二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.107 )
- 日時: 2018/04/06 20:36
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第七章 御令嬢には花束を
先日の舞台出演のおかげで、ギルド「自由な風」への依頼が増えた。
主に「用心棒」だとか、「護衛」、「お店の手伝い」など、
内容は今迄と変わらないが、仕事の量が増えたのである。
「あ゛ー・・・ここ一週間護衛で肩が痛いぃー・・・」
机にへたり込んでティルはぼやく。
そこへトレイにお茶を入れたティーカップを持って、イリスが近づいた。
「ティル、お行儀が悪いですわよ。」
「んにゃあ、疲れて動けないぃ・・・」
イリスはため息をついてティーカップを机に置いて椅子に座る。
イリスの様子を見て、ティルを介抱していた少年も座る。
「ところで、気になったことがあるのですが。」
「んん~、なにぃ~・・・・」
イリスは先週の舞台出演についての話題を始めた。
「ほら、劇場でいろんな装置があったではありませんの。
ああいう装置ってどういうしくみで動いているんでしょうか?」
「あぁ、あれね・・・」
ティルはやる気なく顔を上げる。
「あれは鋼族と雷族と炎族の研究者が共同発明して、
ガラス石っていう鉱石をなんやかんややって明かりをつけてんのよ。」
「なんやかんやって・・・」
「知らない。」
ティルはまた机に突っ伏す。
「で、それと舞台上の装置になんの関係が?」
「うん、照明と同じ原理を利用したモノをスポットライトとか、
装置に利用しているのよ。」
少年はティルの肩をたたく。
ティルは「あぁ、きくぅ~」と気の抜けた声を漏らした。
イリスはまたため息をつく。
ティルは先週から昨日まで、キャラバンの護衛をほぼ寝ずに行っていたため、
疲労が溜まっているようである。
少年もティルと共にほぼ寝ずの見張りをしていたはずだが、平気そうな顔である。
「キミはホントいっつも元気そうだよねぇー。」
「あなたはお強いのですわね」
ティルもイリスも元気そうな少年を見て感心した。
少年は首をかしげる。
「すみませーん。」
ふと、拠点の入り口の扉をたたく音が聞こえた。
「ん、誰だろ」
少年は扉に近づいて、開いた。
すると、妙な帽子を被り、青いオシャレなジャケット、白いフリルが特徴的なシャツを着た吟遊詩人・・・
「フォーアシュピール・アルトパルランテ」が扉を開けた少年を見る。
「おや、君は・・・」
「あ、フォア!先週ぶり!」
フォアを見たティルは手を振る。
「あ、やあティル。この子は確か・・・」
「前一緒に演劇の準備をしてたでしょ。」
ティルの紹介に、少年はぺこりと頭を下げた。
「で、フォア、何の用なの?」
「うん、このギルドに入れてもらいたくってね。」
「自由な風に?」
フォアは頷いた。
「まあ、稼ぎが乏しくなってきてね・・・
「ウェンディ」のご飯代もなくなってきたから、どこかのギルドに所属しようと思ってさ。」
「なるほどね~、そういうことなら私からネイラ先生に通しておくわ。」
ティルは頷きながらフォアを中に入れた。
「そういうことならウチも入れてほしいですだよ!」
突然、天井から「シャンタス・ホオ」が飛び降りてきた。
「うわぁ!?」
「あなたどこから!?」
ティルとフォアが驚いてシャンタスを見る。
シャンタスは両手を広げて立ち上がる。
「ウチも自由「の」風に入れてほしいアル!」
「自由「な」風な。」
シャンタスが小躍りしながら屈託のない笑顔でティル達を見る。
「なぜシャンタスはこのギルドに入りたいんですの?」
「最近稼ぎが少ないのネ、明日食べるまんまもないですだよ。」
ティルはシャンタスの話を聞いて「なるほど」と頷く。
「お願いネ、ウチもギルドに入れてほしいます!」
「ま、成り行きだしね・・・二人とも、よろしくね!」
ティルは腰に右手をあてて、左手の親指を立てた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.108 )
- 日時: 2018/04/08 11:50
- 名前: テール (ID: xV3zxjLd)
そして次の日の朝・・・
皆が朝食を終えて、仕事にでかけた後。
「なあ、この大陸のソッム族って部族がほぼ全滅しかけてるって知ってるか?」
ルドガーは唐突に新聞の一面の文字を読み進めながら
その場にいたティルに尋ねる。
「ううん、知らない。」
