二次創作小説(新・総合)

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.74 )
日時: 2013/07/02 22:23
名前: 風龍神奈 (ID: Us9jS8ld)


 第7話 クロノストームVSナイトメア【前編】

 闇焉から招待状のようなものを受け取った雷門イレブンは、水無月に別れを告げ、指定された場所——未来の常闇(とこやみ)スタジアムへに来ていた。
 何故かこの場所は一般の人々には見えないらしく、だがかなり辺鄙な場所にあった。
「…ホントに、癒月は助かるのかな…?」
「助かるよ。だって、今まで何度も潜り抜けてきた道じゃないか」
「うん…そうだよね」
 そんな会話を織り込みながら、雷門イレブンはスタジアム内で準備運動をしていた。
「——お、ちゃんと開始時刻前に来て運動やってるとは、偉いなぁー」
 突然響いた声に一同が振り返ると、そこに闇焉が立っていた。
「闇焉…っ!!」
「おいおい、別にそんなに驚くなかなくても良いだろう? だって此処は——俺達の神聖な場所なんだからな」
「神聖な…場所?」
 闇焉の科白の中で聞き慣れない単語を聞いた神童は、反復した。
「おっと、この話は終わりだ。さて、——俺のチームのメンバーを紹介してやるよ!」
 パチン、と闇焉が指を鳴らした瞬間。
 一瞬にして、相手チーム「ナイトメア」のメンバーが現れた。
 雷門イレブンは、その中に一部見知った顔があるのに気付いた。が、それを悟られないように、わざと闇焉に目線を向ける。
(…多分、今のはボクに向けられたものじゃないな…)
 やっぱり思い出してくれないか。
 心の中で想像していたショックを受けた海音は、少し顔を俯けた。
 それを見て、隣にいたネイが殺気を込めた目線を雷門イレブンに向ける。
「………?」
 その目線に気付いた者もいたが、大概は無視した。
 が、黄名子だけはまじまじと見る。
 ネイは慌てて止めた。
(…ハァ……)
 内部で溜息をついたネイと同時に、太陽が訊いた。
「闇焉、癒月は何処だ?」
「…ああ、だったな。——紹介してやるよ、俺のチームの11人目として」
 と闇焉が言った瞬間、癒月が闇焉の後ろから現れた。
「「「癒…月…っ!?」」」」
 癒月の登場に、雷門イレブンはたじろいだ。
「どうして…! あの写真は…!!」
「もしかして、あれか? 招待状の中に入っていた俺が作り出した偽の写真の事か?」
「偽…だと…!!」
「偽物だよ。あれはお前達を誘き寄せる為の餌だ」
「……本当だよ」
 闇焉と太陽の会話に、癒月が入り込んだ。
「私は、あんな写真の鳥籠とか、檻の中に閉じ込められてないから。ずっと、皆と一緒にいた」
 普段の癒月の声音とは違う、抑揚のない声音と口調が響く。
 だが、抑揚が無かった声音は、次の科白から全て消え去った。
「…時は今。——私は、貴方達を倒す」
 癒月の燃えるような瞳を最後にして、両者での会話は終わった。

「…ねぇ、闇焉」
「何だ?」
「ホントに…この試合に勝ったら、皆を解放するの」
「ああ、するさ。…ただ、お前がこの試合で奴等から得点取った上に、勝てたらの話だがな」
「…そう」
 癒月は踵を返すと、自分のポジションへとついた。

「さぁ! また駆り出されたと思ったら、まさかの試合だぁ! しかも今回、クロノストームの主戦力である一人が、敵チームに入っているぞぉ!? この試合はどうなるんだぁ!?」
 相変わらずの実況役である矢嶋が、マイクを片手に興奮しながら矢継ぎ早に言った。
「そして、そんな中での試合開始です!!」

 ピイィィィ!!

 ホイッスルが鳴り響き、クロノストームボールで試合が始まった。
 太陽からパスを受け取った天馬が駆け上がる。
 だが、その前に素早く癒月が滑り込んだ。
「…悪いけど、この先は行かせない」
 瞬間、周りの景色が宇宙空間になる。
 そして、幾億もの星が、一斉に輝いた。
「スターライトフラッシュV3!!」
「うわぁ!!」
 天馬が光で目をやられた隙に、癒月はボールを奪って駆け上がっていく。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.75 )
日時: 2013/08/06 21:30
名前: 風龍神奈 (ID: sJfYnJsm)

 クロノストームのメンバーを次々と抜き、あっという間に癒月はゴールへと辿り着いた。
 と、自身の最強技である、
「——鏡花水月G3」
 を放った。
 放たれたボールは信助に技を出させない儘、同じようにゴール前で消えて突き刺さる。
「ゴール! 先制点はナイトメアだぁ!!」
 矢嶋の声に重なるように、癒月が小さく呟いた。
「…ゴメンね……」

