二次創作小説(新・総合)

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.165 )
日時: 2014/11/01 03:15
名前: 風龍神奈  (ID: lMBNWpUb)


 第22話 氷炎使いガウマレタリユウ

「なっ———!?」
 神楽が言った言葉に、フェイは二の句が告げなくなった。
「…先代氷炎使いから聞かなかったの? それとも…やってはいけない事をしたから教えられてないかな?」
 神楽の問いに、フェイは答える。
「…そんなの、聞いた事がないよ。僕達が教えられたのは、氷炎使いの歴史とその力の使い方、破壊死書について位…。歴史には、貴方の名前なんて出てこなかった。無論、癒月もそんなのを話すどころか貴方が実の母親と知らないしね」
「そうだろうとは思ったわ。だって、私は一度、殺されたのを破壊死書によって息を吹き返したんだもの」
「!? 闇焉が言ってた言葉はそういう意味…!?」
——一度破壊死書によって呼び戻された人間何て、“化け物”で十分だろうが
 あの言葉は、この事を言っていたのだ。
「…禁忌であるそれを行ったのは、トレイターだけどね。私が殺されたから、破壊死書を使って私を復活させた。自分に降りかかる災いも省みずに」
 神楽の言葉の中に聞きなれない言葉を聞いたフェイは、反復した。
「…災い…?」
「…知らないの? 禁忌は行うと、災いが自分に降りかかるのよ。…あの、妹を蘇りさせ、だが妹はあの世に還り、自身も悪魔に連れ去られた洸(ほのか)のようにね」
「ッ!? 何で奴の事を!?」
 瞠目したフェイは問う。
 すると、神楽はとんでもない事を言った。

「視てたから。実はね、貴方達二人が氷炎使いになった時から、ずっと私は視ていたのよ。貴方達が、この、氷炎使いの役目を終わらせる事が出来、破壊死書を封印する事が出来るかどうか、視て確かめていたの」

「!!?」
 神楽の言葉に、彼はただ瞠目する。
「…あ、貴女は一体…何者なの?」
 ややあって、フェイは、訊いた。
 ずっと、彼女の事が気になっていたのだ。此処に連れて来られた時に言った、あの言葉から。
——これら全ての因縁を断ち切り、この世界を平和へ導く為にね
「…本当に、一体…」
「——それは、ひ・み・つ。その方が、後々面白いでしょうから」
「…もう一ついい? 貴女は、人間なの?」
「勿論、人間よ。氷炎使いの役目をしてたから、不老不死でずっと生きているだけであってね」
 さらりと答える神楽。
「…あ、そうそう。君、太陽を連れて来てくれないかな。君等に、大事な話があるのよ」
 すると、彼女はそう言ったので、フェイは大人しく従って、雨宮を呼ぶ。
「…何、母さん」
 明らかに敵意のある目で、母親を見る。
 が、それを見ずにすっと踵を返すと、肩越しに振り返っていった。
「君達、ついてきて」

 ◆     ◆     ◆

(…か……………ん………)
 真っ暗な、虚無の空間に、小さな声が漏れた。
(………イ………)
 続いて、漏れたかと思うと、それきりまた声は聞こえなくなった。

 ◆     ◆     ◆

 其処には、会わなければならない——破壊死書がいた。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.166 )
日時: 2017/12/08 03:04
名前: 風龍神奈  (ID: DWz/vbtf)

