二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.154 )
- 日時: 2018/04/24 06:35
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
第十一章 海精の涙
「だんちょ・・・オォ・・・」
時は真夜中・・・わずかな明かりが海賊船の甲板を照らしている。
赤い羽根を飾った黒い帽子を被る男が、目の前の光景に目を見開いていた。
船員であろう男たちの背中を引き裂いて、なぞの触手がうねうねと動いていた。
船員たちは皆苦悶の表情を浮かべ、悲鳴を上げる。
「お、お前ら・・・おい、どうなっているんだ!?」
帽子の男は隣にいたまるで闇を纏っているようなローブの男に叫ぶ。
くくくと笑い、男は答えた。
「実験ですよ、「人を魔物に変え、兵器へ変えるための実験」です。」
「・・・!?貴様、最初から・・・ッ!!」
「団長、あなたの側近としてお手伝いできて光栄でした。
・・・お別れの時間ですね。」
男はそういうと、魔導書を開く。
「団長ォォォォーッ!!!」
突然、若者が魔導書を開いた男を背後から捨て身タックルで押し倒した。
若者は男を取り押さえて無我夢中で叫ぶ。
「団長、あなただけでも逃げてくださいッ!」
「ええい離せ、この・・・っ!」
「早く!」
団長と呼ばれた帽子を被った男は、周りを見る。
魔物へと変化した船員たちは、若者を取り囲んでいた。
尚も悩む男を見かねて、若者は男に近づいた。
そして、男をドンッと思いっきり海へ突き飛ばした。
「なっ・・・!?」
「あなただけでも生きてください、団長!」
そして、水しぶきを上げて男は海の中へ沈んだ。
「・・・・海の神よ、団長をお守りください・・・」
その船は、一夜にして沈没した。
次の日の朝・・・
「うーみー!海なのー!」
「うみだー!きゃわーい!!」
スピカとクーがはしゃいで小躍りしていた。
それを見かねてため息をつくネイラ。
「あんまりはしゃいで転ばないでよー!」
ギルド「自由な風」は現在休暇中である。
それは数日前の夕方に、レイとプリムラが福引で当てた一等賞・・・
ローランド公国の東の海「セイレーン浜」へのバカンス3泊4日券を引き当てたのである。
「私の電算能力があれば、福引のガラガラなど敵ではありません」
「お前をもう一台欲しいくらいだわ」
プリムラの自信たっぷりな発言に、レイは呆れる。
ネイラはなるほどと、頷く。
「まあでも最近、みんな働きづめじゃない。
1週間くらい休暇を取っても罰は当たらないと思うわ。」
ティルも手を振って賛同の意を示す。
「さんせーい!最近護衛とか用心棒とかの仕事ばっかで足腰ガッタガタなのよ」
「おめーは年中ガタガタだろ」
「何、喧嘩なら買うわよ?」
ティルとレイがにらみ合い始めると、ネイラは二人の脳天にチョップをかます。
「ですが、バカンスですか・・・良いと思います。
最近事件ばかりで皆さんもお疲れのご様子ですし。」
リーヴェシアはにこりと笑う。
内心、ワクワクしているんだなと、ルドガーは無言でほほ笑んでいた。
「スピカ、海で泳いだことがないの!」
「あたしもー!」
スピカとクーは大はしゃぎで机から身を乗り出す。
「ウチもいってみたいネ。」
「え、炎族って水につかっても平気なのか?」
「種族差別よいないネ。炎族も地族も長時間は無理よ、でも泳げるノネ」
ルドガーの質問に、シャンタスは口をとがらせて答える。
ネイラは手を叩いて皆を静かにさせる。
「はいはい、みんな言いたいことはあるだろうけど、
とりあえず全員参加でってことでいいわね?
