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二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.210 )
- 日時: 2018/05/17 21:29
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
「フォルティス隊長!」
女騎士への攻撃を、剣で弾き、魔物を斬り捨てる白いフードの男・・・
ラピスは、女騎士の前に立ちふさがる。
「・・・グリモアール!?」
「隊長、ご無事で・・・!」
ラピスはフォルティスに対し、笑顔を見せる。
そして、イリスがフォルティスに近づいた。
「じっとしてくださいましね・・・」
青い宝玉が埋め込まれた杖をフォルティスにかざし、青い光が温かく包む。
出血が治まり、傷が塞がっていった。
「グリモアール・・・裏切者の貴様がなぜここに・・・」
「裏切者はお互い様のようですよ、
察するに、任務と称してここに呼ばれたけど、
実際は魔導兵器の実験台として、魔導兵器にミッドガンドを襲わせる・・・・
って俺の勘ですけど。」
ラピスは剣に魔力を込め、突き出すように剣を魔物に向ける。
「フレイムバースト!」
剣から爆炎が発生し、魔物たちは爆炎に巻き込まれる。
「立てますか、隊長?」
ラピスは魔物たちを薙ぎ払った後、フォルティスに対し、手を差し伸べる。
フォルティスは無言でそれを見たが、ラピスの手を取る。
「・・・・当然だ。」
「流石隊長。」
二人は互いの瞳を見て、魔物たちに向き直る。
「隊長、俺の仲間もミッドガンドを守ろうと戦っています。
俺達も俺たちの力を見せてやりましょう!」
「・・・・・・すまない、グリモアール。」
フォルティスは、斧を構える。
ラピスも剣を構えた。
「イリスは遠方から援護をお願いします!」
「・・・わかりましたわ!」
イリスはそういうと、赤い宝玉が埋め込まれた金色の杖を取り出す。
ラピスとフォルティスは、ふうっと深呼吸。
そして、同時に雄たけびを上げて魔物たちに突進した。
魔物たちをあらかた倒し、城砦は破られることなく、無事に終わった。
ラピスは、フォルティスを皆の前で紹介する。
「この方は「ジャンヌ・フォルティス」。
・・・・どうやら、帝国にハメられたみたいだ。」
「ハメられた・・・?」
ネイラは首を傾げた。
そこへ、メウィルが指を立てる。
「どうやら、魔導兵器の実験の対象をミッドガンドとし、
邪魔者である「フォルティス隊」を向かわせ、ついでに消しておこうって魂胆ですね。
・・・・思い当たる節とかないですか?」
メウィルの質問に、ジャンヌは手で口元を覆う。
「・・・・我が部隊にグリモアールがいた・・・くらいしか。」
「・・・・俺が帝国の目的を嗅ぎ付けていたから、
所属していた隊ごと消そうって?」
ティルは腕を組んで3人の話を黙って聞いていたが、口を開く。
「タイミング的に、それがビンゴっぽいわね。」
「確かに・・・でもなぜミッドガンド公国を?」
メウィルは、うーんっと声を出して悩む。
「我らが、帝国を裏切ったからだ。」
突如、皆の背後から低い声が響く。
振り向くとそこには、黄土色の髪の、左目に傷跡がある隻眼の男が立っていた。
がっちりした体型で、黄土色のマント、黒い鎧を纏う青年のようである。
ハウル、クー、シャルトはその姿を見て口をそろえる。
『ゼファーさん!!』
「んん?ああ、ハウル、クー、シャル・・・お前たちも「自由な風」にいたのか。」
ゼファーと呼ばれた男は、笑いながら三人を見る。
「知り合い?」
「うん、ミッドガンド公国の公子の「ゼファルスパーダ・ケイ・ミッドガンド」さん。
強面のオノノクスだけど、カッコイイんだよ!」
クーはゼファーを紹介しながら、目を輝かせる。
「クーは相変わらずうるせえな」
「ぶー!これでも静かになった方だよ!」
そこに、ネイラは咳払いをしながら尋ねる。
「ぜ、ゼファーさん。
「帝国を裏切った」というのはどういう意味ですか?」
「ああ・・・
我らミッドガンドは帝国に対し、調査を行っていた。
だが、内通者が帝国に漏らしたせいで、そのことがバレてな・・・
我がミッドガンドは帝国に敵視されてしまった。」
ゼファーはふうっとため息をつく。
「・・・お前らはうまくやってるみたいだな。」
「あたりまえだのクラッカーだよゼッ君!」
「その呼び方やめろっていってるだろ・・・」
ゼファーはやれやれと呆れた様子でクーにツッコミを入れる。
「・・・「自由な風」の皆、あの走り書きの依頼で来てくれて、ありがとう。
礼を言う。
・・・・だが、帝国の猛攻がこの程度で終わるはずがない。
だから、魔導兵器を操る術者を始末するまで、我らに協力してくれまいか」
ゼファーはネイラに対し、頭を下げる。
ネイラは頷いて、ゼファーの手を取る。
「「義を持って事を為せ、不義には罰を」、
これが私達ギルドの掟です。
・・・・必ず、術者を見つけ出しましょう!」
ネイラは微笑んだ。
「私も協力させてくれないか。」
そこへ、ジャンヌも申し出る。
「帝国が絡んでるのに?」
「・・・・私は捨てられたのだ・・・もう、帝国の騎士ではない。」
ジャンヌは寂しげに笑う。
ティルはその様子を見て、頷いた。
「もちろん、頑張って働いてもらうわよ」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.211 )