 先制点を取られたクロノストームは、まるでそれを気にしていないかのようにどんどん攻めていく。
 が、ボールを持っていた剣城の前に素早く封李が入り込んだ。
「悪いが行かせねぇ」
 そして、何も無い地面からマグマを出した。
「マグマシールド!」
 剣城を吹っ飛ばし、ボールを取った封李は、駆け上がった。
 途中の相手を軽々と避けながら、封李はゴール前へと来る。
 と、封李が立ち止まったかと思うと、ボールに雷と風を纏わせた。
「サンダーサイクロン!」
 放たれたボールはゴールへと向かう。
 一方、信助は化身を出した。
「護星神タイタニアス!!」
 そして、
「マジン・ザ・ハンド!」
 を繰り出した。
 が、化身技でも止める事は敵わず、ゴールに突き刺さる。
「ゴール! ナイトメア、追加点を取ったぞぉ!」
 矢嶋のそんな声を聞きながら、封李はすたすたと歩いていった。

「…癒月、何で闇焉に加担してるの?」
「…別に」
「嘘。絶対に裏がある」
 ボールを持っていたフェイが癒月と当たり、そんな会話をしていた。
「…そう。——だったら見せてあげるよ、私が闇焉達に加担している理由をね!」
 癒月はふと両手を交差させ、振り下ろしながら唱えた。
「記憶映像」
 
 ◇     ◇     ◇

 クロノストームとEDSCが試合をしていた時。
 闇焉は、密かにその試合を見ていた。
 その時ある方法を思いついた彼は、前半が終わりハーフタイムが始まると同時に、癒月だけに姿が見えるように調節し、彼女の目の前に現れた。
「よう。——お前にある事を伝えにきた」
「!!」
 癒月は目の前にいた闇焉を見て、瞠目する。
「俺のチームの一部が、お前達と繋がっているのは知っている。——そこで、取引をしないか?」
 癒月は何も答えない。
 いや、自分以外見えている人がいないから、敢えて沈黙を通したのか。
「お前は後半ずっと点を入れるな。手助けはありだが、得点は禁止だ。だが、それを守った上に、俺のチームに来てくれるのなら、

 ——俺のチームでお前達と繋がっている奴等を解放してやってもいい。

 無論、守った上でだが」
「!?」
「どうする、乗ってみるか? 中々いい取引だと思うが」
 そこまで言って、闇焉は癒月の反応を見た。
「…ッ」
 暫く考え込んでいた癒月は、俯いた。
 それを了承したと受け取った闇焉は、にやりと笑うと、
「——取引成立な。覚えておけよ。そして、試合が終った後に誰にも気付かれずに俺達のアジトへ来い」
 そう言い残していなくなった。



 それから、少し経って癒月が天空移動で闇焉達の許に来た際。
 ナイトメアのメンバーは、全員が驚いていた。
「癒月…どうして…!?」
 そんな問いに闇焉と貴方達の為に取引をしたんだ、とは言えず、癒月はただ首を振るだけだった。
 それだけで何かを感じ取った一同は、それから訊く事はなかった。が。
 一部のメンバーは、それを喜んでいた。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.76 )
日時: 2013/07/04 22:53
名前: 風龍神奈 (ID: VyyaVRE4)

喜んでた理由は言わずもがな。(読んでたら分かるよね?)
「…ああ、そうだ。暫くの間、癒月はお前等と行動するから。頼んだぞ」
 闇焉はそう言うと、一人また違う場所へと行った。
「…癒月…」
「……ごめん……」
「へ…?」
 ふと俯いてそう呟いたかと思うと、癒月の体が傾ぐ。
 すぐさま反応した海音が癒月を抱き止めた。
「…癒月?」
「………」
 反応は無い。
 顔を覗き込む。と、癒月は気を失っていた。
「…っ、闇焉あいつ…!」
「…恐らく、違う理由もあると思うのは、私だけかい?」
 海音が怒りで震える横で、チェリーが言った。
「いえ、ないわよ」
「何故そう断言できる?」
「あら、分かるじゃない」
「分からないからさ、訊いてるんじゃん」
「——貴方達を、解放する以外に何があるの?」
「「「は?」」」
 実華の言葉の意味が分からず、?を浮かべる一同。
「分かってるのよ、貴方達が、彼女達と繋がっている事。そして、私達の事を調べている事も。
 ——そうなんでしょ?」
「…何でそう思うんだ?」
 何とか冷静さを取り戻して、封李が訊いた。
「さぁ? そこら辺は、闇焉に訊いたほうがいいと思うわよ。…後、折角手に入ったのだから、破壊死書(カタストロフィヴィヴリオ)について更に詳しく調べようと思ったけど…、その調子じゃ無理そうね」
 実華は、残念だわと、言って立ち去る。
「…そういえば、実華は調べてたな…」
「うん。…でも所有者がこの状態だから…」
 ネイの科白に、海音が応える。
 実華が調べて分かった事だが、破壊死書に触れれるのは、所有者の意識がはっきりとした時だけであった。それ以外では、触れる事はおろか、近づく事さえも儘ならない。ただ、氷炎使い、所有者を支えている者等、そういう者は触れる事も近づく事も出来るらしい(だからこそ海音は大丈夫なのだが)。また、破壊死書の浄化も封印も、氷炎使いしかする事が出来ず、徒人が手を出していい代物ではないというのも判明している。
「…そういえばさ、ネイ」
「何だ?」
「ネイはさ、…癒月の事嫌ってないの?」
「はあ? 嫌うわけねぇだろ、海音の事覚えてるくせに」
「だったね…」
 そう言って、海音は癒月を見た。
 海音に抱かれている癒月は、ただ静かに呼吸しているだけだった。
「———」
 不意に静まり返った空気に、微弱に破壊死書が反応していた。

