二次創作小説(新・総合)

chapter1 ノエロコリ ( No.24 )
日時: 2023/01/22 11:03
名前: アルズ (ID: 9s66RooU)

食堂でしばらく過ごし、立ち上がる。
みんな思い思いに過ごしているのだろう。 食堂に来る子は早々におらず、月村君が厨房から出てきて食堂から出た姿を見たぐらいだった。

「他のところ行こうかなぁ。」

そうぼやき、私は椅子をしまい、食堂から出た。
天宮さん辺り来ると思ったんだけど、あの子も何か事情があるのかもしれない。
…そうだよね?
そう思いながら私は、きょろりと人を探し始めたのだった。











廊下をふらふらと歩いていると、焦げ茶色の髪色が目に入る。

「あ、諏訪野さん!」

咄嗟に名前を呼べば、びくりと肩を上げ驚いてしまった。
びっくりしながらもこちらを向き、

「あ…、文月さん…どうも、さっきぶり…です。」

と、反応してくれた。

「さっきぶり。 驚かせてごめんね。
よかったら、私と一緒にお話ししない?」
「わ、私でよかったら…ぜひ…。」

そう彼女はまごまごとしながら答えてくれた。
その言葉が嬉しくて、ぱあと明るくなり、彼女の手を掴んで

「よかった! 断られたらどうしようかと思ったよ!
何のお話ししようか?! やっぱり植物関係? 何かいいアロマとかある?」
「えっ…あの…」
「わわっ! ごめんね!」

咄嗟に掴んだ彼女の手をすぐに放し、謝る。

「あ、大丈夫です…。」

諏訪野さんはそう言って目を泳がせる。
びっくりしたのだろう。悪いことしちゃったなぁ…。
うーん、と悩んでる私の顔を見て、諏訪野さんはいつも通り謙虚しながら

「あの、本当に気にして…ないので…。
気になさらないでください…。」

と言ってくれた。

「そう…? ならいいんだけど…。
勢い強くてごめんね。 諏訪野さんの事知れると思ったら興奮しちゃって…。」
「私の事…ですか…?」
「うん。やっぱり仲良くなるってことはお互いの事知るって言うのが大事じゃない?
私、人間大好きだから仲良くなったりその人の事深く知れるっていうのが嬉しいんだよね。」
「すごいですね…。
私、そんな人に前向きになれないので…羨ましいです…。」
「でも、諏訪野さんは植物にすっごい詳しいじゃない?
私はそんなに詳しくないから、私からしたら諏訪野さんはすごい人だよ。
だから『超高校級』にも選ばれているんだし、自信持っても罰は当たらないよ。」
「そう…でしょうか?」
「そうだよ!」

彼女の目をしっかり見て、にこりと笑う。
それを聞いて見た諏訪野さんは何かを考え、ぼそりとぶつぶつと呟きだした。

「私…小さいころから植物が好きで…。
それで…、植物に関すること絶対に将来やりたいと思ってて…。
でもみんな、私なんかよりすごい才能を持つひとばかりで…。
文月さんだって、人を助けるすごい人です…。 だから比べちゃいけないと…」
「それは違うと思うよ。」

自分を卑下してしまっている彼女の手を今度はしっかりと、けれども優しく握る。

「私は、品種改良ができないとされている植物を品種改良させたっていうその実績がある諏訪野さん、すごいと思う。
不可能とされていたんだよ? それを可能としたんだよ?
すごくないわけがない。」
「でも…。」
「それに植物って人間が生きるのに必要な要素の一つでもあるんだよ。
それを研究するのも決して苦じゃないわけじゃない。
…だからね、諏訪野さんは凄い子で、自信持っても罰なんて当たらない、むしろ誇っていい人だと…思うなぁ。」

手を放しながら、「ごめんね。偉そうなこと言って。」というと彼女は首を振る。

「少し、少しだけ自信が持てた気がします…。
ありがとうございます…。」

そう言って頭をぺこりと下げられた。

「自信持てたなら何よりだよ。
良かった。実は私も『超高校級のカウンセラー』として自信ないから人のこと言えなかったんだよね…。」
「そんな…文月さんは凄い人ですよ…。
こうやって、私の自信を少し引き出してくれた…ですし…。」
「そう言ってくれてよかった。」

そう二人で笑いあう。
私は人が大好きで、その人のためになりたいと思ってずっとその人たちのために頑張ってきた。
それがまたこうして人を助長することができるだなんて…。
それが嬉しくてたまらない。



私たちはしばらく、植物について語り合った。
ポプリとか、どんな観葉植物がいいのか、どんな花が育てやすく綺麗な花を咲かせるのか。
諏訪野さんはいつも通りまごまごしているけれど、語るその目は輝かしかった。
















ある程度話して、諏訪野さんと別れる。
出会った時よりも元気になっていてよかった。
部屋に帰り、昨日使用したタオルなどを持って、廊下を歩いてるときに見つけたランドリーに向かう。
報告会の時は見つけられなかったけれど、ちゃんと服を洗う場所見つけられてよかった。
そう思い、扉を開けると金髪の髪が目に入る。

「レイラさん…?も、お洗濯?」
「そうだ。君も洗濯か。」
「うん。私すぐ貯めこんじゃうから定期的に洗わないと、なくなっちゃうからね…。」

えへへ、と苦笑いすると彼女は「ふっ」と笑った。
呆れられたかな…?

