二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.153 )
- 日時: 2018/04/22 20:39
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
「あらティルちゃん、いらっしゃい。そちらの殿方は?」
「マーリンさん、今日はこの人の服を買いに来たんだけど。」
ティルはラピスを連れて、マーリンの店にやってきていた。
マーリンはティルとラピスを温かく迎える。
いつものベスト、いつものジャケットを着る彼を見て、ラピスは頭を下げる。
「この方の職業は?」
「多分魔道騎士。」
マーリンはそれを聞いて、ラピスを店内へと案内する。
そして、白いフード付きマントを取り出し、ラピスに着せてみていた。
マントの内側は不思議なことに、星空が広がっているように
星々が瞬いている珍しいものであった。
「これは「星竜の聖衣」っていってね、ワタシのおじいさまが羽織っていた由緒正しきマントなのよ。
魔力を持つ人間が装備すると、魔力が増幅される魔道士にぴったりなんだけど・・・
もちろん魔道騎士のアナタにもぴったりね。」
マーリンはラピスのサイズに合うことを確認して、すぐに脱がせた。
そのあと、ラピスのボロボロの服を見て、ため息をつく。
「ティルちゃん・・・流石にこの格好で出歩かせるのはどうかと思うわ・・・」
「しょ、しょうがないじゃない!他に着せるものがなかったし・・・」
マーリンはふうっとため息をつくと、奥のクローゼットを調べる。
そして、白いクローク、黒いズボン、皮のブーツを腕に抱えてラピスに近づく。
「ラピスちゃん、とりあえずこれを着なさい。」
「えっ・・・これは・・・」
「いいから早く、恥ずかしいわ全く!」
マーリンはラピスを半ば押し込む形で試着室に案内し、カーテンを閉める。
しばらくして、ラピスは着替え終わってカーテンを開ける。
マーリンはその姿に満足して頷いた。
ティルもその姿を見て、思わず拍手をする。
「それなら帝国騎士ってわかんないわね。」
「・・・・あら、ラピスちゃんって帝国騎士だったの?」
「元ね。」
マーリンはそれを聞いて、先ほどまで着ていたラピスの服を見て事情を察する。
「まあとりあえず、何も聞かないわ。
服もマントもサービスってことでもらっておきなさい。」
「いや、しかし・・・!」
「いいのよ、その代わり・・・」
マーリンはそういうと、険しい表情でラピスに近づく。
「この街では帝国騎士だったことは言わない方がいいわ。
ワタシもそうだけど、騎士を恨んでいる連中がごまんといるわよ。」
「・・・・気を付けます・・・」
マーリンはすぐさま表情を戻して、ラピスの肩をたたく。
「ギルドのお仕事、頑張ってちょうだいね。」
ティルとラピスは、そのあと拠点へ戻ることにした。
「ま、今はその大きな傷を治すことに専念なさいな。
仕事のことは後から考えて、今は休養休養!」
ティルはラピスの肩をたたき、笑顔を見せていた。
ラピスはというと、マーリンからもらった一式の服を着て、とぼとぼと歩いている。
帝国騎士とギルドが仲の悪いことはわかっているつもりであったが、
よもやここまでとは・・・と考えていた。
「・・・まあ、今は傷が癒えるまで休ませていただくよ。」
ラピスはそういって苦笑いをした。
「死にぞこないがまだ生きていたのか・・・」
突如、街の民家の屋根からティルとラピスの目の前に着地した。
ぼさぼさの長い緑の髪、鮮血のように真っ赤な瞳を前髪の隙間からのぞかせる、
黒い袖なしインナー、深緑の袖のないコートを羽織る妙齢の女性が、ラピスを見て腰から下げていた剣を向ける。
「な、何よあんた!」
ティルは持っていた剣を構える。
女性は鼻を鳴らし、胸に手を当てた。
「私は「ラミナ・フォシーユ」。
帝国所属の異端審問官だ。
・・・・私の名と顔を見て生き残った者はいない、貴様らは潔く死ね」
ラミナは剣を構え、居合い切りでラピスを狙う。
しかし、ティルはその前に自身の剣で受け止め、ラピスを庇う。
「「緑の髪の女」ってのはあんたのことね・・・!