「「!!?」」
 フェイと雨宮が同時に驚く。
 一方、破壊死書も此方を睨んで来た。
「貴様…」
「はいはい。今回は君等3人に話があったから、此処に来てもらったの。…さ、座りなさい。大丈夫、毒とか薬物は入っていないから」
 神楽が一人用の椅子に腰掛け、右手にフェイと雨宮、左手に破壊死書が座った。
「…一体、何の話をするの?」
「そりゃあ、勿論———氷炎使いが生まれた理由よ」
「「「!!?」」」
 神楽の言葉に、皆が瞠目する。
「なっ…!! 氷炎使いが、生まれた理由だって…!?」
「そうよ。そもそも、氷炎使いは破壊死書が発見された事によって始まった役目。だから、理由があるのよ。…そして今から話すのは、その事についてよ…」
 神楽の語りが始まった。
 事の始まりは今から1000年前、一つの探検隊が、神秘の力に満ちた森の奥深く、洞窟の中でとあるモノを見つけた事から始まった———。
 それは、この世界の秩序ともいえるモノで、善と悪、正と邪を両方持っており、万能の存在であった。そんなモノを見つけたとあっては、持ち帰るだろう。無論、その探検隊も、それを持ち帰ろうと思い、手を伸ばした。
 が、それは様々な現象を起こし、自らを持ち帰らせないようにした。だが、それに屈服する事なく、ある一人の男がそれを手にした。途端、それは大人しくなり、手の平に収まるぐらいの大きさになる。奇跡だ、とその男は言った。これは、何でも叶えられるんだ、と言うと、嬉しそうに男はそれを持った手を握った。
 だが、それから5年後。その男はそれの暴走に巻き込まれて死亡し、それだけが残った。その探検隊に所属していた一人の男が、それを受け取った。しかし、その暴走を恐れたその男は、身分を隠して、噂で聞いた事のあるとある二人を訪ねた。君達にこれを受け取って守ってほしい、だがこれを狙う輩がいるので注意してほしい、と男が言うと、その二人は気になったのか受け取った。そして、受け取ったモノがあれだと分かった時には、その男は消えていた。
 その二人は、悩んだ。これを元の場所に返すかどうかで。だが、話し合いをしている時に闖入者が現れ、危うく彼女の命が失われる寸前だった。撃退出来たものの、また襲ってくると考えた二人は、遠い地へ向かう事を決め、それに話した。すると、それは———二人によって破壊死書と名づけられたモノは、突然喋りだし、二人に力を与えた。それが——炎の力と氷の力である。それぞれ受け取った二人は、自らを、炎と氷の力を操りし者として、氷炎使いと名乗るようになった。
「——ここまでが、氷炎使いが誕生した理由よ」
「「「………」」」
 フェイと雨宮は瞠目し、破壊死書はただ眉を顰(ひそ)めただけだった。
「…だが、まだ続きがあるんだよな。我を完全な存在から半分消えた存在にした理由が」
 が、彼女がそう言った。
「そうね。でも、貴方は知っているから別にいいでしょ? 私が貴方を狙いにやってきた者共に殺され、トレイターが貴方を使って私を復活させた事は。…おかげで、今のあいつは全然…良く無いわ…」
「…確かに知っているから構わないが…。それと、我の所為じゃないぞ、あやつがああなったのは」
 神楽は破壊死書の言葉を聞いて、答える。
「貴方を使ったからあいつはああなったのよ? 死者を復活させる為に貴方を使うと、災いが降りかかると言われていたのにも関わらず」
「それをいうなら我だって被害者だ。奴の所為で、我は不完全な存在になったのだから」
「不完全な存在で、人を喰らってる時点でそういえないわよ」
「——貴様、それ以上ぬかすと殺すぞ」
 神楽の物言いに切れたのか、破壊死書が殺気を放つ。
「ッ」
 殺気に慣れていない雨宮の体が震える。
 彼を支えながら、フェイは行く末を見ていた。
「…ッ、何故だ…」
 破壊死書が空気中の水分を集めて、氷破刃を作り出そうとする。が、集まらない。—否、魔力が使えないのだ。
「ああ、悪かったわね。貴方の能力なら、暫く使えないようにしてるわよ」

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.167 )
日時: 2014/11/02 23:04
名前: 風龍神奈  (ID: bxOWKuH4)

「何だと…!? どういう事だ、それは!!」
 彼女が立ち上がる。
「言う通りよ。必要があったから、貴方の能力を封じただけ。分かる?」
「分かるも何も、そんな事をするなど…!! やはり人間は信頼に値しない存在だな!!」
 そう言うと、破壊死書は踵を返した。
「あらあら…あんなに怒って…」
「…あんな事言われたら、誰でもああなると思うけど?」
 ずっと口を噤んでいたフェイが、訊く。
「私はならないわ。それに、破壊死書を怒らせて部屋から出させるのは計画通りだから」
 神楽が、そう言って立ち上がる。
「…これで話は終わり。帰りなさい」
 彼女が踵を返す。
 残された二人は、暫くの間、その部屋に残っていた。
「…フェイ、どうする…?」
「どうするって、何を」
 不意に問うた雨宮の真意が分からず、フェイはそう聞き返す。
「破壊死書だよ。だって、破壊死書の体は癒月の何だろ? 取り戻さないといけないんだろ?」
「…そうだけど。でも、完全に破壊死書は癒月の体に根付いているんだ。簡単に引き剥がす事は出来ない。それに、無理矢理引き剥がしたとしても、後遺症が残ってしまうんだ。だから、今はまだ引き剥がせない」
 彼の言葉に、雨宮は俯くしかなかった。
 その様子がいたたまれなくなったのか、フェイが嘆息してこっそりと雨宮に耳打ちした。
「——あのね、太陽。実は———」
「——ッ!?」
 彼から聞かされた事に驚愕した彼は、フェイを見つめた。
「本当、なのか?」
「…うん。君、何だよ」
「…そうか…」
 雨宮は自分の両手を見つめる。
「この僕が……」

「——貴様等、帰ったんじゃなかったのか」

「「!?」」
 唐突に響いた声に、二人はその方向を見た。
 そこには、出て行った筈の破壊死書が立っていた。