二次創作小説(新・総合)
- 帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - ( No.7 )
- 日時: 2023/07/02 21:58
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
琉璃亭での一件から一夜が明けて。
初めて塵歌壺で睡眠をとった空達は、心做しか不思議な感覚に陥っていた。
「ん…… おはよう、パイモン」
「ふわぁ~…… む、おはよう、旅人。思ったよりもぐっすり眠れたな」
「あぁ。やっぱり、野宿だと常に仮眠しか取れなかったから。神経を尖らせる必要なく眠れるのは、だいぶ話が変わってくるよな」
いつ誰に襲われるかも分からない野宿よりは、確かに塵歌壺での就寝の方が安心度が桁違いだった。塵歌壺のありがだみをその身で感じた2人は、ピンばあやに感謝の思いを届けながら身支度をした。
「で、これから空は何をするつもりなんだ?」
「またそろそろモンドに戻ろうと思う。塵歌壺の一件でモンドの皆も招待したいと思ったから」
璃月を離れるべく埠頭を散策していた空とパイモン。やはり璃月は七国でも最大級の貿易都市だからか、何もない日常であっても常に商人達の誘い文句で活気に満ち溢れていた。これも一重に、璃月七星の尽力による所も大きい。
すると、ふと空達の後ろから、自分達の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あっ! おーい、旅人にパイモーン!!」
「ん? この声は……香菱! それに行秋も! ……あれ、ところで重雲は……」
「いるよ!? ハァ、ハァ…… 急に2人が走り出すから遅れてしまったんだ……」
振り返るとそこには、アンバー達と同年代くらいの少年少女3人が駆け寄ってきた。
1人目は香菱。
編んだ髪で∞を描いてるのが特徴の女の子である。右腰に炎元素の神の目を付けており、槍術に長けている。また、グゥオパァーという狸……の見た目をしたパンダが一緒にいる。聞いた話によると、この槍術はピンばあやからの教えらしい。本当に何でも出来そうだな、あのおばあちゃん……
実家は璃月内でもチ虎岩と呼ばれる場所に居を構えている『万民堂』という大衆向けの食堂。父親の卯師匠が店主を務めており、空達も何度もお世話になってきた。勿論、娘の香菱も大の料理好き。料理は作る事も食べる事も、なんなら食材調達のための狩りすら大好き。大体の生物を「食材」としか見てないサイコっぷりが少しある……かも?
2人目は行秋。
現状の原神内でも1,2を争うレベルで中性的な少年。左腰には水元素の神の目を付けている。
実家は璃月でもだいぶ大きめの商家、飛雲商会。次男坊である行秋は家督を継ぐ必要はないとはいえ、彼も本来はビジネスに生きる側の人間だろう。しかしながら、本質はどこか違うようだ。勉強熱心で本の虫ではあるが、空いた時間が出来るとふらっとその場を離れては人助けをするなど義侠心を特に重んじている性格。尚、字は汚いし、いたずらっ子でもある。
同時に彼は「古華派」の剣士でもある。古華派は当時没落した門派だったのだが、その武芸に惚れ込んだ行秋は数年をかけて数々の流儀を会得したのである。
3人目は重雲。
水色の短髪が特徴の、まるで眼鏡を外して年相応の見た目をしたアンデルセン(FGO)のような少年である。腰に巻いたベルトには氷元素の神の目がはめられてある。
方士という妖魔退治を生業とする一族の生まれなのだが、「純陽の体」という特異体質である。陽キャオーラというか……陽の気に満ち溢れてるからか、そもそもその場にいるだけで妖魔が恐れをなして逃げ出すという。その為、方士なのに悪霊退散の経験が全くないという異色の経歴を持つ。あと、何故か影が薄い。
尚、この陽キャオーラは非戦闘時でも常時活発で、抑え込むにも一苦労している。具体的に言うと、熱いものと辛いものを食べない、厚着をしない、日差しが激しい日は出かけない、感情を激しく昂らせないなどが挙げられる。抑え込めずに陽の気が暴走してしまうと性格が豹変し、「熱血」と「衝動」に強く駆られるのだと香菱から聞いた。つまり、本当に陽キャになる。
