?? オイオイ、一体全体どうなってんだ……??」


楽曲リストを見てみると──今まで作り続けてきた創作楽曲群の中に、明らかに1曲「見覚えのない完成された楽曲」が残されていたのである。曲名には『C-Ref』という聞いた事もない単語が宛てられていた。



この異常事態に正直焦りと怒りを隠せないでいた迅だったが、楽曲データの盗作や紛失ではなく何故か「新曲が追加」されたという、非現実的な一種の創作の手助けとも呼べる事象に、これは下手に考えすぎても堂々巡りになる可能性が高いと結論づけた。


……ともすれば、今の自分が確かめねばならないものは何なのか、自ずと想定はつくものだった。


「ハハッ、どういう事なんだよ……。何処の誰が仕組んだことかは分からねぇんだけど……俺に聴いてほしいんだろうか……? 何を目的としてるか皆目見当もつかねぇけど……」


意を決した迅は、再生ボタンをクリックした。そして、誰かが意図的に送り込んだのであろう謎の新曲を、一つ一つの音を確かめながら慎重に聴いていた。


BPMは200付近。全体的な音の重厚性はまだまだの様だが、強力なキックに物を言わせたUKハードコアは迅が目指していた音楽の形の1つと呼んでも差し支えはなかった。間違いなく音ゲーマー向けの楽曲と呼べるだろう。

決して完璧な音楽ではない。だが、この曲に足りてない部分がもたらすものは、恐らく今の自分のスランプを脱する良い契機になると、迅の直感が告げていた。





──しかし、どれほど経ったのだろうか。

楽曲への不満点を書き留めるべくメモ帳を開いたまでは良かったのだが、何故か思考能力はどんどんと奪われていき…… 最終的に集中力が切れてしまった迅は、力無く床に寝転がってしまった。



──そして次の瞬間。元の日常のみが迅の自室に残されることとなった。



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──ここは、4つ目の世界。

……なんて言いたかったんですけどね。こちらも世界線を修正した影響で地球です。日本です。本当に申し訳ありません。2つ目の世界と連動してるかもです。やっちまいましたよ、えぇ。

但し、ある特殊な一点をここでお話しておこう。


この世界では、音楽とスポーツを融合させた『オンゲキ』という次世代型競技が擁立されていた。

音楽が流れる仮想ステージ上で、対戦相手と疑似的な撃ち合いのバトルを行いポイントを競い合うのが主なルール。
その音やリズムに合わせて身体を動かす様から、音楽ゲームの進化系とも呼ばれている。
競技者は相手を撃つような所作から「シューター」と呼ばれており、その頂点に立つ ”プリメラ”は人々の憧れとなっているようだ。



さて。またしても地球を舞台にすると話しているのだから、例にならってこちらの旅の舞台も学校である() 皆だって学生を主役にした方が書きやすいでしょう? 俺だってそうだもの(爆



……という事で、改めて学校施設の紹介をしよう。

ここは奏坂学園。学園という表記で分かる通り、中学校と高校が併設されている。尚、女子校である。



キーンコーン、と終業のチャイムが鳴る。ここから先は放課後の時間となっていた。
中には居残りを食らってる生徒も居たようだが……今回の主人公は別に落ちこぼれという訳ではない。

話をしていれば、1人の少女が玄関から外に向かって歩き出していた。

地毛は恐らく黒な筈なのだが、何の趣向か右半分を金髪に染めており、唯一無二が引き出されていた。


彼女の名前は夕立ゆうだち 雷那らいな。彼女こそが、この物語の4人目、即ち最後の主人公である。



事前にオンゲキについての話をしていた事から察せられるように、この学校ではオンゲキが授業カリキュラムに組み込まれている。
音楽とFPSを趣味に持つ雷那には、オンゲキという競技は良い刺激になっていた。楽しむ、という点においては満たされた日々を送っていた事に違いない。

