二次創作小説(新・総合)
- chapter0 プロローグ ( No.9 )
- 日時: 2023/01/04 08:01
- 名前: アルズ (ID: 9s66RooU)
みんなと話し終わったよな?と周りを見渡す。
うん。話したこともない子はいないみたいだ。
…相も変わらず、人に慣れてない子は人と離れ場所にいるみたいだったけれども。
さて、と時間を見れば8時半になるような時間になっていた。
そりゃそうだ。私が付いたのは8時過ぎ。そこから自己紹介を始めていたのだから。
15人分の自己紹介、そこから派生する軽い会話。
これが一連の流れ。そりゃこれだけ時間もかかる。
それはそれとして、入学式はいつ始まるのだろうか。
それはほかのみんなも疑問に感じているようで、
「なんか、はじまるの遅くない? こっちは文月さんの紹介があったから助かったけど…。」
「放送がないのは不思議だよな! スピーカーの音すらしなったし…なんかあったりとか…ないといいな!」
「帰っちゃう? でも梶浦が出れもしないとも言ってたしなぁ…どうしようか。」
だなんて、軽口をたたいていた瞬間であった。
『プツン』
スピーカーからマイクのスイッチが入る音がした。
それを聞き逃さない私たちはそれを聞いた途端、喋ってた口は閉ざされ静かになった。
ガタン、ゴトン、と何かを準備している音が聞こえたと思えば、マイクからこんな声が聞こえた。
『あー、あーーーーー!
マイクテス!マイクテス!
…うんうん。聞こえてるみたいだねぇ!
皆さま!大変…たーいへんお待たせいたしましたぁ!
これからですが、“希望ヶ峰学園入学式”を開催いたしまーーーーす!』
まるで緊張感のない声。
生徒が、新入生に気を遣わせないためにこう言っているのだろうか。
しかし、いくら気を遣わせないため…とは言え…能天気すぎる。
一種の不気味ささえ感じていた。
そんな気配を感じたのか、柚月君はふと私を見て
「大丈夫?隅で休んでる?」
と、声をかけてきた。
「だ、だいじょ…」
「あー!お前詩乃ちゃんにそうやって点数稼ぎしやがって!
無自覚イケメンか?!気を遣えるアピールか?! 少し整った顔しやがってそうはいかないんだからな!」
「か、梶浦君だっていい顔…もとい、整ってはいるよ?」
「男に言われても嬉しくないんだよ!!」
少し気が楽になった。
声をかけてくれた、というのもそうだけど、こういった男子高校生特有のやり取りを見てすこし和んだのだ。
「ふふ」と笑った私を見て二人は「まぁ、言い争っても仕方ないか」みたいな雰囲気になった後
『無視するなぁ!
みんな!無駄話はここまでにして…お台場…、もとい! 演台にちゅーーーーーーもく!』
嬉しそうな、それでいて楽しそうな声がそう言う。
私たちはその声に従うようにその演台を見ると、
ぴょんっとそこから白と黒のカラーリングをした、天使と悪魔がセットになったような、そんなデザインの熊が飛び出てきた。
右側の白い方は愛らしい白い熊。左側は黒く、目は逆立った、赤い目で牙をむいている…子供が見たら一発で泣きそうなデザイン。
…左側の目、どこかで見たことある形なんだよな。とふと思ったことは胸にしまっておく。
大きさは解らないが、恐らく、私たちの膝上あたりまでの大きさ…かな? そこまで大きくないと、縁台の大きさからして推測できる。
熊は感情も声色も変えずに、私たちをわざとらしくキョロキョロと見渡して
「うーん、ぴったり16人!
というか16人て! まぁ、大事な大事な生徒なので人数は100人だろうが1垓人だろうが変わりません。」
「一垓って?」
「憶、兆、京、垓…と数える数の数え方です。まぁ、人類は最大約70億人ですのでそこまで人数はいませんが。」
「へぇ~~!」
「野々坂さん!泉クン!無駄話しないの!