「この辺りを歩いているという事は、璃月港を離れるのかと思ってね。何処に行こうとしていたんだい?」
「おう。それがな…… オイラ達、そろそろ一旦モンドに戻ろうかって話をしてたとこなんだ」
「えっ、もうここを離れちゃうの!?」
「……うん。モンドにも同じように戻ってくるのを待ってる人達とかもいたりするから。……あっ、そうだ。皆も塵歌壺に招待しないとか」
「……? 塵歌壺……? 何なんだそれは……?」
「まぁ仮住まいみたいなもんだな。要件を満たしさえすればいつでも遊びに来れるって寸法」
「へぇ~! そこってさ、グゥオパァーも連れていけるの!?」
「まぁ大丈夫じゃないか? パイモンだって通れてるんだし……」
「おい! だから空はオイラを何だと思ってるんだ!」
またしてもパイモンにやいのやいの言われながらも、香菱、行秋、重雲の3名も塵歌壺に招待した。これで塵歌壺招待者は累計7人だ。
3人に別れを告げ、空達は璃月港の入口まで来た。
ここからモンドまでの距離は決して短くはない。相応の準備はして来た事を確認した上で、再度モンドへの旅路に向かおうとしていた。──その時だった。
「やっと来てくれましたね。待ちくたびれました」
「…………!」
「う、うわっ!? 誰だお前!?」
切り立った岩場の上に、巨大なとんがり帽子とやけに薄手で星空を模したかのような衣装が目立つ少女が座り込んでいた。
彼女はこちらに気づくや否や、ワープホールのようなものを生み出したかと思えば、一瞬で2人の目の前に姿を現した。
「ふふん、やはり私の「占星術」に間違いはありません。さぁ、ついてきてください」
軽く言葉を残したかと思えば、直ぐさま歩き出す少女。薄手の衣装で顕著になってしまっている大腿筋、及び華奢なおs……と、そんな事は今はどうでも良かったか。
「お、お前……いくらなんでも怪しすぎるだろ! 飛び込み営業の占い師なのか!?」
「私を疑っているようですね。……ではこう言えばどうでしょうか。あなた、『この世界の人間じゃありません』ね?」
「……………………!?」
「ど、どうしてソレを……!?」
空がこの世界で持つ特異性。それは通常、見てくれだけでは分からないような事象なのだが、それを一発で見抜いてきたこの占星術師(仮)はやはり只者では無い。空とパイモンが驚くのも無理なかった。
「自己紹介もしておきましょうか。私はアストローギスト・モナ・メギストス。名前が長くて覚えにくいので、モナと呼んでください」
「そうか。宜しく、モナ。俺の事は分かってそうだけど……改めて、空と言う」
「そんで、オイラはパイモンだ!」
お互いの自己紹介を済ませた所で、話はモナの要望に移り変わる。
「私は占星術師。今は師匠の代わりにモンドへ向かう用事がありまして。そこでここ数日の動きを占わせてもらったのですが、モンドの英雄とも呼ばれるあなたがモンドに帰還するとありました。あなたと旅路を共にすれば、自分の実力や地位を知らしめる事が出来る良い機会になるだろうと」
「要は護衛しろってのか……?」
「いや、実力や地位を証明するって話なら……腕は立つんだろ?」
自分達がモナの旅路に同行する事自体は別に構わないのだが、なんか釈然としないのでゴネ出した2人。まぁ当然モナにはそんなのはお見通しだったわけで……
「モンドに向かう理由の一つに、知識の交流があります。その経験を糧にすれば、あなたの運命がよりはっきり見えるようになるかもしれません。例えば…………神、及び家族のこともでしょうか?」
「…………なるほどね。分かった、交渉成立だ」
奇妙なやり取りを交わした後、モナが一時的にモンドへの旅路に同行することとなった。
しかし、このモンドへの旅路が少しばかり面倒な事態になるとは、この時の3人は知る由もなかった…………
更新続けます。感想まだ。
- 帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - ( No.8 )
- 日時: 2023/07/02 22:00
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
