二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.177 )
- 日時: 2018/05/09 21:35
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
第十三章 伝説の鉱石を求めて
「はぁ・・・」
ティルは机に置いてある真っ二つに折れている剣を見る。
雷竜アーテルの翼にダメージを与え、それに加え止めを刺した愛剣だが、
止めを刺したと同時にぽきりと折れてしまったのである。
どんな武器でも必ず折れるとは言われたことがあるが、
なかなか別の武器を買う機会がなく、
先日の無茶な使い方でついに剣が耐えきれなくなったのだ。
「なんだ、どうしたティル。」
そこへ、クロウと少年がティルの様子に心配してやってくる。
「ん?ああ・・・愛剣が折れちゃったからがっくりしてるところ。」
「形あるものは必ず壊れる。
それが伝説の武器だろうが、神が作った武器だろうが、な。」
「そりゃわかってるんだけど、これがないと私、丸腰なのよね。」
ティルはそういうと、折れた剣を鞘にしまう。
「代わりの武器はないのか?
先日借りていた「ロードクラウ」とか・・・」
「ロードクラウなら返したわよ、秘宝なんかそんなほいほい使えないでしょ」
それを聞いたクロウは少し考えてから、提案する。
「なら、鍛冶屋に見てもらうといい、
今日は五大ギルドの「蒼穹の傭兵団」のところに行く予定だ。
そのついでにいい場所を紹介してやる。」
クロウはそういうと、準備をするために部屋に戻っていった。
「ありゃま~、こりゃえらい綺麗にポッキリイッちゃってんなぁ」
鍛冶屋は折れたノートゥングを嘗め回すかのように見ている。
燃えるような炎の色の髪が逆立ち、赤い瞳をもつ、半裸の鍛冶屋は、
がっちりとした体型である。
「おじさん、どうにかならない?」
「ん~・・・・できんことはないけど・・・・」
鍛冶屋は口をつぐむ。
ティルは問い詰めてみる。
「なんか問題でも?」
「いやな、この大陸のどこかにあるっていう伝説の鉱石「オリハルコン」があれば、これを元通りどころか、
強化できるんだがね。」
ティルは目を輝かせて身を乗り出す。
「どこで手にはいるの?」
「火山だったか海の底だったか・・・・ってあんまり確かな情報がねえんだわ。」
「えぇ~・・・」
ティルは考え込む。
「で、俺に聞きに来たわけか。」
ティルは頷く。
クロウは、自由な風の拠点の近くにある、和風の茶屋の赤い長椅子に座っていた。
なんでも、異大陸の休憩所であるらしい。
蒼穹の傭兵団の団長に会いに来ていて、団長を待っていたのだが、
そこへティルが「オリハルコン」がある場所を尋ねて来たのだ。
クロウは腕を組んで頭を悩ませる。
「・・・・俺は貿易ギルドの運営が主な仕事で、宝探しは全くの管轄外だからな・・・」
「義賊やってたのに?」
「義賊やってたからだ。」
クロウとティルがそんなことを話していると、青い髪の女が近づいてくる。
「クロウ、おまたー♪」
気さくにクロウに話しかける傭兵のような姿の女性。
髪は青く、目は赤い。
かなり軽装で、襟のたったシャツの下に黄色のインナー、
へそを出していたりと、活発な仕事をしている風貌であった。
「なんや、かわい子ちゃんと何話してたん?口説いててん?」
「冗談はやめろ、「セネル」。」
「うひひ、わりわり。」
「セネル」と呼ばれた女性は笑いながら手をヒラヒラと振る。
そしてティルの方を見て、にこりと笑った。
「はじめましてやな、ティルさん。」
「・・・・え、なんで私の名前を?」
「そら噂は何度か耳にしたでな。
ギルド「自由な風」で一番のお転婆娘らしいやん。
うちのギルドにぜひ欲しいくらいやで」
かかかっと笑うセネル、そして、ティルの手を取って握手をする。
「わいは「蒼穹の傭兵団」の団長やってる、「メルセネル・ノーマドー」っちゅー名前や。
気軽に「セネル」って呼んでや♪」
「は、はあ・・・」
クロウははあっとため息をついて、セネルを見る。
「全くお前は・・・そんなんだから彼氏もできないんだろう。」
「うっさいでクロウ」
セネルはぶーっと頬を膨らませた。
「ほーん、良い剣やのに折れちまったんやな。
もったいねーの。」
セネルはティルのノートゥングを鞘から取り出して、嘗め回すように見る。
そして、刀身に描かれた文字を見て、ティルを見る。
「ティルちゃんは「剣聖ジークフリート」の娘なんやな。
通りで良い剣を持ってるし、腕前もなかなかのもんなんや。
納得したで。」
セネルは剣を鞘に戻して、ティルに返す。
「お母さんを知ってるの?」
「おう、わいが馬鹿やってる時に説教してきたヤツや。
覚えちょる。」
セネルはそういうと、遠い目で空を見上げた。
「わいが若い頃は、それはそれは・・・」
「本題」
クロウがセネルを遮って本題に移らせる。
「おう、そうせかすなやせっかちさん。
・・・・まあ、オリハルコンのある場所は知らんことはないで。」
「本当!?」
セネルはそういうと、自分の座っている椅子においてある団子を一口。
「ほんまや。
・・・・ただな、めちゃ危険なところにあるんや。
近くて遠いってカンジ。」
ティルは目を輝かせて問い詰める。
「どこ!?」
「あっこ。」
セネルが指さした先は、高くそびえる雪山・・・フェティエ山脈であった。
「あそこにゃアイスワイバーンとか住んでる氷結の谷っちゅーもんがあんやけど、
その氷結の谷の奥底にオリハルコンが眠ってる・・・・かもしれないんや」
「曖昧だな。」
「たりめーや、誰もあすこに行って帰ってきたもんはおれへんし。」
セネルは団子を食べ終わり、串をさらにおく。
「それでもいくんか?」
「行かなきゃ、お母さんの形見が折れっぱなしだもの、
行くっきゃないでしょ!」
ティルは拳を振り上げて叫んだ。
その目は情熱に満ちている。
セネルはにこっと笑い、立ち上がる。
「ほな、わいも手伝ったるわ。」
「・・・いいのか?」
「ええんや、言い出しっぺやし、ティルちゃんのこと興味あるしな。」
セネルはそういうと、笑った。
「ほなら、明日朝にあんたらんとこに邪魔するで、待っててや。」
「うん、ありがとう、セネルさん。」
セネルはにかっと笑った。