二次創作小説(新・総合)

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.144 )
日時: 2018/04/20 22:33
名前: テール (ID: AuRKGmQU)

その日の夜、ティルは皆にエルピスを紹介する。
そして、しばらくの間このギルドで匿うことを提案した。
しかし、イリスとリベルテはその場にいなかった。
リゼが「今夜は神竜教の半年に一回のミサですわ」と言って、二人を連れて行ってしまったからだ。
二人への説明はまた後日にするとネイラは言う。



「もちろん、彼女には働いてもらうわ。
 働かざる者食うべからず・・・ってね。」
「うん、でも・・・」
「まあ、あんたの場合探し物を探す仕事でもやればいいでしょ。
 戦えなさそうだし。」

ティルは腕を組んでエルピスを見る。
クーはエルピスの見た目を見て、素朴な質問を口にした。

「ねね、なんで包帯まいてんの?
 そういえば包帯巻いてるのに目は見えてるんだね、すごい!」
「うん・・・大丈夫、なんでも見えてる・・・」
「ああ、この子ね、いろいろ事情があるって言ってたわ。」

「へー」とクーは感心して、顔を近づける。

「じゃあさ、あなたの力をちょーっと見せてよ!」

クーは目を輝かせてエルピスを見つめた。
エルピスは頷いて手に持つ魔導書を開いた。

「珍しい魔導書を持っていますね。
 「時鳴りの書物メシュエノーツ」ですか。」

ミュリエルは感心して魔導書を見る。

「知っているの?」
「ああ、ティアが教えてくれましたから。
 なんでも、記憶を刻む魔導書でして、他者の記憶を見ることができるらしいんです。
 しかし、かなりの魔力が必要となりますよ。」

ミュリエルの説明にプリムラは首をかしげる。

「フルールカノンより強いのですか?」
「ありゃ規格外だから比較しようがねえだろうが・・・
 使った時に魂が持ってかれたかと思ったぞ。」

レイは呆れて肩をすくめた。
ミュリエルも苦笑いをした。



「あなた、どこかの公国の公女なのね。」

エルピスはクーを見てそういう。
クーはきょとんとして目を丸くする。

「・・・・へぇ~!」

クーは驚いて声を上げた。

「そんなこともわかるんだ!」
「と、というか今物凄いことを口走らなかった!?」

ティルは慌ててクーを見る。

「うん、あたし「クー・ド・ヴァン」って名乗ってるけど、これは芸名みたいなもんで、
 本名は「クーデリア・ディア・ローランド」だもん。」

皆は驚いてクーを見る。
カグラもむせてげほげほと咳き込んでいた。

「君がローランド公国の公女!?」
「あれ、いってなかったっけ?まあいいや。」
「い、いいの!?」

クーの態度にティルは驚いていいやら呆れていいやら・・・

「でも噂には聞いたことあるな。
 ホラ、ローランド公国の公爵ってたしかテッカニン族だったし。」
「そうそう、でお母様がビークイン族なんだ。」

ルドガーの説明にクーも肯定する。
ネイラは呆れて頭を抱えた。

「お父様やお母様はあなたのことを知ってるの?」
「うん、手紙も送ってるし、というか帝都の調査があたしの任務だもん。」
「さらっと重要なこと言って・・・」

クーはあははと笑う。
エルピスもクーの様子に呆れていた。

「あなたは表裏がないのね・・・」
「ないない!あたしはいつだってオープンだもん!」
「らしいっていっちゃらしいな・・・」

レイもはあっと大きなため息をつく。

エルピスは魔導書を開きながらルドガーを見る。

「あなたは・・・小さい頃から不幸だったのね。」
「あはは・・・そうそう。
 いっつも兄さんが助けてくれてさ・・・」

ルドガーは頭をかきながら恥ずかしそうに笑う。

「そのお兄さんは、あなたを守って亡くなったのね・・・」
「そう。俺を庇ってさ・・・」

ルドガーはいつになくしんみりとした顔をする。

「5年前だったかな、俺と兄さんが海を見ていた時にさ、
 イカみたいな化け物が俺たちを襲ったんだよ。
 兄さんは俺を逃がしてくれるために自分が囮になって・・・」

ルドガーは口をつぐんだ。
ティルはルドガーの肩をたたく。

「ルドガー、あんたのこと・・・改めて知ることができたわ。」
「まあ、人にはいろんな過去があるってことだな。」

ルドガーはまた笑いだした。

ネイラはふうっとため息をついて、エルピスを見る。

「そうね、エルピスの能力はわかったわ。だけどね・・・
 むやみやたらに他人の過去を覗いて、心を抉るような事を言わないこと。
 これがあなたを匿う条件よ。
 ・・・・守れるかしら?」