……しかし、最近はあまり気が乗らない日々が続いていた。


実は先月、奏坂学園の学園祭が開催されたのだが、その中の目玉企画として「奏坂シューターフェス」という学内No.1シューターを決めるものがあったのだ。
当然ながら雷那もこの大会に参加したのだが……結果は初戦負け。しかも負けた相手は、補習常連でお馴染みの「ASTERISM」というチームであった。……最も、奏坂シューターフェスの優勝を飾ってしまったのもASTERISMだったのだが。

……ここで大切なのは、彼女が曇ってしまった原因は別に「負けた」ことでなければ、「落ちこぼれだと思っていた相手に遅れを取ってしまった」ことでもない。





──「仲間」が誰も居なかったことである。


これは決して、彼女がコミュ障で友達がいないからという訳ではない。むしろ友達はちゃんと数人いる。そこは安心してほしい。
……だが、だからといって、友人達もオンゲキが好きでシューターになってる訳ではないのだ。

故に、誘える知人全員から断られてしまった雷奈は1人でシューターフェスに参加し、1vs3では流石に無理があって敗北を喫したのである。


──詰まるところ、オンゲキのチームプレーに憧れてしまったのである。



「……はぁ。我ながら馬鹿馬鹿しい。そんないい手立てなんてあるわけでもないし……」


何も変わらない日々。何も変えられない日々。何も変えようがない日々。いつも通りの帰路につき、いつも通りヘッドホンを耳にあてて音楽を聴く。

ここで1つ話をしておくと、オンゲキで流す音楽には版権があるものが殆どなのだが、一部オリジナルで持ち寄られる楽曲もある。
雷那にとってのオリジナル楽曲は、全て「本人の自作曲」だったりする。音楽が趣味であると上述していたのは、これらの経緯も相まっての話であった。
ちなみに作風に関しては、基本的にバリバリのスピードコアが中心。その他、8bitを活用した曲やユーロビート、レイヴなどにも挑んだ事があるようだ。




……だが、彼女の「日常」は、ここで『一変』する。




「さて、確か次の曲は…………っ? あれ、こんな曲入れたっけ……?」


耳元に流れ込んできたのは、新世界への誘いのあの曲だった。

確かに音楽ゲームに収録されてそうな音遣いだし曲のBPMも200付近なのだが、自分で作った曲に比べて音圧が低い上にキックがかなり強めに設定されているのに気がついた。おおよそスピードコアのつもりで作られた曲ではないのは確かだ。


急いで雷那は自分のスマートフォンを調べる。音の発生源であるスマホには『C-Ref』という恒例の不規則な文字列が並んでいた。



退屈、虚無を覚え始めた今の日常に一石を投じたこの曲に対し……雷那は不敵な笑みを浮かべていた。悪い印象は然程持たなかったのだろう。そのまま曲を最後まで聴き流してみようと、音楽を止めることはなかった。
同時に、雷那もまた意識が朦朧としだす。

──次の瞬間、街角から1人の少女が消失した。

プロローグ ( No.4 )
日時: 2023/06/17 19:38
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

「……ぅぅん、ここ、は……?」


一体どれぐらいの間倒れていたのだろうか。
数奇的な運命を手繰り寄せてしまった少年少女が、この条理を超越してしまった世界で目覚めたのはほぼ同時だった。


阪奈「全く知らないところだなぁ……夢でも見てるのかな?」
迅「見た感じだと、皆さんもこの場所をご存知じゃなさそうですね…… 何処なんですかね、此処は……」
九瓏「いや、ここが何処かも大事ではあるんだけど、お前らは誰なんだよ!?」
雷那「えっ……いや、何これ? なんでこんな訳わかんない状況になってんの? 面倒な事になってきた……」



いきなりの急展開に当然ながら慌てふためく一同。まぁ見ず知らずの人間と一緒に何もないただ真っ白な空間に放り込まれたのではそうなるのも当たり前といったところだろうか。

……しかし、聞かれたことには律儀に答えようとするマイペースさを持ち合わせる者がいた。


「あっと、すみません。自己紹介してませんでしたね。俺は緋桐迅と言います。舞ヶ原高等学校2年、適当に作曲活動してるだけの一般人です。宜しくお願いします」

(え、あっ、本当に自己紹介するんだ!?)


