二次創作小説(新・総合)
- 首領首領大乱闘(前編) ( No.22 )
- 日時: 2023/08/30 22:10
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
さて。C-Refでのクロスオーバー生活がようやく馴染み始めてきた頃。
今日もまた迅、雷那、九瓏の3人がC-Refに集まったのだが、その日の某所にはそれまで無かった「新エリア」が実装されていた。
「お疲れーーっす。…………ん?」
「どーもーっと。…………えっ?」
「おねぁいしゃーす。……おっ、何だ? この……修練場みたいなのは?」
特徴をざっくり話していこう。
右端の方には複数種類の武器が立てかけられている武器庫。その他のエリアにはサバゲーを彷彿とさせる障害物、移動式の射撃台、サンドバッグというか試し斬り用の杭が十数本など、分かりやすい上に少し本格的とさえ思えるレベルの修練場がそこにはあった。
「どうもどうも皆さん。どうです? この新エリア」
どこか胡散臭げな聞き覚えのある声の方を向くと、半袖の燕尾服という妙ちきりんな衣装のあの男が後ろに立っていた。
「……で? この如何にもアタシ達を戦わせたがってるような施設について、何か言及があるのかしら?」
「勘弁してくださいよ…… 雷那はオンゲキで感覚が多少あるかもでしょうが、俺なんてただのDJですよ? そんな簡単にものにできる訳ないでしょうよ?」
修練場をわざわざ用意した理由。
考えれば考えるほど面倒極まりなく、危険が伴いそうな気がするものだが、まぁ話を聞くだけは聞こうじゃないかという心持ちでいた。
「ふむ。であれば…………まずは今後のC-Refの行先についての話からしないといけませんね」
「皆さんは、『WST』や『SNS団』といった組織についてはご存知でしょうか?」
「「「WST…………???」」」
突然、筆者の口から出てきた『WST』という謎のワード。古来からのカキコ読者であればもしかしたら分かるかもしれないが、改めて説明をさせてもらおう。
「【World Saver Team】略してWST。その名の通り、この物語が巻き起こるセカイの安寧を護る組織の事を指します。私の知る限りでも、幾つかのセカイでWSTという名の組織がある事を確認しております」
「SNS団もそれらの一種でして、【世界の問題を解決する為に集った、抜間さんと愉快な仲間達が、好き放題暴れまくる団】というコンセプトがあります」
「…………つまりです。私としては、この『C-Ref』という場、組織をWST規模のものにしていきたい訳です」
……これは、今まで8年以上は執筆経験のあったHALの中でも初の試みだった。正直そう上手く実現できるものかと言われると何とも言えなかったのだが、やってみたかった事の1つではあった。
「……てことは。WSTのような業務をこなすにあたって武力とかが必要になってくるから、それらをこなす為に修練場を設立したと?」
「えぇ、全くもってその通りです。まぁいきなりそんな事を実施しろと言われても無理なことは百も承知ですので、長期的な展望だと思ってください」
説明も十分に果たしたところで、いよいよ武器のレクチャーに取り掛かる。
どうやら、著者自らが武器の取り扱い説明を担うようだ。
「現在私の方で取り揃える事が出来た武器というのが、こちらの14種類のものになります。左から順に『大剣』『太刀』『片手剣』『双剣』『ハンマー』『狩猟笛』『ランス』『ガンランス』『スラッシュアックス』『チャージアックス』『操虫棍』『ライトボウガン』『ヘビィボウガン』『弓』です。何か興味を引くものなどはありますかね?」
「いや、アタシはまぁライトボウガン一択なんだけど……」
「俺もまぁ使うならこれってのはあるが……」
「……あの、1ついいです?」
「「「これ『モンハン』の使用武器じゃないです?」」」
「That's right.」
……明らかに参考元がバレバレな武器種であった。
しかし、九瓏や迅のような男の子であればまだしも、雷那もその知識を兼ね備えているとは思っていなかった。
「いや、知ってなきゃオンゲキの武器種をわざわざライトボウガンにはしないでしょ」
……仰るとおりである。
かくして、雷那はライトボウガン、九瓏は双剣、そして迅は意外にもガンランスの取り扱い説明を受ける事となった。
せっかくなので、ここで彼らが取り扱うことにした武器の説明をしよう。
まずはライトボウガンから。
弾丸をリロードし、スコープを通じた肉眼で照準を定めた後に、引き金を引いて弾丸を撃ち込むのが基本動作となる。弾丸には射程距離というものがあり、一定の間合いから弾を撃ち込む事でより安定して高い火力を放つことができる。
取り扱う弾丸には様々な種類がある。例えば貫通弾であれば、文字通り肉質を貫通して一発分の火力を上げることが出来る。散弾であれば、射程距離が短くなる代わりに広範囲に弾を撒き散らすことが出来る。その他、毒弾や麻痺弾といった状態異常を付与するものや、火炎弾や氷結弾といった属性が付与された弾も撃つことが出来る為、その戦術は非常に多岐に渡る。
また、ライトボウガンには『速射』という機能がある。一部の適応した弾に対しては、弾一発あたりで放たれる弾丸の量が増加するという特徴を持つ。
正に後方火力武器である。
次は双剣。
その名の通り、二本の短剣(肘ほどの長さ)を乱舞で振り回して相手を斬り刻む武器である。短剣なので一撃あたりの威力には期待できないが、手数の多さは全武器種の中でもトップクラス。
双剣を語るにあたり最も特筆すべきなのは、やはり『鬼人化状態』だろう。神経を集中させる事で、殺傷力の上昇とより洗練された動きを体現させる。この状態で練度を上げると、平時でも鬼人化に近いパフォーマンスが出来る『鬼人強化状態』となる。
手数の多い武器なので、その分斬れ味や刃こぼれには気を遣わないといけない武器である。
そしてガンランス。またの名を銃槍。
戦隊モノが好きな読者だとソードガンのようなものを思い浮かべるだろうが、ガンランスはまたひと味違う。ガンとは言うが、本質は弾丸というよりも砲撃の方が正しい。同時に、砲撃用の機関を槍内に構築しているからか、槍がかなり太めに設計されている。おまけに盾も用意されている。故に重装備である。
戦術は槍の突きと砲撃の織り交ぜが主体。というか砲撃が主体である。なにせ、今回挙げた14武器の中で唯一砲撃というコマンドがあり、これが絡む攻撃手段の多様性が特徴となっている。
例えば、槍を叩きつけた後に砲撃を放つと、リロードされた全弾を一斉掃射する『フルバースト』が放てる。また、通常の弾とは別に『竜杭砲』という杭も用意されており、杭を差し込むと小規模の振動爆発を何度か発生させた後に爆発するという特徴がある。極めつけは『竜撃砲』。前述の弾達とはまた別機関で、長いチャージ時間と強めの反動を犠牲に強力な範囲砲撃をぶち込む、正しくガンランスの必殺技。1度放つと機関を冷却する必要があるので、暫くは竜撃砲が撃てないという制約も。
なお、ガンランスは大きく分けて3種類に分類される。弾の装填数が多い通常型、竜撃砲や竜杭砲の火力に注力した放射型、弾一発辺りに火力を込めた拡散型である。どれが好みなのかは使用者によって異なるそう。
※ガンランスだけ説明が異様に長くなりましたが、これは筆者がガンランスの使い手なのが大きいかもしれません。
- 首領首領大乱闘(前編) ( No.23 )
- 日時: 2023/08/30 22:14
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
修練場が開放され、3人が武器の研鑽を始めてから数日が経過した。
勿論、その間に他のメンバーもC-Refに出入りはしていたので、彼らが何やら危険、かつ面白そうなことをしているなというのはバッチリ把握されていた。特に九瓏は、野球部のキャプテンでありながら戦闘面に現を抜かしていいものなのかという指摘を受けることとなったのだが……
「……あの、九瓏。ずっと思ってた事があるんですけど……」
「…………? どうかしたか?」
「「貴方[アンタ]の戦闘能力どうなってんですか[の]??」」
……そう。二足の草鞋ぐあいが1番キツいはずの九瓏が、何故か3人の中でも熟練度が1番上がっていたのである。いくら運動部であるとはいえ、十分な時間をより多く取れていたはずの迅と雷那よりも容易く、より洗練された動きを九瓏は魅せていたのである。2人が九瓏には何か秘密があるのでは?と勘ぐってしまっても仕方ない事だった。
「……ただ腕に覚えがあった。それだけの事だ」
「腕に覚えがある、ってのがそもそも普通じゃない筈なんですけどねぇ……?」
「それなら雷那にだって同じ事が言えるだろう」
「いやまぁ、それは確かにその通りなんだけどさ;」
妙な腕前の差がつきつつも、九瓏達3人は着々と戦闘態勢を整えていった。
──そしていよいよ、『その時』が訪れた。
「3人とも揃っているようですね。それでは、本格的に『C-Ref』の任務を皆さんに引き受けてもらいます」
「とうとう始まるわけですか…… 念の為に聞いておきますが、流石に初回から命に関わるような内容じゃ……ないですよね?」
「冗談じゃない。アタシとてこんな変なもんの為に命なんか張りたくないわよ」
「今日は長時間の練習をする筈だったんだが……わざわざ周囲を押し切ってここに来たからには、それ相応の内容なんだろうな?」
平静を装いたかったのだろうが、流石に緊張しているのか表情が微妙に固まっている筆者。彼の緊急招集に応えさせられたかのように、3人はC-Refの大広間に呼び出されていた。
C-Ref、ないしHALの日常に最初に舞い込んできた『依頼』というのが…………
「勿論、初回から皆さんに命を張ってもらうような難題をお願いする筈もないでしょう? それに、今回の依頼者は他でもない『私自身』です」
「という事でご依頼します。今から皆さんには『狩野阪奈の住むセカイに移動して、彼女の状況を確認してもらいます』」
「「「……………………はぁ???」」」
カオスな日常風景でお馴染みの筆者の事なので、何か妙ちきりんな難題でも吹っ掛けられやしないかと身構えていた一同。しかし実際の依頼内容は、言ってしまえば阪奈の『安否確認』である。文字通りの初心者向けの依頼……と見てとれることだろう。
「おっと。拍子抜けするような簡単な依頼じゃないかと思われてるかもしれませんが、クリア条件は決して単純じゃあありませんよ?」
「なにせ阪奈はここ1週間以上はC-Refに来れないでいましたからね。彼女ほどのコミュ強であれば、友人を引き連れてくるというのは然程難題ではないと考えていたのですが……誤算だったようです」
「阪奈の安否が確認でき次第、皆さんには同時に『彼女が友人を招待出来ていない原因の調査、及び解決』までを引き受けていただきたいのです」
……つまりはこうだ。
これから九瓏達は3人で阪奈が住むセカイに移動した後、彼女の安否確認と共に友人をC-Refに招待する手伝いをしてやってほしいとの事だった。