エルピスは頷く。

「うん・・・守れる・・・・大丈夫、この力はあなた達の言う「義を持って」事を為して
 人の役に立つように使う・・・。」

ネイラはうんうんと頷いてエルピスをなでた。

「それじゃあ明日から頑張って働いてもらうわ。
 あ、スピカ・・・彼女に付き合ってあげて。」
「わかったの!よろしくなの、エルピス!」
「うん・・・・」


エルピスの口元は緩み、笑みを浮かべていた。

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.145 )
日時: 2018/04/21 11:36
名前: テール (ID: AuRKGmQU)


同時刻・・・



「くっ・・・・はぁ・・・腕の感覚・・・がっ・・・」

白いフードを被る帝国騎士が、マントを翻して何者かから逃げていた。
腕や頭、身体の彼方此方から血を流しつつ、全身の力をふり絞り、前進する。
壁を使いながら、ゆっくりと夜の街を歩く。
だが、腕がしびれてうまく腕が上がらない。
歩いていると、目の前は運河が流れており、行き止まりであった。

「姉上・・・俺はもう・・・・」
「見つけたぞ」

騎士はその声に驚き、声の主を目で追う。

「「ラピス・ロル・グリモアール」。
 陛下のご意向により、貴様をこの場で処刑する。」

騎士は声の主の姿を確認することを叶わず、
肩から腹にかけて剣で両断された。

「あ・・・・ぐぁ・・・・っ!!」

騎士は小さく悲鳴を上げて背後の運河に倒れ込み落下した。
騎士を斬った人物は、河を見つめた後、くるりと振り向いてその場を後にした。




















次の日の朝、スピカは外に出て背伸びをした。
ルビーとサファイアも後ろからついてきていた。

「気持ちのいい朝なの!うぅーん!」
「そうだねスピカちゃん!」

スピカに同意するルビー。

スピカは日課である朝の散歩をしていた。
新聞配達で忙しそうに走る人物に挨拶をしつつ、
まだ誰も出歩いていない街や運河を見ていた。

「今日もいい天気になりそうなの!」

スピカはそういいながら、川辺を歩く。
ふと、桟橋の方を見ると、白い何かが桟橋に引っかかっているが見えた。

「ルビー、サファイア、あれって何なの?」
「わかんないよスピカちゃん。」
「引き上げてみようよスピカちゃん。」

サファイアの提案に、スピカは頷いて白いものを引っ張る。
ルビーとサファイアも協力するが、重くてうまく上がらない。


「なんや、あんたら何しとるん?」

そこへ、ピンクの髪のロングヘア、水色の瞳の白いリボンが特徴的な白いローブを羽織る少女が
スピカたちの様子を見て声をかける。

「この白い布を引き上げようとしてるの!
 結構重いの、手伝ってほしいの!」
「わかったわ、手伝えばええんやな?」

スピカは少女に向かって叫んで、少女はスピカの下に走ってくる。
そして、スピカと一緒になって白い布を引き上げた。

ざぱんという音と水しぶきを上げて、白い布を羽織っている人物が姿を現した。

「にゅわっ!?なんやこれ!!?」
「すごいの!男の人なの!」

少女とスピカは驚いて引きあがった人物を見る。
ルビーとサファイアはその人物に触れる。

「まだ生きてるよスピカちゃん。」
「どうするの、スピカちゃん。」
「うーん・・・とりあえず怪我してるみたいなの、持って帰るの。」

スピカはそう提案して、男性を運ぼうと背負う。

「うちも手伝うで」
「ありがとうなの、えーっと・・・」
「うちはリボンっちゅー名前や」

リボンはそう名乗り、スピカと共に両腕に肩を回して男性を持ち上げる。

男性は瞳を閉じ、苦悶の表情を浮かべている。
翡翠色の髪、肩から腹にかけての大きな切り傷、
白いフード付きのマント、帝国正式の黒い鎧と、騎士であることが確認できる。

スピカは自分のギルドの拠点の場所を案内しながら、
リボンと共に騎士を運んで行った。








「おかえりスピ・・・誰ですかその人は!?」

リーヴェシアが出迎えてくれて、スピカと共にいる騎士に驚く。

「この人、大けがしてるの!
 それに気を失っているの、直さないと大変なの!」

スピカはそういうと、リーヴェシアはリボンに代わって肩を貸して
騎士を奥の部屋に運ぶ。

「ほなうちは帰るわ、またねスピカ!」
「ありがとうなの、リボン!」

リボンはスピカに手を振ると、そそくさと帰っていった。



「昨日に引き続いて・・・大変ね。」

ティルはため息をついて運び込まれる騎士を見た。