モナと一緒に旅を続けて二、三日。モナのことについて、空は多方面から少しづつ理解度を上げていった。
彼女は……占星術を随分と高く評している。
生業としてるのだから当然だとも言えるだろうが、その本分がなんというかこう、世間とズレているのだ。
最新鋭の占星設備を揃えるための投資を全く厭わないので、稼ぎ自体はあるのにとにかく常時金欠。
空達が望舒旅館でご飯を食べようとした時も、モナは1人そうめんを頼んでおり、思わず2人して心配してしまうレベルだった。
おまけに彼女、占星術を崇高概念としている都合上、金儲けなどの世俗的な目的では決して使おうとしないポリシーを併せ持っている。その為、先程収入があると話はしたが、それも並の一般人程度のものと見てもらって構わない。
以上のような特徴を持っている上に常時はプライドが高い人物でもあるので、正直随分と生きづらい日々を過ごしていたのではないかと、空はだいぶモナを心配してしまっていた。
──ここは石門。モンドと璃月の丁度境目といった場所である。旅を続けた空達3人は、ようやく折り返し地点まで辿り着いた。
「ふぅ…… ここまででもだいぶ長い道でしたね。少し休憩していきましょうか」
「それもそうだね」
別に急ぎ旅というわけではないので、旅路に休息は必要。石門で商売をしてる人達の相手をするなどして、各々で時間を過ごしていた。…………その時だった。
「ん……? お、おい! 昼間なのに「流星群」が降ってるぞ!?」
パイモンからの突拍子もない叫び声に、何を言ってるんだコイツ?と思いながら空を見上げる2人。すると空には…………
快晴の空だというのに、青や紫に輝く流星群がテイワットの空を駆けていったのだ。しかも、その一部は既にモンドに墜落しているように見えた。
「おいおい…… テイワットじゃ昼間に流星群が降るのが日常なのか……?」
「そんな訳ないでしょう!? このような現象、私も初めて見ましたよ…… 一先ず、周辺を調査してみましょう」
見覚えのない現象に不安に駆られた3人は、急遽石門を後にすることにした。
その道中での事だった。
モンド城への道中にて、同じく旅人なのだろうか、巨大な笠を被った1人の少年が、反対側から歩いてきた。
「……おや? そこの君達、急いで何処へ行こうとしてるんだい?」
「どうも、こんにちは。さっき、昼間だってのに流星群が降ってきただろ? 見慣れない光景で不安になったから、モンド城に向かおうとしてた所なんだ」
「……………………っ!?!?」
「成程…… なら僕から1つ忠告しておくとしよう。聞いた話によれば、その落ちてきた隕石に触れてしまった人間は、どういう訳か昏睡状態に陥ってしまうらしい。もっとも……」
────刹那。
和装の少年が忠告をしている真っ最中だというのに、空達は血相を変えたモナの手によって、強制的に離脱を余儀なくされた。
……道すがらには、1人残された少年。
「……あらら、逃げられちゃったか。僕の詳細は彼らには知られてなかった筈なんだけど……何かを「見る」能力でもあったのか?」
「……まぁいい。今回の主な任務は、何も彼らの殺害じゃあない。自分の為すべき事をするまでだ」
物騒な言葉を残し、少年は来た道を戻る。
…………彼の名はスカラマシュ。
又の名を、ファトゥス執行官第六位『散兵』。
「……ぷはぁ! やっと出てこれたぜ……」
「でも、何だって急にあの場から撤退したんだ? お尋ね者なのかアイツ?」
モナの緊急脱出により、一同はモンド城までの旅路をむしろ大幅に短縮していた。
それはそうと、何故道中で緊急避難をせざるを得なかったのかをモナに聞いてみる。
「お尋ね者なんて可愛いものじゃありません。いっぱしの占星術師であっても、あの人物が『ファデュイの上位層の人物』である事は簡単に見抜けます」
「なっ、ファデュイだって!?」
「何の目的でこの地に……っ、まさかあの流星群……!」
「可能性としては浮上してきたでしょう。今まで以上に十分注意する必要があります」
モナからの警告を受け、今回の超常現象が人災である可能性があるとして、身体に更なる緊張が走った。