ただでさえ現実的ではないC-Refへの招待を2度もしなければならないというのは、確かにある意味酷な事ではあった。
「……フン。始めは俺を呼び出さずとも出来そうな簡単そうな依頼に聞こえたが、詳細を聞く限りでは確かに俺達でないと出来そうもない依頼だな」
「そもそも異郷からやってきた人間の言う事を誰が聞いてくれるんですか、って気がしますけどね」
「アタシはやるわよ。アンタ達2人の相手を一手に担うのはそろそろ無理あるし」
各々の意気込みも聞けたところで、阪奈の住むセカイの扉が開かれた。
思えば、他人のセカイに足を踏み入れるというのは、今回が初の事例だ。
──意を決した3人は、もう1人の仲間のために新たな一歩を踏み出した。
次に3人が目を覚ましたのは、とある一室だった。
少し材質が硬そうなベット、なんでもしまいこむことが出来そうな大きな収納箱、何より部屋全体にすっかり染みついてしまったペイントの臭い。ここが【狩野阪奈の私室】であると見抜くのは存外簡単な事だった。
「……なるほど。確かにこのような臭いの環境下で生活を強いられてしまっては、この臭いが苦手になりますわな;」
「てことは、ここは阪奈の部屋でほぼ間違いないわね。……これ、不法侵入扱いにならないかしら?」
「残念ながらほぼなるだろうな。となると、今一番の懸念点は……」
九瓏が話を続けようとした矢先、突然バタンと部屋の扉が開いた。
その先にいたのは、執事服を身にまとったいわゆるコンシェルジュみたいな容貌の……立っている猫?であった。
──しかし、相手が何であれ、九瓏が気にしていた最大の懸念点である『阪奈以外の家族に見られてしまう』という事項は、いとも簡単に打ち破られてしまった。
「ニャーーーーッ!! 侵入者ッ! 家に侵入者がーーーッ!!」
「ちょっ、どうすんのよコレ!? あんまり下手に大きな騒ぎにはしたくないんだけど!?」
「ちっ、面倒な事になっちまった…… あんまり使いたくはなかったが、ここh「ちょっとルミニャー! 急に大声上げてどうしたのー!」……この声は」
突然の見知らぬ来訪者にパニックになったルームサービスを相手にどう立ち回るべきかを迫られた3人だったが、見知った声が直ぐさま聞こえてきたおかげで、なんとか物騒な思考は取り除かれたようだった。……いや、物騒な思考ってなんなんですか。
「侵入者が入ったってんなら、私がけちょんけちょんにしてやる…………って、あれっ? なんで九瓏と迅と雷那がここに居るの!? だってここ、C-Refじゃないよね!?」
「あぁ……その…………」
「まぁ話すと長くなるんですけどね?」
「一旦落ち着いてもらっていいかしら……?;」
大きないざこざになる前に阪奈が来てくれたおかげで事態は事なきをえた。
……しかし、部屋にやって来た時点での阪奈は、白と青を基調とした雅な和風の装束に身を包んでおり、手には紅く淀んだ羽根が装飾されたハンマーを携えていた。どう見ても臨戦態勢だったのは間違いないだろう; こらそこ、いくらコラボ経験があるからって何処ぞの厨二病全開V系ロックバンドのVocalが持ってるギターとか言わないの。
- 首領首領大乱闘(前編) ( No.24 )
- 日時: 2023/08/30 22:19
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「ほぅほぅ。じゃあ私の為に皆が協力しにきてくれた、って事だよね! いやぁ、本当にゴメンね?」
「……まぁざっくり言うならその通りなんだけどさ」
ようやく聞く耳を持ってくれた阪奈達に、1から事情を説明した九瓏達。とうの本人は詳細まで理解できているようには見えなかったが、まぁこの際なのでそこはヨシとする事で一旦は話が進んだ。
「で、ここからが本題なんだが…… お前、ここ数日何やってたんだよ?」
「え? あぁ、それなんだけど……;」
瞬間、阪奈の視線が3人から逸れたのを全員が見逃さなかった。やはり彼女の『職業』というのは、少々難儀なものなのかもしれない。
しかし何を思ったのか、急に意を決したかのように、阪奈は皆と向き合って話を続けた。
「……はぁ。まぁここまで来てくれたんだから、もう言い逃れは出来なそうだよね。話すよ、私の『仕事』について」
「私、今はアイドル活動を前面に押し出して仕事してるんだけど、本来の職業は『ハンター』なんだよね」
「えっと、確認なんですけど。ハンターってアレですよね? アイテムの採集をしたり時にはモンスターを討伐、ないし捕獲してくるっていう……」
「そうそう、それそれ! よく知ってるね皆!」
(((当たってほしくない予想が当たっちまったよコンチクショウorz)))
…………はい。皆さんも恐らくお気づきだった事でしょう。
アイドルを自称していた狩野阪奈の正体は、れっきとした【モンスターハンター】である。
つまり、九瓏達が修練場で武具の研鑽を積み重ねることになったのも、全ては彼女が大元の原因である(爆弾投下)
「……じゃあ何だ? 自宅にいるのにそんな装備着込んでるってことは……何か『ハンター業務』でここ数日拘束されてた感じか」
「えへへ…… 本当にその通りです……」
「まぁ無理もないわね。本来の仕事であるハンター業は、最近全く依頼が来なかったんでしょ? 久々の任務となったら、アンタの性格じゃ張りきっちゃうだろうから」
職業のカミングアウトを皮切りに、だんだんと阪奈の現状が明るみになっていった。しかし、詳細が明かされる程、不思議に思う点というのが浮き彫りになっていった。
「……? だとしたら変ですね? ハンター業務で数日拘束されてるなら、普通考えられるのは『特定の地域に出向いての狩猟』じゃないんですか? どうして今は自宅に居るのに、複数日に渡ってハンター業に拘束される事になってるんです?」
「う"っ。そ、それは…………;」
突然の迅からの鋭い指摘に、思わず詰まった声を出してしまう阪奈。
だが、相手がそこまでハンター業に対する造詣が深いようだということも理解してくれたようなので、ここからまた話が一層深くなっていった。
「……はぁ、まぁいいや。そこまでこっちの事情に詳しいみたいなら、【コレ】が何なのかも分かるんじゃないかな?」
そう言うと阪奈は、アイテムポーチから1枚の紙を取り出した。そこにはこのような記述がされてあった……
─────────────────────
【緊急クエスト】 市街包囲網
難易度 ★★★★★
[メイン依頼] 大型モンスターの討伐
[目的地] アキ市街地
[報酬金] 48000z~
[契約金] 1200z
[狩猟環境] 不安定
[依頼者] 〈シズン帝国国王〉
民どもよ、聞け。現在、モンスター殲滅計画は最終段階に入った。火山地帯や凍土などの危険地区だけでなく、地底遺跡や渓流といった民らも活用の機会が多いであろう領域においても、棲息していたモンスターの根絶がほぼ完遂された。いよいよ、我ら人の安寧を得られる時が近づいたのだ。だが、忌々しいモンスターの残党がアキ市街地に紛れ込んだのではないかという話が舞い込んだ。これは由々しき事態である。現地で待機しているハンター諸兄には、我が軍の兵が到着するまでにターゲットの補足を願いたい。無論、見つけ次第討伐してもらっても構わない。その際の報酬は、確かに約束しよう。
─────────────────────
「ちょっ、これって…………」
「……クエストの依頼文書ですね」
「いや、それは見れば分かる。だが、なんというか……突っ込み所しかなくないか?」
阪奈が3人に見せてくれたのは、恐らく彼女が受注したのであろう今回の依頼にまつわる文書だった。
書式自体はゲームのモンハンと全く一緒なので、3人とも内容を頭に叩き込むのは早かった。……だが、その内容そのものが、よく吟味してみると明らかに違和感だらけだったのだ。
「……えっ。目的地が、市街地……???」
「そこが確かに1番おかしいんでしょうけど、討伐対象もなかなか変よ? 明確なターゲットが絞られてないだなんて……」
「それに、だ。通常のクエストなら大型モンスターへの対応は【狩猟(討伐も捕獲も可)】であるのが普通だ。なぜ【討伐】のみに絞られているのか。最も、依頼文が全てを物語っているようだが」
慣れないはずの異世界だというのに、目的地、討伐対象、狩猟方法と、依頼文書の違和感を次々と見つけていく九瓏達3人。しかし、皆が同じくらいに目を引かれたのが、この依頼文だった。
【モンスター殲滅計画】
なるほど。現地に住まう力無き民達にとっては、たしかにこのプロジェクトは希望といっても差し支えないだろう。
……だが、その他にとっては?
「……つまり。今、阪奈の世界で起こってる『大きな変化』ってのが、このモンスター殲滅計画って事か」
「成る程。であれば、ハンターである阪奈は一気に仕事が激減」
「新しい道を探す為にアイドル活動を始めた、ってとこかしら」
「うん。もう本当にその通りなんだよ……」
いよいよ判明した阪奈の住まうセカイの事情。
アイルーを始めとした各種モンスター達。しかし、国の意向により、彼らは駆逐されつつあった。
「……であれば、俺達は阪奈に聞かなきゃいけないことがあるよな」
ここまでの話を受けて、九瓏は改めて阪奈に向き合った。
「この依頼が随分と奇怪なものだってことは俺達もよく理解した。その上で改めて聞きたい」
「阪奈。お前はモンスターを『駆逐したいか』?」
「…………………………それは、」
ここまで数々の違和感がないまぜになって話を進めてきたのだが、九瓏が最終的に一番心に引っかかったのは『なぜ阪奈はこの依頼を相手に1週間も時間を要してしまったのか』という点だった。
故に彼は、ある1つの仮説を立て、それを立証すべく彼女に[揺さぶり]をかけた……
「……………………嫌、だよ」
「だってそうじゃん!! 私のセカイは人間だけじゃない、たくさんのモンスター達も支えあって成り立っているの! ……ハンターには、それらの生態系を維持するという役割も含まれてるから。なのに、人間の身勝手でこんなこと……」
「……気持ちは分かるよ。普通の人なら、モンスターは脅威でしかないから。そんな民衆の為に政策を打ち立てる事だって別に可笑しくはないよ。なんならそれが当たり前だった。……でも、だからといって【殲滅】はやり過ぎでしょ!?!?」
「……ずっと、本当の思いをさらけ出せないでいたんだ。こんな事考えてるの、このセカイじゃ私くらいだからさ。……でも、良かった。口にしないと、自分の気持ちにも整理がつかないものなんだね。今ならはっきり言えるよ」
「『私はモンスターが大好き』。だって、私はハンターだもん」
……これで、ようやくはっきりした。
たしかに今回の依頼は奇怪故に難解なクエストとはなっていたが、それ以上に自分がどうしたいのかという行動指針に疑念を抱いていた。
阪奈の本心をようやく聞けた今、3人がこの依頼に対してどう行動すべきなのか。その答えが見え始めていた。
- 首領首領大乱闘(前編) ( No.25 )
- 日時: 2023/09/17 22:30
