二次創作小説(新・総合)

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.200 )
日時: 2018/05/12 21:47
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)

イリスの絶叫が森にこだまする。
その瞬間、眩い光の柱がイリスを包む。
そして、森が暗闇から一変、明るく周りが照らされる。


マグノリアと交戦中であったリゼとフェンリルは攻撃の手を止める。

「リゼさん!」
「・・・・巫女様が目覚められた・・・・!!」

リゼは一筋の汗を流し、歓喜の声を上げる。
マグノリアは木々の隙間から見える光の柱を見て、ふうっとため息をつく。

「はー、やめだ、やめ。
 目的は達成できなかったし、帰るわ。」
「あら、尻尾を巻いてお逃げになるおつもりで?」

リゼはなおも煽るが、マグノリアは肩をすくめた。

「いんや、運が良かったのはあんたらの方だわ。
 ・・・・ところで、名前は?」
「リーゼロッテ・ラスヴェートと申しますわ♪」
「フェンリル・クレプスクルム・・・」

二人が名乗ると、マグノリアはにーっと笑う。

「次に会ったときは、その首、いただくわね。」

マグノリアはそう言い残して、木々に紛れ込んで消えてしまう。
フェンリルはふうっと安どのため息を吐いて、元の人の姿に戻る。

「・・・正直、負傷してたので、死ぬかと思いましたよ。」
「同意です・・・イリス様の下へ行きましょう、休んでいる暇はありませんわ」

リゼも人の姿に戻り、光の柱の下へと駆けだした。








拘束されていたルドガー、レイ、ミュリエルの三人も、
光の柱が天に立ち上った瞬間、大蛇が消え去って解放される。

「げほっ・・・な、なにが・・・」
「ルドガーさん!・・・リベルテさんも・・・!!」

ミュリエルは気絶している二人に近づく。
リベルテは、首筋に黒い模様が浮き出ているのが確認できた。

「レイ、すぐに森の外に出ましょう。・・・・ここでは治療もできません。」
「あ、ああ・・・」

レイは頷くと、気絶している二人を運ぼうと二人に近づいた。












「身体が・・・動く!」

ティルは身体の調子が戻ったことを確認する。
そして、男の方は、イリスやティル、少年の方を見て、恐れおののいている。

「ど、どうなっておるのだ・・・・暗黒魔法がつ、使えぬだとぉ!?」

ティルは剣を手に握りしめる。

「形勢逆転ね、降伏するなら命だけは助けてあげる。
 ・・・・イリスも目の前にいるしね。」

ティルはひゅんと風を斬り、剣を男に向けた。
男は別の魔導書を取り出し、開く。

「誰が命乞いなど・・・!
 貴様らなど、焼き殺してくれる!」
「そ、じゃあ・・・さよならね。」

ティルは言い切る前に、ノートゥングが銀色に閃く。
男は「ごばぁ」という悲鳴を上げて、魔導書ごと命が砕け散った。

「・・・・魔神教だって、自分が正しいと思ってやってたのはわかってる。
 でもね、それは私たちも一緒なのよ。」

ティルは男の死体を見下ろしながら、複雑な心境でつぶやいた。






「ティル!」

そこへ、ウォーレインがたどり着いた。

「あ、ウォーレイン!いいところに。イリスを放すのを手伝って。」
「えっ!?あ、はい!」

ウォーレインは周りの状況を見て、返事する。
イリスのロープを斬り、イリスを抱いて受け止める。

「イリス、無事?」
「はいっ、ありがとうございました、ティル!・・・あなたも。」

イリスは笑顔でティルに抱き着いた。



「あ、だだ・・・顔がへこむかと思った・・・」

そこへ、ライが起き上がって、ティル達に近づく。

「や、無事巫女様を救出したみたいだね!」
「はあ、どの口が言うんだか・・・というか、あんたそのおちゃらけた態度、
 もうやめたらどうなの?」

ライは笑顔を崩さずに首をかしげる。

「僕はもともとこんなだよ?」
「・・・・ふーん、あんたいい性格してんのね。」

ティルは呆れて肩をすくめた。
イリスは周りを見て、ティルの服を引っ張る。


「ティル、もうここから離れましょう。不吉です。」
「・・・・そうね、早くここから出ましょう。」

ティルがそういうと、皆は頷いた。





















森の外に出ると、全員が揃っていた。
皆傷だらけではあるが、なんとか無事のようであった。

「おかえりティルちゃん!
 お、イリスちゃんを無事助けたみたいやな!」

セネルは笑顔でティル達を出迎えた。

「・・・・ティル様。」

リゼはいつもの笑顔でティルを見る。

「どったのリゼさん」
「巫女様の話もあります故、明日、神竜教の神殿まで出向いていただけませんか?
 もちろん、皆さまも。」
「重要な話です、教皇様にも報告せねばなりません。」

フェンリルもとても真面目な表情でティルを見る。
イリスは、フェンリルのマントの中に隠れる。


「・・・また忙しそうね。」

ティルはため息をついた。






「で、ライ・・・なんであんた、魔神教の護衛なんかやってたの?」

ティルは、ライに尋ねた。
ライは、ふと真顔でティルを見る。

「・・・・唐突に聞いていいかな?」
「?・・・いいわよ。」

ライはティルに、声を低くして尋ねる。



「君にとって、正義って何かな?」


ティルはライの顔をぽかんと見る。

「・・・簡単じゃない、「自分の信じるものが正義」ってやつじゃないかしら。」

ティルはそういうとはあっとため息をつく。


「じゃあ逆に聞くけどさ、「悪」ってなに?」
「えっ・・・うーん・・・・」

ライは珍しく深く考える。
ティルはライの代わりに応えた。

「「悪」は実はこの世に存在しないのよ。」

ライは目を見開いて、ティルを見る。
ティルは続けた。

「さっき「自分の信じるものが正義」って言ったじゃない。
 つまるところ、「正義」っていうのは、自分の信念。
 神竜教だって信念があるし、魔神教だってギルドだって帝国だって信念はある。
 一人ひとり違うものを信じているのよ。
 ・・・・もしそれがぶつかり合えば、争いになる。
 「戦争」っていうのは、互いの信念のぶつけ合い。
 だから終わることはないし、未来永劫続くわね。
 
 もし「悪」っていうものが存在するなら、それは人の心だわ。」

ティルはそういうと、肩をすくめる。

「私、「正義」って言葉が嫌いなの。二度と口にしないでね。」

ティルはライに表情を見せずにつぶやく。
ライは、ティルの様子を見て、頷いた。



「で、あんたこれからどうすんの?」
「うーん、もう少し大陸をぶらぶらしてみるかなあ・・・」

ライはそういうとふふっと笑う。

「でも、君たちの信念が折れない限り、僕とまた会えるから、安心してね。」
「なんじゃそりゃ。」

ライは荷物をまとめてかついで、歩き出した。
徐々に明るくなる平原を進み、こちらに向かって手を振る。


「じゃーね!」

ライはそういって、小さくなっていった。