二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.174 )
- 日時: 2018/05/02 22:07
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
ガィンという音が鳴り響き、稲妻が四散し、弾ける。
雷竜の稲妻を弾いたのは、投げつけられた斧であった
「・・・・これは、エルミネア公国の・・・」
シャルトは驚いて周りを見る。
そして、クーがシャルトと雷竜の間に割って入った。
「やい、トニトルス!シャルちゃんをこんなになるまでいじめて!
・・・・あたし怒ってるんだから!」
クーは雷竜に向かって指をさして大声で叫ぶ。
そして、青白い刀身の短剣を構え、助走をつけて飛び上がった。
「シャルト様!」
そこへ遅れてシャルトの下にウォーレイン、そして自由な風一行がやってくる。
「怪我をなされて・・・」
「救急セット、一応持ってきてる。応急処置ならいけるぞ!」
ルドガーはそういうと、シャルトを雨の当たらない場所まで運ぼうと、抱き上げた。
「わっ・・・ちょ・・・」
「どうした?」
「い、いえ・・・男の人に抱き上げられたのは初めてでして・・・」
シャルトが顔を赤らめていると、ルドガーは淡々と近くの洞窟の入り口まで運び、
シャルトの体中の傷に薬を塗ったり、包帯を巻き、処置をしていく。
「俺は別にやましい心でやってるわけじゃないぞ。」
「そ、それは存じてます・・・」
クーとハウルのほかに、ティルとネイラ、レイとクロウも参戦する。
ライはというと、物陰で様子を窺っていた。
「でえぇいっ!」
クーは短剣を使って雷竜の身体を斬りつけるが、ガンっと音を鳴らすだけで効果はなく、
得意の体術で蹴り飛ばすが、足が痛くなっただけであった。
「うわぁん、痛いよ!」
「クーちゃん、危ない!」
ハウルがクーに呼びかけると、雷竜が尻尾を振り回し、クーを狙う。
クーは辛うじて身体を反らしてくるっと回って地面に着地する。
「「竜剣ノートゥング」!力を貸して!」
ティルは銀色の剣を鞘から抜き、居合い切りで雷竜の翼を斬りおとす。
雷竜はくぐもった悲鳴を上げて、空中から地面へと落ちた。
「叩き斬る!」
クロウはそう宣言すると、諸刃の大剣・・・クレイモアを構え、
雷竜の身体に傷をつける。
雷竜は傷をつけられるたび、声を上げて苦しむ。
「あれはクレイモア・・・別名竜殺しの剣だよ!」
ハウルがそう叫ぶと、クロウはクレイモアを強く握りしめ、
雷竜の首を斬りおとした。
雷竜の返り血を浴び、クロウはふうっと息を吐く。
「さ、流石団長だわ・・・」
ネイラはあっけにとられ、つぶやいた。
その瞬間、山が大きく揺れていた。
「な、なに!?」
「地震か?」
地震とも思えるそれは、立っているのもやっとな揺れであった。
ティルは山下が見下ろせる場所を見る。
そこには驚くべき光景が見えた。
「う、嘘・・・!?」
ティルが口を開けたまま驚いて、その光景を見る。
他の皆もそれを見た。
「ま、まさか・・・」
「嘘でしょ!?だってアレ・・・っ!」
クーの震える指が、それを差す。
黒く、赤い瞳が鋭く光る、この山脈の半分を覆い尽せるぐらいの
巨大な黒竜が、翼を広げている光景があった。
黒い竜は身体に青い雷を帯びて、バチッという音がはじける。
「「雷竜アーテル」!?伝承では眠ったままのはずなのに・・・!?」
ハウルがそう叫ぶと同時に、黒竜が咆哮を上げた。
思わず耳を塞ぐ一行。
そして、咆哮を上げた途端に、激しく叩きつけていた雷雨がやみ、
黒竜は翼を広げ、飛び立とうとしていた。
シャルトはふらふらと黒竜が見える場所までやってきて、指をさす。
「あの竜・・・!まさか、ハイランド公国に向かっているのでは!?」
「な、なんですって!?」
雷竜アーテルは伝承によると、雷雲と共に飛び去っては
近辺の国を襲い、人々を絶望の淵に立たせていた。
「・・・・大公の下へ急ぎましょう、皆さん!」
ウォーレインは、なるべく冷静な声で皆に伝える。
だが、足が震えているのがよくわかる。
「そうだね、こんなこと言ってる間に、あいつがどっかの街とかを襲う可能性もあるもんね!」
クーも頷いた。
一行は、その場を走り出し、急いで山を下りたのであった。
「・・・まさか、雷竜アーテルが目覚めるなんて・・・
もし、破壊神の力が働いていたとすれば・・・・?」
ライは走りながら、誰にも聞こえない声量でつぶやいた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.175 )
- 日時: 2018/05/03 21:18
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
一方、ハイランド公国では突然の激しい雷雨に、民は困惑していた。
レイナも尋常ではない様子に、騎士らを謁見の間へ招集する。
レイナは、騎士たちに訴える。
「皆さん、この激しい雷雨は伝承にある通りならば、
雷竜アーテルが目覚め、こちらに向かっている可能性があります。
今こそ、ハイランドの騎士である我らが立ち上がり、民を守るべき時です!
