二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.114 )
- 日時: 2018/04/09 13:34
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
翌日、ネイラとルドガー、フォアは、街の路地裏にある借家のドアをたたいた。
「はい、どなたですか?」
ドアが開くと、中からダークレッドのメッシュが入った銀色の髪の少年がネイラたちを見る。
「ああ、突然すみません。
ギルド「自由な風」のリーダー、ネイラ・プレアデスと申します。
リーダーの「ローグ」さんとの面会をお願いしたいのですが」
「ローグさんに?・・・・ちょっと待ってくださいね。」
少年はドアを閉める。
ふと、フォアが笑顔で街中を指さした。
「私は情報収集に行ってまいります。
なあに、すぐに戻りますよ。」
そういうと、その場を去っていった。
「どうする?」
「情報収集はフォアに任せましょう。じきに戻ってくるでしょう。」
ネイラとルドガーがそんなことを話していると、
借家のドアが開き、先ほどの少年が顔を出した。
「お待たせいたしました、ローグさんが面会に応じるとのことです。」
少年はそういうと、中へ二人を案内した。
「あれ、変な帽子のお兄さんは?」
「ああ、急用ができたらしくてどこかに行ってしまいまして・・・」
「忙しいんですね、そちらも。」
そんな会話をしながら、少年が小ぎれいな部屋へ案内する。
木造の床や壁、天井が、窓から差す光が明るく照らされ、
古ぼけた木の匂いが鼻をくすぐる。
皮のソファが2つ、木のテーブルをはさんでおいてある。
「この部屋でお待ちください。僕はローグさんを呼んできますので。」
少年がそういうと、部屋を出てしまった。
「結構広いところだね、うちの拠点よりは。」
「まあ、同じ規模なんでしょうね。」
二人は周りを見て部屋を観察していた。
壁には花の絵や、狩猟した鹿の首の剥製がかけてあり、
インテリアにも気を遣っていることがよくわかる。
「インテリアは、うちも見習わないとね・・・」
「あはは、言えてる。殺風景だしな。」
ネイラはため息をついて、ルドガーは笑った。
しばらくして、ネイラとルドガーが待つ部屋に、一人の青年が現れる。
「すまない、待たせたな」
黒の髪に濃い紫のグラデーションがかかったぼさぼさの髪だが、後ろ髪を三つ編みでまとめ、サソリの尻尾を思わせる髪型、青い瞳の青年が部屋へと入ってきた。
服装は紫色のエルブンマントを羽織り、皮の胸当て、
傭兵らしい機能重視の隙のない服装で、汚れ具合で数々の歴戦を潜り抜けた者なのだと印象付けられる。
ローグはネイラとルドガーが座る反対側のソファに座った。
「ローグさんですね、「ザ・ダークネストリオ」のリーダーの。」
「ああ、そうだ。俺に何か?」
「是非あってほしい人がうちのギルドに依頼を申し出まして。」
ネイラは今までの経緯を話し始めた。
ローグは黙って聞いていたが、眉を顰め、ネイラが話しを終わった頃には、
機嫌が悪そうに腕を組んでいた。
「・・・わかった、今日のところは帰ってくれ。」
「・・・・お会いになってはくれないのですか?」
「そういったつもりだが?」
ネイラは、ソファからすくっと立ち上がる。
「わかりました。今日は引き揚げます。」
「えぇ、いいのかネイラ!?」
「これ以上は無駄だと思うわ、出直しましょう。」
それを聞いてローグは無表情になる。
「俺はあいつに会う資格がない。・・・罪深き俺には・・・」
「資格?・・・誰かに会うのに資格なんて必要なのですか?」
ネイラは腕を組んでローグに強気に尋ねる。
ローグは肩をすくめてため息をつく。
「いいから帰ってくれ」
「・・・・よくお考えになった方がよろしいかと。」
「お、おい・・・」
ネイラはそういうと、部屋から退出した。
ルドガーも戸惑いつつも、ネイラを追った。
「・・・今更、どんな顔であいつに会えというんだ・・・」
誰もいない部屋で、ローグはため息交じりにつぶやいた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.115 )
- 日時: 2018/04/09 22:30
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「うーん、ダメだったなぁ」
ルドガーがため息をついた。
あの後、二人はフォアを探すために繁華街へとやってきていた。
商店などが立ち並び、人でにぎわっているここは、
街の中心部分であり、様々な人がせかせかと歩き回っている。
「すぐに戻る」とは言っていたが、戻ってきていないので、
探しに行くことにしたネイラとルドガー。
「フォアはどこにいるのかしら?」
「さあ~、すぐ戻るって言ってたけど・・・ん?」
ルドガーはふと、目の前の店を見る。
フォアと、青い髪の男性と、赤い髪の少女が仲がよさそうに会話しているのが目に入った。
ネイラとルドガーはそこへ近づく。
「あら、ネイラちゃん。奇遇ね」
青い髪の男性がネイラの名前を呼ぶ。
青く長い髪が背中まであり、白いシャツ、青いベスト、青いジャケットをフォーマルに着こなす、
身体は割と華奢気味である姿である。
「マーリン、元気そうで・・・」
マーリンは、にこりと笑う。
そこへ赤い髪の少女も近づく。
赤く肩まである長い髪がゆるくふわりとしていて、
紫色の帽子、同じ色のケープ、赤紫のチェック柄のワンピースがまとまって、
とても女の子らしいスタイルである。
紫色の瞳だが、クーと同じく瞳孔がないため、虫族だと言う事がわかる。
「師匠、お知合いです・・・ってあれ!?
