二次創作小説(新・総合)
- chapter0 プロローグ ( No.2 )
- 日時: 2022/07/12 14:09
- 名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)
「ねえ。大丈夫かい?」
声が聞こえる。
「生きてはいる…よね。呼吸はしている。
おーい。起きてくれ。」
その声に応えるように俺は起き上がる。
「あ、起きたかい?」
「…あぁ。」
心配そうに見ているその男は少し長い髪を一本に結った優しそうな青年だった。
他に言うとすれば…王冠のピアスが特徴的だった。
「君、ずっと倒れていたんだよ。
どこか悪いところないかい?」
「俺は…ないが…。」
「ならよかったよ!」
と、笑顔でそう言う。
「そう言えばここは…」
と言い周りを見渡す。
下は白いレンガ。越えられないほど高い柵がある。
それはいい。それよりも目立つものがある。
見上げんばかりの城。高くて近いまま見上げると首が付かれそうなほど高い。
そんな城を唖然と見上げていると傍にいる彼は言った。
「あ、もしかしてあの城が気になるのかい?
まぁ、そうだよね。
実はあそこにみんないるんだ。」
「みんな…?」
「クラスメイトになる人たち。だよ。
“超高校級”のすごい人たちなんだ。というと…君もそうだよね?君は?」
「名前…は望月巡…。
超高校級…の…」
と頭をフル回転させてしまった。
そういえば。そういえば…。
「…なんだっけ…。」
よくわからない。なんだっけ。どんなものだっけ。
「わからないのかい?」
「ああ…。何も出てこねぇ…。
以前何してたとかそういうものだけじゃねぇんだ。
…名前しか覚えてねぇ。」
そう口にした。
「そう、か…。
じゃあこれ以上は何も聞かないでおくよ。
そうだ。さっき皆と会話してきたし、よければ皆の才能、紹介してあげるよ。」
「…ありがとう。」
「そういえば私の自己紹介をしてなかったよね。
私は『神流 環』。好きに呼んでおくれよ。
ここには超高校級のチェスプレイヤーとして呼ばれたんだ。」
「よろしくな。
チェスプレイヤーというと…。」
「あぁ。一応無敗を掲げているし、グランドマスターの称号をもらっているよ。
よろしくね。」
グランドマスターって言うのは…一応いうならチェス業界の最高ランクの称号だ。
日本では誰も取ったことのない最上位の称号。恐らく彼はその称号の初所有者かつ、選ばれているともなれば…。
多分最年少で有しているんじゃないか?
「ああ。」
まあ、そう推測するだけで言葉には出さず、ただ彼から差し伸ばされた手を取り握手を交わした。
「そうだ。城の中に皆がいるっていっただろう?
だから、行こうか。ね?」
と、そのまま俺の手を引いて城へ行く。
引かれるままにその城に入れば…
俺たちを含めた16人の高校生がそこにいた。
- chapter0 プロローグ ( No.3 )
- 日時: 2022/07/24 17:17
- 名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)
14人の生徒たちと思わしき人間達は俺たち…主に俺を見る。
「あれ、まだいたのね。」
「なんで首輪つけてるんだ?」
「いいんじゃないかなぁ?ファッションだと思うんだぁ。」
「だとしたら痛いわ。」
と次々に俺への疑問を口にする。
首輪に関しては俺もよくわかんないんだ。取れないし。とりあえずそれに関しては黙っててくれ。
と心の中でそう思ってると着物を着て雨合羽を羽織っている美人の女の子がこちらに歩み寄ってきた。
「じゃあ、自己紹介しないとね。
ボクは雲崎 千雪。よろしくね。
キミは?」
「望月…巡…。」
「望月クンだね。よろしく!」
「雲崎さんは『超高校級の薙刀術者』。
世界大会で優勝した程の腕前を持つんだよ。」
「薙刀のか…。そりゃすげぇな。」
「お褒めにあずかり光栄だよ。」
と彼女は照れて笑っている。
儚い笑みだ。なんか…すぐに消えそうだ…。
ほら他の子にも挨拶して!と押され、他の子たちに挨拶をすることにした。
そこにいたのはボロボロの少年だった。
「初めまして。僕は星宮 知瑠だよ。
カウンセラーをしてるんだ。よろしくね。」
「初めまして。」
「名前は聞いたから大丈夫。望月さん、よろしくね。」
「星宮くんはカウンセラーって言ってたよね。その通り『超高校級のカウンセラー』だよ。
どんな症状でも彼にかかれば忽ちすぐに立ち直ると言われるほどの心理医療のスペシャリストだ。」
「いや、僕はただきっかけをあげただけでみんなの力で立ち直っただけだよ。大げさだなぁ。」
「というかお前さんボロボロだけど大丈夫か。」
「これ?痛くないし大丈夫だよ。
それに大丈夫かって問うより困ってる?って聞いた方が実は助けになりやすいんだ。」
「へえ。
…困ってるか?」
「全然!」
いや、掴みづらいなこいつ…。
と、思いながら彼を見ると
「掴みづらくてごめんね?