・・・命が惜しい者は早く避難してください。
覚悟のある者のみ、命を賭して最期の時まで共に戦いましょう!」
レイナは剣を抜いて天に掲げる。
騎士の皆も腰に下げている剣を抜き、天に掲げる。
レイナはそれを見て、頷く。
「剣と風の導きを!」
『剣と風の導きを!!』
レイナに続いて皆が復唱し、決意に満ちた眼差しで、外へと駆け出す。
レイナはぐっと拳を握りしめた。
「シャルト・・・」
ティル一行がたどり着いた時には、ハイランドの上空に黒い影が翼を広げ、
ハイランドを見下ろしているのがよく見える。
「誰か、弓持ってない!?」
「そ、そんなもんあるわけねえだろ!」
ティルの質問にレイは慌てて答える。
ティルは近くにある大木へと走り出す。
枝を斬りおとし、枝を折り曲げ、自身の髪を枝に結んで弓を作る。
「これで何とか応戦してみる。」
「む、無茶ですよ!」
「無茶かどうか言ってる間に、あいつの翼を奪わないと!」
ティルはそう叫ぶと、弓をもってハイランドの一番高い塔を目指し、走り出す。
「・・・ティルの言うとおりね、やる前からあーだこーだいう前に、
さっさとアーテルを撃ち落しましょう。」
ネイラはそういうと、投げ槍・・・ピラムを取り出して、走り出す。
ルドガーもはははっと笑った。
「そうだな、早く行こう!」
「ったく、ティルの脳筋がうつったんじゃねえか?」
レイは呆れて魔導書を取り出し、ネイラについていく。
皆も、武器を手に取って走り出した。
ティルは弓を引き、矢の代わりに自身の愛剣「竜剣ノートゥング」を
黒竜の翼に狙いを定める。
そして、黒竜の翼に向かって放った。
放たれたと同時に、弓はバキッという音共に真っ二つに割れる。
そして、放たれた剣は黒竜の翼に命中した。
黒竜は悲鳴を上げて、地上へと落ち、地面にたたきつけられる。
「・・・・流石「竜殺しの剣」・・・あんな大きな竜にも攻撃が通るのね。」
ティルはそう感心し、ハイランドへ落ちた黒竜を追い、走り出す。
ハイランドの街中では、突然上空から黒竜が落ちてきて、
ズシンという轟音が響き、市民は驚いて黒竜を見る。
すかさず騎士が市民たちを誘導した。
「皆さん!黒竜が体勢を立て直す前に、落ち着いて街の外に避難をお願いします!」
市民は騎士の言う通りにすかさず避難しようと走り出した。
「大公、奴の翼に銀色の剣が刺さっているようです。」
レイナは黒竜の翼を見る。
巨大な飛膜に銀色に輝く剣が刺さっているのが確認できる。
「あの剣は「竜剣ノートゥング」・・・
ギルド「自由な風」が戻ってきてくださったようですね!」
レイナがそう歓喜の声を上げて振り返る。
ティルが全力疾走で走ってきていることがよくわかる。
「ティル殿!」
「レイナ大公、すみません、遅くなりまして!」
「いいえ、それよりも・・・目の前の黒竜を何とかせねばなりません。」
レイナはそういうと、剣を構える。
ティルも腰から下げている鞘を手に取るが、剣がないことに気づく。
「あ、やば・・・剣をあいつにさしたままだ・・・」
ティルはあわあわと冷や汗をかいた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.176 )
- 日時: 2018/05/04 09:02
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
ティルは慌てて周りを見る。
すると、レイナは布に巻かれた剣のようなものを取り出し、ティルに手渡した。
「ティル殿、こちらを。」
「これは?」
「「宝剣ロードクラウ」・・・このハイランドに伝わる光輝く剣です。
光あるものを守り、悪しきものを斬る・・・ハイランドの秘宝です。
誰も鞘から抜くことができなかった剣ですが、ティル殿であれば・・・」
ティルは手元に武器がなく、四の五も言ってられない状況なので、
剣を受け取った。
布を取り払うと、鞘がついた長い刀身の剣であるようだが、
竜の紋章が描かれた鞘を抜いてみる。
その姿に息をのんだ。
金色の柄、銀色に光る刃が雨にぬれてもなお、輝きを失わないその姿・・・
ため息が出るほどの美しさを持つ一振りの大剣であった。