前、演劇していた女優さんじゃないですか!」
「そうよ、アリアドネちゃん。
この人はワタシの知り合いなのよん。」
マーリンはアリアドネにネイラを紹介する。
アリアドネは目を輝かせ、ネイラに握手をした。
「はじめまして!「アリアドネ・アラーネア」と申します!
・・・あ、赤髪の人は・・・」
「俺は「ルドガー・アルタイル」。この人のギルドの一員だよ。」
ルドガーが自己紹介すると、マーリンも胸に手をあてて自己紹介した。
「はじめましてルドガーちゃん、ワタシはマーリン・ドミヌラ。
アパレルギルド「ローレライの織物」のリーダーを務めてるのよん。」
「へえ~、噂には聞いたことあるな。」
ルドガーはマーリンと握手を交わした。
「ローレライの織物」とは、独自ブランド「ローレライ」を立ち上げている、
被服製作、販売専門のギルドである。
完全オーダーメイドで、注文を受けてから製作に取り掛かるので、
注文から手元にくるまで、1週間から2週間・・・
遅ければ一月もかかる、そこそこ有名なギルドである。
メンバーはリーダーを務めるマーリンを始め、副リーダーのアリアドネ。
その他総勢10名程度の小規模なものであった。
「ところで、マーリンさん・・・・」
「うーん、本人が来ていただかないとサイズを測れなくって、難しいわねえ。」
フォアの言葉に、腕を組んで気難しい顔で首を振るマーリン。
フォアは帽子を直しながら、頷く。
「じゃあ明日、本人を連れてきますので、
よろしくお願いします。」
「わかったわ、お待ちしてるわね。」
「なんだ、何の話だ?」
ルドガーはフォアに尋ねる。
「ああ、実はね・・・
あの子・・・ティルと一緒にいる子の服を仕立ててもらおうと思ってね。」
フォアはそう説明する。
「あの子の?」
「ああ、そろそろ夏も来るだろう、あんな分厚いローブを着てちゃ、
暑くて仕方ないだろうと思ってね。」
「確かに。」
ネイラは納得して頷いた。
「だったらティルの分も仕立ててもらおうよ。」
ルドガーは指を立てて笑顔で提案した。
「うん、確かに。
ティルは顔もかわいいし、スタイルもいいのに、
あんなお堅いファッションと男らしい性格で半ば台無しになってるからねえ」
フォアも腕を組んで頷く。
「ぶえっくし!」
一方、商人の荷馬車の護衛をしていたティルは大きなくしゃみを飛ばした。
「・・・?」
「ああ、だいじょーぶだいじょーぶ。
多分花粉が鼻についたんだと思うよ、ほら、花畑に囲まれてるし。」
ティルは少年と共に周りの花畑を見ていた。
「花粉つっても、この辺の植物は花粉を飛ばす時期は終わったんだけどね。」
御者がそんなことを言っていた。
「ま、美人だし、誰かが噂でもしてたんでしょう」
「やだお兄さん!お世辞言ったって何も出ないって!」
ティルは笑いながら手を振った。
御者も、がははと笑った。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.116 )
- 日時: 2018/04/10 20:58
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
そして、ネイラたちは拠点へと戻ってきた。
「おかえりなさい、3人とも。」
カグラが出迎えてくれた。
シャンタスは台所で夕食の準備を行っているようである。
「ただいま、カグラ。ティルとあの子は?」
「まだ仕事から帰ってないようだけど、そろそろ帰ってくるんじゃないかなあ・・・」
カグラがそういうと、奥からエマが歩み寄ってくる。
「あの、それで・・・」
「報告しますから、とりあえずかけてくださいな。」
ネイラはとりあえずエマを座らせた。
「はあ、やはりそうですよね・・・・」
エマはがっかりしている様子でうなだれた。
「彼、なぜか私を避けているようでして・・・」
「そりゃそうだろ」
自分の研究室からこちらに歩み寄るレイ。
「ちょっとレイ・・・」
「あんた、自分が何やってんのかわかってんのか?
