二次創作小説(新・総合)
- Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.100 )
- 日時: 2013/09/23 22:01
- 名前: 風龍神奈 (ID: .XV6mGg/)
- 参照: No.100達成!
第12話 偽癒月の正体
『皆さん、急いでサロンに集まってください。至急、お話したい事があります』
雷門メンバーの携帯に、その内容のメールが届いてから数分後。
全員が、サロンに集まっていた。
「…一体、どうしたの?」
「——癒月が、偽者だと分かりました」
「「「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」」」
葵に、怪訝そうな顔を向ける雷門イレブン。
「どういう事だ? 癒月は、何も変わっていないじゃないか」
「それは、偽者が、そういう風に振舞っているんですよ。それに、彼女は誰かと話していました」
「それが、どうして偽者に——」
「あら、意外と早くばれちゃったのね」
いつの間にか、葵の背後に、癒月——カオスが立っていた。
「まさか、私の後をつけてくるとは。マネージャーは、侮れないわねぇ〜」
「…お前は、誰だ?」
神童が低い声で誰何する。
「私? 私は、洸様に作られし模造人間(クローン)第一号、カオスよ」
あっさりと、カオスは答えた。
「クローン、だと…!?」
「そう。癒月という奴の髪の毛から、作られたのが私よ」
「だから、そこまで似ているんだな」
「まぁね。——とは言っても、君等は気付いていなかったんでしょ? 私が言うまで」
「何をだ!」
今度はフェイが問うた。
「癒月が入れ替わっている事も、霧野という奴は、私に攫われたという事も、二人は今閉じ込められている事も、君等のクローンが、作られている事も」
「何だと…!?」
カオスが言った事を理解したフェイが、驚愕の表情で彼女を見つめる。
「…まぁ、大体そんな事かな。——ああ、後、どこかでか、君等宛てに、招待状が来るから。ちゃんと、来なさいよ。
——来なかったら、二人がどうなるか、分かるわよね?」
普段の癒月の笑顔と違って、妖艶な笑みを見せたカオスは、雷門メンバーを見回してから、高笑いをして、その場から消え去った。
◆ ◆ ◆
「…で? 何の用かしら、洸」
癒月が、洸を睨み付ける。
「…ちょっと、来てもらおうか」
「嫌よ」
洸の命令に逆らった癒月。
「そうか。——なら、こうしたらどういう反応を取るかな」
洸が手を突き出す。
瞬間。
「ぐあっ!!!」
隣にいた霧野が悲鳴を上げた。
「霧野先輩!?」
霧野の背に、幾つかの鋭いナイフが刺さっている。
「さて、どうする? お前が来るなら、この所業を止めるが?」
「行くから、霧野先輩には手を出さないで!!」
癒月がそう言った瞬間、霧野の背からナイフは消えた。
が、血は未だに流れていて、服を染める。
「先に、霧野先輩の治療をしていいかしら?」
「構わん。さっさとすればな」
- Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.101 )
- 日時: 2013/09/23 21:54
- 名前: 風龍神奈 (ID: .XV6mGg/)
「あっそう」
癒月は縄を解き、枷を取ると、霧野の背に手を当てた。
聖印が出ないよう意識しながら、治癒力を持つオーラを背の傷へと当てる。
みるみる内に傷は無くなり、傷跡も残らず、それは消えた。
「…これで、大丈夫です」
癒月はそう言うと、洸の許へと行く。
「癒月…!」
心配そうな顔をする霧野に、癒月は。
「大丈夫。——必ず、戻ってくるから」
そう言って、微笑んだ。
同時に、洸と癒月の姿が消えた。
◆ ◆ ◆
「癒月と…霧野が洸の手元に…」
カオスが去った後のサッカー棟サロンでは、雷門メンバーが沈鬱な表情をしていた。
「考えたくないけど、事実なんだろうね…」
「という事は、招待状みたいなのも来るんだろうね…」
「…にしても、癒月をまた奪われるという…」
「しかも、今度は霧野まで…」
「…一番最悪だな…」
等と呟く雷門メンバー。
だが彼等彼女等は、これより酷い災厄が訪れる事を知らない。
「——そんな事を考えている暇はありません」
不意に、剣城の言葉が響いた。
「そんな事を考える前に、やる事があります。…そうだろ、天馬?」
剣城の目線が天馬へと向けられる。
「…ああ!」
剣城の問いの意味が分かった天馬は、頷いた。
◆ ◆ ◆
「…それで、何処に連れていく気?」
再び両手首を後ろで拘束された癒月が、目の前で歩いていく洸に問いかけた。
「お前は黙ってついてくればいい」
洸のぞんざいな言い方にむすっとした癒月は、だがしかし黙ってついていく。
「着いたぞ」
洸が目の前の扉を開ける。
中は広いが、明かりが壁に取り付けられた松明しかなく、部屋の真ん中には明かりが届いていない。
「——今から、お前にはある事を見てもらう」
洸がそう言って、近くにあったスイッチを押した。
瞬間、壁の松明の炎が一斉に消え、部屋が暗くなったかと思うと、急に明るくなった。
急激に明るくなったおかげで、目を細めた癒月は、部屋の中心に、魔法陣と——人の遺体が、横たわっているのに気付いた。
その時、急に癒月の心臓が音を立てて跳ね上がった。
あれを見てはいけない。見たら、最後——。
