二次創作小説(新・総合)

舞ヶ原と奏坂と「自分達」の将来想起 ( No.47 )
日時: 2024/02/11 16:58
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

C-Ref。管理人HALが創造した物語の舞台となる、何処にも属さないご都合主義なセカイ。
ここに普段からいるのは管理人のHALと、保護対象である擬人化したモンスター達である。……まぁ、何体かが裸族に目覚めちゃったせいで、普段はその姿を見ることがないように住み分けられているようだが。



ある日のこと、時刻は夜の10時になろうという時に、ある人がこの世界にやってきた。


「……ふぅ。流石に、こんな時間になると誰も居ないわね。……まっ、居た方が問題なんだけども」

女はロビーにあったソファーにもたれかかり、宙を見上げる。ここの所ずっと、こんな夜更けにここに来ている気がするが、まぁせいぜいモンスターか管理人しか入ってくる事もないと思えば、まだ気は楽に持てた。

風呂上がりだからなのか、いつものツインテールも解いている、金と黒の二色の髪が特徴的なこの女──夕立雷那。

雷那「ハァ…… 相対的にここにいた方がまだ気は楽になるわね。……ほんと、なんでこんな事になっちゃったかね。……やっぱり、アタシが
ひねくれてるk……」







迅「Dope! Sick! Awesome! crazy!
  SUPER HYPER ULTRA POWER!!」

雷那「アラァーーーーーッ!?!?」\バタンッ!/



……一体何が起こったのかをお話しますと。
時同じくして、紅髪の新入りDJがC-Refにやって来たわけです。それだけだったらまだ良かったのだが、何故か彼は大声で何処ぞの大手ヒューマンビートボックスの楽曲を歌いながらやって来たってんですから、そりゃあ雷那もぶっ倒れますわな。つかなんで迅はS○RUK○NI知ってんだよ。


迅「……? あれ、雷那じゃないですか。どしたんです、そんなド○ルドみたいな倒れ方して」
雷那「アンタこそなんでこんなとこ居んのよ! もう夜10時過ぎてんのよ!?」
迅「あぁ、それなんですけどね。休日もここに来たいからって理由で、自宅の押し入れとも繋げてもらったんですよ」
雷那「だからって、なんでこんな時間に……」
迅「……………………暇つぶし?」


もうコイツ相手には問い詰めるだけ無駄だ。そう諦めた雷那は、渋々と倒れたソファーを戻し、反対側に迅を座らせた。


迅「……さて。話を戻しましょうか。私が居るのが変な話だと言うのなら、雷那も今ここに居ることは十分おかしな話だとは思うのですが……」
雷那「うぐっ。わ、分かってたわよ、そんな事……」


少しの間、二人の会話が途切れる。大方、両者とも何かむしゃくしゃしてる節があってここに来たのだろうが、それをすぐに相談出来るほど二人はまだ素直ではなかった。
だが、沈黙を嫌う人はやっぱりいるわけで……


迅「……ハァ。これじゃ埒が明きません。雷那、悪いんですが、ちょっとばかし話に付き合って貰えませんか?」
雷那「はぁ? ……まぁ、別に。好きにすれば?」


迅からの相談事に、雷那はそっけない返答をする。別に断られた訳でもないので、迅はそのまま話を続ける。……その表情は、いつもよりも陰りが混じっていた。



迅「俺が誘ったメンバーがイロドリミドリ、HaNaMiNaってバンドをやってるのは、流石にもう把握してたよな?」
雷那「まぁね。みんなもだいぶ世話になってるぽいし」

迅「実は今のうちの学校だと、イカした音楽を生み出す連中がもう1グループありまして。『舞ヶ原シンセ研究会』略称:シンセ研。S.S.L.と呼ぶ人もいるとか」
雷那「……? 待って。シンセ、って事は……」
迅「えぇ。俺の専攻音楽ジャンルとダダ被りです。だから俺は当初から人気無かったんですよ」


やはり学生が音楽に手を出すとすればバンドや吹奏楽によっていく印象が強いが、電子音楽も負けてはいない。迅も生粋の音ゲーマーであるが故、DTM(デスクトップミュージック)作曲の道にも興味を示して舞ヶ原高校に入学した訳だが。トップの壁の厚さに、早くも熱意は消えてしまっていた。


迅「それからというもの、俺は向こう側にも負けないオリジナリティを見出す為に作曲をしてきた訳なんだが……結果は雷那も知ってるだろ? ようやく満足出来る作品が出来たとはいえ、それはあの管理人や雷那の助力もあって完成したもの。……まだまだ【自分の武器】とまでは明言できないな」

