二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.149 )
- 日時: 2018/04/21 19:13
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
騎士はゆっくりと瞼を開く。
「・・・・ここ、は・・・」
「気が付いたの?」
スピカは騎士の顔を覗き込んでいる。
騎士はベッドで横になり、額に水を絞った布を置いていた。
「どこか痛いところはないの?お腹減ってないの?」
スピカは純粋な眼で尋ねた。
騎士は頭痛がするのか、頭を抱え、「ああ、大丈夫だ」と答える。
「それよりここは?」
「ここはギルド「自由な風」の拠点なの!」
スピカは満面の笑みで答える。
「ねねね、あなたの名前は?」
「俺の名前・・・俺は「ラピス・ロル・グリモアール」・・・。
まさかギルドに助けられるとは思わなかった・・・・。」
ラピスはそういうと、ベッドから降りようとする。
スピカは慌てて止めようとした。
「まだ傷が治ってないの!寝ててほしいの!」
「いや、これ以上迷惑をかけるには・・・!」
そこへドアが開き、ティルが部屋に入ってくる。
「あ、怪我人起きたのね。」
「君は・・・「ティル・ソティス」か!?」
ラピスはティルを見て驚く。
ティルは頭をかいてため息をつく。
「あら、私ってばそんな有名人?
・・・帝国騎士様がこんなところでお昼寝とは、良い御身分ですね。
どうされたんですか?」
ティルはあからさまに態度を悪くしてラピスにつっかかかる。
そこへネイラも部屋へ入ってくる。
「ティル、帝国が嫌いなのはわかるけど、この人は怪我を負っていたのよ。
事情を聴くべきじゃなくて?」
「・・・・わかってる。」
ティルはそっぽを向く。
ネイラはその様子を見て、ラピスへ向き直った。
「あなた、何があったの?」
「・・・・ギルドに機密を話すわけには・・・」
ラピスは戸惑いつつ、口を閉じる。
ティルは肩をすくめてため息をついた。
「あんたの傷を見ればわかるわよ、大方帝国に裏切られでもしたんでしょ。」
「ぐっ・・・」
ティルの痛い指摘にラピスは思わずうなってしまう。
「帝国に裏切られてもなお忠誠心を忘れないなんて、
ご立派な騎士様もいるもんだわ。泣けてくる。」
「ティル、やめなさい。」
ティルの煽りを制止するネイラ。
「・・・・あなた達ギルドが帝国を恨んでいることは、身を以ってよくわかっている。
・・・何があったか話そう。」
ラピスはそういうと、事情を話し始めた。
ラピスの話によると、ラピスはグリモアール領の伯爵の子息で、
姉である「スピネル・ロル・グリモアール」が突如行方不明となり、
行方を捜すために騎士となった。
そして姉に関する情報を探しつつ、人々のためになるよう日々努力していると
驚くべき事実を目の当たりにした。
帝国が魔力の高い人間を捕らえて、非道な人体実験を行っていると言うのである。
姉もそのうちの一人で、既に殺害されていたのだ。
その事実を知ったラピスは上官に問い詰めたが、まったく相手にされず、
皇帝に報告を試みようとしたが、そこで異端審問官に目を付けられ、
逃亡生活を送っていた。
しかし、ついに追い詰められ、斬り捨てられてしまった。
「というわけだ・・・。」
「ひどいの!許せないの!」
「ほーん・・・なるほど」
ティルはラピスを目を丸くして見つめる。
「あんたも傲慢な騎士様かと思ったけど、そうでもないのね。」
「そう思われるのも無理はない・・・」
ラピスはため息をつく。
ネイラはその様子を見て、一つ提案をした。
「ラピス、あなた、騎士に戻れないのであれば、このギルドで働きなさいな。」
「・・・何!?」
ラピスは驚く。
「帝国に戻ったらあなたは即死刑よ。身を隠しつつ、依頼も達成できて、
あなたの信念である「人々のため」になるわよ。」
「し、しかし・・・」
ラピスは戸惑う。元騎士である自分がギルドに・・・と。
「嫌なら別にいいわよ、豚箱に入るだけだし。」
ティルはニヤニヤしながらラピスを見る。
ラピスは少し考える。
「まあ、すぐにとは言わないわ。怪我のこともあるし。」
ネイラはそういうと、椅子から立ち上がって部屋から出る。
「とりあえず怪我を治すこと。いいわね?」
ネイラはそう言い残してドアを閉める。
「・・・あなた、ラピスっていうのね・・・」
「き、君は、エルピス!?」
エルピスがドアを開けて姿を現し、ラピスは驚いた。
「知り合い?」
「うん、一応助けてもらった恩がある・・・」
「ふぅん」
ラピスはエルピスを見て、安心したような表情を見せた。
「よかった、無事だったんだな。」
「あなたは全然無事じゃないのね・・・」
エルピスはおもむろに魔導書を開いてラピスを見る。
「・・・・あなた、襲ってきた人の顔を見てないの?」
「・・・逃げるのに必死だったからな・・・」
ラピスはため息をついた。
そしてエルピスは魔導書を閉じてラピスに頭を下げる。
「一応、助けてくれてありがとう・・・あの時は言えなかったけど・・・」
「いや、とんでもない!・・・怖い思いをさせてすまない・・・」
ラピスもエルピスの様子を見て、慌てて頭を下げた。
「・・・はあ、あんたが他の騎士様とは違うってこと、よくわかったわ。」
ティルはため息をついて、部屋のドアを開ける。
「ティル?」
「辛くあたってごめん」
ティルはそう一言いってから、部屋を出た。