二次創作小説(新・総合)

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.1 )
日時: 2018/03/13 20:19
名前: テール (ID: LAu9zylb)

序章 草原の少女


その日は、陽気な春の風が頬をなでる日であった。
草原で、青いタンクトップ、白いハーフパンツ、赤い靴を着こなす黒髪の少年が眠っていた。

太陽が柔らかく光照らすその場所に、
赤く、長い髪に白いリボンを巻き付ける、少女が、少年に近づいた。


「・・・・あれ、この子、大丈夫かな?」

少女は口を開いた。
薄く桃色がかかった青い瞳を、少年に向けて見据える。
風にあおられ、草原の香りが鼻をくすぐる。

少女の服装はかなり独特なもので、
肌はほとんど黒い布で覆っている、赤い動きやすそうな服であった。


「おーい。」

少女は少年に声をかける。
少年は依然として眠ったままである。
少女は腕を組んで頭を抱える。


















少年が目を開けると、そこはどこかの天幕ゲルの中であった。
そして上半身を起こして周りをよく見る。

天幕の中は小ぢんまりしていて、かわいらしい家具などが置いてある。
絨毯や獣の毛皮・・・どれをとってもケチのつけようがないものばかりであった。

ふと、外からトレイの上に料理を持って、テーブルに置き始める少女の姿があった。


「起きた?身体、動かせる?」
「・・・・。」

少年は頷く。
少女はにっこり笑って、食事を指す。

「お腹空いてるでしょ、食べて!」

少年はそういえばお腹が空いていたと考え、
テーブルに近づいて食事にありついた。




「私、「ティル・ソティス」。この草原で暮らしてる剣士よ。」

ティルは気さくに少年に自己紹介した。

少年は食べ終わって、食後のお茶を飲んでいる最中であった。

「ねね、あなたの名前は?」

ティルは尋ねる。
しかし、少年は首を振った。

「わからない・・・ってこと?」
「・・・・。」

少年は首を縦に振る。

「弱ったなぁ・・・」

ティルは困り果て、少年を見た。
奇抜な服装で、このまま外に出ると、目だって仕方ない。

ティルは手を叩いて、クローゼットに近づいた。
そして、白いフード付きマントと黒いローブを取り出す。


「ね、キミ、これ着てみてよ!」

ティルは取り出した服を見せながら少年に着るよう促す。
少年は服を受け取って、今きている服の上から、それらを羽織る。


かなり大きいようで、丈が長く少年の足元を隠してしまっていた。

「ま、お母さんのローブだから仕方ないけど、
 ちょっと大きかったわね・・・。
 あ、胸のリボンをしめて・・・・・できあがり!」

少年は若干動きにくそうにしていたが、すぐに慣れていた。

「よし、これで目立たないわね!」

ティルは上機嫌で少年を見る。
少年もティルの笑顔を見て一つ頷いた。







「・・・!キミ、ごめんね。
 ちょっとこの天幕にいてくれるかな」

ティルは少し怖い顔をして、クローゼットに立てかけていた銀色の長身の剣を持って、外に出た。




「あんたたち、またきたの!?
 私はあんな奴のところに行かないって何度も言ってるじゃない!!」

ティルの怒声が外から響いてくる。
少年は、ティルの言葉を思い出し、少し待っていることにした。


しかし、天井が発火し、ぼわっと燃え広がる。


「なっ・・・!?
 ちょっと、なんてことを!!」

少年は急いで天幕を出て、ティルの傍まで走ってくる。
ティルの目の前には、数人の黒い鎧をまとう騎士がいた。

「これもあなたのためですよ、ティル様。」
「様付けしないで気持ち悪い!」

吐き捨てるようにティルは剣を構えて叫ぶ。

「・・・・こちらも手荒な真似はしたくありませんが・・・・。」

騎士たちは武器を構える。
一人は剣を、一人は赤い弓を、一人は槍を。

ティルは少年に向かって独り言のようにつぶやいた。


「キミ、もし私が死にそうになったら、そのときは・・・
 全力で逃げて。」

そういうと、剣を持って騎士たちに特攻するティル。
そのしなやかな動きは、まるで華麗に踊っているかのようであった。


少年はふと、ローブの中に一冊の本があることに気づく。

「・・・・!」

少年は本を開き、開いたページに手の平をあてて騎士たちに向かって手をかざした。

「ッ!!」

騎士の一人が突如爆発し、炎に包まれて倒れた。

「っ・・・!?キミ、魔法が使えるの!?」
「小癪な!」

弓を持った騎士が、少年に向かって弓を引き、放った。
しかし、ティルは矢を両断し、そのまま騎士に向かって刺突する。

もう一人の騎士がティルを止めようとしたが、
ティルは弓の騎士の腕を掴んで、もう一人の騎士に思いっきり投げつける。

「ぐわっ!!」「なんっ・・・!?」

弓の騎士の下敷きになり、衝撃で動けない騎士二人。
すかさず、少年は本を開いて魔法を放った。


「ぎゃあぁぁぁーっ!!」

二人の騎士は炎に包またまま、動かなくなった。







「・・・・キミっ!」

ティルは少年の手を取る。

「ありがとう、助かったわ!」

しかし、少年は煮え切らない顔で、燃え盛る天幕を見る。
ティルは首を振って笑顔で少年を見た。

「我が家はなくなっちゃったけど、いいの!
 キミが無事だったし。」






天幕が灰になったところで、ティルは少年に声をかける。

「キミ、これから行くあてとかあるの?」

少年は首を振る。
ティルはぽんっと手を叩いて、少年の手を握る。

「じゃあさ、私と一緒に旅をしましょうよ!
 きっと何かが見つかるはずだわ!」

ティルは笑顔で少年を見ていた。
少年は、頷いた。





「よし、決まり!
 それじゃ早速行きましょ!」

ティルはそういうと、少年の手を引いて草原の向こうへと駆け始めた。