二次創作小説(新・総合)

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜  ( No.171 )
日時: 2015/08/03 01:46
名前: 風龍神奈@ツイッタ名は秋菊/紅葉 (ID: PqA5kJXh)


 第24話 封印

「フェイ!」
 先に行っていた彼に、ようやっと追いついた雨宮は呼んだ。
「何?」
「破壊死書が動くのは、多分三日後だ」
 訊いたフェイに、彼は答える。
「!?」
 彼が一瞬瞠目する。が、すぐに表情が戻る。
「…本当何だね? 信じていいんだね?」
「ああ。破壊死書が言っていたから」
 雨宮の真剣な目に偽りが無い事を理解し、フェイはふっと表情を和らげる。
 知らず知らずの内に、力が入っていたようだった。
「…それじゃあ、その間に思い出しておかないとな…」
「? 何をだい?」
 不意に呟いたフェイに、雨宮が問う。
「——ここじゃまずいから、皆の所へ戻ってから話すね」
 そう言って皆の元へ歩いていく彼についていった。

 二人が皆の元へたどり着くと、数名はまだ倒れている者もいたが目を覚まし起きている者もいた。
 皆に治癒の結界をかけつつ、主要メンバーを呼んだフェイは、その周りに盗聴防止の障壁を張る。
「——単刀直入に言うね。破壊死書が行動を起こすのは三日後、大晦日の時だ」
「「!? 癒月が飲み込まれる日にか!?」」
 神童と霧野が同時に叫ぶ。
「うん。でも、その日になったらではないと思う。大晦日の最後、夜中の12時、つまり新年を迎えた時に破壊死書は全ての力を取り戻して癒月を取り込むと思うんだ」
「…って事は、俺達もその日に行動を起こした方がいいって事か」
「そういう事になるね。それ以前に行動を起こしてもマルペメーソに見張られている以上は無理だと思うし、そもそも破壊死書が完全に癒月の体に根付いてる以上、彼女が行動を起こすまではやめた方がいい」
 神童の言葉にフェイが頷き、そう加えた。
「…とりあえず、今からこの事を知らない彼等を転移魔法で雷門中へと送り届けるよ」
「…大丈夫か? 奴らにバレたりしないか?」
「大丈夫だと思うよ。奴等にとって必要なのは僕と太陽だけ。それ以外の人の事は単に人質として攫っただけで興味もないと思う」
「それ…何気に俺達にも興味がないって言ってるようなもんだよな…」
「あ、ごめん」
 霧野に指摘され、即座に謝ったフェイはほんの一瞬軽く笑むと、雨宮に視線をあわせた。
「…太陽は大事な役目があるけど、大丈夫? 思い出せそう?」
「? 思い出すって?」
「まんまだよ。太陽の大事な役目っていうのは、生まれた時から——癒月と一緒に生まれた時点で定められた役目なんだよ。だから、君の中に眠っているはず」
 そう言うと、彼は術の準備をしてくると言ってその輪から抜けた。

 ◆     ◆     ◆

「貴女が…この…十六夜樹の、精霊…」
 目の前にいる、中性的な雰囲気の、古代風な衣装を纏った者。
 彼の者が、十六夜樹に宿るとされ、扉を封じている者か。
 フェイには説明しなかったが、十六夜樹が実を落として地を浄化し、扉を封じ込めている行為を行っているのは樹自身ではなく、彼の者なのだ。
「——はい。今回は、お伝えしたい事があり姿を顕現致しました」
「伝えたい事…って?」
 訊くと、閉じられていた瞼が開かれ、不思議な色をした瞳が彼女を見つめる。
「——三日後、破壊死書の封印が行われます。また、とある出来事も」
「!?」