ほら、別のこの子のところにいくといいよ。」
と、見送ってくれた。
心の中を読んでくる…少々厄介な相手だ。
次に相手したのは白髪のポニーテールの青年だった。
「お前さんは…」
「…益満 哪吒。しがない武闘家だ。」
「益満君は『超高校級の武闘家』だよ。あの大神さくらとのタイマン張れるほどの力があるって言われてるんだ。
と言っても、知識として覚えているのかな?」
「いや、さっぱり知らん。」
「…望月だったか?大神、知らないのか?」
「知らん。」
「記憶がないらしいんだ。」
「ふぅん…。」
と、益満は興味がなさそうにロリポップを口に含んだ。
あまり人間に干渉しないタイプなんだなと、その瞬間思った。
関わりづらいせいなのか、神流が困った顔をしている。
「じゃあ俺、別の奴に挨拶してくるから…。」
「あぁ。」
最後までいけ好かない奴だ。
次に顔を合わせたのはオレンジ髪で前髪がぱっつんの明るそうな男だった。
「俺は『超高校級の監査委員』! 美空 世界!よろしくな!」
「彼は言った通り、監査委員…監査委員ってなにするんだい?」
「なんか違法してないか見る…風紀委員みたいなもんだけど…、まあ細かいことは気にすんなよ!」
「よく見る能力に長けているんだろ?」
「そりゃそういうの見つけなきゃいけないからな。」
「つまりそういうことだろ。」
「なるほど!」
明るそうじゃなくて明るい青年だ。社交性もあると思われる。
「んでさ。望月に聞きたいんだけどよ。」
「なんだよ。」
「ここの女子…レベルたけぇよな…。」
「…。」
まだ女子の顔合わせ1人しか終わってないのに何言ってるんだこいつは。
けれどもこれを口にはしない。
「まだよくわからん。」
とだけ言っておく。事実だし。
「まあ確かに自己紹介中だもんな。
好みの子見つけたら教えてくれよ!」
とだけ言って送り出してくれた。
…男子高校生らしい奴だ。
次に顔合わせしたのは黒いワンピースを着た少女だった。
「な、なによぅ…。」
「いや、自己紹介しようと思って。」
そう言えば彼女はゴニョゴニョとなにか言ったと思えばちゃんと口を開いた。
「水鳥…、咲季よ。」
「彼女は『超高校級のバレリーナ』。演技力の高さに老若男女問わずに人気でファンがたくさんなんだ。」
「へぇ…。」
そんな最先端な人間がいると思い、解説してくれた神流から目をそらし改めて水鳥を見る。
「なにか用…? あんまり見たところで私からは何から生まれないわよ…。」
とガルガルと威嚇するようにこちらを睨んでくる。
…人間不信なのか?
