二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.138 )
- 日時: 2018/04/17 21:27
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
次の日・・・いつものように仕事を終わらせ、
ティアの下へやってきたフォアは、ティアの部屋を開ける。
「こんばんは・・・・ティアっ!?」
部屋を開けると、ティアは血を吐いてうなだれていた。
フォアは慌てて、テーブルの上にあった水をグラスに入れてティアに飲ませる。
咳き込んでいた彼女の背中をさすり、落ち着かせる。
「ティア、大丈夫かい?」
「ごめんねフォア・・・せっかく来てくれたのに・・・・」
「いいんだ・・・それよりも薬は飲んでいないのか?」
フォアがそう尋ねると、ティアはそっぽを向く。
「そんなの飲んだって・・・私はどうせ死ぬもの・・・」
「だからって・・・」
「フォアには、わかんないよ・・・」
ティアは目から涙を流していた。
そして、フォアを涙にぬれた瞳で見る。
「フォア・・・私ね・・・もうすぐ死んじゃう・・・・
自分でもわかるの、身体がだんだん冷たくなってくるのが・・・・」
「ティア・・・」
「怖いよフォア!・・・・なんで神様は残酷なの?」
ティアは思わずフォアに抱き着く。
ティアは体全体を震わせているのがよく伝わった。
「・・・・・。」
フォアはどうしていいかわからず、戸惑いながら彼女を抱きしめる。
そしてふと、外を見た。
「ティア、これからどこかに遊びに行かないかい?」
「え・・・?」
ティアはフォアを見る。
フォアはにこっと笑い、ティアの頭を撫でた。
「何かしていたらきっと気がまぎれるかもしれないよ。
・・・・美味しいものを食べに行こう、洋服を買いに行こう。
それから、君の行きたい場所に行こう。」
「でも、私・・・身体が・・・・」
「車いすがある。なんなら私が抱っこして連れて行ってあげるさ。」
ティアは車いすを見る。
しばらく乗っていなかったので、埃が被っていたが、
これならどこへでも行けそうな気がする。
ティアはそう思って、フォアを見る。
「うん、私外に出てみるわ。・・・・ありがとう、フォア。」
「当然のことだよ。私は美しい女性の味方だからね。」
「もう、フォアったら・・・・」
ティアはくすくすと笑う。
フォアはそれを見て、胸をなでおろした。
「ティア・・・それにフォアも?」
ミュリエルは、車いすに乗るティアと、それを押しているフォアを見つけた。
「どうしたんだい?」
「兄さん、これからフォアと遊びに出かけてくるわ。」
「・・・・」
ミュリエルはティアの顔色と肌の色を確認し、はっと気づいた。
「行っておいで、ティア。
・・・・フォアさん、ティアをよろしく頼むね。」
「はい、ミュリエルさん。・・・すみませんでした。」
「・・・・君が謝ることじゃない。・・・・わかっていた。」
ミュリエルは顔に影を落として、自分の家に戻った。
「さ、ティア。どこからいく?」
「そうね・・・」
ティアとフォアは街を回った。
クレープを買って食べたり、ちょっと高めの服を買って着てみたり。
ちょっと高い場所から夕日を眺めたり・・・
ティアは笑顔を絶やさなかった。
フォアもそれを見て笑う。
ミュリエルは、ティアの部屋に来ていた。
照明は灯っておらず、夕陽が沈んだ今は暗く、外の光だけが漏れていた。
「ティア・・・ごめんよ。」
ミュリエルはティアの部屋の机に手を置いてそうつぶやく。
ふと、足音が聞こえた。
「っ・・・・誰だ!?」
「すみません、お邪魔して。」
ミュリエルの前に現れたのは、ティルであった。
「はじめまして、私はフォアの同僚のティル・ソティスっていいます。
突然お邪魔して申し訳ありませんが・・・・
お節介覚悟で言わせてもらってもいいでしょうか?」
ミュリエルはティルを見て、首をかしげる。
ティルは窓の外を指さした。
「妹さん、「いつかあなたと行った場所」に行っているみたいよ
あなたはいかなくていいの?」
ティルはそういって、ミュリエルを見る。
「・・・・別に・・・・行かなくても運命は変わりはしないさ。」
「いいの?最期の時にお兄さんであるあなたがいなくても?」
ティルは腕を組んでミュリエルに尋ねる。
ミュリエルは苛立ちながら叫んだ。
「あの子にはフォアさんがついてる!・・・それで十分だろう!?」
「何子供みたいなこと言ってんのよ!?」
「しかし・・・!」
ミュリエルは口をつむぐ。
「お兄さんであるあなたが、妹さんの傍にいなくてどうするの?」
「だが・・・」
「今ならまだ間に合う。手遅れにならないうちに行ってあげて。」
ティルはそういうと、口笛を鳴らす。
すると、窓の外に、フォアの愛竜である「ウェンディ」が舞い降りてきた。
「ウェンディ、この人をあんたのご主人の元まで送り届けてくれない?」
ウェンディは、くぅっと声を出す。
「いいってさ。早く行きなさいな、妹さんの下へ。」
「・・・・すまない。」
ミュリエルはそういうと、窓から飛び出して、ウェンディに乗った。
ウェンディはそれを確認すると、翼を広げ、
愛する主人であるフォアの下へと飛び立った。
「・・・・ちょーっと今日は強引だったかしら。まあいいわ。」
ティルはその様子を見て、部屋を出た。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.139 )
- 日時: 2018/04/18 10:25