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「……であれば、私から1つ提案があります」
ここまでを振り返ったところで、ふと迅がポツリと提言した。
「先程も話したように、私達は今回、阪奈の安否確認と同時に、阪奈の住むセカイからどなたかをC-Refに招待する事を目的にやって来ました」
「……? それがどう繋がるってのよ?」
「それはこういう事ですよ。もし、我々がモンスターを見つけることが出来た時は、『モンスターを保護するという名目でC-Refに招待すればいい』じゃないですか」
「………………………………!?!?!?」
「ちょっ、アンタ正気!?!?」
「えっ、そんな事できるの!?」
あまりにも突拍子もない、非現実的な発想に思わず全員が目を疑った。
だが、もしそれが実現可能なのだとしたら、双方の目的が一致する、まさしく一石二鳥な妙案ではあった。
「もしそれが出来るっていうなら、私はその案に乗るよ!」
「おいおい、マジかよ…… まぁいい、阪奈が乗るって話なら、俺も尽力しよう」
「アンタ達ねぇ…… はぁ、しょうがない。こうなったらアタシもやんなきゃダメか」
「……なら、決まりですね」
──今この場において、異郷の者達と共に行われる、イレギュラーな作戦が決行された。
「さて、これから私達は作戦を行動に移すんだけど。ここで私から注意点があります!」
行動指針が定まったところで身支度を済ませた一行は、出発前に阪奈から注意点を聞くこととなった。
「まず1つ目。このアキ市街地はけっこう大きな市街だからさ、土地勘がない人が来たらほぼ間違いなく迷子になっちゃうんだ。だから、3人には一緒に行動してもらうよ」
「え、阪奈は一緒に来ないの?」
「私もようやく本気でこのクエストに臨むことにしたからね。今回は地下水路なんかも探索の対象に含めようと思ってるの。だから皆と一緒には行動できないかな」
「良いのかよ。一人でモンスター相手取るのは、幾らなんでも危険すぎるだろ」
「大丈夫! 私、ちゃんと強いんだから!」
「……もし仮に、私達の方でモンスターを目撃した場合は?」
「そこの対策もちゃんと立ててるから安心して。おいで、ニャビィ!」
阪奈からの呼び掛けに応じたのか、天井の隠し扉(!?)から一匹の忍び装束の猫……もといアイルーが駆け下りてきた。
「この子は相棒の一匹、ニャビィ! 家事とかはルミニャに任せてるけど、戦闘面ではニャビィを頼りにしてるんだ! この子をあなた達と一緒に行動させるから、何かあったらニャビィ経由で伝えてね!」
「ニャ。宜しく頼むニャ、主の知人のハンター殿」
通信役、兼ナビゲートの役割を担うニャビィの参戦により注意点1はちゃんと理解されたようだ。ところでこのアイルーの名前、間違えても某立つな!でお馴染みのあのポ○モンのパクりではない事を追記しておく。
「で、注意点2つ目。相手にするモンスターがどのくらいの強さなのかがちょっとよく分かってないからさ。もしモンスターを見つけたとしても『絶対に戦わないで』」
「……それって、相手が上位クラスである可能性もあるという事ですか?」
「可能性は十二分にあり得そうね。なにせ、帝国の殲滅からここまで逃れることが出来た個体なわけだし」
「まぁ、アイアンシリーズの武器に緊急で渡されたハンター装備をつけてる俺達は、文字通りの『初心者ハンター』だからな……」
その他にも何点かの注意を聞いた一同は、いよいよ出発の準備が整いつつあった。
「あっ、そうだ。阪奈、もう1つ確認したいことが」
「? どうかしたの?」
「モンスター殲滅計画がほぼ完遂されつつあるとは話してますけど、まだハンター自体はいるんですよね? であれば、私達の行動が問題視されないかと思いまして……」
「あぁ、その心配は要らないよ。もうこの街にいるハンターは『私だけ』だから」
「「「……………………はぁ???」」」
3人とも思わず手を止めて阪奈の方を見やる。依頼文書がまだ存在するのに、ハンターは既に阪奈のみとはどういう事なのか。
「みんなモンスター殲滅計画が本格実施された時点でハンターなんて用済みだ、とか言って辞めちゃったんだよね。同時に装備とかも売り捌いちゃったみたいだし。多分、現時点で戦力になれる人ってのはもう一人も残ってない筈だよ」
……今度こそ最終確認を済ませた一同は、いよいよ外に出る。
石畳の舗装された道路。各地に植えられてる並木。賑やかな売店。中世ファンタジーを彷彿とさせるような街並みに、思わず3人は目を奪われることとなった。
「じゃ、私はもう行くから! そっちも頑張ってね! あと自由に観光してもいいからー!」
そう言うと、阪奈は勢いよく街中へと駆け出して消え去ってしまった。
「……じゃあ、我々も行きますか」
「何が控えてるか、分かったもんじゃないがな」
「警戒心は常に持っておきましょ」
──阪奈のセカイにおいて、前代未聞の作戦が、幕を開けようとしていた。
──時同じくして、アキ市街地における何処かにて。
??1「おい店主!なんだか知らねぇが、この店で一番旨いもんを9人前作れ!」
店主「は、はいぃ! ただ今作りますぅぅぅ!!」
??2「ククッ。紆余曲折を経たものの、なんとか居住区は得られたようだな」
??3「お前らな…… もう少し穏便な手もあったんじゃないのか?」
??4「うーん! やっぱバカンスって最高っしょ! 『人間の姿になった時』はどうしようかと思ったけど、割となんとかなってるし万事OKってことで!」
??5「そ、そうかな…… 道中でたくさんの人に迷惑かけちゃったけど……」
??4「そこはいいっしょ。人間がどんだけウチらを嫌ってるかってのはよく分かんないけど、アイツらはウチらに襲いかかってきたんだし? セートーボーエーってヤツ?」
??5「それを言うなら『正当防衛』だよ……」
??6「たまご美味しー」
??7「ヴァーッファッファッ! 人にはこのような遊戯があるとはな!『腕相撲』、確かに気に入ったぞ!」
??8「アッッパッパッパ! ニンゲン、オモシロイ! マカタチモ、ニンゲン、ナル!!」
??9「恐らくこの周囲には、拙者ら以外にも『変わりもの』がおる筈。同志を探しながら旅を続けようぞ」
??10「……あの街から、強者の気配がする」
??11「そういって幾つの集落旅したってのよ。今度は無駄足じゃないと良いんだけど」
??12「っしゃあ! オレっちの次なるライブ、聴かせてやるぜぇ!」
この影達は、一体……?
────────────────────
ここまでが前編になります。
後編からは本格的にクエストを受ける流れになります。
モンスターと戦うことになってしまうのか。そもそもモンスターは市内にいるのか。そもそもモンスターはモンスターなのか(?)。今回浮かんだ数々の謎は、後編で書ければと思います。
それでは今回はこの辺で。感想をどうぞ!!
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.26 )
- 日時: 2023/09/17 22:01
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
ここはアキ市街地。
阪奈がハンター活動、及びアイドル活動をしている本拠点である。イメージとしては、完全にゲームが異なるのだがポ○モンのミア○シティが恐らく一番近い。市街中央に塔が建っておらずそのまま中央広場になってるので、そこで阪奈がアイドル活動をしていると思ってもらって構わない。……そう考えると、彼女の強心臓っぷりって尋常じゃないよな……
さて、そんなアキ市街地は同時に複雑に道が入り組んでいる事から、土地勘の無い人にとってはかなり道に迷いやすいという性質も併せ持つ。故に九瓏達3名は、チームで行動するように釘を刺されていた。そんな彼らの現在はというと……
「ん~~ふふ。ひやぁ、ふまいへふね。ほほ『ほふはーひー』」
「アンタ、口に入れすぎよ; まぁ、モスジャーキーが美味しいのは違いないわね」\パクッ/
「お前ら、幾らなんでも気抜きすぎだろ……」
……かなりアキ市街地観光を満喫してるようでした() いや、確かに阪奈は観光も楽しんでね!とは言ってたけど、警戒心何処に置いてったんだよ!?
「ングング……ゴクン。失敬な。相手が何処に潜んでるかも分からないんですよ? それにこっちが警戒心強めてたら、相手に勘づかれて避けられてしまうかもでしょう?」
「正直な話、こんな大通りにモンスターが潜んでるとは考えづらいのよね。もし居たとするなら、もっと早くに皆気づくでしょうよ」
「それはその通りだが、警戒心を強めると気配を探られやすくなるようでは三流だ。一流たる者になれば、警戒心を強めようがそもそも気配を悟らせない」
「……やっぱり九瓏、只者じゃないですよね??」
そんな世間から見れば見慣れない衣服を着た観光客、当人目線ではパトロールの心意気な3人だったのだが、そんな雑談パートに筆を残す理由も無いので、ここで物語がまた動くこととなる。
\ガヤガヤ……ザワザワ……/
「? なんか野次馬が群がってるわね」
「地図に拠ればこの辺は住宅地、及び宿泊施設が多い筈だ。トラブルが発生しても然程不思議ではないだろう」
「にしたって気になりませんか? ただの家庭トラブル(?)でこれだけのヤジが集うとはどうも思えないんですよね……」
市街地の一角で人だかりを発見。今回課せられたミッションと関わりがあるかといえば薄いような気がしないでもなかったのだが、やはり気になってしまうものというのは人間の性だろうか。自然と3人の足も、そちらへと吸い寄せられるのであった……
さて。3人も無事人だかりの中に紛れ込むのに成功した訳だが、中心ではこのような光景が巻き起こっていた。
??1→飯男「おいゲネオ! いい加減203号室をオレ達に寄越しやがれ!」
??2→ゲネオ「ククッ。何を戯言を言う、飯男。宿泊施設における部屋の予約は早い者勝ちに決まっているだろう? ……それよりも乱歩だ。貴様、じゃんけんなどという不平等な策を講じて我が領土を脅かすなど、どういう了見だぁ?」
??3→乱歩「そうでもしないとお前達がいつまで経っても争うばかりだと踏んでの事だ。……最も、俺は部屋割りについては拘りがないのでな。交渉さえしてくれれば幾らでも応じるぞ」
((マジでしょうもねぇぇぇぇぇぇぇ!?))
……えーっと。人だかりのど真ん中では3人の男達が睨みを利かせあっていた。
1人は朱色に黒染みた紫色の斑が目立つスカジャンを身にまとい、赤と紫のグラデーションが目立つモヒカンの男。1人は軍服のような迷彩柄の服の上にぴっちりとした白スーツを着込んだ、触覚のように前方に飛び出た2本のアホ毛が特徴の赤ぶち眼鏡の男。そしてもう1人は水色生地に黒の虎模様が入った武道着を着用した、何処ぞの海王のような三つ編みをした男である。
どうやら彼らのトラブルの原因は『宿泊施設の部屋割り』だった模様。本当に家庭的なトラブル内容だなオイ。
しかし、本当にこれだけの内容で野次馬が集まったりするものだろうか?
