二次創作小説(新・総合)

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.62 )
日時: 2013/06/14 22:51
名前: 風龍神奈 (ID: TKvpVzsu)


 第5話 合宿

 EDSCとの試合を終え、天馬達雷門イレブンは、フェイの知り合いがいるという神社がある盆地に合宿に来ていた。
 と言っても、泊まるのはその神社で特訓場所はその敷地内と山なのだが。
「…あっ、水無月さん、お久振りです!」
 その神社の鳥居を潜(くぐ)り抜けた先で掃除をしていた、一人の女性にフェイは声をかけた。
「おお、フェイじゃん。やっほう」
 フェイに気付いたその女性——霊幻 水無月(れいげん みなづき)は片手を上げて挨拶した。
「ん? その後ろにいるのは…もしかしてサッカー部か?」
「うん、その通りです」
 一発で当てた水無月に動じることなく、フェイは普通に答えた。
(((((((恐ろしい…)))))))
 雷門メンバーの心をそれがよぎっていったのは言うまでもない。

「…ああねぇ、成程。——つまり、合宿しに来たわけね」
「はい」
 所変わって今は神社横の水無月の住まいである霊奇(れいき)棟の広間に、皆はいた。
「いいよ、許可してあげる。…でもま、フェイ、あんたはまずタメに戻りなさい。」
「……分かったよ」
(大人しくフェイが従った!?)
 天馬達の驚きに気付く事無く、フェイは話を続ける。
「…で、部屋は此処を借りていいの?」
「勿論だ。此処は、そういう時のために大広間である鳳(おおとり)の間と不死鳥の間があるんだからな」
 水無月がにかっと笑いながら言う。
「分かった。で、早速裏山使っていい?」
「いいよ。…だが、フェイ、お前にちょっと聞きたいことがあるから、後で皆とは合流して」
「了解。…だってさ。皆、荷物を隣の鳳の間に持って行って、そして裏山に行ってて。
 …あっ、大丈夫だよ、裏山までは、水無月の式神が案内してくれるから」
 とフェイが言うと、水無月は懐から符を取り出し、息を吹きかけた。
 瞬間、符が可愛らしいイタチのようなテンのような姿になる。
「おい、ハクビ。こいつ等を裏山まで案内してやってくれ」
《承知しました。…皆の者、ついてき給え》
 ハクビにつられ、皆は裏山へと向かった。
 皆がいなくなった上に、神社内から気配が消えた時に、水無月は真面目な顔で切り出した。
「——癒月はどうした」
「…癒月は…その…」
 答えがしどろもどろになってしまうフェイ。
「…その反応だと大方、——癒月は敵の手に堕ちた、って所か?」
「!??」
 フェイの反応を見て、水無月は確信した。
「やはりな。…おかしいと思ったんだよ、私がお前達と初めて出会った時も、一緒にいたからな。なのに、今はいない。
 ——何があったんだ? 何でそうなった?」
 観察眼の鋭い彼女の事だ、多分僕達との邂逅から全て覚えて、記憶しているのだろう。
 フェイは心の中でそう思いながら、事実を打ち明ける事に決めた。
 皆には、癒月がいなくなったことすらも話していない。能力を使ってその部分だけを上手く調整したのだ。
「…実は——」
 とフェイは全て話した。原因は分からないけど、EDSCとの試合のハーフタイムから癒月がおかしかった事、その試合が終った直後にすぐ姿を消した事、そしてその事に自分しか気付いていない事、皆には話すどころかその部分だけを調整した事全て。
「…まさか、そんな事になってたとはな…」
 さしもの水無月も驚いていた。
「だが…何処に向かったのは分かる」
「その場所を教えて水無月!!」
 水無月がそう言った途端、フェイは立ち上がった。
「教えても良いが…今の状態だと行けないぞ」
「それでもいい、教えて」
 フェイの真っ直ぐな瞳に、水無月は折れた。
「…場所は——お前達を狙っている奴等のアジトだ」
「!!!!」
 表情が一気に驚愕に彩られる。
 今すぐその場に行きたい気持ちを押さえつけながら、フェイは訊いた。
「…何で、その場所に行ったかの理由は…分かる?」
「…残念ながら、そこまでは詳しく分からない。…場所が分かったのは、癒月(あいつ)の痕跡ともいえる能力の跡があったからな」
「! …じゃあ、癒月は『天空移動』を使って…」
「…まぁ、そうなるんじゃない?」
「…癒月…」
 俯いて拳を握り締めるフェイに、水無月は言った。
「…さ、この話はお仕舞いだ。——くれぐれも、皆には内緒な」
「…うん、分かってるよ」
 フェイと水無月は、裏山へと向かった。