雷那「けど、それだけだったら悩む理由にはならないんじゃ……」
迅「勿論今までのも悩みなんだけど、それ以上に厄介な事になってな……」

迅「実はそのシンセ研、【舞高の生徒会メンバーで構成】されててな。その生徒会が『ある計画』を実施する為に、軽音部……いや、今は同好会だったか。ようは俺達に相談しに来たんだよ」
雷那「あれ、アンタ軽音部には入ってなかったんじゃ……」
迅「いや、それがさ。C-Refへの扉を軽音同好会部室の隣の部屋に作っちまったもんだから、必然的に同じ行動になる事が増えちまって。実質同好会側の人間って事で話を進められちまったんだよorz」
雷那「あぁ……それは……ご愁傷様……;」

迅「で、その計画なんだけど…… 『体育館ジャック』って呼ばれてて。体育館を占拠して開催する音楽フェスがあったんですって」
雷那「……? あった、って……」
迅「えぇ、過去形で合ってます。なんせそのイベント、以前参加してたグループが問題起こしてから廃止になったんで。……要は【生徒主催の音楽フェスを復活させたい】って話なんすわ」



──体育館ジャックの復活。

定例会などとはまたジャンルが異なる、文化祭に匹敵するレベルの一大イベントを開催、復活させたいのだという。なるほど、たしかに生徒会レベルでなければ提唱できない話だろう。
だが、ただ開催させるだけなら、何の相談もいらない筈だ。これの何処が問題なのかというと…………


迅「……萩原七々瀬さんのことは、ご存知だよな?」
雷那「あれでしょ。1年留年してたっていう、HaNaMiNaのツインギターの……」
迅「ええ。……実は彼女、その問題になった体育館ジャックを開催してた時の「当時の軽音部部長」でして」
雷那「!?」
迅「今の軽音部が同好会という形なのも、当時の軽音部が一件で空中離散して廃部になったから。……またこうして参加してもらってるのが申し訳ないくらいです」
雷那「じゃあ、その問題点って……」
迅「ええ。七々瀬さんは「体育館ジャックには参加しない」意向を示してます」


せっかくの音楽フェスだというのに、メンバーが欠けた状態では楽しめるものも楽しめない。七々瀬側も七々瀬側で思い出をトラウマに塗り潰された側面はどうしても癒えなかった。




裏主役達の悩み。感想はまだ。

舞ヶ原と奏坂と「自分達」の将来想起 ( No.48 )
日時: 2024/02/11 17:01
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

雷那「……つまり。七々瀬さんを説得するか、体育館ジャックとは異なる形でイベントを為したいと?」
迅「ええ。……最も、俺は生徒会じゃないんで、本格的な実施の為の手伝いとかは出来ないでしょうが」
雷那「現状の解決策は?」
迅「芹菜先輩が良い事思いついたって言って、色々と計画を練ってるぽいんですよね。「私達が舞高に遺したいものが出来た」なんて言ってました」
雷那「学校に遺していくもの、ね…………」


聞いた話に拠れば、シンセ研の発足も体育館ジャック復活の要望も、現生徒会長の芒崎のげざき かなでさんたっての願いだという。生徒会として未来の舞ヶ原高校に何かを遺したいという思いが人一倍強くなければ、ここまでの行動にはならないだろう。その思いをよく理解したから、芹菜も今、精一杯頑張って案を考えているのかもしれない。


雷那「……? でも、その解決案を芹菜先輩が練ってるってんなら、アンタが悩む必要はやっぱり無いんじゃ……」
迅「ここで最初の悩みと繋がってくるんですよ」



迅「要は『俺もこの一大イベントに参加して盛り上げろ』って話が来たんです。あの三大グループに混じってですよ? 役不足にも程があるじゃないですか……」


緋桐迅らしい魂を揺さぶられる音楽、というものは未だに未完成だ。まして他のグループは複数人、かつ各々の心意気を歌や音に乗せて届けているからか、熱意などの全てにおいて圧倒的な【差】があった。
…………到底、1人だけでは覆せないほど。


