二次創作小説(新・総合)

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.64 )
日時: 2013/06/16 21:33
名前: 風龍神奈 (ID: MsKbtUWA)
参照: てかこれもう、サッカーじゃない……

 
 裏山では、何故か不思議な遊びが勃発していた。
「…へ…?」「…ハァ…」
 水無月とフェイが、驚きの声と溜息をつく。
「…何で、皆宙に浮いてる…のって思ったけど、そういえばハクビって…」
「ああ、重力が見事なまでに操れるよ」
 二人の目の前で、雷門メンバーはふわふわと空中を漂って、何かしら持って何かをやっていた。
《…! 水無月様、いらっしゃったのにお気付かず、申し訳ありません》
 皆をふわりと下ろしたハクビが、水無月の姿に気付いて謝る。
「いや、いいよ。遅れてきたんだし」
「あっ、フェイ! ハクビとっても面白いよ!」
 まるで無邪気な子供が嬉しそうに言うように、天馬は言った。
《私は面白くなど……っ!!》
 ないです、と言おうとしたハクビは、しかし、何かの気配を感じて東の方向を向いた。
 今は正午を少し過ぎた頃。太陽は真上近くにあるので、眩しいという事はない。
《…誰だ、貴様…!!》
 ハクビが姿勢を低くして、唸り声を上げながら言う。
 その威嚇を向けられている人物は、東の方向にある岩の上に立っていた。
「俺か? 俺は聖煉闇焉(せいれんやえん)だ」
「!!」
 闇焉、と聞いて、一瞬にしてフェイの顔色が変わる。
「お前達の為に、態々(わざわざ)知らせに来てやったんだよ。フェイ(そいつ)が、知らせていないようだからな」
 闇焉がフェイを指差しながら言う。
 一斉に皆に注目されたフェイは、顔を背けることしか出来ない。
「——今、癒月は俺達の手中にある、という事を、お前達は知っているか?」
「…えっ…今、何て…」
 闇焉が言った言葉の意味を、理解できていない一同。
 だが、フェイと水無月だけは分かっている。
「…もう一回言ってやるよ。——お前達の大事なエースストライカーは、俺達、『ナイトメア』の手の中にある。…しかも、簡単に手を出せる位置でな」
「「「「「「「「「「!!??」」」」」」」」」」
 闇焉の言葉の意味を理解した一同は、一斉に驚愕を顔に浮かべた。
「——闇焉、早く癒月を返すんだ」
 いつものフェイからは絶対に出ないようなどすのきいた声が響き渡る。
 その声を聞いて、一同はフェイを見た。そして、驚愕を浮かべた顔にさらに恐怖を浮かべさせる。
 いつものフェイではなかった。そこにいたのは——




















         殺気と怒気を纏い、瞳は殺意しか抱(いだ)いていないモノだった。
「……フェイ…なの、か…?」
 その横にいた水無月ですら、気圧されるほどの殺気を、フェイは放っていた。
「…っ、おいおい、そんな殺気を放たなくて」
「そんなもの、今関係ない。なら、今すぐにでも乗り込んでぶっ潰してあげようか?」
 闇焉の言葉を遮って、フェイが言う。
 それを聞いて、闇焉の瞳がすう、と細くなった。
「——残念ながら、暫くは、返す事が出来ないなぁ〜。何せ——ある計画(プラン)があるんだからな」
「——そうか。じゃあ、——残念だ」
 とフェイが言ったその刹那。
 筆舌に尽くしがたい衝撃がその場にいた全員を襲った。
「っ!!」
 その場に倒れ込む者、吹き飛ばされる者、その衝撃で体の部位をやったのか辛そうにしている者、反応はバラバラだった。
 唯一平気だったのは間髪で障壁を気付いた水無月ぐらいだ。
「っ、おいフェイ!!」
「水無月は黙ってて」
 フェイは水無月に視線もくれずにそう言うと、先の衝撃波で岩から落ちた闇焉を見た。
「——今なら、懺悔の時間もあげれるけど、どうする?」

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.65 )
日時: 2013/06/16 21:30
名前: 風龍神奈 (ID: MsKbtUWA)
参照: 術の使い方が間違ってるような気がするのは気のせいだろうか?