「それに…こ、こんなに卑屈な人間私ぐらいしかいないわよ…。ほっといてよぅ…。」
人間不信つーかすげぇネガティブな思考を限界突破しているな。
横を見れば神流がどうしたらいいかわからない顔をしている。
気持ちは…まぁよくわかる。
「じゃあ別の奴のところに行くな?」
「…。」
じっと睨んだと思えば彼女はすっと目をそらした。
行けってことなんだろうな…。
次の子は帽子を被った少女だった。
「はじめましてー!」
そして元気がいい。
「はじめまして。お前さんは?」
「私は白峰 叶音!絵本を書いているよ~!」
「彼女は言ってた通り『超高校級の絵本作家』。子供大人問わず人気の作家さんだよ。」
「…絵本なぁ。」
「一冊読んだことあるけれど、すごいよ~。人間の本質突きつつも子供にも楽しめるような内容。
別称“子供向けの哲学書”だよ。」
「そこまで言わしめるなら読んでみたくなってきたな。」
そこに耳を向けたのか彼女は目を輝かせて
「じゃあ一冊書こうか!?
私ね、その人のモデルの絵本書くのも好きなんだぁ!」
「…自分のこともわからないのにモデルって言われても…。」
「超謎の人物。自分のこともわからない! これ最高の題材じゃない?!
“自分とは一体なんなのだろうか”ってね!」
「やめてほしい…ゲシュタルト崩壊起こして壊れる。」
彼女は中々に聡明なようだが、星宮のような洞察力はもっていないようだ。
そこだけは安心だ。ああいうタイプは底知れないから彼女のようなタイプはまだ安心して話せる。
だがこうして立ち話するのもいいがまだ人が残っている。
「じゃあそろそろ別の奴と話してくるな。」
「わかった!またねー!」
彼女は手をブンブンと元気良く振り、俺たちを見送った。
- chapter0 プロローグ ( No.4 )
- 日時: 2022/07/23 19:58
- 名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)
顔を合わせた人物は、ベールを被り目元がよくわからない人物だった。
「こんにちは。はじめまして。」
「はじめ、まして。」
「僕は深元 望向です。よろしくお願いします。ってね。
気軽に望向さんって呼んでね。」
「彼は『超高校級の宗教家』として有名なんだけれど…。」
「けれど?」
「いや詳細が全く分からなくて、私もどう説明したらいいのかわからないんだ。」
「いいんだよ何も知らなくて。知れば知るほど得体の知れないものって思ってくれればそれでいいと思うし。
…まぁ、ただのしがない狂信者だよ。」
「ふうん…。」
こいつの肩書、宗教家だったか。
何を信じてここまで来たのかがわからないってなると知ってようが知らないままでいようが得体のしれない人物だと思う。
そう思ってジッと深元を見ると彼もまた、そっと俺の顔を覗き込んだ。
ベールでわからなかった顔はそこで露になり、良く見えた。
あどけない少年。純粋な瞳…けれどどこを見ているのかさっぱり読めない。
そんな薄気味悪さを感じ取って俺はつい、目をそらしてしまう。
「気持ち悪かった?大丈夫。僕は怖くないですよ~っと。
まあ、人間は何秒間目を合わせられない生き物だからね。仕方ないよ。」
ふふ、と不敵な笑みを浮かべるこいつは得体が知れなかった。
「もういいだろ。次の奴のところにいく。」
「はあい。じゃあね~。」
どこか軽くてけど薄情な声音の彼は手を振り、俺を見送った。
次に顔を合わせたのは前髪で目元を隠している男性だった。
「ん、俺か。
俺は早田 真生。スケーターしてる。」
「彼は『超高校級のスケーター』。スケボートリック、全技を楽々こなして更にはオリジナルの技を編み出す凄腕のスケーターなんだけど…。」
「けど?」
「こう、大会に出てるときと雰囲気が違うんだ。」
「目隠してないからな。やるとき邪魔なんだよ。
今はこうしてるのは目立たないためだけど。」
「目立つとなんか不具合あるのか?」
「あー…彼、かなり有名なんだよ。スケボーしてる時の彼、すごいかっこいいから女子に人気で…。」
「なるほどな。」
まあ本職とかやってると真剣になるからわかる気はするが、一部の男子に喧嘩売ってるな。これ。
そう思っていると神流が早田に駆け寄り
「ほら、前髪あげてみてよ。」
「…。ん。」
彼は前髪をかき上げる。
顔は確かに女性が好きそうな顔。世の中では所謂『顔が良い』と言われるほどだ。
神流もそうだがここ顔面偏差値高くないか?