水着も全員分マーリンに注文しておくから、各自明日の夜に水着の代金を私に渡して頂戴ね。
それから・・・」
そんなわけで、「自由な風」は、ローランド公国の東の浜辺・・・・
「セイレーン浜」までやってきていた。
白い砂浜が広がり、青い海が静かに波を立てている。
海水浴の客や、海の家などがあり、人は少ないが活気があった。
「おおー!意外に静かなところで心休まりそうだね」
フォアは感心して浜辺を見渡す。
カグラは、浜辺の近くにある木造の建物を指さした。
「あそこが僕らの宿泊施設のようだ。
まずは荷物を置いて着替えるとしようか。」
皆は頷いて、とりあえず木造の建物に向かうことにした。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.155 )
- 日時: 2018/04/24 21:37
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
皆が荷物を置き終わり、早速海へと泳ぎに駆けだすシャンタスとスピカ、そしてクー。
目を輝かせて海に飛び込んでいった。
ネイラはその様子を見て、3人に声をかける。
「ちゃんと準備運動しなさーい!」
「えへへ、もう入っちゃったし・・・」
クーは笑いながら手を振っていた。
「ティル様は泳がれないのですか?」
大きな日傘を地面に突き刺して広げ、敷物を敷いた場所で、
リベルテとティルがのんびりとしている。
ティルは寝転がってあくびをする。
「私は今日は無理かなぁ・・・日頃の疲れがさ・・・」
「ですよね、最近ティル様はご多忙のご様子でしたし」
リベルテは笑いながら皆が泳いでるのを見ている。
そしてリベルテはティルの全身を見て尋ねる。
「ティル様は本当に肌をお見せにならないのですね。」
ティルは髪を二つのシニヨンカバーでまとめ、黒いウェットスーツで肌を隠している。
ティルは肩をすくめて笑った。
「そりゃ女の子が無暗に肌を見せるもんじゃないじゃない。」
そういうと、ティルはリベルテを見る。
リベルテは前髪を髪留めでわけて、髪を一つに結わえている、
白い水着で普段のローブ姿からは想像もできないほど、スタイルがよく、
背中には神竜の聖痕が刻まれていた。
ティルはもったいないなぁと思いながらうなじを見る。
うなじには何か黒い紋章が刻まれているのに気が付いた。
「ねえ、リベルテ・・・うなじになんか・・・あれ?」
ティルはもう一度見ると、紋章は消えていた。
「どうされましたか?」
「あ、うーん・・・寝不足なのかな・・・」
ティルはそういうと目をこする。
「まだ御夕飯には早いですし、少し仮眠を取られてはいかがでしょうか?
こちらに平織りの布をお持ちしております。」
そういうと、木綿の平織りの布をティルにかけるリベルテ。
ティルは、お言葉に甘えてと一言言って、瞼を閉じた。
「また会ったね」
以前見た夢に出てきた、黒いマントを羽織る赤い髪の人物は、
ティルに気さくに挨拶をする。
前に見た時より、死体の数が減っているが、
前に見た夢と同じく、血だまりの上に、二人は顔を合わせている。
目の前の人物も顔が少し見えるが、口元くらいである。
「うん、相変わらず趣味の悪い空間ね。これってあんたが見せてる夢?」
「いいや、眠っているお前に直接干渉して、
お前と私の領域の狭間って感じの空間だから、夢ではないよ。」
「領域・・・?」
ティルは首をかしげる。
「そもそもあんたはだれなのよ?」
「前言ったけどな・・・私はティ―――だよ。」
「また聞こえなかったわよ。」
目の前の人物ははあっとため息をつく。
「お前自身が私の真名を知ることを畏れてるからだ。
「自分が何者か」って前聞いただろ?
あれの答えをまだ見いだせてないんだよ。
だから私の顔も見えないし、真名も聞こえない。」
ティルは無言で目の前の人物を見る。
その表情には、少し恐怖心があった。
「お前は「自分は自分だ」って言ったっけ?
でも最近疑問に感じていることがあるだろう。
・・・「自分はだれだろう?」ってね。」
「そんなわけ・・・!」
「上辺の言葉で隠しても本心まで騙せない。」
ティルは指を差されて、うっと唸る。
「「あいつ」はもう動き始めてる。
それまでにお前は私の真名を知り、自分が何者かを確かめなければならない。
でなければお前の愛する者たちが死ぬことになる。」
「・・・!」
ティルは目を見開き、拳を握りしめた。
「ねえ、私ってそんなに重要な役割を持ってるの!?」
「人は必ず何かの役割を持って生まれてくる。
お前もその一人だってことだよ。」
目の前の人物はそういうと、にっと笑う。
「また会おう、もう起きる時間だよ。」
そして目の前が真っ白な光に包まれていった・・・