それはそれとして、3人が飛んできた場所の近辺に、位置としてはモンド郊外に値する「清泉町」という集落があった。
モンド城までの道のりとして通る必要のある場だったので、流星群にまつわる話を聞きながら通過する予定だった。の、だが…………
「……? あんな所に仮設テントなんてあったか?」
「あっ、おい! テントに人が何人も倒れ込んでるぞ!?」
「まさか、もう隕石の影響が出始めてるんですか……? 急いで確認しましょう!」
見慣れないテントが幾つか設置されており、救急搬送された人達が寝転がっているのを見るに、既に何かが起こってると見ていいだろう。
そんな中、急いで介護に回っている者達の中に、空達もよく知る人が紛れていたようだ。
「あれ、レザーじゃないか! 今日は狼たちとは一緒じゃないんだな」
「もしかしてレザーも、あの隕石が気になって来たのか?」
「…………! お前達、来てたのか。隕石、降ってきた。ルピカ、人間、心配。だから、オレが来た」
「ん? この人達は……! 西風騎士団の栄誉騎士か!?」
介護メンバーの中でも特に目についたのが、ボロボロのフードを被った顔に傷がある白い長髪のレザーという少年と、額のゴーグルと鼻についた絆創膏が特徴の少年の2人だった。
「紹介、する。空、パイモン、オレの友達」
「やっぱり! えーと。初めまして、だよな? 俺の名前はベネット。冒険者協会に所属している冒険者だ。お前の噂はかねがね聞いていたから、是非とも逢いたいと思っていたんだ。まさか、こんな緊急事態でとは思わなかったけどな…… ところで、そちらの人は?」
「占星術師、アストローギスト・モナ・メギストス。モナで構いません。訳あって彼の旅に同行させてもらってました」
各々が自己紹介をしあってるので、ここでまた1つ出てきた単語について説明させてもらおう。
冒険者協会とは、テイワットの七国の人々や他の組織のために、冒険者の斡旋を行う組織である。
冒険者協会は、寄せられた複雑な口コミ情報を集約し、冒険者に割り当てられた任務や冒険という形で再配布している。その内容は多岐に渡っており、猫探しから秘境探索までこなす。
テイワット七国の各地に支部が設置されているが、本部があるのはどうやらスネージナヤらしい。最も、ファデュイとの関連性は見られておらず、独立した組織である事が窺えるのだが。
モットーは『星と深淵を目指せ!』
実のことを言うと、空も冒険者協会に所属してはいる。しかし、大抵のことは1人でこなせてしまう為、今まで冒険者同士の横の繋がりは形成していなかったのである。
まだまだ続きますぜ
- 帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - ( No.9 )
- 日時: 2023/07/02 22:05
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
「……つまり。今ここで昏睡状態になっている皆さんは、隕石に触れてしまった事が原因であると?」
「あぁ。ここに搬送された全員の共通点がそれだからな。まず間違いないと思う」
「……けどよ。だとしたら、なんでおまえはピンピンしてるんだ? 隕石墜落時に飛んできた破片が、確かにおまえに直撃したんだろ?」
自己紹介を済ませた一同は、現在状況の共有を行っていた。
隕石に誤って触れてしまった者達が悉く昏睡状態に陥らされたというのに、どうやら隕石の破片を頭で受け止めてしまったベネットは無事だったのだという。……隕石の破片が被弾するってどういう運してるんだコイツ。
「しかし、この事象は隕石の正体を掴む手がかりになるはずです。……ちなみに、その隕石の破片は今どこに?」
「冒険者が、もってった。他の破片、集めてる」
「なるほど、被害を拡大させない為に隕石の回収に乗りでたのか。しかも、調査が続行してるって事は、その人達も隕石に触れても大丈夫な人だった。ふむ……」
ここまで口にして、空は思案する。
丁度今、彼には1つの仮説が浮かんでいた。
……レザーのフードの背中にあった紫色の球と、ベネットの腰のポーチに羽目られた赤い球を見て。
