二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.169 )
- 日時: 2018/04/29 20:48
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
ハイランドにたどり着いた一行に、ハウルは城を指さす。
「シャルちゃんが連れ去られたのを見たって、大公がおっしゃってた。
まずは大公に話を聞いてから、街で事情聴取してみようよ。」
「そうだな!・・・・俺、ついてきてよかったかな?」
ルドガーは笑いながらそんなことを言う。
「いいのよ、あなた強いもの。竜だってびっくりするわ。」
「褒められてるのかなぁ・・・」
一行は、ハウルの案内のまま、城へ入った。
「ハウル、ありがとうございます。
・・・・クーデリア殿、それとギルド「自由な風」の皆さま。
我が娘シャルトをどうか見つけ出してください・・・。」
謁見の間では「レイナ・セラ・ハイランド」が、一行に頭を下げる。
紫のグラデーションがかかった黒い髪を後ろ髪を三つ編みに編み込んでいる、
高貴な騎士といった風貌の女性で、金色の鎧が特徴的である。
「・・・・クロウ、あなたも来てくださったのですね。10年前の戦で命を落としたものだと・・・」
「その話はよしてください、大公。今の俺は勲章を捨てたしがない海賊です。」
クロウは帽子で顔を隠した。
「ネイラも・・・」
「いえ、大公・・・私はハイランドを捨てた身です。おやめください。」
ティルは、クロウとネイラの様子を見て、何やら因果関係があるのだと悟る。
「皆様にお部屋を用意いたしました。
どうか今夜はそちらでお休みくださいませ。」
レイナはそういうと、メイドに指示を出した。
メイドは、一見普通のエプロンドレスを着ているが、
腰から大剣や斧を下げており、
使用人・兵士全員がハイランダーだと言う事がわかる。
(すごいわね、この国・・・皆武器を持っているわ。)
(そうなんだよ、多分小さい子からお年寄りまで、それなりに戦えるって聞いたことある!)
ティルとクーはひそひそと小声で会話をする。
ハイランド公国の伝統を重んじるその姿に、ティルは改めて関心を持った。
一行は部屋へと案内される。
天井、壁、床、家具さえも白く統一されている。
開放感があり、部屋もいくつかに分かれていた。
「寝室はこちらに4つほどあります。」
「へえ、全部白いですね!」
「はい、ハイランドの建国者は「白は穢れなき高潔なもの」とし、
国を作られた際に建物や街のほぼすべてを白に統一されたとされています。
独自の武術、文化を持つこの国は、大陸の光ともいわれております。」
メイドの説明に、ルドガーは目を輝かせる。
そして、もっと教えてほしいと問い詰めて、メイドと共に部屋を出て行ってしまった。
「「白は穢れなき高潔なもの」か・・・良い国じゃない。」
「でしょ!」
ティルが窓を開けて外の景色を見る。
白で統一された城下町の景色が、眩しくも美しかった。
「というかネイラ先生・・・ハイランドの騎士だったんだねー。」
「元、ね。」
「クロウはしってたの?」
ハウルはクロウに尋ねた。
「知っていた。」
「え、じゃあ「セイレーン浜」で出会ったっていうのは?」
「嘘だ」
クロウはそういうと、ふうっと息を吐く。
「本当は、私もクロウも同じ思いを持つ騎士だったわ。
だけどね、10年前にある事件が起きて・・・私は騎士をやめたの。
幼いなりにいろいろ考えちゃったのね。」
ネイラはそういうと、寂しく笑う。
「10年前の事件?」
ティルは気になって尋ねた。
「まあ、いろいろとね・・・。話したくなったらまた話すわ。」
「失礼いたします。」
そこへ、部屋のドアを開けて女騎士が入ってきた。
肩まである薄水色の髪、前髪の両端がくるんと回っている、海のような青い瞳を持つ女性であった。
騎士らしく白い鎧を身に着け、特徴的なスカート、腰に鮮やかな色のレイピアを下げていた。
「貴方がたがシャルト様をお救いくださる「自由な風」の皆さまですね?