雷那「……なるほど。だから、アンタにしては珍しく、焦りがあったわけね」



そこまでを口にして、雷那は口を閉ざす。


しばし、考えを巡らせる。

迅の音楽性。アタシに出来る事。今の奏坂学園。アタシの限界。アタシがやりたい事。アタシの将来……


……どれほど考えたのだろう。


雷那「……ねぇ、迅。もしアンタが良ければ、さ。……アタシの話も聞いてくれない?」
迅「……! …………えぇ、良いですよ」


もはや、考えるだけでは答えは出てこなかった。思考の1つ1つを形に変えるため、雷那は思い切って迅に相談することにした。



雷那「アンタも気にしてたよね、なんでアタシがこんな時間にここに居るのか。……数日前からずっとこんな調子なのよ。奏坂のメンバーもそう。前の告白選手権から、アタシ以外は誰もここに来てないでしょ?」
迅「えっ。……まぁ、言われてみれば確かに。何かあったんです?」

雷那「えぇ。実は…………」



────────────────


あの翌日。奏坂学園では月一で開催される生徒総会が開かれていた。あの破天荒な生徒会長や、着ぐるみをまとっている次期学園長を考慮すれば、月一で開かれていたとしても、まぁうん、仕方ないかもしれない。

しかし、その日の生徒総会はあまりにも雰囲気が異なっていた。



あかり「な、なんだろう…… すごく、いやな感じがする……」
柚子「へくちっ! ぶるぶる…… 空気がきんきんひえひえシャーベットだよ~;」
葵「もう柚子、総会中なんだからジッとしててよ; 私だって我慢してるんだから……」


ホール全体か冷たく重い雰囲気に飲み込まれており、あまりにも異質な様に生徒達の間には緊張が走っていた。

そんな中、例のごとく青いアライグマの着ぐるみを着て登壇した珠洲島有栖だったが、その日はいつもと異なり、反対側からもある生徒が登壇していた。
銀の長髪をストレートに降ろし、緋色の鋭い眼光は直視した者を震え上がらせるほどの威圧感を放っていた。


春菜「……ねぇ、あーやちゃん。あの子って誰かに似てない?」
彩華「あっ、アタシも今そう思ってたとこ。うーん、でも誰だろう、思い出せない……」


???「相変わらずだな、有栖。まだそんなものがないと話もできないのか」
有栖「っ………………」

???「【姉】の前で無礼だぞ。素顔を見せろ」
有栖「…………セツナ姉様………………」



突如現れた姉という単語。図らずも生徒会室に入り浸る事が多かった雷那でさえ、珠洲島有栖に姉がいるという話は聞いたことがなかった。


楓「皇城すめらぎセツナ様…… 苗字は違えど、確かに有栖様の姉です」
茜「まぁ皆が知らんのも無理はない。ヤツは海外に留学していたからな」


セツナ「はぁ…… 全くもって嘆かわしい。聞いてはいたが、ここまで酷いとはな。私は、堕落した奏坂を立て直しに来たのだ。この奏坂を統べる学園長としてな」


……なるほど。確かに有栖の姉だというのであれば、次期学園長としての素養は十分にあると言えるだろう。

だが、セツナが提案してきた奏坂学園の改正案はSNSの使用禁止、過度な生活習慣の改善、徹底的な育成カリキュラムなど。それまでかなり多様で緩く、おまけにカオスまで許容されてきた有栖主導の育成方針とは真逆のものだった。

当然ながら、生徒達だけでなく主導者である有栖自身も改革案に反対の意思があったが、帝王学でも極めたかのようなセツナの言動に、誰も強く物言いは出来なかった。


セツナ「フン、お前は昔からそうだ。まともに姉に意見もできない、ダメな妹よ」


「ふざけるなっ! 黙って聞いてれば好き勝手言いおって!」



────一喝。

声が上がったのは有栖側の壇のすぐ傍。
そこには、馬鹿げた政策しか提案しない普段の茜ではなく、奏坂学園生徒会長としての威厳を誇示した逢坂茜が立っていた。


茜「有栖はなっ、貴様がいない間もずっと一生懸命に学園を守ってきたんだぞ! そんな有栖を差し置いて学園長など、生徒会会長、逢坂茜様が断じて認めん!!」

セツナ「ほう、生徒会ごときに何ができると?」

楓「ふふ、皇城様。甘く見すぎましたね。……我々がなんの手立てもなく待っているとでも?」

セツナ「…………なに?」



生徒会一同は壇上に上がり、有栖を庇うかのように前に立つ。張り詰めた空気の中、生徒会は皇城セツナに対する秘策の条例を発動する!