「これなら・・・!」
ティルはそういうと剣を持ち、抜刀して空を斬る。
ヒュンっという音が心地よく、手に馴染む。
「ありがとう、大公!・・・これなら全力で戦えそうだわ。」
「いえ、あなたにならその剣が扱えると思っておりました。
・・・それより・・・」
レイナは剣を構えて黒竜を見る。
黒竜は鋭く紅い瞳をこちらに向け、にらみつけている。
翼はノートゥングが刺さったままであるためか、動かさずにいた。
そして、口を開けて咆哮を上げる。
ビリビリと空気が震える。
「畏れるな!皆の力を一つにすれば・・・・必ず勝てる!」
レイナは騎士達に声を高らかに上げる。
騎士達は戸惑いを見せたが、レイナの呼びかけにより、
己を奮い立たせた。
そこへ、「自由な風」一行がティルやハイランドの騎士が集まっていることに気づき、
手を振りながら駆けつける。
「母上!」
シャルトはレイナの下へと走ってきた。
「シャルト!・・・傷だらけじゃない!」
「母上、そんなことは大した問題ではありません。
早く黒竜を何とかせねば・・・!」
「大した・・・はあ、全く・・・・シスター!」
レイナは騎士たちの中にいるシスターを呼ぶ。
シスターは頷いて、シャルトに近づいて杖をかざした。
「ティル、奴は相当やる気のようだ」
クロウはクレイモアを構えて黒竜を指さす。
黒竜は出方を窺っているようだが、痺れを切らし始めている。
「よし、やるわよ!・・・・みんな!」
皆は頷いて、武器を手に取る。
そして、うおぉ!という声を上げ、黒竜に向かって走り出した。
黒竜は近づいてくるティル達を見て、口から凄まじい稲妻を放つ。
それはトニトルスのものとは比べ物にならないものであった。
稲妻は、地面を抉り、建物を破壊する。
ルドガーはフランシスカを黒竜の身体にめがけ、投擲する。
ハウルもトマホークを投げつけた。
黒竜には命中したものの、大したダメージを与えられない様子であった。
「あの堅い鱗を何とかしないと、ダメージ一つ与えられなさそうだよ~」
ハウルがそう叫ぶと、ハイランドの騎士たちが黒竜に向かって突進する。
レイナが先頭に立って、皆を先導する。
「全員、この戦に勝てなければ、どの道ハイランドは滅ぶ!
・・・・心してかかれ!」
「・・・・「剣と風の導きを」・・・!」
ウォーレインはそうつぶやくと、自身の腰から下げていた剣を抜いて、
黒竜の袂へと突進した。
黒竜との戦いはまさに死闘であり、
黒竜が一度尻尾で薙ぎ払えば、騎士達は薙ぎ払われる。
その爪の攻撃は鋭く、地面が簡単にめくれ上がってしまう。
騎士達は自身の祖国のために、畏怖する存在に対し、剣を手に取る。
「どんなに恐ろしくて、大きな存在でもね・・・・」
ティルは口に血をにじませながら叫ぶ。
「皆の力があれば、負けることなんて絶対にないのよッ!!」
ティルはロードクラウを両手に構え、黒竜の首元を狙い、刺突する。
しかし、黒竜はそれを腕で薙ぎ払い、ティルを吹き飛ばした。
「がァっ・・・!」
ティルは建物に叩きつけられ、穴が開く。
ティルの意識はそこで途切れた。
「ティル!」
レイがティルの名前を呼び、少年がすかさずティルに近づく。
ティルは目を閉じて、気絶していた。
「やあ」
ティルは周りを見る。
目の前には以前から見ていた黒いマントを羽織る人物・・・
以前に比べ、周りの風景も変わっていた。
赤かった血だまりは青い水面に変わり、目の前の人物もはっきりと顔が見えた。
その姿はティルそのものであった。
「やっと私の存在を認めてくれたようだね」
目の前の人物はニコッと笑う。
ティルは腕を組んで、ため息をつく。
「何の用?私こんなところで油売ってる暇はないんだけど」
「まあ、落ち着きなよ。」
目の前の人物は腰に手をあてて、ティルの目を見る。
「質問がある。・・・・私は何のためにその力を振るうの?」
「当然、目の前にいる誰かのため。仲間のためよ。」
ティルは即答する。
「じゃあ、その誰かに裏切られるとか、そういうことを思ったことはない?」
「そんな難しいこと考えながら人助けなんかするわけないでしょ」
目の前の人物は、それを聞くと、吹き出して笑った。
「な、何を笑うのよ!」