 ◇     ◇     ◇

「——これが、EDSCとの試合の途中から始まった出来事。…その後、私は暫く皆と過ごした。そして、ついにその契約を叶えられる日がやってきた…。分かったでしょ、私が闇焉に加担している理由」
 癒月が瞳の奥に浮かんだ悲しみの色を掻き消しながら、言った。
「分かったよ。でも…皆を救う為だとは言え、自分を犠牲にするとか…!」
「犠牲に何てしていない。寧ろ、犠牲にされてるのはフェイ達の方よ」
「…どういう事?」
「これ以上は自分で考える事ね」
 癒月が一気にボールを奪って、一気に後方にいる実華へとパスした。
「実華!!」
 パスを受け取った実華は、癒月の意図に気付いて、頷く。
「…あ、言い忘れたけど。

 ——皆、化身もミキシマックスも使えるから♪」
 癒月が近くにいたフェイと太陽に聞える様に言った。
「へ…?」
「ミキシトランス、卑弥呼!!」
「「「…え!?」」」
 実華がミキシマックスをした事に、クロノストームのメンバーは驚愕した。
 彼女は口の端を上げると、ボールに神のオーラを纏わせ、放った。
「神の矢!!」
 放たれたボールは余りの威力に余波で地面を抉り、選手を飛ばしながらゴールへと向かう。
 信助は技を出す前に吹っ飛ばされ、そしてボールが突き刺さる。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 ( No.77 )
日時: 2013/07/06 22:36
名前: 風龍神奈 (ID: OK7TThtZ)
参照: 海音君ゴメンよ…(泣)

「ゴール! またしても追加点を上げたのはナイトメアだぁ!!」
 間髪入れずに、矢嶋が叫んだ。
「………何だ」
 案外簡単に行けそうじゃないの。
 実華はくすりと笑った。

「…犠牲にされてるのが…僕達の方…? どういう事だ…?」
 ボールを持って上がりながら、フェイは考えていた。
 と、相手が近づいて来たので太陽にパスを出す。
「太陽!!」
 パスを受け取った太陽は、癒月から見せられた映像の事を考えながらも、点を取る為に向かう。
(…だからといって、がんがん攻められたらこっちが癒月を取り戻せなくなる…。そうしない為には、兎に角点を取るしか…!)
 太陽はそう決めると、化身を発動し、
「太陽神アポロ! サンシャインフォース!!」
 化身必殺技を放った。
「…化身か…」
 ネイはそう呟くと、口の端を吊り上げた。
 と同時に、目の前に白いバリアを張った。
「リバウンド・シールド」
 白いバリアに当たったボールは、軽々と跳ね返り、閃華の足元へと落ちる。
「なっ…!!」
「化身技を…!?」
 一瞬にして驚愕に顔が彩られるクロノストームの間を、閃華は軽やかな足取りで抜けていく。
「…にしても」
 こんなに弱かったけ? このチーム。
 そんな疑念を持ちながらも、閃華は駆け抜け、ゴール近くまで来た。
「…ま、いっか」
 私達が勝たなきゃ、意味がないもんね。
 閃華は足元のボールに竜巻を纏わせると、放った。
「サイクロンブレイカー!!」
 放たれたシュートが、ゴールへと向かう。
 だが。
「ミキシトランス劉備! 真大国謳歌!!」
 ミキシマックスした信助が、レベルアップした大国謳歌で止めた。
「…ふふ」
 このチームは、弱くなってない。寧ろ、強くなってる。
 閃華は嬉しそうに微笑むと、戻っていった。
 と、同時に。

 ピイィィィ!!

 ホイッスルが鳴った。
「ここで前半終了! 前半得点結果は3−0でナイトメアが有利になっているぞ!!」
「いつの間にか、もう前半終わり…」
「やばいな…」
「何がやばいの? 剣城?」
「…自分で考えられないのか、天パ」
「それは止めて」
「…このままだと、点を取られまくって、癒月が取り返せなくなるという事だよ。…少しは考えろっての、天パが」
 天馬の文句を無視し、やばい理由を伝えた剣城は、最後に小さくそう言った。
「…また言ったでしょ? 白状した方が楽だよ?^言^」
「言ってねぇよ」
 天馬の問いを華麗に躱し、剣城はすたすたと歩いていく。
「………」
 その背中を見送っていた天馬だったが、ふと背後から視線を受けて振り向く。
「…?」
 天馬を、蒼い髪と蒼い瞳を持った少女(天馬の目は少女だと訴えている)が見つめていた。
「…誰…?」
 見知った顔だったような気がするのに、思い出せず、記憶を手繰っても出てこない。
 だからか、思わず口からそう漏れていた。
「………」
 少女は悲しそうに顔を俯けると、傍で見ていた癒月とともに歩いていった。