野次馬A「…い、聞いたか? あの噂?」
野次馬B「あぁ、聞…た聞いた。なんで…あそこの馬…な喧嘩してる奴ら、元…ンをボコボコに…たって?」
野次馬A「あぁ。…っと相当強い奴…だぜ」
迅「元……何て??」
雷那「元ヤンとかじゃないの、どうせ。それより九瓏は? アイツ一人で勝手にいなくなったんじゃ……」
どうやらあの喧嘩中の3人は既に誰かをボコボコにしたらしく、その噂を聞きつけてギャラリーが集まった模様。
それはともかくとして、九瓏がいつの間にか2人から離れてしまったようだ。何処に行ったのか2人で探そうか迷っていたところ、意外にも九瓏は直ぐに戻ってきた。
「ちょっと、勝手に持ち場から離れないでよね」
「悪い。近くで事情聴取をしてきた」
「事情聴取? それで、何か分かった事でもあるんです?」
「あぁ。奴らが占拠した宿屋に侵入して、オーナーから話を聞いてきた。今は部屋の間取りで揉めてるようだが、数刻前に建物を襲撃された時は圧倒的な力と連携であっという間に占拠されたようだ。当時、他の宿泊客の中には『元ハンター』の経歴を持つ者もいたらしいが……まるで歯が立たなかったらしい」
「………………はァ?」
「元ハンターが……コテンパンに?」
九瓏の事情聴取によれば、あのバカ3人は元ハンターをボコボコにする程の腕を誇るのだそう。確かにその話が本当であれば、これ程の野次馬が集まるのも頷ける話だった。
なにせハンターというのは、正直普通の人間と比較しようとすると色々と規格外のステータスが散見されるような人でないと到底務まらない職種だからである。一線を退いた元ハンといえど、その戦力は並の一般人を優に超えている。
そんな相手をボコボコに出来るとあっては、彼らの実力は如何なものかと興味を持つ者達がいても、なんら不思議なことではなかった。……最もこんな事言うと、未だにアキ市街地で唯一現役ハンターを続けている阪奈が余計におかしく思えるのだが。
「ただの人間が元ハンター顔負けの戦力を有するとは考えづらい。…………いやいや、そのまさかか?」
「さっきの話聞いて真っ先にある考えが浮かんだんだけど……どうみても常識的じゃない。けど、他でもないアタシらがイレギュラーだし……もしかして……」
「…………? お前ら、さっきから何ブツブツ考え事してんだ?」
以上の話を踏まえて、彼らの【正体】についての考察を始めた迅と雷那。一方で、情報を仕入れてきた本人である九瓏はあまりピンときてないようだった。
更新始めます。感想はストップを。
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.27 )
- 日時: 2023/09/17 22:04
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
とはいえ、考え事をしている彼らを時間は待ってはくれない。喧嘩する気満々の飯男、ゲネオ、乱歩が手を出すのは、もはや時間の問題であった。
「オイオイ、何時まで待たせる気だゴラ。こちとらさっさと部屋で休みてぇんだわ」
「ククッ、私も同じ事を考えておりました。何やら蛆虫どもも湧き上がったようですし、ここは纏めて一掃せねばならぬでしょう」
「……野次馬か。面倒な集団ではあるが、一般人への危害は極力避けたい。早急な退避を勧告させてもらおう」
各自で前ぶりを済ませたのか、それぞれが戦闘態勢を整える。
場の雰囲気がガラッと変わったのを野次馬達も肌で感じたのか、周囲のボルテージもさらに上昇していた。
────が、次の瞬間だった。
??4「ちょっとーー! 人が気持ちよく観光してるって時に乱闘騒ぎとかマジ有り得ないんですけど!?」
??5「お、落ち着いてよガレスちゃん!」
??6「ねぇ、つぎのたまごまだー?」
飯男「……ア"ァン??」
ゲネオ「ククッ、どうやら命知らずの馬鹿がこちらに楯突いたようですねぇ」
乱歩「……!? チッ、このケースでは止めようがないぞ……」
ざわめく周囲に突然響いた怒号は、場を一瞬で黙らせるに至った。
噂を知ってか知らずかは分からないが、彼らを相手に啖呵を切ったのは、髪で作るケモ耳っぽい形状を横に取っつけた、褐色イケイケの金髪ギャルだった。いや、思った以上に属性濃いな!? そんな彼女の付き添いらしき人物も2人おり、1人は白銀調に藍色の虎柄があしらわれたドレスコーデのポニーテールの少女、もう1人は白のダボついたパーカーを羽織った髪の中央を赤く染めて盛り上がらせた少年のようだ。
「ケッ、手間が増えちまうが仕方ねぇ。まずはテメェらから黙らせてやるよ! うぉらァッ!!」
流石に痺れを切らしたのか、The・チンピラの飯男が金髪ギャルに向かい右手を振りかざしながら真っ直ぐ殴りかかってきた。
……しかしどうした事だろうか。
ギャルは軽く右寄りにステップを踏んでパンチの軌道を避けると、そのまま拳を握りしめた左手で飯男の顔面にカウンターを放ったのだ。
──次の瞬間、宙を舞っていたのは飯男の方だった。
\ワアアアアアアアアアアアア!!!!/
「なっ………… ど、どういう事!?」
「例の3人が大したことなかったか。或いは、あのギャルも一般人顔負けの凄腕ガールか、のどちらかでしょうね」
「普通ならどう見ても前者なんだがな…………」
予想だにしていなかった展開に、野次馬達は大盛り上がり。九瓏達3人も、考察の幅を広げるに至った。
一方の当事者はというと?
「おやおや、派手に一本貰いましたねぇ」
「……ッダァクソ! あのアマ、ぜってぇ許さねぇ!」
「……相手も少しはやるようだな。向こうも『こちら側』の存在かもしれない。…………む? あの姿……まさか……?」
??4→ガレス「まっ、こんだけの大通りで悪目立ちしてるってー時点で、アイツらもウチらと同じって感じー? てなワケでさ亜音ちゃん、クルルちゃん。ウチと一緒にアイツら相手してくんない?☆」
??5→亜音「またそうやって無茶ぶりばっかり……; 私は本当は戦いたくなんてないんだけど……少し気になる人がいるから、頑張るよ!」
??6→クルル「えー? たまごしばらくおあずけー? もー、しょうがないなー」
開戦の火蓋は既に切って落とされてしまったのか。
もはや6人総員が戦闘態勢を整えていた。
「すまない、ゲネオ、飯男。あの令嬢は俺がやる。何か異論はあるか?」
「あ"ぁ? 俺の獲物の邪魔しなきゃ何だって構わねぇよ」
「ククッ、相変わらず貴方は女子供に目をつけますねぇ。であれば、私の相手はあの阿呆面の少年ですか」
「……無闇に血を流さずに事を済ませてるだけだ」
「ガレスちゃんはそのままあのチンピラさんとやるとして……クルルちゃん、白スーツの怖い人の相手、お願いしてもいいかな?」
「うん。あのひとの【ど頭】かち割ればいいんだよね?」
「相っ変わらず物騒だねクルルちゃん; まっ、今回は今までとは訳が違うみたいだし? マジでバイブス上げてかなきゃマズイっしょ!」
各員狙いも定めたのか、相手の前に立って名乗りを始める。
えっ、喧嘩で名乗りを上げるイメージは本来無いって? 名前だけ先行登場させたんだけど、いつ本名公開しようかと明かすタイミング見失っちまったんですよコンチクショウorz
「改めて、首領井 飯男。テメェのそのファサファサヘアー引きちぎってボコボコにしてやるから覚悟しやがれ!」
「ヘぇ、言ってくれるじゃん。ウチの名前は首領河 ガレス! ウチらのバカンス邪魔した事、後悔させたげるしっ!!」
「ククッ、私の名は首領根 ゲネオだ。最も、君の稚拙な頭脳では、私の名を覚える前にやられるだろうが」
「ん、どうせおぼえないだろうからだいじょうぶ。あと、ぼくは八雲 クルル。いちおうね」
「こちらから名乗らせてもらおう。ランポス組若頭、首領 乱歩だ。……つかぬ事をお聞きするが、そちらの名は?」
「……! やっぱり……! であれば、こちらも名乗らねばありませんね。ギアノス組令嬢、首領杉 亜音と申します」
各自の名乗りも終わったことで、多くの野次馬が集まっていながらも場は静寂に包まれていた。まさしく、嵐の前の静けさと言えるだろう……
…………えっ? 九瓏達3人が物凄くツッコミたい表情でこちらを覗いてる? 何かありましたか?
『名前がドスドス多すぎねぇか(ません/ない)!!??』
……いやまぁ、だって。この章のタイトル『首領首領大乱闘』ですもん。
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.28 )
- 日時: 2023/09/17 22:07
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「一番槍は俺がいただくぜェ!!」
またしても最初に動き始めたのは飯男だった。今度は万全を期してなのか、手にはメリケンサックが嵌め込まれており、殺傷力に磨きをかけてきた。の、だが……
「はァ~あ。何も考えずに突っ込んでくるとか、ウチ以上にバカなんじゃないの? そんな相手に……はっ!!」
\バシャァッ!!/
「ぐあっ!? コイツは……水か!? クソっ、どうやら思ってた以上に厄介な相手らしいなぁ!?」
ガレスは何処ぞの魚人宜しく、大気中の水分を集めて手のひら程の大きさにすると、それを豪速球で相手に浴びせたのだ!
水の威力も去ることながら、飯男自身が水への耐性があまりないのか、この一撃は本人には堪えたようだ。
だが、飯男もタダでは終わらない。
「だったら、コイツはどうだぁ!?」
そう言うと、今度は着ていたスカジャンのチャックを開けたのである。スカジャンの中に何かを隠しているのか、両手をスカジャン内に突っ込んだかと思えば……何という事だ。次に両手を取り出した時点で、飯男の両手は毒々しいナニかがベットリとまとわりついていたのだ!!(問題発言) いっや、気持ち悪っ!!
しかも問題はこれだけではない。飯男はこの両手に纏ったヘドロを増幅させる動きを見せており、自在に操れることを示唆しているかのようだった。
「っしゃあ、行くぜぇ!!」
万全の準備が出来たのか、いよいよ飯男が再び動き出した。今度は突っ込みながらも周囲にヘドロを撒き散らしており、相手の逃げ場を着実に狭めていった。
この攻撃は今までと比較にならない程に危険。ガレスもまた直感でそう感じ取り、後方への退避を試みる。だが、攻撃を完全に避けれたというわけでもなく、飯男が拳を振り出した際に飛び散ったヘドロの一部が、どうしても彼女の衣服に掛かってしまったようだ。
「うっわ!? やっぱ完全には避けらんないかぁ…… オキニの服だったのになぁ……って、アレ?」
しかしこのヘドロ、当然ながらただのヘドロではない。ヘドロが飛び散った箇所の衣服はすっかりと黒ずんでボロボロの状態。そう、【腐食】していたのである。
「いや、キッッッッッショ!? マジやってらんないんですけど!?」
「イーヒャヒャッ! ハナから逃がすつもりはないぜぇ??」
「ククッ、ではこちらも始めましょうか。なぁに、直ぐに終わらせてさs…………!?」
\ドゴォォォォン!!/
「……うーん、隙だらけだとおもったんだけどなぁ」
こちらはゲネオvsクルル。尊大な話っぷりが目立つゲネオだったが、今までの言動から鑑みてもマイペースである事が見て取れるクルルには全く関係なかった模様。
クルルの持ち武器は……なんとその辺に置いてあった30kgを超える程度の『漬物石』だった。いや、もっと他に武器あったろ。
「全く…… 私の発言中にも手を上げるなどなんと愚かな。では、こちらも即時ケリをつけてあげましょう!」
不敵な笑みを浮かべながらも眉間のシワがとんでもない事になっているゲネオ。どうやら相当お怒りのようだ。
そんな彼が懐から取り出したのは……かなり高級そうなスタンガンだった。如何にもインテリヤクザっぽい武器センスである。
「この一撃で沈めっ!!」
「……………………んっ」
\バゴォッ!?/
……えぇ、一体何が起こったかというと。
まずゲネオがスタンガンを持って、今度はクルルに突っ込んできたのだ。ところがあろう事かクルルは、またしても手に持った漬物石をタイミング良く振り下ろし、スタンガンと突き出したゲネオの右手を叩き落としてしまったのである。技ありという他ない。
「────っ!?!? こ、このクソアマがぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んーー? そんなことより、ぼく早くたまごたべたいんだけどーー?」
……さて、他所がドンパチを繰り広げている中、こちらは乱歩vs亜音……と、なる筈だったのだが。
名乗りを上げて以降、2人は全くといっていい程に微動だにしなかった。
「「………………あのっ!!」」
「あっ! き、急にすみません……!」
「いや、こちらこそ済まない。どうやら両者思う所があるようだが……ここはレディーファーストとして、そちらから話を伺いたい」
他4名が力で話し合い()をしている中、この2人だけがまともに対話を試みていた。まぁ野次馬からしてみればそんな光景が見たくて集まったわけではないので、この謎の空間は完全に2人だけの世界と化してしまっていた。
「コホン…… では失礼しますね」
「乱歩さん…… 貴方、以前私とお逢いした事はありませんでしたか?」
「……! やはりあなたは、あの時の……!」
……えぇ、2人は一体何を言ってるのかと思われるかもしれないが、なんて事はない。
昔、ランポス組が構える広大な拠点の中に、一人の少女が迷い込んでしまうというアクシデントがあったのだが、彼女を見つけたランポス組の少年が何のトラブルも起こすことなく、無事に彼女を雪山の家族のもとへと送り届けたというだけの話だ。まさかその女がギアノス組の令嬢だとは、当時の乱歩は夢にも思わなかっただろう。
「まさか、こうしてまた貴方に逢う日が来るなんて……」
「そちらも随分と大きくなられたようだな。……しかし、何故彼女らと行動を?」
「…………実は私、一族の皆に逃がされたんです。ハンターの襲撃に遭いまして……」
「………………なんだと?」
「そして命からがらで逃げ延びた所で……ガレスちゃんに出会ったんです。それからは彼女と一緒に行動して、後からクルルちゃんもやって来た感じですね」
亜音の話によれば、ハンターの襲撃から身を守るべく家臣からの要望に応じて脱走したらしい。ハンターが人間を襲撃するとは到底思えないのだが……?