癒月の脳が、危険信号を発する。が、視覚はそれを綺麗にとらえてしまう。
「——あれが誰だか分かっているな? お前達が殺した、焔(ほむら)だとは」
どくん、と心臓が跳ねる。
隣で少しずつ青ざめていく癒月に、洸は静かに言った。
「——その破壊死書をよこせ。この場で俺は焔を復活させる」
「…渡さない。何があろうと破壊死書は…、っ!?」
拒否した癒月は、腹を貫かれたような感覚がして、視線を落とす。
癒月の腹には、合口と呼ばれる短刀が突き刺さっていた。
「…っ!!」
ごぽ、という音とともに、口の端から、血が一筋垂れる。
- Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.102 )
- 日時: 2013/09/23 21:56
- 名前: 風龍神奈 (ID: .XV6mGg/)
膝の力を失って、その場に倒れる。
刺された箇所からゆっくりと、血が服を染めていく。
「…どう…して…」
「実はな、人を復活させるためには、ある物があるのさ。——それは、破壊死書を持っている者の、血と、体」
「…!!」
意味を察した癒月は、何とか立ち上がって逃げようとする。
「逃げさせる、何て行為すると思うか?」
洸が癒月の体を壁に縛り付ける。
「…か…はっ…」
視界が薄暗くなっていく。
駄目だ。ここで意識を失えば、自分はこの世からいなくなってしまう。
癒月は最後の力を振り絞って、破壊死書に呼びかける。
——何だ
破壊死書が、呼びかけに答えた。
(お願い、力を貸して欲しいの)
——お前は喰われる事になるぞ
(ううん、呼び出すほうじゃないの。その姿のままで、力を貸して欲しいの)
——…代わりに、一滴の血を
(分かった。から、力を貸してね)
破壊死書はそう言うと、何も答えなくなった。
癒月は気力を振り絞って、血を一滴破壊死書に垂らしてから、小さく唱えた。
「…セラピア」
瞬間、破壊死書から光が迸ったと思うと、癒月の体を包み込んだ。
と、一瞬にして、傷口が消え去る。
からん、と合口も地面に落ちた。
「…ディスペーリ」
続いて違う単語を唱え、縄を解く。
癒月が地面に降り立つと、洸が鬼をも殺すような表情で此方を睨んでいた。
「——貴様、破壊死書の力を使ったな」
「使ったわよ。何か文句あるの?」
「文句等は無いさ。ただ——」
洸が合口を素早く拾ったと同時に、癒月の首筋へと当てる。
「お前が破壊死書の力を使った所為で、焔を復活させる事が数日後になってしまっただけさ」
壁に押し付けられ、首筋に短刀を突きつけられている癒月は、それを恐れずに言った。
「…成程ね。これは、一度力を使うと、暫くの間使えないからね」
「分かっていたのか」
洸がぐぐっと、短刀を押し付ける。そこから、血が少しずつ滲んでいく。
「分かっているに決まってるじゃない。私は、これを守護する氷炎使いの片割れ、氷の継承者何だから」
「………」
洸は無言で短刀を懐に直す。
「…戻れ」
そういった洸の目が、悲しみと憎悪の色に濁っていたのを、癒月は見た。
◆ ◆ ◆
「——さぁ、皆。出てきなさい」
高らかな声が、暗い部屋に響き亘る。
と同時に、数人の足音が、その部屋から聞こえた。
「…ふふふ…」
- Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.103 )
- 日時: 2013/10/03 17:18
- 名前: 風龍神奈 (ID: d8lWLfwU)
待っていなさい、雷門中のサッカー部よ。
カオスは妖艶な笑みを浮かべると、その足音を立てた者達と一緒に、部屋を出て行った。
◆ ◆ ◆
「わっ!」
練習を再開していた雷門中サッカー部の一人、雨宮太陽の許に、一枚の封筒が舞い降りてきた。
「! これって…もしかして」
カオスが言っていた、招待状だろうか。
太陽がその封筒を見つめていると、それに気付いたらしい神童が、召集をかけた。
皆が一斉に、太陽の許へと集まる。
「太陽、もしかしてそれは」
「…多分、招待状だと思う」
天馬の問いに、太陽が答える。
「…でもさ、それにしては早すぎない?」
だが、それに異論を唱える者が一人。
「そう…だけどさ、フェイ、あんな事を言われた後に、招待状以外ってのは想像出来ないよ」
そう言われたフェイは、ばつが悪そうにそっぽを向きながら、ぼそりと呟いた。
「…でもさ、もしそれが偽物だったら、また…」
彼女は、あれを使う羽目になり、今度こそ——。
そんなフェイの思いを知らないまま、雷門メンバーは、話し合っていた。
「行った方が、いいと思うんだけど」
「だが、その場所がのっているのか?」
「載っていますよ。でも…、10人で、どう戦えばいいんです?」
天馬の言うとおりだった。
此方は癒月と霧野が人質に取られており、9人(実質的にはクロノストームで言えば10人)しかいない。
誰がどう考えても、この人数では戦いにくいと、思ってしまう状態だった。
「…いや、もしかしたら、二人を返してもらえるかもしれないぞ」
「もし、二人を返してもらったとしても、相手の戦力は上だったら終わりですよ」
「上でも、勝てるじゃないか。——だって、此方には最強の戦力があるのだからな」
神童がそういったと同時に、踵を返す。
それは、この会話は終わりだ、という合図でもあった。
かくして、クロノストームは、招待状にかかれた場所に向かうことにした。