「お前さんがモテる理由もわかる気がする。
…落ち着かないだろ。もう大丈夫だ。」
「上げさせたのは別の人間だけどな。
もういいだろ。別の人の顔覚えに行けよ。」
「そうする。」
俺はそう言って踵を返してそこから離れようとする。
「おうい。待っておくれよ~。」
神流はそれを見てこちらに来た。
次に顔合わせしたのはペンギンの着ぐるみのようなパーカーワンピを着た大きなペンギンのぬいぐるみを持った少女だった。
「私の番~?かな?」
「あぁ。お前さんの番だ。
名前は?」
「柚原 悠里っていうのかな。よろしくね~!」
「この子は『超高校級の手芸部』。ハンドメイドのものなら何でも作れる、売れるんだ。
個人のブランド、持ってたんだったかな?」
「よく知ってるね~! 無論持ってるかな。」
「ブランド…ねぇ。そのペンギンもお前のお手製か?」
「ぺんぎん?」
と柚原が言うと持ってるペンギンを見て「あぁ~」と声をあげる。
「これね、バックみたいなものかな。後ろにチャックついててここに色々…」
そう言いながら実際に実践して何かを漁る。
その光景を見ていると「あれあれ?」と言いながらこっちを見て
「ごめんね~。今なにも持ち合わせていないみたいかな。
でもこの子は手作りだよ。それに関しては断言するかな。」
「そうか。まあまた色々見せてくれよ。」
「いいよ~。
私はこのぐらいかな? ほかの子のところに行った方がいいと思うかも。」
「おう…そうする。」
別のところに行こうとした、その時だった。
「色々持ってきたのに、なんで何もなくなってるのかな?」
と彼女が小声でぼやいたのを聞き逃さなかった。
次は少し小柄な少年だった。
「圷 竜兵」
「…へ?」
「圷 竜兵。名前。」
「あ、あぁ…。」
微かに聞いたことのある名前だったが、記憶を探る前に神流が俺の方に腕を回す。
「圷君はね、『超高校級のスナイパー』なんだ。
軍の兵隊だったんだけれどね、そのスナイプ技術は第二のシモ・ヘイへとも言われるんだけれども…。
シモ・ヘイへってわかる?」
「フィンランドの狙撃兵。白い死神ともいわれた凄腕のスナイパーだ。」
「へえ…詳しいねえ?」
「なんだ。てっきりその辺りも調べているのかと思ったぞ。」
「時間、なくてね。」
と神流はヘラヘラと笑いながらこっちを見ながら
「君さ、もしかしたら軍関係の才能かもね?」
「まさか。忘れてるってことはそんな重要なものじゃねぇよ。」
「どうだろうね?」
と彼は笑う。傍にいる圷はそれを無表情で見つめる。
「なんだよお前さん。」
「用はない。」
「…そうか。」
口数が思ったよりも少なく、あまり会話が得意なタイプではないと見受けた。
手をひらりと振って別のところに行くぞ。と合図を送れば、彼もまた手を振り返した。
次にであったのはピンク色の髪をショートにしている少女だった。
「おやおや。次は私の番なのか?
ふっ…ふっふっふ…なればお答えしよう!