「……なぁ。その破片を持っていった冒険者って、神の目を所有してなかったか?」
「? 確かにフィッシュルなら神の目を持ってるけど」
「……! なるほど、元素力が原因だとすれば……!」
「恐らくは御名答よ、異郷の旅人達よ」
つまりはこうだ。
降ってきた隕石には元素力が込められており、神の目を所有するベネット達であれば取り扱う事が出来たが、一般の人間が触れると元素力の影響を直で受けてしまうが為に昏睡状態に陥ったのではないかという話だった。
そして、空達の話に割って入ってくる声の方を見やると、3人の少女と1羽の鴉が町の外から戻ってきたようだ。
「おっ、フィッシュル! 戻ってきたのか! それで、隕石の欠片は……?」
「えぇ。彼の地に飛来せし星屑達は、全てわたくし達の手によって回収されたわ。これで、夢境に囚われし衆人達も、永久に沈む呪縛から解き放たれる筈よ」
「次期に皆さんも目を覚ますことでしょう、と仰られております」
「ふん、この辺りはアタシからすれば庭のようなものにゃ。隕石の欠片を探すなんておちゃのこさいさいにゃ!」
「皆様のご期待に応えられたようで良かったです。あら、あなたさまも来てくださったのですね!」
ここまでの説明でベネットとレザーについては軽く触れる事が出来たと思われるが、彼女達にはそんな時間はあまり作れなさそうなので、こちらで軽く説明させてもらう。
まずはベネットと会話をしていたフィッシュルという女の子。
紫と黒の薄手の装束に身を包んでおり、左目を眼帯で隠しているなど、見た目の時点でアレな気がするが、言動も自称:断罪の皇女など、明らかに厨二病患者。おまけにCVが内田真礼氏なので完全にやみのまである。狙ったろホヨバ。
冒険者協会出身の雷元素の使い手で、自らの権能によって召喚された夜の如き漆黒の鴉「オズ」を従えている。皇女の厨二病発言をオズが注釈するのはもはや日常茶飯事。みんな苦い顔をしがちなのだが、ベネットは素直に憧れているようだ。男の子だねぇ。
2人目は猫耳、三毛の尻尾、語尾のにゃが目立つ幼女。名をディオナという。カッツェレイン一族という人よりの猫獣人と見てもらって構わない。
普段はキャッツテールという、エンジェルズシェアとは別の酒場でバーテンダーをやっている。幼女なのにバーテンダーとはこれ如何にと思うかもしれないが、ファンタジーなので置いといてほしい。彼女が作るお酒は非常に美味しいらしいのだが、酔っ払いがウザ絡みしてくるからか、本人はお酒が大嫌いな模様。
清泉町を庭と称しているが、実際に彼女の生まれは清泉町。父親のドゥラフがこの村の代表みたいなものである。氷元素の神の目持ち。
3人目は軽装鎧調のメイド服に身を包んだ少女、ノエル。
西風騎士団への本格的な入隊を切望する女の子。本職は見たまんまのメイドさんである。普段の活動範囲はモンド城なのだが、此度の流星群襲来は大きな影響を及ぼすだろうと考え、モンド城内の安全を確認した後に城を飛び出した所を、ディオナ共々ベネット&フィッシュルに協力をお願いされたという経緯がある。
岩元素の神の目を所有しているが、性格も岩と形容していい程に頑固。
新メンバー、続々参上。
- 帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - ( No.10 )
- 日時: 2023/07/02 22:09
- 名前: HAL (ID: J0KoWDkF)
フィッシュル達が周囲に散らばった隕石を回収したからか、この地に影響を及ぼしていた元素力の変動も薄まり、昏睡状態になっていた町人達も次第に意識が回復して言った。しかし、まだ全員が回復した訳ではないようだ。
「困りましたね…… まだ全員の意識が回復したわけではないようです」
「どうやら、意識を奪われた者達の中でも数人程は、より堅牢な呪いに掛けられてしまったようね…… なんと嘆かわしい事かしら……!」
「流石に隕石の影響はだいぶ緩和された筈です。追加で何かしらのアクションを起こしてあげれば、彼らの目を覚ます事が出来ると思うのですが…… ベネット、昏睡状態の彼らにはなにか他の特徴などはありませんでしたか?」