楓「当学園において学生間で意見が相反した場合、生徒会長はその正否を全生徒に問うことが可能。我ら生徒会は、生徒会規則特別条例に則り、ここに生徒会長権限を発動します!」

茜「なーーっはっはっはっ!! よく言ったぞ楓! 我が号令により、誰が学園長に相応しいか。全校投票で決めてやろうではないか! おい、貴様ら! 逢坂茜様に賛同するものは起立しろっ!!」


雷那「ん。別にセツナさんがやりたい政策にとやかく言う気はないけどさ、有栖さんが会長達と手を組んでやって来たことを否定されんのは、アタシとしちゃいただけないね」



秘策条例の内容は、上層部で意見が割れた際は全校生徒による投票で総意を反映させるというもの。破天荒な行動が目立つとはいえ、逢坂茜が率いる生徒会が誇るカリスマは尋常ではなく、全校生徒は次々と起立、生徒会側に与した。


楓「……起立多数。全会一致とみなし、本案を可決します」
茜「ならば良し! これより、学園長総選挙だっ!!」
セツナ「フン…… 小賢しい真似を」



舞高も奏坂学園も、過渡期真っ只中

舞ヶ原と奏坂と「自分達」の将来想起 ( No.49 )
日時: 2024/02/11 17:04
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

迅「……なるほど。つまり、その皇城セツナっていう有栖の姉が、次期学園長に名乗りを上げて衝突した訳だ。……その後、今のところはどうなってるんだ?」


現在の奏坂学園が、舞ヶ原高校なんかより断然ヤバい状況だというのを理解した迅は、恐る恐る次の質問をした。未だに一同がこの場に戻ってきていない、という事実を考慮するのであれば、認めたくはなかったのだが…………




雷那「………………【負けた】よ。奏坂学園でもトップクラスの実力を誇る生徒会が。3人がかりでも。……皇城セツナ1人相手に手も足も出なかった」


苦虫を噛み潰したような顔で雷那は語る。その表情から、普段雷那がどれほど生徒会に信頼をよせていたのかが窺えた。


雷那「……あの後、生徒会室で皆で作戦会議をしたんだ。皇城セツナが持つ【負のオンゲキ】にどうやって対抗するのか、ってね」


負のオンゲキ。

楓からの説明によれば、恨みや妬み、怒りといった人間の負の側面を力に変えたオンゲキの事を指すという。それまで、ASTERISMを初めとした多くのメンバーが積み重ねてきた【楽しさが力に変わるオンゲキ】とは正しく正反対の力だった。



雷那「……で、その話の中で、C-Refへの扉は一時的にアタシに保持してほしいって話になって。皆が今来れてないのはそれが理由。この騒動が終わるまでは、とても…………」


荒れに荒れてしまった奏坂学園の現状を知り、迅も思わず口を閉ざしてしまう。しかし、これ程の重い話を、何故今まで打ち明けてこなかったのだろうか?





迅「……まさかとは思いますが。……雷那。今貴女が思い悩んでいるのは、なにも「奏坂学園の未来について」ではないですよね?」
雷那「!」


迅からの唐突な鋭い指摘に、思わず雷那は目を見開く。たしかに話の内容的に考えても、音楽フェスの開催や迅の音楽性にまつわる悩みに関連するかのように奏坂学園の未来の悩みが来るのは、さすがに話の飛躍が過ぎるというものだった。


雷那「……やっぱり、アンタにはお見通しだったわね」


やれやれと言わんばかりの表情で、改めて迅に向き直す。ここからが、雷那の悩みの本質だった。





雷那「他のオンゲキメンバーを見たことで、迅もアタシの異質さには気づいてるんじゃない?」

迅「……まさか。単独でのオンゲキになにか?」

雷那「そっ。アタシ自身は多分オンゲキの才能はあるもんだと。そうだとばかり思ってたの。けど、アタシの周囲の生徒達はオンゲキに興味無い人がほとんどで…… ずっと1人で戦ってた」

雷那「アンタと同じで、1人で出来る事には限りがあった。夏のシューターフェスでも、どうやったってASTERISMには勝てなかったし、「それがアタシの限界なんだ」って。そう思い込んで諦めようとしてたの」


雷那「……けど、【それすら否定された】。アタシが尊敬する3人を、あの女は1人で屠っていった……! アタシがただ、弱かっただけなんだ…………」



雷那の目には、いつしか涙が滲んでいた。それは、今まで抑え込んでいた不安や後悔を、ようやく吐露できた証でもあった。


雷那「……アタシね。ただオンゲキがやりたかったから奏坂に入学したんだ。あかり達みたいに『プリメラになりたい』だとか、奏坂学園をどうしたいなんて大きな夢も持たないで。……だから今、悩んでたんだ。アタシは将来、どうしたいんだって」