私の名は絵凧 芽々なのだ!」
そうふんぞり返る彼女を尻目に神流はこそりと耳打ちをする。
「彼女は『超高校級の海洋学者』。知られずにいた深海魚の生態、マリアナ海溝の解明の手伝いまで様々な海についての謎を次々に解き明かして論文を出す。
それが彼女だよ。」
「ふうん…。」
ただそれを聞いてこの反応しか出なかった。
正直“海”のすごさは解っていつつも解っていないからだ。
ここに呼ばれたからにはすごいのだろうけれど…よくわからない。
これが俺の感想だった。
「絵凧…だったか。」
「なんなのだ矮小な人間風情よ!陸の生物になんら言われようが私は傷一つつかんぞ!」
「ん、んん…。
いやさ、どういうことしてんのかなって…。」
そう聞くとふっ、と絵凧は嗤う。
「深海こそ!そしてそこに住み着く生物こそ未知の存在!
ならば私が調べ上げなければいけない!
だから私はここにいる!海の治安を守るためには治安のすべてを知らねばならんのだぞ!」
その熱意に押された。
「…お前さん凄いな。」
「ふふ、当然だろう。お前にはわからんことだ。
地球の神秘の一つ…私一人で突破してみせる。」
「いや一人は無理だと思うよ?」
神流がそう言えば彼女は固まった。
固まってから動き出しそうにないので次の子に挨拶に行こう。
そんな瞬間だった。
「あー!新しい子っスね!」
赤毛のポニーテールの少女が飛び出してきた。
「ッ…!!
何だお前さんは!」
「申し遅れました!拙は朝月 雪ッス!
お気軽に雪とお呼びいただければ幸いッス!」
「あの子は『超高校級の便利屋』。本当に何でもするらしいよ。」
「…なんでもって?」
「死体運び、情報売買、殺しにetc.~…本当に色々っスよ。
金さえくれればそれ総額の仕事をやる!これが拙の選ばれた理由だと思うんすよ!」
アーッハッ八八!と笑う彼女は放っておいて…。
「お前さんは本当になんでもやるんだよな?」
「拙は相応の金額、それに相応の依頼ならなんでもやるっス!
だからこそ便利屋だと言われているんスよ!」
「…ふうん。」
何故か気になった。
これも記憶に関係しているのだろうか。
「ねえ、ほら。他の子にも挨拶していないだろう?
話はあとだ。あと少し、頑張ろう!」
「だが…。」
「話はいつでもできるさ!ほら、ゴーゴー!」
神流に押され、俺は別の子の元の子に連れていかれた。
連れられた子は白い髪。その姿はフォーマルスーツに身を包んだ小柄な少年だった。
「ん?自己紹介ですか?」
「ああ。名前を教えてくれたまえよ。」
「名前…。
僕は小境 社です。しがねぇ手品師ですよ。」
ほら、と言わんばかりに手品を披露してくれている…が。
「彼は『超高校級の怪盗』だ。盗み、変装、それを駆使して警察の目をごまかしまくっている。」
「え~~~言っちゃうんですか~~~。手品師で通そうとしたのに~~~。」
わんわんと騒ぐ彼はすぐにぶつくさと言いながら手品道具をしまう。
そしてにこやかにこちらを見た。
「詳細全てわからねぇんでしたっけ。大丈夫です。
僕はわかるまで、待ってますからね~。」
「…つまりさ。
…わかったら全部話せってことだろ?」
「イエース。訳のわからない相手ほど疲れる相手はいねぇですから。よろしくお願いしますね?」
読めねぇ相手だ。
感じ取った第一印象はこれだった。
怪盗だからか。素の感情なのか、これがそうなのかわからない。
ただただ、不気味であった。
「んふふ。大丈夫です。僕は別にお前に対して、いえ…今のお前に対して色々と問う気はねぇのですから。」
「…ならよかった。
別のやつのところ、行ってくる。」
「いってらっしゃーい」
掴めない。何を考えているんだ。
あの星宮と深元と同じ…何を考えているか全く読めない。
気味が悪かった。
逃げるように向かったのが最後の子だった。
その子は小柄な少女だった。
「初めましてー!」
「…はじめ、まして。」
「私、織糸 美繰!