「特徴か? …………あっ、そういえば。何度か寝言を呟いてた筈だ。「翼がほしい」とかなんとか言ってたはずなんだが……」
「翼? なんでまたそんな……」
フィッシュル曰く、呪いと称された今回の事件。ベネットが言うには、昏睡状態の人達はだいたい皆が「翼がほしい」という訳の分からないことをうなされながら呟いていたようだ。
あまりにも訳が分からなかった一行は、せっかくなので寝言の全文を聞く事にした。
今も尚倒れている男から、次第にこんな言葉が聞こえてきた…………
「今……私の…………
願……い事が…………
叶うな……らば…………
翼が……欲し……い…………
この……背中に…………
鳥……のように…………
白い……翼…………
付けてく……ださ……い…………
この大……空に…………
つばさを広げ…………
飛んで……行きた……い……よ…………
悲し……みのな……い…………
自由……な空……へ…………
ツバサ……はため……か……せ…………
行きたい………………」
「……この寝言、なんといいますか……詩のようですね」
「けれど、わたくしの記憶にはこのような旨の叙述詩は存在しなかった筈。だとすれば、この呪われし文は一体……?」
「清泉町でもそんなお話は聞いたことないにゃ……」
「……? どうした、旅人? なにか思い当たる事でもあったのか?」
(……これ、まさかあの歌だったりしないよね?)
……はい。読者の皆さんであれば一発で分かると思われるのですが、どうやら男がうなされている悪夢から生じる寝言が、どう聞いてもあの定番の卒業ソングなのである。どういう物語の弄り方したらそんな形になるんですか。ていうか翼をください歌ってうなされる悪夢こそ何なんだよ。
おまけに、ここまでの事実が判明したとして、じゃあここからどうやって呪いを解くなりして皆の目を覚まさせるんだって話になる訳で。状況が見えたら却って解決手段が分からなくなるってどういう事ですか?
──しかし、ここで異郷の旅を続けてきた空に、とある1つの案が浮かんできた。
「……もしかしたら」
これらの情報から何かを思いついたのか、空は皆にこんな提案をしてきた。
「皆、このうなされ声は暗号かもしれない。各暗号に呼応した言葉を届けてあげれば、きっと呪いが解かれて目を覚ますはずだ!」
「ほぅ? 暗号…… 良いわ、この断罪の皇女も貴方達の力になる事を約束するわ!」
「なるほど、良い着眼点ですね。試す価値はありそうです……」
「暗号……? それ、なんだ?」
「ええっと、そうだな…… レザーにとってのルピカみたいに、その人達じゃないと分からない言葉、みたいなものかな?」
「暗号に呼応した言葉、ですか…… 出来る限りは頑張ります!」
「にゃっ! 男がまた寝言を言いそうだよ! 試すなら今のうちにゃ!」
ディオナが呼び掛けたように、倒れている男はまたしても悪夢?にうなされはじめた。
物は試しという事で、早速全員でそれぞれ思い浮かんだ呼応する単語を放つことにした。
※ここからは一時、地の文がフェードアウトします。呼応の1連のやり取りを是非とも最後まで見届けてやってください。
「今……私の…………」
パイモン「気持ちを込めて……!」
「願……い事が…………」
ノエル「……祈るように」
「叶うな……らば…………」
モナ「ほんとはモラとか欲しいけど」
「翼が……欲し……い…………」
空「やっぱり原石(ガチャ石)欲しいかな!?」
パイモン「ちょっと待て!? こういう感じか!? こういう感じなのか!?」
空「確実に手応えがあるぞ!」
モナ「…………はっ! わ、私は一体何を……?」
フィッシュル「占星術師よ。あなた、本当に大丈夫なの……?」
「この……背中に…………」
レザー「ハト、鷺、ヤマガラの」
「鳥……のように…………」
ディオナ「泥とか跳ねたら目立つけど」
「白い……翼…………」
ベネット「頼むから聖遺物を!」
「付けてく……ださ…………」
フィッシュル「…………ファトゥス執行官の単位!」
「位…………」
フィ&モナ&空「「「ファデュイ滅ぶべし!!!」」」
ディオナ「本当に解読出来てるのコレ!?!?」