「…粋がるなよ、氷炎使い(アイスファイアーダンサー)の片割れが。一人だと、何も出来ないくせに」
「…それは、どうかな」
 瞬間、二人の間で何かが爆発した。
 その爆風がまたもや一同に襲い掛かろうとした時、水無月が咄嗟に障壁を築き、彼等を守った。
「…こうなったら、実力行使しかねぇな…」
 そう呟いた水無月の手は、印を結んでいた。
「——臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前」
 静かに小さく、水無月は唱えた。
 刹那。
 フェイと闇焉の体が、何かにか縛られる。
「っ!!」「っ!?」
 二人同時に、水無月を見た。
「おいハクビ、あいつ等気絶させろ」
《承知》
 そうハクビが答える時にはもう、二人は地面に倒れていた。
「…ふう、…たくもう度が過ぎるぞ、この馬鹿共が」
 水無月は雷門メンバーに張ってあった障壁を解くと、彼女はフェイと闇焉の二人を軽々と担いで、
「——お前等は、先に鳳(おおとり)の間に帰ってろ。私は、この二人と話し合う必要があるからな」
 そう言い残して、更に奥に入っていった。
 一方、取り残された雷門メンバーは。
「…戻ろうか」
「だよね…」
 誰かが言ったその言葉を合図に、来た時と同じようにハクビにつられて戻っていった。


「……っ」
「目ぇ覚ましたか、フェイ」
「っ!?」
 水無月の声を聞いて、フェイは、ばっと起き上がった。
「…何で、邪魔したの…」
 開口一番、そう訊いた。
「邪魔? それはお前達の方を指すだろ?」
「っ!! 何で僕達が」
「大体、あんな大勢のいる所でそれをしちゃいけねぇって、前忠告しなかったか? したよな」
「……した…けど」
「けどじゃねぇ。お前が癒月を奪われた事に怒りを感じてるのは分かってるが、それを大勢の前で見せるな。お前——自分がどんな状態になってたか、我を忘れてたから、知らねぇだろ。——まるで人外のモノのようだったぞ。殺気と怒気を身に纏って、瞳には殺意しか抱いていないモノ」
「……っ」
 フェイの顔が青ざめていく。
「皆、それに慄いていた事も知らねぇだろうな。あん時のお前は、闇焉とかいう奴しか見てなかったし」
「……っ…僕は……」
 フェイの体が震える。
 水無月はそれを見ながらも続ける。
「——お前の場合、人が見てない所でしないといけないんだ。お前のその能力(ちから)の関係もあるが、大概の理由は、お前の裏の顔が出る事が多いからだ。お前は、皆に知られたくないんだろう?」
「…知られたくない…に決まってる……」
 近くにいなければ聞えないほどの音量で答える。
「だったら、そういうのは人目につかない所でやれ。——お前もだよ、闇焉」
「…ちっ、気付いていたのか」
 闇焉が起き上がる。
「気付いていたに決まってる。だからこそお前にも聞えるぐらいの音量で喋ってたんだよ」
「っ!?」
 水無月の言葉に、フェイが反応する。
「…って事は…」
「ああ。お前に言った言葉全てを、闇焉も聞いていた」
「————っ!!!!」
 よほど聞かれたくなかったのか、フェイが顔を抱えて声にならない悲鳴を上げる。
「…闇焉、お前もフェイと似たような部分があるよな? 一体、何者なんだ?」
「——俺は、何者でもねぇよ。聖煉闇焉、それが俺だ」
 闇焉は素早く立ち上がると、消えた。
「…みな…づき…」
 闇焉が消えた後、フェイが水無月を呼んだ。
「何だ?」
「…あの部屋…まだ残ってる…?」
「…残ってるよ」
「じゃあ…その部屋で僕は寝泊りするから宜しく」
「っ、おい!」
 水無月の静止も聞かず、フェイは裏山のとある場所へと向かった。