流れるように自己紹介の手続きを済ませてしまった迅を見て、思わず唖然としてしまう九瓏。しかし、1度生まれてしまった流れに、ガンガン乗っかってくる者がいた。


「あっ、じゃあ次私が自己紹介するね! 初めまして!狩野阪奈、17歳!アイドル目指して頑張ってます!」
「うっ、眩し……」


次の自己紹介は狩野阪奈。やはりアイドル志望ともなると自己紹介はお手の物。本人がキラキラ光ってるんじゃないかと思わず疑いたくなるほど輝かしいオーラを放っており、思わず雷那も目を覆う程であった。


「……となると、流れで俺もやった方がいいか。俺の名は芳賀九瓏だ。千将高校2年、ただの野球部員だが……まぁ宜しく頼む」

「や、きゅう……? こう、こうせい……?」
「なっ、野球はおろか、高校も分からないのか……? オイオイ、マジで言ってるのか……?」


正直この4人の中では1番まともそうな九瓏も自己紹介を手短に終えた……のだが、どうやら阪奈の住む世界には高校の概念が無いらしいという事実に、九瓏は驚きを隠せないでいた。


「マジか……そうなると、何処から説明すれば……」
「九瓏、さん?のお話も気にはなるのですが、まずは先にもう1人のお方の自己紹介も聞きませんか?」
「………………? あっ、アタシもか」


九瓏が色々とどう説明しようか悩んでいたのだが、迅の提案もあって、まずは雷那の自己紹介を聞くことにした。



「ええっと、夕立雷那って言います。奏坂高校2年、音楽とかゲームが好きです。……宜しく」

「分かった!嵐ちゃんだね!これから宜しくね!」
「なっ、”これから”って、勘弁してよ……; あとちゃん付けとかさん付けも出来ればやめて。堅苦しいのも子供っぽいのもあまり好みじゃないから…… 普通に呼び捨てで呼んでもらって構わないわ」
「なるほど……分かりました。では、俺についても緋桐なんて呼びづらいでしょうから、普通に呼び捨てで構いませんからね?」
「呼び捨てに関しては俺も問題無しだ」
「私も私もーー!!」



少々心配どころもあったものの、自己紹介によってお互いを知りあい、警戒心や心の壁を1枚取り払えた4人。とはいえ、現状において彼らが他に出来る事というのも無いに等しかった。

──故に、物語を次の段階にすべく、あの男がやって来た。



「いやぁ、大変申し訳ございません。皆様を招待しておきながら暖かく出迎える事も出来ずにしばしの間待たせてしまう形になりました;」


突如入り込んだ別の声に、4人は一斉に顔を向ける。

視界の先には、半袖ワイシャツに半袖の燕尾服を羽織った、黒髪黒眼の見た感じ何処にでもいそうな男が立っていた。



「……アンタが、アタシ達をこの変な場所に連れてきた本人?」
HAL「That's right. 名はHALと言います。役職はこの物語の著者……いや、これでは分かりづらいですね。まぁ適当に、私が新しく新設したこの世界”C-Ref(セントラル-レフ)”の管理人みたいなものだと思ってもらえれば幸いです」



この空白だらけの謎の世界の管理人。その情報だけでも、4人が彼を質問攻めする理由には十分なものだったのだろうが、流石にそこは想定済なのか、著者はジェスチャーで”まだ話は終わりではない”ことを示した。


「お気遣い、感謝致します。しかし、皆様が相当焦っておられるのも無理はないでしょう。……安心してください。別に私は貴方達を幽閉したかったり、デスゲームにでも参加させたくてこうしたのではありません」
「……じゃあ、何が目的だって言うんだよ?」