…こほん。
えー、オマエラのような輝かしい希望はこの他にー…」
「ちなみにあなたはなあに?! ぬいぐるみ?!」
「ぬいぐるみだろうがなんだろうが、ばらせばなんだって同じだ。
中から綿だろうが“ワタ”だろうが豆腐だろうが、機械だろうが出てきても同じだ。そこから降りろ。器材がなくてもどうにかしてやる。」
「自己紹介を忘れてたね!ごめんね~~!
ボクは『モノクマ』。この学園の“学園長”!なのです!
ちなみに中は企業秘密だよ。ばらそうとしても校則違反で罰しますので中を見るのは不可能に近いです。やめてください。」
“モノクマ”。
そう名乗ったこのぬいぐるみのような彼は、口元に手を添え「うぷぷ」と笑う。
その言い方が癪に障ったのか、葉奈君は眉間にしわを寄せ、モノクマをじっと見た。
それを意にも留めないのか、彼はしゃべり続ける。
「では…。
オマエラのような輝かしい希望は、才能あふれる高校生は“世界の希望”!これ以外に言い表す言葉はありません!
そんな絶対的な希望を育て上げるため、ボクからの提案というか校則により…。
オマエラは“この学園の中だけで過ごして”もらうこととなりまーす!
この、学園の中で、共同生活を、送って、いただきまーーーーーーーす!」
そんな説明、穴が開くほど読んだパンフレットにも書いてなかったよ…?
そんな疑問を吐き出そうと口を開いた瞬間、彼はつかさず声を出す。
「共同生活の期限についても話しておかなきゃ。
期限は一切ございません!みんな、節度を守って永遠にこの学園の中で過ごしてね!」
その言葉に私たちの時は一瞬止まった。
「一生? 駄目だよ~~!そんなことしたら来週約束してる大会出られないじゃないか~~!」
「出れないので辞退してください。 それがこの学校の“義務”なので!」
「玄関があんだけ硬くて開かなかったのも“一生ここで過ごす”ためだってのか?!」
「そう!その通り! 窓も、ガラス割って出られないようにしているわけです。
なので物理的に壊そう、だなんて考えないで安心して暮らしていってね!」
「ネットワークは繋いでるの? 繋いでるんだったら漆間の手でどうにかできるんだけどさー。」
「繋いでるわけないじゃん! なんでわざわざそんなバカなことしなきゃいけないんだよ!」
「…そもそも、俺に頼るな。」
「ごっめーん。」
ぜえぜえと疲れたようなモノクマは、よっこいしょと演台に座ると私たちに向き直る。
「んもーう…そんなに出たいの?」
「当たり前じゃん! 今でも予約待ってる人、いるんだから!
学校にも通いつつ、あたしのヘアスタイリングを待ってる人に希望通りにやってあげるっていろんな夢語ってきたもの!
ここから出なきゃ約束守れないじゃん!」
「あー、はいはい。約束ね。約束…。
いいよ。出してあげる方法…教えてあげる。」
「…やけに嬉しそうですね…。声音が。」
「わかっちゃうー? うぷぷ…では、教えてあげましょう!ここから出る方法を!」
ばぱーん!と勢いよく立ち上がりくるくると回った後、キメポーズをする。
…いる?その動き。
「『卒業』!それがこの学園から出るルールなのです!」
「卒業ってことは俺たちの才能が認められたら出れるってことなのか!? 希望ヶ峰学園、やっぱり普通の学校とは違うな!」
「話は最後まできけーい!
卒業というのは、この世界…いわゆる『学園内』での秩序を破った者のみに与えられるものです!