「……私の身の上についてはお話しました。今度は私の質問に答えてもらいますね? ……何故、このような人だかりになってしまったのですか;」
「ふむ…… 実をいうと、俺達はただ単に『部屋の間取りで揉めていた』だけだ」
「部屋の……間取り…………???」
「あぁ、おかしな話だがな。だが、そこに変な噂が勝手についたせいでこうなったのではないかと踏んでいる。……俺達からすれば、溜まったものではないがな」
他2組とは異なり、議論でアッサリと和平を掴んでしまった乱歩と亜音。しかし、他の暴徒化してしまった4名を自分達だけで諌めるには流石に無理があった。
……尚、これ程の戦いっぷりを間近で見ていた九瓏達はというと。
「どうなってやがる……? 何も無い所から水や毒なんて簡単に出せるものではないだろ……? 忍術でもあるまいし……」
「他に出てきた武器はスタンガンに漬物石、ですか……」
「名前と織り交ぜて考えると……うん、やっぱりこの線が濃厚よね」
「……ねぇ、ニャビィは今ここに居るかしら?」
\ゴソゴソ……ズザッ/
「ニャ。ちゃんと潜んでいたのニャ、雷那殿。して、何か御用ですかニャ?」
「阪奈に伝言をお願いしたいの。『もしかしたら人間に擬態したモンスターが街で暴れてるかもしれない』って」
「はぁ? 擬態……だとっ??」
「……ふむ。やはり雷那も同じ考えでしたか」
迅と雷那の考え。
それは、現在ドンパチやってる人間の正体こそが、自分達の探しているモンスターではないかという説だった。
確かに、もしその仮説が当たっているとすれば、名前がやけにドスまみれなのにも納得がいくし、元ハンターをボコボコに出来たのも十分頷けるのである。そして、ほぼ無から毒や水を生み出せるのにも、十分な理由付けにはなるだろう。
「ふむ……承知したニャ。確かにその情報、主に届けさせてもらうニャ」
阪奈の伝言を受け取ったニャビィは、それを主の阪奈に届けるべく、直ぐにまた地中へと潜っていった。
彼らの戦いは佳境へ向かうかと思いきや、事態はまだまだ急変を遂げることとなる……!!
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.29 )
- 日時: 2023/09/17 22:14
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
一触即発のストリートバトルが展開されるかと思いきや、一組だけ意気投合してしまった乱歩・亜音ペア。
事態の鎮静化を図りたかった2人だが、流石に自分達だけで成し得ようというのは些か無理のある話だった。
どうしたものかと思案していた矢先──あろうことか、次なる刺客が現れてしまった。
??9「無事に標的を発見。お二方、暫し拙者のお話に耳を貸してくれぬか?」
「…………!? 貴様、いつからそこに?」
「貴方、一体何者なんです?」
??9→井槌「まずは自己紹介からであるな。拙者の名は井槌 修。其方らと同じく『変わりもの』の1人ぞ」
井槌「現在、拙者は同じく2人の『変わりもの』と共に旅をしておる。『変わりもの』とはててしまうまでの記憶を持ち得ているならば、恐らく今後起こりうるであろう虐殺に対する為にも、『変わりもの』同士で徒党を組む事を考えていた。……何卒、お力添えを願えないだろうか?」
2人の前に現れたのは、バンダナの上から左側の髪を流す事で左目を隠した、如何にも盗賊っぽい格好をした青年だった。……の割には、一人称は拙者らしい。どういう謎の組み合わせだよ。
「……お前の言いたいことはまぁ分かる。たいそうな事を言ってるのだというのも理解した。だが……」
「この大荒れな状況でお願いするような事ではないと思うのだけど……」
「うぉらぁっ!!」 \ベチャッ!/
「だぁあっ!!」 \バシャァッ!/
「ふんっ!!」 \バチチチ!/
「うおー」 \ズゴォォン!/
「……まぁ、空気を読めていなかったという点は認めざるを得ないか; その点は申し訳ない」
乱歩達から至極当然の返しを受け、流石にその通りかと思わず反省した井槌。だが、そこで話を切り上げるようでは、今回わざわざこの場にやってきた理由にはならないだろう。
「であれば、こちらから交渉させてほしい。拙者らも協力して事態の鎮圧が出来た暁には……改めて話を聞いてもらいたい」
「ふん…… その形であれば、俺達も提案を受けないでもないな。だが……」
「……本当に彼らを諫められるのですか? 彼女たちの凶暴さは、共に旅をしてきた仲なのでよく分かっているつもりなのですが……」
事態の鎮圧を引き換えに徒党結成を要求してきた井槌。しかし、今まで共に行動してきた仲間達の凶暴性をよく知っている両名は、なかなか簡単には応じれそうになかった。
だがここで、井槌の先程の発言に焦点が当たる。
「言ったはずであろう? 拙者にも2人の友がおると。あやつらの力を借りれば、決して不可能ではない。同じく旅を共にしてきた拙者が保証しよう」
「いい加減、くたばりやg「ふんぬぁぁっ!!」ぐぼあぁっ!?」
「!? 何あのむさいおっさん!? チンピラをタックルで吹き飛ばしてったけど……」
??7→首領原「ヴァーッファッファッ! お主らの例に倣って、ワシも名を名乗ろう! ワシの名は首領原 牙! 朋友の願いに応じるべく、喧嘩の仕舞いに加勢しようぞ!」
「マ? こっちも助かるわ! ホントこの戦い不毛すぎんだから!」
「ククッ、全くこちらの間合いに持ってこさせませんねぇ…… なんと小賢しい事か……っ!! 次こそh「アパーーッ!!」……!? シュワットォ!?」
「…………? だれだろう、あのへんなひと……」
??8→マカオ「アッパーーーーッ!!! マカ、マカオ! 首領間 マカオ! キチクメガネ、トメル! アパーーーッ!!」
「うーん…… よくわかんないけど、こっちには目もくれてないし、べつにいっか」
井槌の発言通り、4人の戦場に新たに2名の男が乱入してきた。
一人は毛皮の羽織りものを腰に巻いた首領原牙という屈強な肉体の男、というかあらくれ。もう一人は黄色い羽根が装飾されたバンダナを額に巻き、顔や身体に朱い刺青を施した首領間マカオという男、というかアパッチである。なんかさっきから登場人物の癖強すぎません???
いずれにせよ、不毛な争いしかしてないチンピラ・インテリヤクザ(あとまぁ一応当事者なので中華マフィア)を鎮める手筈はここまでくれば流石に整ったと言えるだろう。
──しかしながら、ここに来て事態はある者達が恐れていた【最悪の展開】に突っ込むこととなる。
「ぜぇ……ぜぇ…… クソが…………っ! テメェら全員でオレを抑えつけようってんだろうがなぁ……、舐めてんじゃねぇぞ…………!!」
「ぐっ……! ……ククッ、良いでしょう。そこまで私の邪魔をしようというのなら、全員消し去ってあげましょう!!」
「「ぬ"ぅ"お"おおおおおおおおおおっ!!!!」」
防戦一方の歯痒い現状に対しとうとうブチ切れた飯男とゲネオ。その怒りの咆哮は、野次馬包囲の周囲にまで聞き及んだ。……だがそれだけではない。明らかに何か異常な事態となっている。
まるで我を忘れたかのような怒り方は、周囲の人に対し自身の存在をより大きく見せた。
──否、『 実 際 大 き く な っ た 』。
肥大しすぎた肉体に対し、それまで着ていた衣服は引きちぎれ…………るどころか、よりにもよって肉体と【一体化】。強力堅固な『皮』や『鱗』と成り果ててしまった。
顔面ももはや人間の有り体を残しておらず、特徴的だった頭髪はそのまま『トサカ』となり、赤ぶちの眼鏡も一体化して目の色に変わってしまった。
ここまで言ってしまえば、現在の状況は想像に難くないことだろう………………
──目の前に立ち塞がるは『ドスイーオス』と『ドスゲネポス』。
怒りによる本能を解放した両名は、本来の人ならざる姿【モンスター】へと変わり果てていた。
『う、うわあああああああああああ!!??』
「な、なんでこんな街中にモンスターが!?!?」
「知るかよそんな事!! それより、ハンター! ハンターは居ないのかよ!」
「居るわけないでしょ! もう帝国軍から御役御免されたじゃないの! モンスターが居なくなったからそんな事したんだと思ってたのにっ!!」
「い……嫌だ……っ、死にたくない……っ! 助けてくれぇぇぇっ!!」
当然、この緊急異常事態に街中は大騒ぎ。
ただの強者同士の喧嘩と侮っていた愚かな民衆共は、我先にと逃げ出そうとして正に地獄絵図。遠くで咆哮を聞いた人達も、事態の深刻さにすぐ気がついて逃げ回るなど、いよいよ以てアキ市街地が大混乱の渦に巻き込まれる事となった。
……尚、同じように変貌ぶりを間近で見てしまい、自ら立てた嫌な予感が的中してしまった九瓏達はというと?
「……はあああああ"っ!?!? いや待てどういう事だコレは!? 人体骨格が豹変して人がモンスターになるなど……正気の沙汰じゃないだろ!?!?」 SAN値チェック1d100→96[ファンブル] < 75 (致命的失敗)
「ところがどっこい、我々もそんな『おかしい側の人間』なんで受け入れませんと…… しかし、こう……頭では理解できても身体は追いつかないもんですね。ちょっと頭が…………ウッ」 SAN値チェック1d100→87 < 45 (失敗)
「まぁあるあるよね。現実と想像は話が違う訳だし。予めの予想がなんとか出来たからアタシは平気だったけど……アンタ達、大丈夫そう?」 SAN値チェック1d100→19 < 65 (成功)
……うーん、大丈夫じゃなさそう()
あとSAN値チェックって何勝手にCoC始めてんだよ。おまけに九瓏がファンブル叩き込んでるし。本当に大丈夫か?