ベネット「何言ってるんだ! ホプキンスさん(倒れている男性)の表情がみるみる変わってきている! 解読出来てる証だろ!?」
ノエル「でも、どこか苦しんでいる様にも見えるのですが……;」
フィッシュル「解呪が容易くいくとは思わない事ね。何かを成すには、それ相応のリスクというものを背負う必要があるわ」
レザー「……! 次、来る!」
「この大……空に…………」
パイモン「蒼鳥」
「つばさを広げ…………」
ディオナ&レザー「「風域」」
「飛んで……行きた……い……よ…………」
フィッシュル「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行する鉄の皇女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ」
「悲し……みのな……い…………」
ノエル&ベネット「「モンドの」」
「自由……な空……へ…………」
空「夕凪」
「ツバサ……はため……か……せ…………」
モナ「公子のお金で琉璃亭」
「行きたい………………ってうわああああっ!?!?」
全員『目が覚めたぁ!?!?!?』
な ん だ こ れ
完全に○ごメ○で流行ってた翼をくださいネタを最新&原神アレンジで提供しやがったよコンチクショウ!
しかもフィッシュルとモナが比較的ボケ役に回ってるのどうかしてるだろ!?
何はともあれ、この謎詠唱の影響は大きかったのか、残っていた悪夢に囚われた者達も無事に全員目覚めたので、この話はこれにて一件落着となった。
さて、その帰り道での事だった。
フィッシュル達は街に帰る為、空達は街に着く為、レザーはせっかくなのでもう少し遊ぶ為にモンド城に移動していたのだが、門の前で帽子から衣服まで燃え上がるほど真っ赤な幼女が立っていた。
「あっ、栄誉騎士のお兄ちゃんにパイモンちゃん! それにレザーにみんなも! おかえりなさい!」
「! クレー、久しぶり……!」
クレーという女の子に直ぐさま駆け寄ったのは、意外にもレザーだった。
実はクレー、西風騎士団の「火花騎士」という少々特殊な役職で騎士団に守られている。の割には結構アウトドア派で、野山に遊びに行った際にレザーを気に入って仲良くなったという経緯がある。
……しかし、彼女に対して特殊な反応をした人物がいた。
「……やっぱりです! 私は彼女に用があってモンドまで来たんです! 偉大なる学識の継承者に!!」
「「えっ、クレーが!?!?」」
……ちょっと待て。モナ、君は何を言ってるんだ?
こんな完全なおこちゃまであるクレーに学識の継承とか出来てるのだろうか?
当然ながら不安になる空とパイモンだったが、そんな心配をよそに、モナはクレー達の方へと歩みよっていった…………
尚、今回の一連の流れで縁を結んだという事で、解散間際に今回関わったメンバーを全員塵歌壺に招待してあげた。なんならモンド城まで帰ってきたので、西風騎士団の皆やディルック、ウェンティにバーバラも壺に招待した。やりたい事はきっちり全部やってのけてしまう辺り、空もちゃっかりしていたのであった。
……最後に、場所は打って変わって、とある海岸。
ここには、今回飛来した流星群の大元みたいなものが残されていたのだが、1人この巨大な隕石を調査している者がいた。
「……っはは。とんでもない事だよ。『この星空自体、全て巨大な嘘』だなんてね」
散兵は1人、大元の隕石に込められた記憶──いや、厳密にはその記憶が意味するテイワットの星空に関わる考察に、心を踊らせていた。
しかし、この考察の詳細については、現在進行形で未だなお明かされてはいないのであった…………
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はい、ここまでが実質プロローグ後編となります。
本シナリオの元ネタは原神Ver 1.1『帰らぬ熄星』、及びモナの伝説任務、映天の章となっております。黎明期の頃のネタなので多分大半は知らないかもしれません。私は実はやっておりました。原神古参勢です、ハイ。
次回からは大幅な人員増加はないのですが、今後も適時メンバーを追加出来たらと思います。
それでは感想をどうぞ!