雷那「……実を言えば。プリメラになる気もなければ、オンゲキに携わりたいなんて思いもないの。ただ、強いて言うなら…………【自分の存在証明がしたい】」



雷那「……迅。アンタ、前に言ってたよね。アタシと一緒に作った音楽なら、何にも負けない凄いものになるって。……アタシも一緒。アンタと一緒なら、世界すら震わせられる音楽を作れるって信じてやまない。それでアタシの存在を証明して、アンタの存在も証明することが出来るってんなら…………それほど素敵なことはない、って思わない?」




……悔し涙は、未だ目尻に残ったままだった。

けれど、それでもその先を見出そうと思える希望がまだ確かにあったからこそ、雷那はそのまま顔を上げる事が出来た。


迅「…………良いんですか、そんな事言っちゃって。それはつまり【先の音楽人生の半分を俺にくれる】って事ですよ?」
雷那「構わないわよ。どうせあの黒歴史も流出済みだし、アンタとならその……大丈夫。勿論、【アンタの音楽人生の半分もアタシにくれる】わよね?」

迅「…………えぇ。それだけの覚悟でいるなら、俺も取引に応じましょう。……ですが、本当にそれだけで済みますかね?」
雷那「…………どういう意味よ」

迅「そのままの意味ですよ。必要以上に貴女を求めることにならないか。俺はそれが怖くて仕方ない」
雷那「あぁ、そういう…… ……んじゃ、早いとこ『ケリ』付けちゃいますか」


そこまで言うと、雷那はようやく涙を拭い、改めてまたしても驚きで目を丸くしている迅を真正面から見つめた。……心做しか、耳元が赤くなっていた。


迅「……フハッ、ここまで勢いで来るとは思ってませんでした。正気です?」
雷那「正気じゃなかったら取り消すわよ?」
迅「そいつは嫌ですね。…………あっ、やべっ」
雷那「ハハッ。もうお互い、取り繕うことも出来そうにないわね」



そこまで言うと、お互い黙りこくる。本当は幾らでも言葉が紡げるのだが、そうしてしまうと『今くらいしか言えそうにない言葉』を言う機会を失ってしまう気がしたから。
























迅「じゃ、改めて契約更新で。……これからは公私問わない形で、俺と付き合ってください」

雷那「…………はい。こちらこそ」





──結局のところ。

2人が抱えてる悩みそのものが解決したわけではないし、事態が直ぐに好転するわけでもない。

……それでも、1人で人生を戦っていくのではなく、誰か信頼できるパートナーが側に居てくれた方が、心はずっと強くなれる。




────────────────


今回は短編だったこともあり、直ぐに更新が出来ました。まぁ、それでも2週間は掛かったのですが;

※ 実は小説自体は1週間ちょいで終わったのですが、更新を伝えるX上での都合で、更新日を今日にズラしただけだったりします。理由は……アレです。Xで俺が開催したあの謎企画です。


さて、次回からいよいよ大型企画……と言いたかったのですが、その為の最終調整をする必要がありました。

なので、今回は珍しく軽い次回予告をして終わろうかと思います。




……嘘です。予告終了後に、前回約束したようにメインオリキャラ4人の(ちょっと詳細な)自己紹介を添付します。今後の支えになってくれれば嬉しいです。

それでは、次回予告をどうぞ。














「ア"ァン!? 何なんだよテメェらは!?」
「アパ…… カガヤキ、スゴイ……!」
「……ククッ。認めたくはありませんが、あまりにも美麗すぎるその裸体……!」
「マジ神がかってね? 何者なの、アンタ達……!?」
「貴方達は………………まさか!?」



「そう、如何にもだよ。僕の名前は○○ ○○○、君達のいう正真正銘の裸族さっ!」
「そして私が○○ ○○。対外的には、裸族を律する者としての立場があるわ」


「今回はあのアホ作者に依頼されてね。裸族の真髄も知らずに暴れてるだけのあんた達に灸を据えに来たってわけ」
「勿論、それだけが目的ではないよ。君達には『全うな裸族』になってもらう為に、僕達が直々に裸族文化をレクチャーさせてもらうよ。お手伝いさんにも来てもらう約束だからね」




────次回。【裸族講座】編。