「とはいえどうするんです? 奴らがターゲットだって事が判明したので、あとは時間勝負になる訳ですが……」
「少なくとも、こっちから手を出すのは控えたいのよね。阪奈からの言いつけもあるし。かといって、そのまま棒立ちで事態の観察ってのも、野次馬包囲網が無くなった今じゃ目立って気づかれちゃうし……」
「……俺に考えがある。2人は俺の後に付いてこい。逃走に見せかけて物陰に隠れるぞ」
結局は、阪奈の言いつけ通りに戦闘は避け、喧嘩の当事者に場を委ねる事にした。
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.30 )
- 日時: 2023/09/17 22:16
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「あの馬鹿共……!! また後先のリスクを考えずに元に戻ったのか!?」
「そ、そんな……! ら、乱歩君! 私達、どうしたら……」
「そんなの決まってんじゃん! 目にはコンタクト、入れ歯にはポリ○ント、モンスターにはモンスターで対抗っしょ!」
「いや、何から何まで異なるぞ!? ……しかし、それが現状とれる最良の選択である事は否めないか」
「ヴァッファッファッ! 井槌からの言質も取ったので、ワシも本気で行かせてもらおうぞ!」
「アパパッ! ウララーーーーーッ!!」
「んー? みんな本気でいくのー? なら、ぼくもー」
「くっ……こうなっては仕方ないか。亜音、力を貸してくれないか?」
「う……うん! 私、あまり強くはないけれど……精一杯頑張るよ!」
チンピラ共の本能解放に伴い、一度まとまる事になった鎮圧組の7名。
人の姿のままで彼らを止めるのは過去の経験則からして無理があるという事もあり、こちらも本能を解放せざるを得ないということで話が纏まった。
……ここで1つ、本能解放についての補足をさせてもらおう。
何かしらの原因によって人の姿への変化、擬人化をされてしまった飯男達。人になってしまった事により、その生活様式や心情にも大きな変化が生じてしまった。
『人間は考える葦である』という言葉があるように、人の姿を手にしてしまった彼らは、それまでの単純明快な野生の思考だけでなく、様々な複雑な思考も出来るようになった。
人間になるのだから、その人体構造もより人間らしく構築されるものなのだが、そこはやはり元モンスター。戻れるのなら本来の姿に戻りたいのが性というもの。故に、幾つもの思考の中でモンスターとして直感的に感じる【本能】に忠実になった時だけ、一時的にだが理に逆らって【本来の野生の姿に戻れる】。これが、本能解放のメカニズムとなっているのだ。
……さて、そうこうしている内に無事に7名……いや、7体の本能解放も済んだようだ。
あの場にいた中華マフィア、金髪ギャル、白銀の令嬢、たまご男、盗賊、あらくれ、アパッチの7名は、それぞれ『ドスランポス』『【砂竜】ドスガレオス』『ドスギアノス』『【掻鳥】クルルヤック』『【鎌鼬竜】オサイズチ』『【大猪】ドスファンゴ』『【跳狗竜】ドスマッカォ』へと姿を変えていた。(魑魅魍魎)
ここで補足をもうひとつ。先程の記述内にある【】はハンターズギルドで通っている二つ名を指している。ドスランポスなどの一部モンスターに何故か付いてないのは、モンハン初期の頃は中型モンスターに二つ名が付けられなかったのが原因と推測される。
いずれにせよ、現在街中には総勢9体のモンスター。さながら大怪獣戦争、もとい大乱闘ス○ッシュモン○ンズと呼んでしまっても問題は無いだろう。……いや、やっぱりあるかも;
──今此処に、喧嘩による制止第2ラウンド、及び【アキ市街地の蹂躙】が始まろうとしていた。
……さて。時同じくして、ここは街外れの地下水路。
普段は誰も立ち入るはずのないこの道を、ひたすら歩き回る少女がいた。そう、狩野阪奈である。
「うーん……参ったなぁ。誰も居ないどころか、誰かが居た形跡すら全くないなんて…… 私の勘が外れたのかな?」
何も無い空間を探索することほど、飽きが来るものはない。こうなってしまってはさっさと業務を投げ出したくなるものだが、そこはやはりプロのモンスターハンター。嫌でも続けなければならない根性があった。
と、そこへ…………
\ガサガサッ/ 「ニャッ、此処に居られましたか主殿」
「えっ、ニャビィ!? どうして此処に!?」
「雷那殿から伝言を頂いたのですニャ。『もしかしたら人間に擬態したモンスターが街で暴れてるかもしれない』との事で」
「えっ……? モンスターが、人間に変身……? そんな事、本当に有り得るの……?」
やはり阪奈としても信じ難い話ではあったものの、他でもない雷那とニャビィからの伝言とあっては、とてもではないが無下にできなかった。……というか、身体が闘争を求めていた。
「……分かった。直ぐに皆に合流しよう。ニャビィ、道案内お願い!」
「承知しましたニャ!」
──斯くして、最終兵器もまた、現場へと動き出した。
……話の場面は、再び市街地の住宅地に戻る。
現在の戦場を分析していくことにしよう。
現時点で戦闘不能に追いやられてしまったのは掻鳥ただ一体。闘う気力は残っているがボロボロのモンスターが八体。そして、ほぼ無傷で場を制圧していたのが三体である。
………………ん? ちょっと待ってほしい。
確か先程までは、暴走した二体を鎮圧する為に七体が立ち上がっていた筈…………
お わ か り い た だ け た だ ろ う か ?
……そう。『モンスターの総勢が増えている』のである。
元々今回のクエストは狩猟環境は不安定とされてきたが、にしたって幾らなんでも乱入しすぎである。(爆弾増量)
ここで、乱入してきたモンスターの特徴を挙げていく事にしよう。
新しく割り込んできた3体の内、リーダー格なのは立派なエリマキが特徴的な薄紫色の鳥竜種。2体目は頬から首辺りまで発達した毒袋が特徴的な、ドスイーオスより少し黄色めな彩色の鳥竜種。3体目は前方に突き出た鋭いトサカが特徴の水色の鳥竜種だ。
この時点でも、有識者であれば彼らの正体は分かることだろう。だが、カキコ読者の皆様にそのような方が多いとは思えなかったので、ここは後ろで戦況を見守っていた主人公一行に語ってもらいましょう()
「……どうなってやがる? あの乱入してきた『【狗竜】ドスジャギィ』…… 明らかに動きのレベルが違う」
「あの個体程じゃないにせよ、『【毒狗竜】ドスフロギィ』も厄介ね。ヘドロ状ではなく霧状の毒なのよね……」
「おまけに『【眠狗竜】ドスバギィ』ですか…… 睡眠属性の敵は希少ですからね、どう対応すべきか……」
大問題の場面で新たにやって来たドスジャギィ、ドスフロギィ、ドスバギィの3体。果たして、彼らの目的はなんなのか。
戦いは、ようやく終盤戦に持ち込まれようとしていた。
流石に一定の時間が経ってしまったからなのか。
総勢12体のモンスターの身体から急に湯気が噴き出したかと思えば、その姿形はみるみる内に小さく変わりゆき…………最終的に、出会った当初の人間の姿に戻っていた。
──さて。ここで読者の皆様に質問しよう。
皆様は、先程の乱歩の発言を覚えているだろうか?
「あの馬鹿共……!! また【後先のリスク】を考えずに元に戻ったのか!?」
……この【後先のリスク】とは、一体何を指しているのか?
その解答は大きく纏めると2点。
1点目は『極度の倦怠感、筋肉痛』である。
人としての生活を強要されるようになった彼らは、もはや人の姿がデフォルトなのである。人とモンスターとでは身体構造に大きな差がある事から、モンスターでの活動時間が長いほど、後に身体に降りかかる負荷が大きくなるのである。まぁ至って真面目な副作用だと言えるだろう。
もう1点は『衣服の破損』である。
彼らがモンスターに変身した際に衣服と【一体化】したという表記があったように、そもそも彼らの衣服はモンスター状態の名残が由来であるケースが多い。その状態で戦闘中に傷ついたり、変身時間が長かったりすると、衣服がボロボロに傷ついたりヨレヨレになってしまうというリスクもあるようだ。……最も、これら衣服もモンスターの一部。自然回復という要領で時間を置けば治るには治るという特徴を併せ持っている。だとしたら、その衣服の素材は何なんだよ()
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.31 )
- 日時: 2023/09/17 22:19
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
※ 突然ですが、ここで緊急○○警報が発令されました ※
※ 耐性をお持ちでない方は速やかにご拝読を控えてくださると助かります ※
※ 本作最大のキャラ崩壊(?)がやって参ります ※
……つまりである。今現在の状況は、ボロボロの衣服でところどころ血を流している9人と、比較的通常通りの3人の人間が対峙していた。
どうやら途中参戦組は、変身時間が大して長くなく傷も然程受けていなかった事からか、比較的平気だったようだ。ここで彼らの人間状態の特徴も話しておこう。
ドスジャギィはエリマキを彷彿とさせるド派手に全方位に伸びてしまったワイルドな髪型が特徴の、如何にもハンターらしい衣装の青年に。
ドスフロギィは何処からか現れたテンガロンハットを被り、へそ出しの開放的な上半身が目立つ西部劇のガンマン風衣装、腰には二丁拳銃まで携えた比較的短い髪の女性に。
ドスバギィは自慢のトサカが飯男以上に細く鋭いモヒカンと化し、水色の袖無しジャケットを羽織った上にギターケースも携えるという、どこをどう見てもロッカーなスタイルの男性になっていた。
「グハッ……!? あ、あんの野郎共……横槍でオレ達をここまでコケにするたぁ…… 絶対許さねぇ……!!」
「ククッ…… 全くもってこちらも同意見ですねぇ……! ここまでの惨状になった以上、間取りについての争いは水に流しましょう…… 奴らを葬らねば此方の気が済まない……ッ!!」
「ぐっ……! これ程の猛者がまだ居るとはな…… 亜音、大丈夫か?」
「うぅっ…… 身体の負荷、服の破れ具合、傷の受け方からしても、私はもう前線は控えたい、かな…… 本当に、ごめんね……」
「まっ、亜音ちゃんはお嬢様だかんね。今回じゃリタイアも無理ないっしょ。……だからこそ、ウチらがやんねーと……っ!」
「ア……バ……ッ フカ、ク…………!」
「ぬぅ"ぅっ……! クルルは既に戦闘不能、非戦闘系の亜音と井槌もこの場でリタイアが濃厚ではないか……っ! なんと凄まじいっ……!」
「ぐっ……! 不躾を承知で聞くっ! 御主らは一体何者ぞっ! 御主らの目的は……一体何なのだ!?」
深い痛手を負ってしまった9人は、その後の進退を確認しながら、相手の素性について質問してきた。
この問いかけに対してドスジャギィ達は、相手を一瞥した後にこう返した。
??10→邪儀「……首領田 邪儀。強者との戦いを求めて此処に来た」
??11→風浪「アタシは首領室 風浪。目的なんてものはないわ。ただ暇だから、邪儀についてるだけ」
??12→穿毅「オレっちは首領場穿毅! ただ邪儀に付いてくだけじゃつまんねーから、各地でライブを続ける孤高のロッカーってとこよ!」
……つまり総括すると、ただ単に強い奴と戦いたいだけが為に、鎮圧部隊もろとも鎮圧してしまったのである。この時点で、この3人の強さが只者ではない事が窺える。ドスジャギィ達なのにね。
「チッ……! こんのクソ野郎共がぁぁぁぁ!!」
「私共を舐めるなよっ…………!!」
「俺達が弱者等と、勝手に決めつけてくれるな……!」
「まだまだウチら、幾らでもバイブス上げてけるし……っ!!」
「アパァアアアアアアアアアッ!!!!」
「ワシらの底力、とくと魅せてくれるわァッ!!」
もう争いは鎮まったので、本来はもう戦う理由は無かったのだが、そこはモンスターとしての性。やられっぱなしで終わりたくはないのである。
未だに気力の残っていた飯男、ゲネオ、乱歩、ガレス、マカオ、首領原の6名は、ボロボロになりながら尚も彼らに挑み続けた。
とても気力だけとは思えない、一切の衰えを見せない攻撃力、俊敏性、身のこなしは邪儀の求める強者としての定義に見合う、確かなものだった。
……そして、そんな己の内なる才能に、各々も何やら自覚が芽生えたようだ。
「ハァ、ハァ…… なーんかウチ気づいちゃったんだけどさ……ウチらのフィジカル、マジ洗練されてね?」
「それは俺も思った。俺の中の何処に、一体これ程の底力があったのだろうか、と……」
「む、そうなのか? ワシはそのような自覚があまり無かったのだが……」
この新鮮で不思議な感覚に対して、ふと思案したガレスと乱歩。首領原はあまり実感がなかったようだが…… 次の瞬間、他3名がとんでもない発言をしてしまう。
「あ"あ"っ? そりゃオメー『服を脱いだ』からに決まってるだろ?」
「ククッ。私も同じように考えておりました。今まで白スーツでの戦闘でしたからねぇ。ボロボロになったので試しに脱ぎ捨てたのですが……これ程の開放感を得られるとは……!」
「アパッ! コレゾ、アパッチノスガタ!」
「滅相もない事を言うなぁぁぁ!!??」
……えぇー、この馬鹿3人。よりによって『服を脱いだ』から強くなれたのだと主張しだしました。(爆弾発言)
実際現在の3人は、飯男はスカジャンを脱いでTシャツ状態、ゲネオは白スーツを脱いで迷彩柄のTシャツ状態、マカオは……アレ、お前最初から脱いでなかったか?
