二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.189 )
- 日時: 2018/05/09 11:33
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
第十四章 神竜の巫女
「ラピス、もう元気そうね!」
ユースティア歴600年8月17日・・・
ラピスもエルピスも怪我がすっかり治り、元気な様子であった。
ラピスに至っては、早朝に誰もいない路地で木刀の素振りをしていた。
分厚いマントやクロークを脱いで、黒い上衣一枚の薄着で、
汗を流していた。
「ああ、おかげさまで。
・・・これからは、君たちに恩返しがしたいから、どんどんこき使ってくれ。」
「いいの、そんなこと言っちゃって・・・」
「・・・まあ無茶な願いでなければ・・・」
ティルのにたっとした笑みを見て、渇いた笑いを出すラピス。
「あ、そうだ・・・ちょっと手合わせしなさいよ」
「・・・・そういうことなら、いいよ。」
ティルは木刀をつかんで、構える。
ラピスもそれを見て、木刀を構えた。
ティルの竜剣ノートゥングは、鍛冶屋の修繕により、元に戻った。
そして、あの一件をきっかけに、メイはギルドへ加入することになった。
その後、セネルがギルド「自由な風」に、ある提案を持ちかける。
それは、五大ギルドの空いた席に「自由な風」を組み入れたいという話である。
ネイラはそれを聞いて、やんわりと断ったが、
セネルは一旦保留にすると帰ってしまった。
だが、「自由な風」は各地でかなりの活躍をしてきているため、
街の噂も絶えず、名声もある。
だからよく考えた方がいい。とセネルは言い残していった。
それから、特に何も起きず数日が経った今日。
ラピスは怪我の治療のお礼にと、今日から依頼の手伝いをすることになった。
ラピスとティルは木刀を打ち合い、訓練とはいえ、互いに隙を一切見せなかった。
ティルはラピスの顔にめがけ、蹴りを入れ、ラピスはそれを受け止める。
そしてラピスは木刀をティルに振り上げるが、ティルは蹴りを入れた足でそれを薙ぎ払う。
「見事な体術だね、そんな戦い方は今迄見たこともないよ。」
ラピスはティルを褒める。
ティルは木刀で攻め続け、笑みを浮かべる。
「そう?・・・まあ、お母さんとネイラ先生の武術を参考にして、
自己流にしたのが今の戦闘スタイルって言うか!」
「ほお・・・ネイラもかなりの手練れと見たが、なるほどね!」
木刀を打ち合い、一瞬の隙も見せない戦いだったが・・・
「せえいっ!!」
ラピスはティルの腕から木刀を弾き落とした。
ティルはふうっとため息をついた。
「・・・・うん、手合わせ、ありがとうございました。」
「いや、こちらこそ。」
二人は互いに頭を下げる。
朝食を終えた後、皆は出払ってしまった。
メイがテーブルの上で一人作業をしていると、
向かい側にエルピスがやってきていた。
「あら、どうしたの?」
「あなたから、尋常じゃない魔力を感じるの・・・何者なの?」
メイはそれを聞くと、うふふと笑う。
「ただの槍使い。
ついでに踊り子もやってるのよ。」
「・・・・」
エルピスはおもむろに手に持っている魔導書を開こうとする。
が、メイは腕を伸ばしてそれを阻止した。
メイの目つきはこの世の人間とは思えないようなものだった。
「・・・!?」
エルピスがそれに驚いていると、メイは笑みを浮かべる
「その魔導書、素敵ね。・・・あまり無駄遣いしちゃだめよ。」
メイはそういうと、魔導書を放して、作業に戻る。
エルピスは、呆然とメイの作業を眺めていた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.190 )
- 日時: 2018/05/09 21:19
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
そして、陽が天高く上り、部屋で剣を磨いていたティルは、ふと背伸びをする。
ティルはどさっという重いものが地面に落ちる音を聞き、拠点を出てみる。
ドアを開けた先には、血だらけになり、着ている服がボロボロのリゼに
肩を貸す深い傷を負っているのか腕や背中、頭から血を流しているフェンリルが立っていた。
「リゼさん、フェンリル!?何があったの!?」
「・・・・ティ・・・ルさま・・・・・
どうか・・・・どうか、イリス様と、リベルテ様・・・を・・・・」
フェンリルがそれだけ言うと、その場に倒れ込んだ。
ティルは二人をすぐさま治療すべく、拠点にいるラピスやエルピス、
少年に協力を促し、二人を部屋へと運んでいった。
二人が目覚める頃には、夕陽が沈んでいた。
そのころには皆も帰っており、
あちこちに包帯を巻いたり、平織の木綿布を張り付けたり、
見るに堪えない生傷もあったリゼとフェンリルを椅子に座らせ、事情を尋ねた。
「ねえ、どういうことなの?