著者がこの4人を物語の主人公として選出した事に対しての目的。メタな話をしてしまえば書きたかった物語があるからとなるのだが、当然ながらそんな事を言ったところで彼らに伝わる筈もないので、著者はこう答える事にした。


「ふむ、そうですねぇ…… ”世界同士の交流を深める為”……といったところでしょうか」
「………………??? えっと、何を言ってるのかサッパリなんだけども……」

「おっとと、本当にすみません…… そうですね、単刀直入に言いましょう。皆様はそれぞれ別の地域、世界からご招待させていただきました」
『…………えっ????』


読者視点であれば何を今更と思われるだろうが、当の本人達からすれば問題発言である事は確かだろう。まぁ、阪奈が高校という概念を知らない時点で何となく察しやすくはあったのかもしれないが……


「なんでわざわざそんな面倒なことを……?」
「そうですね……大変複雑で個人的な事情を含んでおりますので、今回は回答を控えさせてもらいますね」
(いや、個人的な事情って言ってるじゃないですか……)


むりやり話をザザっとまとめにかかったところで、著者は本題を持ち出した。


「さて、そろそろ本題の方に入らせてもらいますね。実は今回皆様にご集まり頂いたのは、この世界へ招待する人を決める為……”だけだった”のです。まぁ、自分が賭けてもいない宝くじにたまたま当たったようなものだと思っていただければ幸いです。……故に、本日はもう用事がないんですよ。なので、このまま皆様には、1度元の世界まで送り帰らせていただきます」『……………………????????』



これから長ったらしい説明でも始まるのか、或いは壮大で無理難題な依頼でも押し付けられるのか。近年のラノベなどではだいたいそういう冒頭を用意されることが多いのだが、なんと今回はその限りではなかった。本当にただの抽選と顔合わせの為だけに呼び出したのである。

この破天荒極まりない著者の行動に、当の呼び出された4人は最早怒りを通り越して唖然、ため息をつく事しか出来ないでいた。まぁ元の世界にはちゃんと帰れるという保証が確保されたことだけはまだ救いだったのだが。


HAL「あっ、だからといって今回の出来事は夢だったんだ、なんてオチにさせる気はありませんよ? 貴方達には後日、もう一度こちらの世界へお越しいただきます。そちらの方で、オリエンテーションを開催させていただきます」


要は、いつも開幕で行うはずの説明事項や準備にまつわることは今回は1度省略。次回の更新(物語)でまとめて語ろうか、という事であった。つまり、次回の自分に丸投げしたようなものである(爆



結局主人公4人組は、お互いに謎の世界に連れてこられた者同士を知るには至ったものの、この世界のことについてはほぼ詳細を知らされる事なく、無事に元の世界へと戻されてしまったのであった……

プロローグ ( No.5 )
日時: 2023/06/17 19:44
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

「……てニャ! 起きてくださいニャ、旦ニャ様!」
「……う、ん…………? あれ、私たしか…………」
「はァ……良かったですニャ! 初めて聴いた耳が震える音楽に大変驚きまして、ニャんとか曲を止めてもらおうと旦ニャ様を探そうとしたら家中どこを探しても見つからないものですから、てっきり誘拐でもされたんじゃニャいかと本当に本当に怖くて…………;;」


──その後の阪奈の住む世界。

ルームサービスのルミニャに起こされた阪奈は、先程までの記憶を思い出す。


「あれって結局何だったんだろう…… 私には分からない事だらけだったけど、皆との時間は楽しそうだったなぁ…… あの変な人の話が本当だったら、また暫くしたら迎えに来るって言ってたけど……どうなんだろうね?」


夢物語にしては妙に記憶に残ってるその出来事。不安の方が明らかに大きかった筈なのに、何故かもう一度あの世界へ、というよりはあの3人ともっとお話をしてみたいと思うようになっていた。