てかそんなんで強くなれるんだったら誰もが服脱いでんだよ! 皆が普段服着てる理由を考えろよ!
「ったく…… この馬鹿3人の言う事など真に受ける事はな……い…………」
「ん? どーかしたの、乱歩?」 ←上半身ブラ1着のみ
「ヴァッファッファッ! であれば、ワシが強みを実感できなかったのも納得か! なんせワシは上裸がデフォルトだからな!」
「真に受けるなっつったろぉぉぉぉぉ!?!?」
問題発言が飛び火したぁぁぁぁぁぁ!?!?
なんで今の阿呆な発言受け入れちゃったの!?
「いや、ウチもなーんか開放感が理由じゃね?とは思ってたのよ。けどウチ女子じゃん? そんな気楽に言っていいものかなーってちょーっと躊躇してたってワケよ。けど、同志が居るなら何も怖いもんは無いよネっ!」
あるわっ!! 世間の目とかいう一番怖いもんがあるわっ!!
……あっ、そうか。さっきのモンスター騒動で世間の目いなくなっちゃったのか。(問題発言)
と、いう事は…………???
「っしゃあ! てなワケで! ウチら【裸族】の底力、とことん見せたげるしっ!! 」 ←もう完全な下着姿
「開放されたオレ様の真の姿、とくと目に焼き付けやがれぇぇぇっ!!」 ←とうとうパンツ一丁に
「ククッ……! これぞ私の、最終形態ッ!!」 ←勿論パン一
「アパパパァァァァッ!! アパッチ、サイコウ! ラゾク、サイコウ!! アパーーーーッ!!!」 ←パン(ry
「いや、だからと言ってそこまで脱ぐ必要があるかは……; まぁ良い、ワシも行くぞっ!!」
「帰ってこいお前らぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
【悲報】HALsideの裸族、爆誕
乱歩の説得も虚しく、裸族の道に目醒めてしまった5名。……いや、よく見たら首領原は違うか。にしたって4名は多すぎるだろ!?
このカオス状況に九瓏達はというと…………?
九瓏「いやなんで唐突に服脱ぎだしたんだアイツら!? 信じられねぇ…… 俺もう何も信じられねぇよ……orz おい、迅もいい加減何か言ったら…………」
迅「ファーーーーーッwwwww いやぁ、まさか裸族爆誕の瞬間に立ち会えるとはwww これもう一生もんの思い出になるだろうなぁ……www」
九瓏「 嘘 だ ろ お 前 ! ? ! ? 」
【悲報2】迅がギャグカオス大好きな問題児でした
確かにこれまでもところどころ危ない発言があった気がする迅だったが、明確にやべー一面を見せたのは今回が初と言えるだろう()
「クソッ! これじゃ埒が明かねぇ! てか雷那何処行った!? アイツが居れば場も収まるってのに……!」
「ヒーッw ……しかし、雷那がいないなんて事もないでしょう? どうせ恥ずかしがって何処かに蹲ってるとかそういうオチでは? ……おっ、居ました居ました。おーい、雷……な…………」
雷那 「 」
「「気絶してるゥゥゥゥゥゥゥッ!?!?」」
……一方の雷那は、あまりのカルチャーショックぶりに秒で気絶していました; いや、うん。それが正常な反応なのよ;
亜音「えっ、ちょっ……ふぇっ!?/// ど、どうして急に皆服を脱ぎ始めたの……っ!?」
井槌「彼らの動きを分析していたのだが……皮肉なことに、衣服を脱いでいた方が各々の身体能力が向上するという結果が現れた; 通常であれば羞恥心の方が勝り、このような結果にはならない筈なのだが…… それだけではない。今は場の静止に回っている乱歩にも同じような兆候が見られる。どうしたものか……っ」
亜音「そ、そんなっ…………!////」
こちらはリタイア組。データキャラの井槌が状況を分析しており、その特異ぶりに頭を悩ませていた;
あと亜音、お前その反応は…………;
風浪「えっ……いや何アレ……キモッ」 ←ドン引き
邪儀「知ったことか。だが、奴らから強さの片鱗が垣間見えたのも確かだ。強者とやり合えるのでさえあれば、俺はそれでいい」
風浪「嘘でしょ……? マジ信じられないんだけど……」
穿毅「へへっ、良いじゃねぇの! 会場のボルテージも上がってきやがった!」
そして邪儀組。
風浪が思いっきりドン引いていたのだが、他2名が全く動じることなく接していた為に、思いの外動きがなかったようだ。
そして物語は、いよいよClimaxへ────
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.32 )
- 日時: 2023/09/17 22:22
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「クソッ……! これ以上あいつらの相手などしてられるか……っ!」
流石に裸族の勢いに着いていけなかったのか、リタイア組に合流した乱歩。
しかし合流直後、彼は思わぬ言葉を受けることとなる。
「いやはや、ご愁傷様だったな、乱歩; ……しかし、彼らについては今後どうするのだ?」
「分かるかよそんな事…… もはや俺じゃあいつらを止められねぇよ。くそっ、なんだってこんな事に……」
「乱歩君…… でも、諦めたくはないんじゃ……」
「当たり前だろっ!? あいつら2人は揃って馬鹿だからな。俺が制止しないと恐ろしい事になってたであろう山場を既に何度も見てきた…… 今更あいつらを放置なんて……出来る筈がないだろ……っ!!」
「うーむ、信頼とは別の焦燥感が見られる;」
現在の心情を吐露してもらった所で、井槌は乱歩相手に『ぶっ込み』を仕掛ける。
「だが乱歩。実際御主……『開放感自体は自覚している』のではないか?」
「っ!? ……ど、どういう事だ、井槌」
「拙者はデータキャラである故、御主達の戦闘データも纏めていたのだよ。その中には乱歩、御主にも【裸族の資質がある】事が判明している」
「…………俺に『裸族になれ』とでも?」
「勿論強要はしない。しかし、飯男やゲネオを心配し2人のライバルである事を貫くのであれば、それが最良の判断ではないかと、拙者は分析している」
「だが、しかし…………」
そこまで言い淀むと、乱歩の視線は自然と亜音に向けられた。
やはり乱歩が裸族になるのを躊躇っていた最大の原因は、せっかく再会した亜音を相手に己の醜態を晒したくなかったという点にあるようだ。
念の為に話しておくと、乱歩の考え方の方が正常である事を念押ししておく。
「私だったら……いいよ…………?」
「……っ!?!?」
「躊躇っている気持ちがあるのは分かるの。でも、友達のガレスちゃんやマカオさんとかも一緒に裸族になって、これからどうしようっていうのも事実で……っ」
「裸族になった皆を、陰から支えてくれる人が必要なのっ! 私達からすれば、これは乱歩君にしか出来ない事なのっ!」
「私の事を心配してくれているのは分かってるわ。……でも安心して? たとえどれだけ傷ついてボロボロになったって、体を張るために服を脱いだって……」
「……私は、どんな貴方でも大好きだから」
……その一言が、乱歩の心を突き動かした。
「…………だぁぁぁくそっ!! こうなったら自棄だ! あいつらを護る為にも、俺も恥を忍んで裸族の道を突き進んだらぁぁぁぁぁぁ!!!」 ←ボロボロの衣服を脱ぎ捨ててパンツ一丁で戦場復帰
【悲報3】やっぱり乱歩も裸族化しました
これでHALsideの裸族は一気に5人に増えたことになる。いや多いな!?
この一件を前に、例のけしかけた2人はというと……
(はわわ……/// やっぱり乱歩君の身体つき、本当にカッコいいよぉ……! こんな私を乱歩君に知られちゃったら幻滅されちゃうだろうけど、今だけは、本当に今だけは許して……!////)
「本当に済まない、乱歩……! だが、あの4人では拙者の忠告を受け入れてくれるとは思えぬのだ……! あの4人を護る為でもあるんだ、許してくれ……っ!!」
……まぁ50歩譲って井槌は許すとしよう。
けど亜音、お前は確実にアウトだよっ!!!
あれだけの真剣な告白、よりにもよって私欲の為だったとか乱歩の顔が浮かばれねぇぞ!? マジでモンスター組、大半がろくな奴じゃないのだが!?!?
……さて、話は再び戦場に帰ってくる。
現在邪儀達3名は、覚醒した裸族軍団を相手に……結局優位に立ち回っていた。
穿毅は手に持っているギターケースを振り回して応戦、風浪は毒霧を吹き出すスプレーと二丁拳銃で相手を周囲に近づけさせなかった。極めつけはやはり邪儀で、乱歩と同じく素手での殴り合いしかしてこないのだが、その速度や火力が段違いであり、一方的な攻撃を尚も仕掛け続けた。
「そろそろ相手の手数も増えてきたな~っ。おい邪儀、もういいだろ? 早くオレっちにライブ開かせろって!」
「そうよ。いい加減こんな下品な奴らの相手なんかしくないんだけど?」
「チッ、お前らな…… だが、裸族とやらに目醒めたコイツらの力量もよく分かった。長期的に見れば面白い事になりそうだが……今はもう十分か。やっていいぞ」
「っしゃあ!! そうこなくっちゃ!!」
邪儀からの許諾を得たことで目の色を輝かせた穿毅。すると彼、いよいよ手に持っていたギターケースを開けて、中にあった水色のイケイケなエレキギターを取り出した!