大公の命により、私も助太刀いたします。」
女性は一礼をして、にこりと笑う。
その女性は、ネイラを見る。
「ネイラ・・・戻ってきてくれたのですね!」
女性はぱっと顔に明るい表情を浮かべた。
「「ウォーレイン」・・・・
いいえ、私は一度は国を捨てたの・・・戻れないわ。」
「やはり、あのことが・・・」
「ウォーレイン」は、悲しげな表情をしてネイラを見る。
ネイラは首を振った。
「・・・それよりもみんな、あなたの登場に戸惑っているわよ」
「あっ、そうでした!」
ウォーレインは皆の方へと向いた。
「私は「ウォーレイン」と申します。
明日から、皆様にこの剣を捧げます・・・よろしくお願いいたします。」
「あ、うん、よろしくね。」
ティルは戸惑いながら、ウォーレインと握手を交わした。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.170 )
- 日時: 2018/04/30 21:59
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
その日の夜は月が三日月であった。
ティルは窓を開けて風を部屋へと誘いこんでいた。
夜のハイランドの街並みは、青く照らされていた。
「静かねえ・・・」
ティルはそうつぶやくと、本を読んでいた少年はティルを見て頷く。
ティルは少年の法を見て笑った。
「キミ、本よめるの?」
ティルの質問に、少年は頷く。
少年が読んでいるものは、「ブレイズホルンの書」であった。
ルーン文字がびっしりとページに埋め尽くされ、
ルーン文字が読めないティルは目を白黒させる。
「・・・・キミってホント何者なの?」
少年は首をかしげる。
ティルはベッドに横たわり、窓の外の三日月を見る。
「キミ、今から独り言をいうけど、聞かないふりしててね。」
ティルはそのままの姿勢で唐突に口を開く。
「私ね、皇帝「ヒュドラ・ベル・ユースティア」の子供なの。
ギラティナの血を引いてるから、小さい頃住んでた村で、
「邪竜の子」って言われて、石を投げつけられてた。
まあ、それは置いといてね・・・・
いつだったかなあ、覚えてないけどずっと昔に・・・
ヒュドラが私を魔法陣の上に置いて、何か呪文を唱えてた。
その瞬間だったかな・・・私の中に何か黒いものが入り込んできて・・・
すごく怖かったんだよ。」
ティルはそういうと、少年の方を向く。
少年はティルの顔を見つめていた。
「その先は覚えてないけど、お母さんが私を庇って死んじゃったことは覚えてる。
目の前が赤く染まっててさ・・・・」
ティルはそういうと、口をつぐむ。
少年がティルに近づいて頭をなでていたからだ。
ティルは、自然と目から涙をこぼす。
「・・・ごめん、ありがとう。」
ティルは静かにつぶやいた。
次の日・・・シャルトを連れ去った竜が向かった先・・・
「オルダ山脈」へ出発することにした一行。
「待ってくれ君たち」
ハイランドを出ようと歩いた矢先、声をかけられ、振り向く一行。
そこには黒のメッシュが入った中分けの前髪が特徴の金髪、
黒い瞳でこちらを見ている幼い顔立ちだが、勇敢な少年が目の前に立っていた。
腰から下げる二つの剣から、手練れの剣士のようであり、
黒いマントを羽織り、服の汚れ具合から、旅人だと言う事がよくわかる。
「どうしたんですか?」
ネイラは少年に尋ねる。
「君たち、オルダ山脈まで何しに行くんだい?」
少年は皆に尋ねた。
質問を質問で返され、戸惑うネイラ。
「ハイランドの公女が飛竜に連れ去られたって話を聞いてね、
大公から直々に依頼されて、向かうところなんだ。」
ネイラの代わりにルドガーがそう答えると、ふーんと少年は答える。
「僕も同行していいかな?」
「なんでさ」
ハウルが首をかしげると少年は笑いながら答える。
「君たちに興味があるから・・・じゃ、だめかな。」
「・・・・・。」
ティルは無言で腕を組んで考える。
「別にいいわよ。」
「いいのかいティル!?」
「別に断る理由なんかないでしょみんな」
ティルはそういうと少年の方を見る。
「あなた、名前は?」
「ライでいいよ」
「いいよ・・・って・・・」
クーは失笑する。
クロウはライを見て、考え込む。
「お前、どこかで見たことある気がするが・・・帝都で」
「似たような人って結構いるでしょ?」
ライは即答した。
「ま、なんにせよ、よろしくなライ。」
ルドガーはニコッと笑った。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.171 )