卒業と任命された秩序破りの人間は学園から出ていく…すぐに考えればわかるルール…それが“卒業”です!」
「…秩序って?その秩序のなにを破ったら卒業になるの…?」
野々坂さんが聞くとモノクマは待ってましたと言わんばかりの顔をし、先ほどと変わらない声音で言った。
「“人”が“人”を殺すこと、だよ。」
手足が急激に冷えた感覚がした。
顔はこおぱって動きやしない。
今の顔がわからない。無表情なのかもしれない。笑顔なのかもしれない。でも泣いてはない。温かい液体が涙から流れていることも、目頭が熱くなることもなかった。
みんな固まる中。冷静に物事を進めた、というより話を進めたのは葉奈君だった。
「…。人殺しをすれば、出れる?そう言ったな?」
「はい。殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺斬殺呪殺…殺し方は問いません。
『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』。それだけの、たったそれだけの簡単なルールです。
最悪の手段で最良の結果が生み出せるよう、精々努力してください。」
「…そんなのって変だよ!」
今まで声も動くことさえできず息すらやっとだった私が咄嗟にこんな大声を出した。
「人を殺すだなんて、そんなの絶対あっちゃダメ!それを教唆させるだなんて、学園長としてどうなの?!
まずそのへんなぬいぐるみから腹話術するのやめて、本人が前からでてきたらどうなの?!
私たちはあなたの狂った箱庭じゃない!オモチャでもない!一人の人間なの!だから…」
「だからなぁに?」
心底『こいつ何言ってんだ』と言いたげな顔で首をかしげて私を見た。
「オマエみたいな生ぬるすぎる子にはわかんないとは思うけどさあ…。こんな脳汁ドバドバ、溢れるドキドキ感っていうのは鮭とか人間襲う程度じゃ味わえないんだよね。
オマエラみたいな『世界の希望』が、『希望』同士が殺し合って、『絶望』なシチュエーションが始まる…。
これは文月さんにはわからない感情だよねぇ~~? だってさ…オマエみたいなのがボクにとって一番嫌いな人種なんだからさ…。」
「お前、生徒に手を出す気か?!」
「手を出すわけないじゃん! “オマエラが手を出して”そうしてやっと意味があるんだから!
ボクは文月さんみたいな希望を掬いだして生きる糧見つけさせて世界を希望に変えていく人種が嫌いなの!
だから、そんな彼女が絶望する瞬間を期待してるね…。」
あーはっはっは!と高笑いするモノクマに固まる人が多い中、冷静なのが何人か。
いや、本当は色々と考え事をしているものかもしれない。
当の私は現実味のない熊に、モノクマに意味がわからない殺意を向けられてへたり込んでしまった。
誰もこの異様すぎる考え方をするモノクマに歯向かう者はいなかった。
何と言ったって口が上手い上に(単に私が丸め込まれやすい体質のせいなのかもしれない)、手を出す発言をした葉奈君に対してあの“校則違反”というものを盾に取るような言い方。
何されるかわかるのが丸わかりだ。
「柏浦さん、葉奈さん、あなた方あの熊どうにかできるんではありません?
梶浦さんが素早い動きで捕縛、その隙に葉奈君が解体解剖…そうすれば、あの熊は黙ってくれるかと。」
「無駄だやめとけ。どうせあの“校則違反”、竹刀で叩かれるだとかそんな体罰とかで済まされる問題じゃない。」
「俺だって反対だぜ!あれぜってぇ“なんでも”やるって!死にたくないぞ俺は!!」
予想通り、というよりも私と同じ考えで真っ向から否定してくれた。
モノクマはその様子を見てニヤニヤとしながら
「そうそう!二人とも危機感知能力が高くて助かるねぇ!
じゃなきゃ本当に死んでたよ。」
と、ギラリと爪をだして皆を睨む。
その様子を見て皆、凍り付いた空気をさらに凍り付かせる。
空気が重く、息がしづらい。
「まあ、卒業というルールを話したわけだし、みんなにこれを渡しておきます。
じゃっじゃーん! 『電子生徒手帳』~~~~!」
モノクマは一人、また一人と懇切丁寧にタブレットを渡す。
16人に渡し終えると演台に座り直し、パンパンと届かない手を叩き正面を向かせる。
「はい。では皆さん行き届きましたね。
『電子生徒手帳』。電子化された生徒手帳です。」
「…iPhon〇?」
「ちっっっっっがう! 話は最後まで聞け!
まずこれはこの学園生活に必要不可欠なものです!なくしたら復元できないので注意してください!