「さぁてお前ら、さんざん待たせちまって悪かったな! これからオレっちのスーパーカッコイイロックライブを開催するから、心して聴いてくれy「みーーんなーーー! おっまたせーーーーっ!!」……ん、なんだ? このアイドルっぽいキャピキャピした声は……」
さぁこれからが穿毅の真骨頂、ロックライブの開催……と思われたのだが、ここでまたしても何者かの介入によりオイシイところを持ってかれてしまった。運無いなこの眠狗竜。
……ところで読者諸君は、アイドルという言葉で誰かを思い出しはしないだろうか?
BGM: C l i m a x (USAO)
「いやぁー、地下水路からここまで走ってきたから大変だったよもう!」
「……阪奈っ! 来てくれたのか!」
「現場は御覧の有り様で…… 今この場にいる俺達以外のメンバーは全員モンスターです。俺達も行きますか?」
「うん、お願いっ! 最も、私が1人で終わらせちゃいそうな気もするけどっ!」
「うっ…… あれっ、アタシなんで倒れてたんだっけ……」
……そう。我らがハンター、阪奈が現場に着いたのである!
ようやく安堵できると、九瓏達も物陰から出てこれたようだ。
……あとツッコミ忘れたけど、阪奈の登場BGMが大ボス登場なのよ。カリスマ性はあるかもだけど、アイドルとは対極な気がするんだけどなぁ!?
「……あ"あ"ん? この期に及んで人間が相手だぁ? オイオイ、オレ達はこうもコケにされてんのかぁ?」
「ククッ、愚かな。裸族として覚醒した私達が、ましてや人間などの下等種族ごときに……」
「……いや、待て。俺はあの装備に見覚えがある気がするのだが……;」
「ウチもちょーっと悪寒がするかな☆ でもでも、それで引いてちゃ裸族の名が廃るっしょ……?」
「アパパ、マカ、イツデモイケル、アパッ!」
「今になって人間が……? でも、なんで……」
「こ……これは、まずい事になった! 拙者らも駆けつけた方が良いやもしれぬっ! クルルは拙者がおぶっていく!」
「ったく、何なんだよ! せっかくのオレっちの出番だと思ったのにさぁ!!」
「…………! あの装備…… そうか、貴様が俺の待ち望んだ『強者』だったか……!」
「……何、アイツ。また場が白けたんだけど……って、邪儀? 待って、アナタ何処に行くのっ!?」
唐突な人間の参戦に、モンスター組も各々の反応を見せる。その中でただ一人、最も強さを見せていた邪儀がいきなり阪奈に向かって突っ込んできた!!
「うーん。さっきの戦いっぷりを見るに、今来てる相手さえ倒せば、大半は言うこと聞いてくれるかな?」
冷静に戦況を分析した後、阪奈は手に持っていた紅く淀んだ羽根が装飾されたハンマー『蛮炎槌ロギンツフィリ改』を握り締めた後……
空中に向かい、高くジャンプした。その高さ、『推定5m』。
邪儀は、向こうが初手から大技を繰り出してくると瞬時に読んだ。だが、自身のこの先を思案した場合、この一手を受け止めれないようでは、自身の未来は無いものだと考えた。
……故に、邪儀はこの一手を【受け止める】事にした。
さぁ、後は至ってシンプルな構図だ。阪奈は空高くから渾身の一撃をぶつけ、邪儀はその一撃を受け止める。
後に、阪奈はこの必殺技をこう呼んだ…………
イ ン パ ク ト ク レ ー タ ー !
\ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!/
……この一振の結果を話そう。
結果として、邪儀はこの渾身の一撃を……見事に【受け止めた】。
……その身が、完全に地中に埋まってしまう事と引き換えに。
故に、これ以上、彼から何かしらのアクションを起こすのは不可能な事であった。
つまり、実質的には『阪奈の勝利』が確定した瞬間でもある。
…………この光景を前に、もはや誰も言葉を残さなかった。
井槌達モンスター一行は阪奈の要求を飲み、九瓏達C-Refの同志もまた、阪奈には逆らわない方がいいという共通認識を得たのであった。
……まぁ、それでも納得しなかった一部の馬鹿はいたようだが……その後の彼らがどうなったかは、想像に難くないだろう。
──いずれにせよ、首領首領大乱闘は、1人の【G級】ハンターの手によって、思ったよりもあっけなく終焉を迎えたのであった。
- 首領首領大乱闘(後編) ( No.33 )
- 日時: 2023/09/17 22:27
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「と、いうわけでっ! これから皆には尋問を受けてもらいますっ!」
いよいよお話は最終版。
一連の騒動を鎮圧する事に成功した阪奈達は、当初の目論見通り、邪儀達12名の擬人化モンスターをC-Refに招待する事に成功した。
現在は会議室で事情聴取の真っ最中である。
「……良いだろう。敗者は勝者の要求に応じる。この中の12人を代表して、俺が質問に答えよう」
「おい待てや! 何時からテメェがオレ達のリーダーになったんだよ!」
「ククッ、私としても納得出来ませんねぇ……」
「今更争ってる場合か! そもそも、お前らじゃまともに質問に答えようとすらしないだろ!」
……相変わらず、すーぐに物事に突っかかってくる飯男とゲネオを相手に乱歩が制止を促す。本当に乱歩はよく頑張ってるよ……
「じゃあ聞くね? 分からない事は素直に分からないでいいから。まずは……『なんで擬人化してるの』?」
「人に変化したメカニズムなどは、正直言うと俺達も分からない。……だが、人に変化するまでの過程は全員が共通していた」
「貴様も知るように、現在人間達の身勝手な思想により、俺達モンスターは殲滅の一途を辿っている。それらを実際に可能にしてきたのは、一流のハンター共から招集された『特別精鋭部隊』が結成されたからに他ならない。現に俺達も、彼らの襲撃を受けて、事実敗れた。……だが、今もこうして、俺達は生きている。それは何故か?」
「……俺はこう考えている。あの特別精鋭部隊の中に俺達モンスターの全滅を快く思わない【異端分子】が居たのではないかと」
「実際、殲滅という名からも分かるように、他の個体は全員、討伐という名の皆殺しに遭った。……だが、俺達のような人の姿で生き長らえた者達は、敗北後の処理が何故か【捕獲】だった。それも、1vs1になるようにわざわざ誘導された上でだ。……計算づくである事は間違いないだろう」
「恐らく、お前達で言うところの『捕獲用麻酔玉』に何らかの細工が仕掛けられたのだろう。故に、次に気がついて目が覚めた時点で、俺達は人間の姿に変わり果て、この人間主義の世界でも生きる事が出来た」
邪儀からの証言は、とてもではないが現実みを帯びた話ではなかった。
もし阪奈がC-Refに遭遇していなかったら、きっとこの話を信じる事はなかっただろう。……だが、今は話が違う。
「……なるほどね。凄く参考になるよ。モンスター側の視点からのお話なんて滅多に聞けるものでもないからね」
「では、不躾ながら、拙者からも質問させてはくれまいか?」
「ええっと、井槌さん、でしたよね? 何か気になることでも?」
たった1つの質問だけでも、阪奈には十分すぎる量の大きな情報がもたらされた。それらの情報を精査している間、今度は井槌からの質問に迅達が答えるようだ。
「御協力、感謝する。御主らは拙者達をこのせんとられるれふという異空間に呼び出した訳だが……この理由を窺っても?」
「単純ですよ。貴方達が絶滅の危機に瀕していると聞きましてね、貴方達の保護、匿う事を目的に招待した。それだけの事です」
「実際、お前達はC-Refという名を聞いた事はない筈だ。もし俺達が帝国軍の人間だというなら、あの場で殺していたかさっさと帝国軍に引き渡す筈だからな」
その後も、お互いに知っている情報を交換し合う事で、どうにかお互いの信頼を得られたようだ。
「……成程。よく分かった。俺は一族の復讐を果たす為にも、帝国軍の者を許さない。故に、貴様らの作戦に協力しよう。手ほどきもしてやらん事もない」
「邪儀がそういうなら、アタシも手を貸してあげる。特に……雷那、だったかしら? アナタ、銃の才能がありそうね…… 今度ご一緒願えないかしら?」
「オレっちも、邪儀が信頼するなら信じるぜ! 特に迅! お前の音楽センス、結構気に入ってんだ! 今度一緒にカラオケでも行かねぇか!?」
「ケッ、まぁいい。無駄に揉めずに衣食住が手に入ったんだ。今ん所はソレで許してやる」
「ククッ、私も同感ですねぇ。気に入らない点があれば、逐一指摘させてもらいますよ……」
「お前らなぁ……; まぁ、問題が出来る限り起こらないよう俺も見張っておくが……改めて宜しく願う」
「わ、私からも宜しくお願いしますっ!(こ、これで皆と一緒だし、乱歩君とひとつ屋根の下で生活が……はわわっ……!////)」
「まーやっぱり平和が一番だし? ウチからも宜しく頼むよっ! 友情は永遠、ってコトで!」
「またたまごたべれるの? ならぼくもよろしくー」
「アパッ、マカカラモ、ヨロシクッ!」
「ヴァーッファッファッ! ワシからも宜しく願うぞ! 力稽古ならば自信があるからな!」
「うむ。拙者も力になれる事があれば、幾らでも手を貸そうぞ」
こうして、総勢35名のC-Refメンバーに、新たに12名の擬人化モンスターが参戦。
各々の物語が、本格的に動き出す事となった。
──────────────────────
はい。ここまでが阪奈の物語のプロローグになります。
実は前回のあとがきで訂正したい箇所が。
『オンゲキ』というジャンルは本作が初登場ではない事が判明しました。(衝撃の事実)
あとでその作者のもとに行ってみようかな……と考えています。逃走中に参加するのもアリだろうし……
……本題に戻りましょうか。
これで阪奈のセカイのモンスターハンターの擬人化モンスター達、九瓏のセカイの千将高校野球部員、迅のセカイのイロドリミドリ&HaNaMiNa、雷那のセカイのオンゲキシューターズが揃い踏みとなり、本格的にHALの小説の舞台が完成しました。
ここからの展望なのですが、Xで前に一度挙げたように、5種類の案が現在模索されています。逃げ道を無くす為にも、読者の皆様にも提示しておきますね。
1. 阪奈のモンハンルート
2. 九瓏のパワプロルート
3. 逃走中企画
4. 人狼企画
5. 裸族講座
……なんか1つ、変なのが混じってますね()
取り敢えず、1と2についてはメインストーリーとなるので、遅かれ早かれ着手することになります。気長にお待ちください。
3は、Xで関わってる皆さんであればよく知ってるかもしれないので、十中八九逃げられません。いずれ開催の準備はさせてもらいます。ただ、やるとしたら外伝、別作品にはなりそう。
4は、純粋な好奇心です。短編枠で出来たらなぁと思っています。
で、問題の5なんですが…… 多分ほぼ確実にやります。(爆弾発言) というのも、今回初登場になった裸族は、言ってしまえば超ひよっ子。裸族の神様とか裸族ソングとか何一つ知らないのです。そんな彼らに裸族の真髄をレクチャーするには、やはりこの企画しかないでしょう。という事で、時期が来たらコラボ要請が来ると思います。その際は、是非とも宜しくお願い致します。
……あっ、そういえばC-Refに裸族が来た事、報告してないや。皆どんな反応するんだろうな……()
では、私はこれからDQM3の体験版、そしてポケモンSVのDLCの為に本編を今度こそ完遂させようと思います。マリオの新作やDQM3の本編が控えてるので、マジで忙しくなることでしょう()
それでは今回はこの辺で! 感想をどうぞ!!