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
月が海に映っており、美しくその景色を彩るその場所は
何とも言えない場所であった。
「変わってないわね、ここも。」
ティアはそうつぶやいて、懐かしんでいる。
その場所は、ミットヴィルクングからしばらく歩いたところにある。
何の変哲もない岬であるが、砂浜は月の光に照らされ、星のように輝いていた。
その様子を見てティアは、目を奪われる。
「見て、砂浜が星みたいに光ってる。」
「本当ですね。」
「たった数時間だったけど、フォア・・・ありがとう。
あなたのおかげで、楽しいひと時だったわ。」
ティアはフォアを見てにこりと笑う。
「ティア、これを。」
フォアは自分の着ていたジャケットをティアにかぶせた。
「夜は冷えるからね。」
「ありがとう、フォア・・・」
ティアはフォアのジャケットにそっと触れる。
そしてしばらく歩いていると、ティアはせき込んだ。
「ティア!」
「ごほっ・・・・もう、お迎えの時間だわ・・・」
フォアは慌てて車いすを止めて、ティアを介抱する。
ティアは血の混じった咳をして、海を見る。
「昔ね・・・」
ティアは誰に言うでもなく、つぶやくように語り始めた。
ティアは、立ち上がろうとする。
「兄さんと一緒にここへ来たの。
夢を・・・語ったわ。大人になったら、立派な宮廷魔術師になりたいって。」
フォアはティアを支えて、黙って聞いていた。
ティアは海に手を伸ばす。
「だけど、元々身体が弱い私には・・・・無理だった。
数年前からもう、満足に歩くことすらできなくなったんだもの。」
ティアはその場に座り込んだ。
「兄さんはね・・・こんな私のために毎日毎日・・・・
出稼ぎに行っていたんだけど・・・・
結局私は・・・・兄さんの負担になっていただけだったわ・・・・」
ティアがそういってフォアを見る。
その表情は安らかなものであった。
「フォア、ありがとう・・・最期の時まで・・・」
「ティア・・・」
「ティア!」
そこへ、銀色の竜から飛び降りた人物がティアに近づく。
ミュリエルであった。
「兄さん・・・」
「ティア、ごめんよ!僕は・・・!」
ミュリエルはティアを抱き寄せて涙を流した。
涙は頬を伝い、ティアにこぼれ落ちる。
「兄さん、私もごめん。
迷惑ばかりかけて・・・何の役にも立たなかった・・・・」
「そんなことない・・・・頼むからもっと生きて僕の傍にいてくれよ!」
ミュリエルは喉が張り裂けんばかりにティアに向かって叫ぶ。
ティアはミュリエルを見て笑った。
「・・・ありがとう、兄さん。」
そして、ティアはフォアを見る。
「フォア・・・歌って。」
「・・・・わかった。」
フォアは頷いて、竪琴をポロンと鳴らす。
「うれしい・・・最期の時に兄さんの腕の中で・・・
フォアの歌も聞けて・・・・こんな美しい景色の中で逝けるんだもの・・・・」
ティアはそうつぶやくと、ゆっくりと瞳を閉じた。
月に照らされ、岬に佇む二人のために、フォアは歌う。
旋律は彼女のために・・・
「ティア・・・」
ミュリエルはティアを抱きしめ、また一粒の涙をこぼした。
数日後、フォアはティルの下へやってきていた。
ティルは取り込んだ洗濯物を、少年と共にたたんでいる最中であった。
「あらフォア、なんか用?」
「ミュリエルさんを岬まで連れてきたのは君かい?」
フォアにそう尋ねられ、ティルは洗濯物をたたむ手を止める。
「なんで?」
「ウェンディが言う事を聞くのは、このギルドのメンバーだけだよ。
あと、君が最近僕の周りを嗅ぎ付けてたし。」
「あちゃ、ばれたか。」
ティルはあははっと頭をかきながら笑う。
「だってあんた、一向に相談しに来ないし・・・・
晩御飯すら食べに帰ってこなくなったんだもの。
心配になるわよそりゃ。」
「うっ・・・言わなかったことは確かに悪いと思ってるよ・・・。」
フォアは唸り、ティルは洗濯物をたたむ。
「確かに、私たちは他人が集まっただけのチームだわ。
いちいち報告する義務なんかないわよ、私もそう思う。」
「いや、そんなことは」
「最後まで聞きなさいな。」
ティルはフォアの瞳を離さずに見る。
「だけど、一緒に活動する仲間である以上、
最低限のことは誰かに報告すべきじゃない?
でないと、信用を失うことになるから。」
そういうと、ティルは少年にたたみ終わった衣類をタンスにしまうよう指示を送る。
少年は頷いて、衣類を持ってその場を離れた。
「・・・・すまない。」
「ま、次はちゃーんと報告。いいわね?」
ティルがそう釘を刺していると、拠点の入り口のドアからノックの音がする。
「ギルド「自由な風」はこちらですか?」
ティルは入り口を開けると、ミュリエルが立っていた。
「あ、あなたは・・・前はお世話になりました。」
「あなた!なんでここに?」
ティルは驚いて、ミュリエルを室内に案内する。
「いえ、このギルドにお礼とお願いがありまして。」
「お願い?」
フォアは首をかしげる。
「このギルドに、僕も入れていただきたいと思いまして。」
「ミュリエルさんが!?」
ミュリエルの言葉にフォアは驚いた。
「これでも、立派な弓兵だよ、戦力にもなるし、
お役に立てるだろうと思う。
・・・・それに・・・」
ミュリエルはそういうと、寂しく笑う。
「何かしないと、ティアに引っぱたかれるんで・・・ははは。」
「ミュリエルさん・・・」
ティルは頷いて、にこりと笑う。
「そういうことなら歓迎するわ。」
「よろしくお願いします、ああ、あと僕のことは呼び捨てで大丈夫ですから。」
そういうと、ミュリエルは深く頭を下げた。