「そうだ。洗濯終わるまでお話ししない?
私、みんなの事もっとよく知りたいんだ!」
「そうか。
…と言っても、何を話せばいいのか…。」
「うーん…。」

確かに、急に何を話せばいいのかわからないよね。
私、話題づくりは…割と得意な方だけど、レイラさんクールでミステリアスそうだし…何聞こうかなぁ。

「レイラさんは、どうして会計を務めてたのかな?
ほら、小さいころから会計をしてたって言われてたし…。」
「どうして…か。気づいたらしていたな。
困っていた、とかそういうのもあった気がするが…覚えていていないんだ。」
「そんなに小さいころからやってたの?」
「ああ。両親は厳しかったが…。きちんと親をしてくれていたぞ。
両親の支えもあって、今の私がいる…そう思っている。」
「そうなんだぁ…。 素敵だね!」

親の助けになりたくて、会計をして、そしてそれが『超一流』となる…それはとても素晴らしいことだと思う。
それを素直に評価すれば、彼女は「そうだろうか」と照れながら頬を掻く。

「うーん…。
そうだ、君はどうなんだ?
…人間が大好きってだけの理由でカウンセラーになったのだろう?」
「そう、だね。そうなるのかな?」
「疑問形だな。」
「そりゃ、私ただの高校生だもん。
本来ここにいていいのかなーってずっと考えているんだ。
さっきすごい偉そうなこと言ったから、こういっていいのかわからないけど…。」
「何。君は凄い人間だ。
私の統計データには、君が救った人間は数が多い。その上、どんな崖っぷちに立たされた人間でも手を差し伸ばして助け、社会復帰を確実なものとしている…。
と、ある。 これのどこがすごくないというんだ。」
「それは…みんなが頑張っただけだよ。
私はその手助けをしただけ。 私自身すごいってわけじゃないの。
…みんな、頑張って、未来に前向きになってくれたからこの功績があると思うんだ。」
「ふうん…。」

手を口に当てて、彼女は何か考える。
何かおかしなことを言っただろうか?
そう思いながら、私はレイラさんを見ながらその様子をうかがった。

「なんだ…、その…私は君ほど口が回らないからよくは言えないが…。
そんなに卑下しなくてもいいんじゃないか?」
「…。」

それは、私がさっき諏訪野さんに言った言葉だった。
さっき、私が言った言葉がそのまま私に帰ってきた。
そうだ。このままじゃダメだよね…!

「レイラさん、ありがとう。
私も自信無くしてたみたい。 こんな状況だから…余計に…。」
「そうか。それなら仕方ない。
それにしても、まさか君の役に立てるだなんて、思いにもよらなかったよ。」
「だから、私すごくないって思ってたんだよ。
誰でもできるの。誰だって未来に前を向いていれば頑張れるし、その手を引っ張れるの。
だからこそ、私は思ってたんだよ。 “私はただの高校生”だって。」
「なるほどな…。」

そう言った瞬間、洗濯機からピピっと洗濯が終わった合図が鳴る。

「私の洗濯物が終わったみたいだな。」
「そうだね。 洗い立てで乾燥機かけた後のタオルってふかふかで暖かくて気持ちいいよね。」
「あぁ。その気持ちはよくわかる。」

そう言いつつ彼女は洗濯機から洗濯物を取り出し、かごにまとめる。

「じゃあ。私は部屋で洗濯物をたたむよ。」
「うん。じゃあね。
お話し付き合ってくれてありがとう。」
「こちらこそ。色々話せて楽しかったよ。」

彼女はそう言って立ち去った。
私はこのランドリーで考え事をしながら、洗濯機の中で回るタオルを見つめていた。




『キーンコーンカーンコーン…』




『希望ヶ峰学園学園長からのお知らせです。
夜10時となりました。学園の一部が立ち入り禁止となりますので、ご注意ください。
それでは良い夢を。おやすみなさい。』



「もうこんな時間かぁ…。」

終わった洗濯機から洗濯物を取り出し、籠に入れながらそうつぶやいた。
みんな思い思いに過ごせたかな? 大丈夫かな?
そう思いながら私は部屋に戻り、洗濯物をたたんで時間を少しつぶしてから就寝した。

良き夢、かぁ。




こんな状況で見れるわけ、ないんだよね…。





なんて思いながらも、眠気には耐えられず、そのまま眠りへと落ちて行った。