「ふふっ・・・ごめんごめん。
君はドがつくお人好しなんだね。だからみんな君の事を・・・」
そして、ティルに手を差し伸べて、笑顔を見せる。
「お前に力をあげる。私は「破壊神ティルヴィング」。
破壊の象徴なんて言われてるけど、本当は弱くて醜い矮小な存在だよ。
君たち人間がどこまでやれるか、見届けるよ。」
ティルヴィングがそうティルの手を握ると、光に包まれ、すうっと消えてしまう。
そして、目の前が眩しく光る。
「さあ、行こう」
ティルが目を覚ますと、少年とレイがティルの顔を覗き込んでいた。
「無事か、すぐ目覚めてよかった!」
レイが安堵の表情でティルを見つめる。
ティルはすくっと立ち上がる。
「レイ、キミ・・・私、自分のすべきことが分かった気がする。
皆のために戦うことが、誰のためでもない、自分のためだって・・・
私だって!」
ティルはそう吹っ切れた表情で黒竜の下へと走る。
「うおおぉぉぉーーっっ!!」
ティルは咆哮を上げて、黒竜の翼にある愛剣を引き抜く。
そして、飛び上がって、黒竜の翼を斬りおとした。
黒竜は突然のティルの様子に驚いて声を上げる。
だがティルの切り込みは終わらなかった。
俊敏な動きで身体を斬り、確実に体力を奪う。
「皆、ティル殿に続け!この戦い・・・絶対に勝つぞ!」
レイナの叫びに、騎士達は武器を天に掲げて雄たけびに近い声を上げた。
そして、黒竜に突進し、攻撃を与えた。
「これで、終わりよ!」
ティルは疲弊しきった黒竜の首に向かって、剣を振り下ろした。
ザンッという鈍い音が鳴り、叫ぶ間もなく黒竜の首は落ちた。
身体は力を失ったかのようにその場に倒れる。
そして、黒竜の首と身体は、黒い靄を発して消えてなくなった。
すると、雷雨が突然止んで、黒い雲の間からは夕陽が漏れる。
「勝った・・・?」
誰かがそうつぶやくと、それを合図にするかのように、
驚嘆の声、歓喜の声をその場にいる全員があげる。
「ティルぅぅぅーっ!!」
クーはティルに向かって全力疾走し、抱き着く。
「ぎゃあっ!」
地面にたたきつけられたティルは潰れかけるカエルのような声を出す。
そして、クーを引きはがそうとするが、離れない。
「クー・・・痛い、離れて苦しい・・・!」
「もうちょっとこのまま!・・・・死んじゃうかと思ったんだもん!」
クーはうれし泣きをしてるのか、ティルの胸に顔を埋めて涙を拭いている。
そこへ他の皆もティルに近づく。
「・・・・そういう趣味か」
「なわけないでしょ!」
クロウのつぶやきにティルは怒りながら叫ぶ。
そして、ティルはクーを無理やりはがして、立ち上がる。
そこへ、レイナとシャルト、ウォーレインが近づいた。
「皆さま・・・此度は誠にありがとうございました。
あなた方がいなければ、このハイランドは・・・」
「ティル様!」
シャルトはティルに近づいて跪く。
「私、あなたの勇気ある行動に感服いたしました!
・・・・私はこのご恩を一生忘れは致しません・・・
我が剣をあなたに捧げ、あなたにお仕えすることを誓います!」
シャルトの言葉に、ティルは「はぁ!?」という声を上げる。
「いやいや、ちょっと待って!」
「いえ、私はもう決めました・・・!
民のために戦うあなたはまさに騎士の鑑!どうかお供させてください!」
レイナは力なく笑う。
「どうか、シャルトを連れていってやってください。
あなた方は我がハイランドを救ってくれた英雄です。
我が娘を預けても、安心できます。
・・・・あと、こちらにいるウォーレインもあなた方のギルドに加えてやってください。」
「はい、あなた方の信念に感動いたしました・・・
どうか、あなた方のギルドの一員に加えてはもらえませんか?」
ネイラは二人の様子に頷く。
「ええ、二人とも・・・よろしくお願いしますね。」
ネイラはそういうと、二人と握手を交わす。
そして、その場にいたライは、手を挙げる。
「あ、僕・・・そろそろ次の街に行こうかなって思ってるから、
この辺で失礼するよ、また会おうね!」
ライはそういうと、だっと走り去ってしまう。
ルドガーはその様子を見て、「慌てん坊だな」と笑った。
そして黒い雲は晴れ、
夕陽がハイランドを照らして、赤く染まっていた。