イリスとリベルテがどうしたの!?」
「・・・・はい、実は明日は「神竜の巫女」様の誕生日でして・・・
我々神竜教は精霊の森にて、明日に備え、巫女様が正式に巫女の力に覚醒させる儀式を執り行う準備を行っておりました。
・・・しかし、魔神教の神官騎士と帝国の異端審問官が突如現れ、
我々神官騎士と異端審問官は巫女様をお守りすべく、戦いました。
ですが、暗黒魔法にて動きを封じられ・・・・情けない話ですが、このような結果に。」
リゼの説明に、フェンリルは顔に影を落とす。
「イリスとリベルテは?」
「リベルテ様他、神竜教の高位神官は今夜、暗黒の森にて炎に生きたまま焼かれます。
・・・・そして、巫女様は異教の魔女として、魔神教の儀式にて同じく焼かれてしまいます。」
「・・・・ねえ、イリスは?巫女様って誰なの?」
ティルの質問に、リゼとフェンリルはうつむく。
ネイラ、クロウは何か察した顔つきで二人を見た。
「ティル、「アイリス・フィ・ルィン・メーディウム」って人物をご存じかしら?」
「え、誰それ?」
ネイラの突然の質問に驚くティル。
メウィルはメガネをかけ直して、口を開く。
「「イリス・フール」の本名・・・・イリスは「神竜の巫女」様ですよ。」
ティルはぽかんとメウィルを見た。
リゼもフェンリルも頷く。
「皆さまを欺く結果になってしまいましたが・・・
我々は、リベルテ様をお救い頂いたあなたがたが信頼に値すると
教皇様のご意思により、あなた方の下に巫女様を置くことにしました。
狙い通り、魔神教は巫女様に手を出すことなく数か月がたち、
皆さまから離れる瞬間を狙ったのでしょう、
魔神教は今日という日に、神子様や他の神官を連れ去りました。」
リゼは皆に頭を下げる。
「皆さま、お願いします。これは大陸の危機でもあるのです。
・・・・巫女様を神竜教の神官たちをお救いください・・・!!」
「俺からもお願いします。
巫女様が命を落とせば、この大陸から光が潰え、
・・・・恐怖と混沌で支配されてしまいます!!」
『お願いいたしますっ!!』
リゼとフェンリルは頭を下げて懇願する。
二人にとって、否・・・神竜教にとって、巫女という存在はそれだけ大きいのであろう。
ティルは二人に近づく。
「誰も断らないわよ、リゼさん、フェンリル。
・・・・みんな、この依頼、引き受けましょう!
リベルテもイリスも・・・大事な仲間だもの!」
皆はそれを聞いて頷く。
「許せないよ、か弱い女の子を捕まえて火あぶりにするなんて!」
「そうだよ、僕らも黙っちゃいないよ!」
「そんなバカげた儀式、さっさと潰しちゃいましょう!」
クーとハウルとシャルトが息の合うように、叫ぶ。
「・・・・ありがとうございます・・・皆さま。」
「ありがとうございます・・・!!」
リゼもフェンリルも涙ぐんで頭を下げていた。
「話はきいたで!」
「ききました。」
そこへ、拠点のドアを勢いよく開けて、セネルと青い髪の少年が現れる。
「うわぁ!セネル・・・と・・・」
「はじめまして。私は「蒼穹の傭兵団」副団長「エストニア・スオミ」と申します。」
エストニアは淡々と発言し、ぺこりと頭を下げた。
青い髪の整った短髪、金色の瞳、青いローブが特徴の
表情も声色も全く変わることがないポーカーフェイスな少年である。
「わいらも協力させてな。
大陸の危機や聞いたら、黙ってられんわ!」
「はい。帝国も絡んでいるのであれば、なおさらです。」
セネルはそういうと、親指を立てる。
「いいのか?独断で?」
「ご心配なく、我々傭兵団は、正義を重んじる高潔なギルド・・・
大陸の危機とあらば、動かざるを得ません。」
エストニアはそういうと、リゼが頭を下げた。
「・・・・ありがとうございます、セネル様、エストニア様。」
「ええんや・・・これも仕事のうちやからな。」
セネルはそういうと、ティルは顔を険しくさせた。
「それじゃ、みんな・・・早く行きましょう!」
その場にいる全員が頷いた。