起動時に名前が表示されるので確認しておいてね。ちなみにこれ、他にも使い道あるからあまり軽視しないでね!
ちーなーみーに、これ完全防水、耐久性抜群、10tの重さも耐えられるとっても頑丈なものだからあまり乱暴にしちゃダメだけど、乱暴にしても壊れないから安心してね!
あとここに詳しい“校則”が書いてあるのでそれも読んでおいてね。
破ったらこの世にはいられないほどの厳しい罰が待ってるからね!
校則違反はダメだからね! ルールは人を破りはするけど人を守りもするんだ。社会にも法律がなきゃ平和が成り立たない…でしょ?
だから厳しく罰しなきゃなんだよー!わかったー?
では、これで入学式を終了致します。
みんなー!仲良く楽しく殺し合ってくださいねー! ではではー!」
そう言ってモノクマは演台から姿を消した。
その間、私たちは固まってしまっていた。
そんな中、沈黙を破ったのは、柚月君だった。
「あ、あのさ。」
「…んえ? 柚月君どうしたの?
…これからのこと考えなきゃ?」
「駄目だと思う。ここでずっと過ごすのも絶対ボク達のためにならないし。」
うん、とキリッとした顔で言う。
判断力は人一倍あるようで、どこか冷静なんだなと思わせるような人だった。
「ずっとここにいることに反対なのは私も反対です。
…具体的にはどういったことを考えているんですか?」
「…モノクマに提示された選択肢について考えておこうと思って。
一つ『この場所でずっと、一生ここで末永く学園で過ごすこと』
二つ『ここに集められた仲間を殺すこと』。」
「二つ目は絶対ありえないって! この中にそんな非人道的なこと、非道徳的なこと考えている奴がいるとは考えにくいぞ!」
「一ノ瀬クン…気持ちはわかるんだ。
ボクだって考えたくない。けれど…けれどね。」
ぐっと…握りこぶしを…手が白くなるまで握りしめて言葉を貯めている。
「ど、どうしたの? そんなに言いづらいこと?!
…無理して言わなくても…」
「いや、言うよ。これは言わなきゃいけない。」
すぅ、はぁ、と深呼吸した彼は「前置きとしてね」と付け加えたうえで話した。
「これはみんなとって残酷な結論になるかもしれない。
これはみんなにとって仲が裂ける結論になるかもしれない。
それでも言うね。」
「あの、モノクマの言うことを真に受けて、本当に犯罪を犯す人がこの中にいるかもしれないんだ。」
柚月君が声を絞り出して言った言葉は私たちを飲み込んだ。
柚月君が人のことを信じてないのかもしれない。
でも普通に考えたらそうなのかもしれない。
疑心暗鬼に陥るのは仕方ないのかもしれない。
この大人数の絶望を希望に変える言葉が思いつかない。
嗚呼……………
私、カウンセラーなんかじゃないよ。
一般的な高校生なんだよ。
こうして、私たちの華々しい学園生活が始まった。
華々しい?
そんな暖かくて未来溢れる言葉はない。
絶望的で、悪辣な学園生活が始まった。
私たちの『絶望的な学園生活』。
これが私の、運命の一歩だった。
chapter00 プロローグ END
~生き残りメンバー~
『超高校級のカウンセラー』 文月 詩乃
『超高校級の幸運』 柚月 茜
『超高校級の小説家』 泉 鏡也
『超高校級のパティシエール』 天宮 苺
『超高校級の調香師』 牧里 梓音
『超高校級の科学者』 葉奈 京助
『超高校級のカードゲーマー』 戸田 久遠
『超高校級のゲームマスター』 月村 スバル
『超高校級のパルクール選手』 梶浦 竜輝
『超高校級の美容師』 小深山 唯香
『超高校級のバトミントン選手』 野々坂 鈴奈
『超高校級の演劇部』 一ノ瀬 裕里
『超高校級の園芸委員』 諏訪野 芽依
『超高校級の会計士』 レイラ・アレクシス
『超高校級のシステムエンジニア』 漆間 亘
『超高校級のオペレーター』 豊馬 羽衣
残り:16名