「この一面、見てみろよ。」
ルドガーが新聞の一面を指さし、ティルが読みやすいように新聞を回して渡す。
ティルが読んでみると、そこにはこんな風に書かれていた。
「毒の部族ソッム族、ローラ卿の名の下滅亡の危機」
「ソッム族ってなによ」
「大陸南西端に位置する、ローラ領ってわかるか?」
ルドガーはおもむろに地図を取り出して、大陸の南西部分の
「ローラ領」と書かれた場所を指さす。
「知ってるよ、ローラ伯爵が治める領地の事よね」
「まあ、ローラ領は置いておいて。」
ルドガーはさらに、ローラ領の内部にある山岳を指さす。
「ここがソッム族が住む集落。
ソッム族っていうのは、ドラピオン族やドクケイル族、あとペンドラー族とか、スピアー族なんかの独特の文化を持つ民族だな。」
ルドガーがそう説明していると、
ティルは「ふーん。」とぽかんとした顔でお茶を飲む。
ルドガーはその様子を見て、「ははは」と笑った。
「で、なんでローラ卿の怒りを買ったわけなの?」
「なんでも、ローラ卿とソッム族の間に結ばれた協定を、ソッム族の青年が破っちゃったみたいだってさ。」
ティルの質問に、新聞の内容を見ながらルドガーが説明する。
ティルはそれを聞くと、頷いた。
そこへ、少年が近づいて新聞を見る。
「君も見る?」
ルドガーの質問に、頷く少年。
ルドガーから新聞を受け取り、ティルの隣まで来て読み始めた。
「それにしても協定を破るなんて・・・
もしかしたら禁断の恋とかやっちゃってローラ卿の怒りを買ったんじゃないの?」
ティルは笑いながらそんなことを言い出した。
ルドガーもそれを聞いて笑う。
「はははは、流石にそれはないんじゃないかなぁ。
でも仮にそうだとしたら、ミュトス団長が喜んで取材しに行きそうだよ。」
その笑い声を聞いて、リベルテが飛び出してくる。
「ルドガー様!ティル様!なんてことを言うんですか!!」
あまりの勢いに、二人はたじろいでリベルテを見る。
「女心って言うのは、フクザツなんですよ!
ある時突然燃え上がるんです!」
リベルテは机をたたいて早口で力説する。
ティルはそれを聞いてにやりと笑う。
「・・・・例えば愛しのルドガー様みたいな?」
「~~~~っ!!!」
リベルテは顔を真っ赤にして固まった。
「ありゃ、固まっちゃった。」
「もう、リベルテをあんまりいじめるなよ。」
ルドガーがそういうと・・・
「ルドガー様のおっしゃる通りでございますわ。」
拠点の入り口からリゼが勝手に入ってきて割り込んできた。
「うおぉ、リゼさん!?」
「おはようございます。」
ティルが驚いてリゼを見ていると、
リゼはにこやかに笑い、挨拶をする。
「俺もいますよーっと。」
隣にフェンリルもいた。
「リゼさん、またなんで?」
ルドガーがなるべく落ち着いてリゼに質問すると、
リゼはにっこりと笑う。
「ああ、いえ。本日はとくに用事というわけでもありませんが、
ひとつお伝えしたいことがございまして、参りました次第ですわ。」
リゼはそういうと、フェンリルに説明させる。
「「マグノリア」という人物をご存知でしょうか?」
「まぐのりあ?」
ティルは首をかしげる。
ルドガーも腕を組んで頭を悩ませる。
「帝国出身の異端審問官です。
皇帝直属の神官騎士で、重罪人を制裁という名の抹殺を行う、
神竜教でも要注意人物として扱っています。」
異端審問官とは。
まず、犯罪者は「異端者」と呼ばれ、まずは異端審問所に送られる。
異端審問所では、異端者は軽い罪の場合、改心するように教育した後、釈放。
重い罪の場合は、度合によるが、「重罪異端者」として、
数年から数十年監獄に送られ、収容される。
異端審問官の仕事は、犯罪者を捕らえ、
然るべき判断の下、罪の有無を取り決めたり、事件が起こった場合、
異端者を拘束するための調査などを行うのである。
異端者を裁く・・・即ち処刑は、「処刑人」の仕事である。
「つまり、我々神竜教の「異端審問官」は、
異端者を捕らえ、更生させることなどが主な目的です。
ですが、帝国側は、貴族がそう判断したら異端審問官が
即座に首を斬りおとすよう命じられているようなんです。」
「というか、リゼさんとフェンリルは異端審問官だったのね」
「あー、はい。」
フェンリルの説明に、ティルはさり気なく突っこみ、フェンリルは顔を赤らめる。
リゼが静かに言う。
「マグノリアは帝国側の異端審問官。
見かけても戦闘はせず、すぐ我々をお呼びください。」
ティルとルドガーは、息をのんで、頷いた。
「本日のご用はそれだけですわ。
それでは、皆さまごきげんよう・・・・。」