二次創作小説(新・総合)
- 1章 他種族の血/1話 石榴と蛍姫 ( No.6 )
- 日時: 2023/02/26 14:35
- 名前: かのん ◆7igY4SLYdc (ID: zEDABVSv)
「――きゃっ。」
すれ違いざまに突然つきとばされ、石榴は鉱石でできた床にしりもちをついた。腰まで伸びた深紅の髪まで踏んでしまい、顔をゆがめる。とっさに床についた手が、ヒリヒリと痛んだ。
「あなた、いつまでここにいるのかしら。」
冷ややかな声に目を上げると、そこには二人の珠魅がこちらを蔑んだ目で見下ろしていた。鮮やかな青い髪の女性と、金色の髪をした男性だ。胸元に埋まった拳大の宝石の玉が、この薄暗い地下の部屋でも輝いている。
「何度も言っているわよね。ここは珠魅の一族が暮らす場所よ。あなたみたいに他の種族の血が混じった部外者が、いていい場所じゃないわ。」
「その大きな耳、森人の種族の血が混じっている証拠だ。気味が悪い。」
他種族の特徴を指摘され、かっと頬が熱くなる。とっさに耳を隠したい衝動にかられたが、手のひらのサイズを超える大きな耳だ。隠しようがない。泣きそうになるのをこらえ、何も言えないまま目を伏せると、パタパタと足音が近づいてきた。
「石榴……!」
耳慣れた柔らかな声。涙をこらえながら顔を上げると、肩のラインで切りそろえられた茶色い髪を乱しながら、唯一の味方である蛍姫が走ってきた。その胸元では蛍石(フローライト)が緑色に輝いている。
「もうやめましょう。石榴だって私たちと同じ珠魅よ。」
そう言ってすぐそばにしゃがみ、背中を支えてくれる。お礼を言いながら上半身を起こすと、さきほどの二人がおもしろくなさそうに眉根を寄せた。
「……蛍姫、あなた優しすぎるわよ。そんな部外者、守ることないのに。」
「気がそがれた。行こう。」
今にも舌打ちをしそうな一瞥を石榴にくれると、二人は背を向けて自分たちの部屋に戻っていった。
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「……蛍、ありがとう。」
「大丈夫? 怪我をしなかった?」
蛍姫が心配そうに石榴の手を見る。鉱石の床に勢いよくついた手のひらには、薄く血がにじんでいた。顔を真っ青にする蛍姫に、石榴は慌てて首を横に振る。
「これくらい大丈夫! ……それより、いつもごめんね。」
「ううん、石榴は何も悪くないわ。だってほら、石榴にも美しい「核」があるんだから。」
蛍姫がそっと石榴の胸元にある深紅の宝石の玉に手をあてる。石榴は自分の核に目を落とし、小さく唇を噛んでこくりと頷いた。