だったら容赦しないわ、エルピスとラピスを傷つけて・・・
ただで帰れると思ったら大間違いだからね!!」
ティルはそう叫ぶと、ラミナを斬り上げる。
ラミナはそれを見切って避け、ティルの首を素早く掻っ切ろうと刺突するが、
ティルは避けきれずに首に切り傷を受けた。
そしてティルはラミナの懐に剣を振り上げ、ラミナはそれを受け止め、
剣と剣がぶつかり合う。
「ラピス、あんたはさっさと逃げなさい!死にたくなかったらね!」
ティルは、ラミナと剣を素早く打ち合い、ガンガンッと激しい音を上げながら
ラピスに向かって叫んだ。
「しかし・・・!」
「足手まといなのよバカ!あっち行きなさい!」
ティルは苛立ちながらラピスに叫び、ラピスは後ろに一歩下がり、
背中を向けて走り出す。
「逃がすか!」
「行かせるかッ!!」
ラミナは慌ててラピスを追おうとするが、ティルはそれを塞ぐ。
「ちっ・・・邪魔だ!」
「邪魔してんだから当たり前じゃないの・・・よ!」
ラミナとティルの剣と剣の打ち合いに、火花が散る。
ティルは隙を見て、ラミナに切り傷をつけるが、
ラミナもティルの隙を見て、ティルに切り傷を与える。
ティルは剣を鞘にしまい、素早く鞘から抜刀すると同時に衝撃波を
ラミナに向かって放つ。
ラミナは驚き、剣で受け止めるが、剣の様子を見て剣を捨てて避ける。
衝撃波は地面を抉って、まともに受ければただでは済まなかった。
ラミナはその様子を見てティルへ向き直り、驚きの表情で見る。
「貴様・・・まさか「ティル・ソティス」か!?」
「・・・・だったら何?」
「くく・・・・ハハハハハッ!」
「・・・?」
ラミナは突然笑い出した。
そして、腰から下げていた剣をもう一本取りだし、落ちていた剣を拾う。
「だとすれば、陛下に献上せねばならん。陛下は貴様を欲しているのだからな!」
「・・・・なるほど、あんたあいつの直属の部下だったわけね。」
ティルは、拳を握りしめる。
そして目つきが先ほどより鋭くなり、声も低くなる。
「だったら泣かすわ。」
「・・・・!?」
ラミナは先ほどまでのティルの様子と打って変わって、獣のような瞳と気迫にたじろぐ。
獲物を見据え、急所を狙って狩りを行おうとする猛獣そのものであった。
「面白い・・・!」
「逃げないでよね」
ティルはそういうと、素早くラミナに突進する。
「!?」
ラミナは避けきれず、腹を斬られる。
「あがっ・・・!」
態勢を立て直そうとするが、ティルに横っ腹を思いっきり蹴られ、壁にたたきつけられた。
そしてティルは素早くラミナの胸ぐらをつかみ、床にたたきつける。
「がっ・・・ぐ・・・」
そして顔の真横に剣を突きつけられ、ティルはラミナを見下ろした。
「勝負あり。・・・帰って報告でもしなさいな。」
ティルは獣のような鋭い目つきでラミナを睨み、
剣を鞘に納めてくるりとまわって歩み始める。
ラミナはその様子を見て、剣を握りしめてティルに斬りかかろうとした。
「敵に背中を向けるとは愚かな!」
「愚かなのはあんたの方だわ、アホ。」
ティルはそれを見切ったかのように、ラミナを切り裂いた。
「があぁぁぁーっ!!」
ラミナは叫び声を上げてうつぶせになり倒れる。
「人を何人殺したか知らないけど、当然の報いよ」
ティルはそういうと、振り返って再び歩み始めた。
ラミナはまだ息があった。
ティルが最後の情けで傷を浅く斬っていたのである。
「おのれ・・・あの女・・・はぁ・・・ナメた真似を・・・」
壁を伝い、ゆっくりと歩く。
歩くたびに、胸から血がしたたり落ちる。
日は高く上っているが、路地裏のため、誰もそのことには気づいていなかった。
「はぁ・・・陛下に・・・報告を・・・・」
「どこへ行こうというのですか?」
ラミナの背後に、黒いベール、黒い服の女が立っていた。
ラミナはそれを見据える。
神竜教の聖職者であるリゼがにこりと笑っている。
「き、貴様は・・・!?」
「あなた、手配書にある「ラミナ・フォシーユ」ですわね?
ふふ、あなたの罪はもう何度転生しても償える物ではありませんわ。
よって、この場で断罪させていただきます。」
リゼはそういうと、突然身体が光始める。
そして光はやがて大きくなり、光が晴れると、白い毛並みを持つ狼が現れた。
「だ・・・・「断罪の白狼」!?」
「ご紹介痛み入りますわ。
一瞬で食べて差し上げます・・・一瞬だけ痛みますが、お許しくださいませね」
リゼはそういうと、口を大きく開き、ラミナに口を近づける。
ラミナは恐怖し、涙を流す。
「さようなら。」
リゼはラミナを勢いよく噛み千切った。
「ティル!・・・傷だらけじゃないか!」
「ラピス・・・ごめんごめん、手間取っちゃって。」
ティルはラピスを見つけて、笑う。
ラピスはティルの様子に慌てていた。
「大丈夫なのか?君は・・・」
「へーきへーき。大したことないって。・・・それよりも早く帰ろ。
思ったより時間がかかっちゃったしさ!」
ティルはそういうと、歩き出す。
ラピスはそれを見かねて、ふうっとため息をつく。
「君が、街の人やギルドの皆に好かれている理由、なんとなく分かった気がする。」
「は?どうしたの急に。」
ティルは首をかしげてラピスに尋ねるが、ラピスは笑った。
「なんでもない。」