- 日時: 2018/05/01 21:13
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
ウォーレインは、黒い雲に覆われた山脈・・・「オルダ山脈」を指さす。
「あそこは「雷竜アーテル」が眠る山脈です。
あそこにシャルト様が連れ去られたのを目撃しました。」
「雷竜アーテルの眷属「トニトルス」は、なんでシャルトを連れ去ったのかしら?」
ティルはふと疑問を口にする。
ハウルもクーも首を傾げた。
「わかんない。」「なんでだろう?」
二人はぽかんとした顔で同時に口にする。
その様子にライはぷっと吹き出した。
「・・・これは推測だけどさ。」
ライは唐突に人差し指を立てる。
「トニトルスがハイランドを襲ってきたから、皆を守ろうとした公女様は
剣を抜いて対峙した。そして、止めをさそうとしようとしたけど、
逆に捕まって連れ去られちゃった・・・ってことは考えられない?」
「・・・・うーん、意外におっちょこちょいなとこもあるから、
ありえるかもねー。」
煮え切らない顔で肯定するハウル。
「頑張り屋でいつも誠実、他人想いなのがいいところでもあるんだけど、
空回っちゃうのがシャルシャルだし・・・」
クーも頷いた。
「最近似たような人が大怪我をして療養してるわね・・・・」
「ラッピー程じゃないよ!シャルシャルの場合、ビョーキだよビョーキ!」
そんなことを話している間に、一行はオルダ山脈にたどり着いた。
先ほどまでの快晴から一変、辺り一面は暗くなり、雷が轟いている。
「ここは、別名「雷鳴の山」と呼ばれててね、
年中雷雲に覆われてる危険な場所なんだ。
・・・・だけどね、山頂は雲よりも高い場所にあってさ
そこからだと、大陸を一望できるって聞いたことがあるよ。」
「へえ~。」
ライの説明にルドガーは頷いた。
ティルは前へと歩み出す。
「ちょ、ティル!?」
「もう、みんな何してるの?公女様が一刻を争う事態に陥ってたら大変じゃない!
早く行きましょう!」
そういうと、ティルは山道を走りだした。
皆はそれを見て、ティルを追いかける。
山道に入ると、突然大粒の雨が降り、豪雨となって一行を襲う。
ザアァーっと土砂降りになり、稲妻も走る。
「酷い雨だ、視界が悪いぞこりゃ・・・」
クロウがそうつぶやくと、山の上に、ピカッと光る何かがあることに気づく。
「みんな、あそこを見ろ。」
クロウは指をさす。
一行もそれを見つけると、青く不規則に点滅する場所があった。
ネイラは皆に伝えた。
「あそこに行きましょう」
ネイラの言葉に同意する一行。
そして、光が点滅する場所に走り出した。
「あぁっ・・・!」
金色の鱗を持つ飛竜と騎士と思しき少女は、交戦中であった。
雨が激しく少女と飛竜に降り注ぎ、叩きつけている。
雨でべったりと服が肌にくっついて離れない。
美しい青い刀身の剣を構える少女は、動きづらそうにしていた。
少女は黒く長い髪を二つに結わえ、黒いベール、黒いマントを羽織る、
騎士というにはかなり軽装だった。
右目は金色、左目は紫色のオッドアイと、髪が紫色のグラデーションがかかっている、特徴的な姿である。
飛竜は青い雷を口から吐き出し、少女に攻撃する。
「っ!!」
少女はそれを避け、地面を滑る。
そして、剣を片手に飛竜の懐まで走る。
「せやあぁーっ!!」
しかし、飛竜の鱗に剣が通らず、ガキンという音を鳴らすだけであった。
飛竜は足の爪で少女をひっかこうと振り上げた。
少女は素早くそれを避けるが、水で張り付いた服が邪魔して、うまく避けきれなかった。
しかし、少女のベールが爪に引っかかった程度で済んだ。
「これは、生きて帰れる自信がないですね・・・・」
少女は口元を手で覆って飛竜を睨みつける。
少女・・・「シャルト・セラ・ハイランド」は、ハイランドにトニトルスが飛来してきたので、
民たちを守るために応戦したのはいいが、
吹き飛ばされ、気絶してしまったところを捕らえられたのか、
目覚めると洞窟内であった。
脱出しようとしたところ、見つかってしまい、仕方なく交戦したというわけである。
シャルトは激しい雨と長く続く戦闘に、体力は限界まで来ていた。
体中に飛竜の爪の傷が、雨に濡れて痛みが走るのも加え、
全身が針に刺されているような感覚であった。
トニトルスは、シャルトに向かって再び雷の吐息を吐く。
口から凄まじい稲妻が放たれ、シャルトはそれをよけようとした。
だが、足がもつれて転んでしまう。
「しまっ・・・・!」
シャルトは思わず瞼をぎゅっと閉じた。