……と、ここでまた1つ、ある事を思い出す。


「……? あぁぁーーーーーーーっ! あの新曲の事について聞くの忘れちゃった!?!?」


そう。阪奈がC-Refに巻き込まれるきっかけになってしまった、あの強烈な音楽の事である。
あの曲の詳細を聞かない事には、彼女の新曲としてあの曲を流用するのは流石に善性が許さなかったのだ。

だが、同時にこうも気づいてしまう。あの音楽に導かれて私はやってきたし、もしかしたら他の人もそうかもしれない。果てには、あの曲はその為だけに用意されており、役目を果たした今となってはもう残ってないなんて可能性もあるのだ。……それは、出来ることなら当たってほしくない推測だった。



途端に怖くなった阪奈は、急いでCDプレイヤーに手を伸ばした。お願い、お願いだから残っていて……!


「…………!! あった…………!!」


CDプレイヤーの小さな電子パネル表示部分には、確かに作曲者不明の『C-Ref』が表示されていた。
そうと決まれば、今夜から何を始めるのかはもはや明白だった。


「よーーっし!次に皆に会うまでにこの曲の歌詞を作っちゃおっと! ルミニャ、暫く同じ音楽流し続けるかもだけど……ゴメンね?」
「ぎぇ? そ、そんニャァ…………」



この後の日々は阪奈にとっては久々にそれはそれは楽しい日々になりそうだったが、一方のルミニャにとっては地獄のような日々になりそうであった……



────────────────────


「…………? あれ。俺、何してたんだっけ……?」


自室で再び目を覚ました迅。どうやら寝落ちを決めてしまったらしかった。


「迅ー、ご飯よー、降りてきなさーい」
「あっ、はぁーーーーい」


情報の整理を行いたかったのだが、いつの間にか帰ってきていた両親がご飯の支度を済ませてしまったらしい。
待たせるわけにもいかなかったので、迅は急いで部屋から出た。





「……よし。一先ず飯やら風呂やらの諸々の用事は済ませたな。それじゃあ、改めてあの場の整理をするか……」


一連の処理を済ませた迅は、もう一度ノートパソコンを起動する。幸い、画面上には直前までのやり取りが残されていた。同時に、自分が体験したあの摩訶不思議なやり取りは、全て実際に起こっていた事だとも確信した。