人形師をしているよー!」
「彼女は『超高校級の人形師』。注文通りに仕上げてくれるし、その人形の精密さで人形愛好家からはかなり支持されているんだ。
でもまさか、こんな少女だと思わないよね。」
「見た目と能力は比例しないってね~。
まあ人形が欲しければフランス人形、日本人形…つまり市松人形。はたまたリビングデッド…いわゆる死人の見た目再現だね。それまでこなすよー。」
「確かに、見た目と能力は比例しない…な。」
夏場のひまわり畑によくいそうな少女。それが彼女の見た目なのだが、自称あらゆる人形を作りこなせるというのなら「そうだな」という他ないのだ。
自信に満ちている顔をしているので、本当にその通りなのだろうな。と思った。
「望月君も何か作ってもらったらどうだい?」
「悪いがその予定も趣味嗜好はない。」
「ざんねーん。人形、とてもいいのに。
喋らずに自分の悩みを愚痴られる相手ほしくない?」
「いや、特に。」
「ちぇ~。」
彼女はそう口を尖らすとぶーぶーとふてくされどこかへと消えていった。
そこは見た目通りの子供っぽさだった。
- chapter0 プロローグ ( No.5 )
- 日時: 2022/07/23 21:37
- 名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)
得体のしれない人間が三人…。
目頭を押さえながら頭を悩ませていると、ずっと付いて回ってきた神流が「大丈夫かい?」なんていう。
「情報でいっぱいいっぱいなんだよ。」
「おっとそれは大変だ。相談してくれていいんだよ?」
「そこまで困っていない。」
カウンセラーの性が出ているのか星宮が飛び出してくる。お前も原因なんだよ。黙っててほしい。
そんな中だった。
ピーンポーンパーンポーン…
『皆さん、希望ヶ峰学園にご入学いただき誠にありがとうございます。
そしておめでとうございます。
これから希望ヶ峰学園入学式兼“校外学習、インターンシップ”を開催いたします!
オマエラ、どうか正面の台へご注目の元よくよくお聞きくださいまし!』
どこかふざけたような声。けれど機械質。
そんな声がスピーカーから出たと思えば後ろにあった出入口がパタンと勢いよく閉まる。
そこに皆が驚いていると、またしてもスピーカーから声が出る。
『違うよ!見てほしいのはこっちだよこっち!』
お望み通り、台とやらにへと目を向ければそこには
そこには白黒のツートンカラーの熊がいた。
「…クマ?」
「ぬいぐるみ?でもなんか…違う?かな?」
「ボクはクマじゃないよ。
オマエラが通う希望ヶ峰学園の学園長…“モノクマ”といいます! 皆さんよろしくねー!」
は?
と誰かが言った。
もしかしたら俺かもしれない。俺じゃないかもしれない。
けれど喉に押しとどめたような感覚があるようなないような。
いいや。そうじゃない。まずは目の前の問題だ。
情報をまとめようとする頭脳をガン無視するようにモノクマは口をはさんだ。
「オマエラにお知らせです。
えーと、オマエラのような才能あふれる高校生は“世界の希望”に他なりません!
そんなすばらしい希望を保護するため、オマエラには“この施設”だけで共同生活してもらいます! みんな仲良く秩序を守って暮らすように!」
「…クラス?暮らす?
どういうことなのだ?」
「どうもそのままの意味だよ。辞書引く?
いいよ辞書ぐらい後であげるから。んで、話の続きなんだけれども。
この共同生活に期限は一切ありません!オマエラは一生ここで暮らすように…よーく心得ておくように!」
なんて馬鹿げたことを。
俺が出した感想はそれだった。
「ふざけるなよ!ここから出せ!」
「一生なんてお断りさせていただきます。僕にはやりとげなくてはいけねぇことがあるので。」
「僕もかな。僕の助力を必要としている子たちがいるんだよ。ちょっと一生出れないって言うのは…」
「うるさいうるさいうるさ――い!