責任を放り出して、ローグってやつの重荷になってんじゃねえか!」
「やめなさいレイ!」
レイを制止するネイラ。
レイは舌打ちをしてそっぽを向いた。
「・・・レイさんのおっしゃる通りです。
私はローラ領の次期領主でありながら、勝手な真似をして、
ソッム族の皆様に迷惑をおかけしているのは承知しております。
・・・・だからこそ、彼に会って、話がしたいんです。
父上は私を血眼で探している頃でしょう・・・
父上に捕まれば、私は成人を迎えるまで外を出ることを許されないはずです。
その前に、ローグに会いたい・・・会って「別れの挨拶」をしたいんです。」
エマは両手を握り、強気な表情で皆を見た。
「だからお願いします、明日は私も同行しますので、
ローグに会わせてください!」
エマはその場にいる全員に懇願した。
「いーんじゃないの、お嬢様のご希望通りにしてあげたら。」
そこへ、仕事から帰ってきたティルがそんなことを言いながらゆっくり歩いてくる。
「ティル、おかえりなさい。・・・・いつからいたの?」
「エマが「はあ、やはりそうですよね」ってため息ついたところから。」
「全部聞いてるじゃない。」
ネイラはふうっとため息をつく。
ティルはにかっと笑い、エマに近づいた。
「エマ、ローグに会わせる代わりに、一つ約束してほしいんだけど。」
「・・・なんでしょうか?」
ティルは真剣な眼差しでエマを見据える。
「自分の責任を果たす。これだけ。」
「自分の責任、ですか?」
ティルは頷く。
「うん、あなたにはあなたの責任があるのよ。
ソッム族のことはもちろん、ローラ領の領民たちを守ること、
なにより、次期領主としての責任を自覚すること。
・・・・例えばね・・・」
ティルは顔に影を落とし、低い声で呟く。
「あなたが「死ね」といったら、領民たちは喜んで「死」を選ぶ」
「・・・・!」
エマはビクッと身体を震わせた。
「責任ってそう言う事。
あなたの言葉、行動は、あなただけのものじゃないってことよ。」
「・・・責任・・・・」
エマは恐ろしげに口にした。
「・・・・だからこそ」
「・・・?」
「だからこそ、今は次期領主となるために、勉強するのよ。
で、いろいろわかってきたら前に進む。
そっからは自由にしていいのよ。
・・・あ、これ、知り合いの受け売りだけどね。」
ティルはあははっと笑う。
「知り合いって・・・「ハウル」のことじゃないだろうな・・・・」
「あ、ばれた?」
レイのツッコミにティルはまた笑った。
「そうですね、「責任」なんて重荷は、一人で抱えるものじゃないです。」
黙って聞いていたリーヴェシアも頷く。
「そりゃそうだろう、重いものを持ってたら前に進めないし。」
ルドガーも腕を組んで、うんうんと頷く。
「・・・・そうですね。」
エマがぽつりとつぶやいた。
「・・・私、勉強は苦手だからって勝手に抜け出してたりしていましたけど、
それって単なるわがままだったんですね。
・・・・そりゃそうです、勉強しないと分からないことは何もわかりませんもの。
ありがとうございます、皆さん。
おかげで何かつかめた気がします。」
エマは吹っ切れたような表情で皆を見る。
「その様子なら、もう大丈夫そうね。」
「・・・・はい。」
ティルはネイラに向かって笑みを投げる。
「先生、明日は私とこの子もついていくわ。」
「そうね、なんとか明日は会ってもらえるように交渉してみましょう。」
ネイラは頷いた。
「うぅーん、花のような女性に可憐な笑顔が咲きましたね。
また一曲思いつきましたよ!」
フォアはその様子を見て、早速羊皮紙に歌詞を書き連ねていった。