「ふむふむ…… ここまでが現実の話だってするなら、近いうちにもう一度あの訳の分からない場所に行かないとか。んでオリエンテーションをするとか」

「……俺のオリエンテーションってどうするんだ? 舞ヶ原らしい事やらないとだよな……?」


想定される先のスケジュールに頭を悩ませる迅。だがこの問題の答えというのは、初めからとうに分かりきったことだった。


「……まぁ結局そうなりますよね。舞高生だもの、やるっきゃねぇってんですか」


意を決した迅は、再びC-Refを再生する。
個人が感じた改善点を言葉に表し、自分のスランプ楽曲にあてがい、満足の行く楽曲への完成を目指す。





──その夜、迅は人生4度目の楽曲投稿を行った。

しかし、この曲と後に送り出すこととなる楽曲の影響で、彼の人生が少し変わり出すことになるとは、当時の自身は知る由もなかったのであった。

Re: 未だにカオスなのかもしれない非日常 ( No.6 )
日時: 2023/06/17 19:47
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

~~~~~~~♪(BGM:別れのワルツ)

九瓏「……ん、んァ? お、俺は一体、何を……?」


ギタドラ筐体前で意識を失った九瓏は、結局元いた場所で目覚めた。しかし周囲を見渡しても人はおらず、ゲームセンターには閉店を告げる音楽が鳴っていた。

何がなんだか全く分からないままだったが、一先ずはゲーセンを後にすることにした。


九瓏「結局アレは何だったんだ……夢にしてはリアルさが何故かあったし、また俺達を招待するとも言ってたが……俺は信じないからな。ただでさえこの先は忙しいんだから……」


帰り道の最中、九瓏は先程の出来事を思い出しては頭ごなしに否定していた。何か、否定でもしないと先に待ち受ける出来事の多さに耐えられないような気がしていたのだ。……その時だった。


〔随分と今日は帰りが遅かったようだな、九瓏よ〕
九瓏「!? ……こんな夜道の電柱の裏から連絡を寄越すなよな;」


夜道の電柱裏から、突如として声がしたのだ。普通の人からしたら、恐ろしすぎて即座に大声を出して逃げ出した事だろうが、九瓏は胆力があるのか、それとも話している人と何かしらの縁があったのか、淡々と会話を続けていた。


〔相変わらず野球をまだ続けているのか〕
九瓏「当然だ。……本日付けで新キャプテンにもなった。兄者達には申し訳ないが、任務を手伝える機会はまた減るだろうと推測している」
〔何……? ふん、里を抜け出しただけの成果はちゃんと挙げてるようだな。俺はあくまでもちゃんと祝福はするが、里の意向としては喜ばしくないだろうな〕



淡々と言葉を投げかけていた影は、話したい事を全て話したのか、いつの間にか消え去っていた。


九瓏「ハァ…… これがあるからキャプテンにはなりたくなかったってのに……」


どうやら九瓏には、まだまだ皆に隠している秘密があるようだった……


────────────────────



「……ん。……どうやら、無事に帰ってきたみたいね」



さて、最後は雷那の話といこう。

一先ず、無事に戻ってこれたことに彼女は安堵のため息をつく。もうすっかり夜が更けようとしていたので、帰り道を急いで駆け抜けていった。





家に帰り、諸々の内容を済ませたあと、雷那もまたかの世界について思い悩む時間があった。


「……なんでアタシが選ばれる必要があったんだろ。周りにだって……もっと輝いてる子とかいたでしょうに」


スマホの中に突っ込まれたオリジナル楽曲一覧の中には、まだC-Refが残っていた。その事実だけでも、現実を受け入れるには十分すぎるものだった。





──もしも、またあの世界に飛び込む次の機会が訪れる事があるとするなら、自分は何を持ち込めばいいのだろう。


先の話を模索しようとした雷那がぶつかった壁が、この問いかけであった。

普通に考えるならオンゲキという概念を話した方がいいのは間違いない。あの次世代型競技を初めて知った時は自分自身も衝撃を受けたのだ。異なる地域、世界線の人間相手にもその凄さは十分伝わるに違いない。自分自身もオンゲキを紹介する覚悟自体は持ち合わせていた。



だが、一人でオンゲキは成立するのだろうか?





……正直に言えば怖かった。自分を変えてくれたオンゲキを否定されるのが。自分が夢見たオンゲキを見せることが出来ずに、消極的な意見しか残らないのではないかという不安が。

だが、世界の文化圏が違うというリスクを背負ってるのはなにも自分だけではない。それに、あの僅かな自己紹介の中だけでも、あの3人はそういった偏見を持つような人達ではない、と。自信はないが何故かそう思えたのだ。



「……決めた。アイツらに精一杯のオンゲキを魅せて、アタシの夢を分かってもらって、アタシの夢を応援してもらうんだ。……そうすれば、アタシがオンゲキを続けていられる理由の、1つにできる」


決心がついた雷那は、左手でヘッドホンを押さえ、右手を高く突き上げる。──その姿勢は、自身の新たな目標とも呼べるASTERISMの勝鬨かちどきに似ていた。

今はまだ一人だけれど。
この先も戦い続けるのは一人だけかもしれないけれど。
自分を支えて応援してくれる人に、最高のオンゲキを届けるんだ。



──この物語は雷那からすれば、独りぼっちから多くの大切なものを手にするまで成長するお話である。






ここまでが冒頭の物語となります。
今回敢えてクロスオーバージャンルは伏せてお送りさせてもらいましたが、その詳細は次回更新でお話させてもらえればと思っております。ぜひ予想でもしてお待ちしてくださると幸いです。

それでは、感想をどうぞ!