…んでもそんなに出たいならあるよ。出れる方法。」
「なんだあるのではないか!さっさと言ってくれ!」
「それはね、“人が人を殺すこと”…だよ。」
「まあ言ってしまえば、これは『卒業』ってルールだよ。
オマエラはこの施設…ぶっちゃけちゃうとこの遊園地で過ごしてもらうんだけど、それは言っちゃうと“義務”なんだよね。
その義務…いわゆる“秩序”をぶっ壊した殺人者にはその人物はここから出れるってことだね!
ちなみに殺し方、なんでもいいよ~。
殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺呪殺…『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』。
それだけの簡単なルール…。最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してくださいね~!」
嘘だろ。いや嘘じゃない。
それはこいつの声音からではなく言っていることが本当だと戒める。
だってこんな頭のおかしいことをつらつらとペラペラと喋るこいつは相当に“頭がイかれている”。
というか、学園長ともあろう人物(?)がこんな言葉を使うこと自体変なのだ。
ここでこいつが「はい嘘です。みんな遊園地楽しんでね。」って言ってくれればいいのだけれど…。
現実は甘くない。
「ボク達が殺し合う?おかしくない?」
「何もおかしくないよ。倫理観という枷があるけれど、普通人間は人間を殺すんだよ?
昔の戦争でも見て勉強し直すといいよ。ボク、そんな当たり前のことを言っているだけなんだけれど、伝わらなかった?」
「変に決まってるよ!それは君がみたいだけなんじゃないかな?!」
「まあ、それもあるよ。
こんな脳汁ほとばしるドキドキ感は、鮭や人間を襲う程度じゃ得られないんだよ。
さっきも言ったとおり、オマエラはいわば『世界の希望』な訳だけど、そんな『希望』同士が殺し合う、『絶望的』シチュエーションなんて…
なーんか、ドキドキしない?」
「するわけねぇだろ!!」
隣にいた神流が大きく叫んだ。
当たり前だった。普通の人間、こんな状況下で耐えられるかと言われたら耐えられるわけがない。
「さっきからのべつ幕無しに喋りやがって!
何が殺すだ!なにが殺し合いだ!変な言葉ばっかり言いやがって!
私たちを解放しろよ!」
「ばっかり?」
ぎろりと、モノクマの左目が赤く光る。
「ばっかりって、なんだよ…。ばっかりばっかりばっかり…ゲシュタルト崩壊起こすっつーの!
ほんっとに物わかりの悪い連中だ。帰して?同じことしか述べることできないの?
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もさあ!
…いーい?これからはこの学園…この敷地内がボクのテリトリーなの。そしてこのテリトリーがオマエラの住む場所で世界であるんだよ?
殺し放題殺して殺させるから、殺して殺して殺して殺して殺しまくっちゃえっつーの!!!」
「お前ッ…!」
神流が前に出る。その肩をガッと掴む。
「なにするんだ望月君!君、言われっぱなしでなにも思わないのかい?!」
「いや、ここは逆らう方が駄目だ。
こいつのテリトリー内、秩序がない世界。ここで無駄に命を散らせたいなら俺は止めない。
お前さん、死にたくないだろ。」
じろりと、白黒の熊を睨めば面白そうに嗤いながら
「よかったねぇ~。望月クンが物わかりの良い子で…止めてくれるいい子で…。」
パァンと乾いた音が鳴る。
それは俺と神流の間が何かが掠る。
頬に伝う何かがあって、それを指で掬い取って確認する。
それは人体に流れる必要不可欠な液体、いわゆる “血液” だった。
「さもなくば神流クン、キミ死んでたよ?」
カラリと転がる小さな鉛玉を眺める俺たちに奴はそう言い放った。
- chapter0 プロローグ ( No.6 )
- 日時: 2022/07/24 17:32
- 名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)
「じゃあどうしたらいいか、どうするのかはオマエラ次第だから頑張ってね。
あ、そうそう。これみんなにお差し上げ~!」
とみんなに何やらタブレットのようなものを手渡してきた。
「それは“電子生徒手帳”です~。
こちら、かなり頑丈に作られていて、完全防水、約10tの重さにも耐えられる、それ以上の衝撃を与えられるというのなら壊しても構わないけど、それ生活必需品だからね!
なるべくなくさないように! ね!
あとそちらに詳しい校則の一覧も載っているからよく読んどいてね~! 学校らしくていいでしょ?
実は校則の一つに“学園長を傷つけてはいけない”ってルールあるからね。さっきの通り校則を破るとあの通り以上の結果になるから気を付けてね。
だってルールは人を縛るものでもあるけれど、守るものでもあるんだ。 そのおかげでオマエラが生きてきた世界は平和と秩序をもたらしていた、でしょ?
なので違反者には厳しく罰しようと思いま~す!
えー、では…これで入学式兼校外学習の発表を終わりたいと思います!
豊かで陰鬱な学園生活をどうぞ楽しんでください! またなんかあったら呼んでね! それじゃあ!!」
と言い残し、やつは消えていった。
静寂。
静かになった空間の中
「どうしようか。」
「そうだね。このままぼうっとしていても何も始まらないもんね。」
「んなら誰かやります?っつっても校則見る限り“誰かに見つからねぇように殺せ”ってあるんで今からバトルロワイアルはできねぇですね。」
と、深元、星宮、小境が喋りだす。
「キミたち、あれの言うことを真に受けるの?」
「真に受けるっていうより、選択肢に従うか否かを考えているところなんだよ。
まず一つ、“誰かを殺す”。二つ、“この遊園地で一生を過ごす”か。」
「だ、だからって…誰かを殺すのも一生出れないのも…む、無理よぉ…。」
「そもそもっスよ。こんなこと言われて拙たちはどうすればいいのかわからないんス。絶賛混乱中っスよ!」
違う。そもそもの問題は、いや…そこも問題ではあるのだけれども。
そこではない。
「なあ。小境が言った通り、お前さん達誰か殺せば出られるだとか思ってるバカいないか?」
疑問を口にした。
その問いに皆は俺の方を向き、次の言葉を待っている。
「確かに出れないこと自体問題ではある。
が、本質は“本当に殺したら出られる”って信じてるやつがいるんじゃないかってことだ。」
「ちょっと望月クン、それは…!」
「真実だ。受け取れ。」
けれど言ったことは少し後悔している。
だって誰しもがそれに同調し、反論できず何も言わずただ視線を交わしていた。
そこにうっすらと敵意を乗せて。
あいつはとんでもないものを、恐ろしいルールを提示してきた。
『誰かを殺した生徒だけここから出られる。』
その言葉は、俺達の心に根深く“恐ろしい考え”を植え付けていった。
『誰かが裏切るかもしれない』
という疑心暗鬼を、残していきやがったんだ。
こうして、楽しいはずだった希望ヶ峰学園生活が始まるはずだった。
“希望”だなんて、やはりまやかしだったんだ。
ここは、ここは…
“絶望”の学園だ。
chapter0 プロローグ 終了
『超高校級の???』 望月 巡
『超高校級のチェスプレイヤー』 神流 環
『超高校級の薙刀術者』 雲崎 千雪
『超高校級のカウンセラー』 星宮 知瑠
『超高校級の武闘家』 益満 哪吒
『超高校級の監査委員』 美空 世界
『超高校級の宗教家』 深元 望向
『超高校級のバレリーナ』 水鳥 咲季
『超高校級のスケーター』 早田 真生
『超高校級の手芸部』 柚原 悠里
『超高校級のスナイパー』 圷 竜兵
『超高校級の海洋学者』 絵凧 芽々
『超高校級の絵本作家』 白峰 叶音
『超高校級の便利屋』 朝月 雪
『超高校級の怪盗』 小境 社
『超高校級の人形師』 織糸 美繰
生き残りメンバー残り16名