- 日時: 2018/05/18 20:37
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
その夜、城砦にて一夜を過ごす一行。
シャルトは、見張り台にて見張りをしていた。
昼間の魔物の大軍は、統率のとれた動きだったこともあり、
シャルトの中でかなり引っかかるものがあったのである。
「ハイランド殿、眠らないのか?」
そこへジャンヌがシャルトの隣までやってくる。
鎧を脱ぎ、黒のインナーと灰色のズボンとかなりの軽装であった。
「はい。・・・・お昼の魔物の挙動が少し引っかかりまして。
なんだか、かなり統率のとれたものでしたから。」
「・・・・確かに・・・・やはり術者はこの近くに?」
ジャンヌは見張り台から顔を出す。
昼間の魔物との戦闘で、ジャンヌの部下である「フォルティス隊」は、
半分以上の犠牲が出た。
残っているものは負傷が激しく、イリスやミッドガンドのシスターたちの治療を受けている。
その昼間の地獄絵図のような風景とは打って変わり、
今は静かで穏やかな景色が見られる。
「魔導兵器は、基本的に理性を失っているそうです。
詳しくはよくわかりませんが、
それを制御するには、高位の魔道士が膨大な魔力を使い、
かつ、近くにいなければなりません。
・・・・と、クーちゃんやハウくんが言ってました。」
「・・・・私もその話は聞いたことはある。
だが、将軍という立場ですらもその情報を隠していたとなると、
陛下の側近や一部の研究者のみで研究が進められていた可能性がある。」
シャルトはふうっとため息をついた。
「なんにせよ、術者を何とかしない限り、ミッドガンドは危ないですね。」
「・・・・そうだな。」
ジャンヌは頷く。
ふと、シャルトはジャンヌの方を向く。
「あの、ジャンヌさんって、なぜ姓の方で呼ばれるんですか?
成り行きとはいえ、もう仲間なんですから、お名前で呼んでほしいです。」
「・・・・いや・・・・」
ジャンヌは顔を赤くしてうつむく。
「・・・・・「フォルティス家」の家訓で、
「名前を呼ぶのは婚約を交わした殿方」と教わっているのだ・・・・」
シャルトはそれを聞いて、顔を真っ赤にさせる。
そして、手を振って慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい、そんなっ・・・!」
「い、いや!ハイランド殿が気にすることはない!」
ジャンヌも慌てて否定する。
そして、シャルトは外を見た。
穏やかな草原が広がり、月明かりで青く草が照らされている風景が広がっていた。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.212 )
- 日時: 2018/05/20 19:56
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
翌朝、シャルトは見張り台から顔を出す。
そのシャルトの顔を見つけたのか、青い髪の人物がシャルトに向かって手を振る。
少年の後ろには、見覚えのある人物がチラホラ・・・・
少年は蒼穹の傭兵団副団長「エストニア・スオミ」であった。
「エストニアさん!?」
「シャルトさん、他自由な風の皆さん、助太刀に参りました~!」
相変わらずポーカーフェイスでこちらを見るエストニア。
後ろの傭兵たちも、シャルトを見て手を振る。
「エスト・・・久しいな、元気だったか?」
「ゼッ君も元気そうで何よりですよ。」
「その呼び方はやめろ」
蒼穹の傭兵団が城砦に入り、防衛を固めたところで、
エストニアとゼファーが顔を合わせる。
「ゼッ君、知り合い?」
「・・・・クー・・・・はあ・・・」
ゼファーは大きなため息をつく。
「こいつは宰相アルメニア・スオミの息子だよ。
不愛想だし嫌味ばかり吐くし、ちゃんと仕事ができてるか心配だった。」
「失敬な、少なくともゼッ君よりはできてますよ。」
ゼファーとエストニアが火花を散らしてにらみ合う。
ハウルはニコニコしながら二人を見る
「仲いいんだね~」
「・・・ソウダネ」
ティルは半ばあきれて棒読みでつぶやく。
「で?お前は嫌味を言うためにここに来たわけじゃないだろう?」
「当然です。」
エストニアはポーカーフェイスのまま答える。
「団長が
「今日は奥歯が痛むしなんか嫌な予感がするから
ミッドガンド公国まで行って公子の手伝いをしてきて」
とおっしゃっていまして。」
「それもう、ほぼほぼ未来視だよね・・・」
ティルは呆れて肩をすくめた。
「まあ、団長の勘は侮れないんで、精鋭部隊を連れてきて正解でした。
魔導兵器を操る術者を叩けばいいんですよね?」
「ホント有能な副団長さんね・・・」
ネイラも呆れながらも感心する。
「またゼパルか?」
「それはないでしょう。
ゼパルは確実な勝算がない限り、攻め入ることはありません。」
レイの予想にメウィルが否定する。
「まあ、ゼファーさんは「ミッドガンドの独眼竜」って通り名があるくらいの手練れですから!
一人で巨竜リンドブルムを討伐したんですよ!」
「巨竜リンドブルム!?」
ネイラは目を見開き驚いて声を上げる。
「巨竜リンドブルム」とは、大陸北西部に位置する渓谷「ファーヴニル渓谷」に住まう山岳よりも大きく、凶暴な地竜である。
翼はなく、硬い鱗を身にまとい、鋭い牙と強靭な爪を持ち、
渓谷に近づく旅人を喰らって生きている人食い竜だった。
だが、シャルトの話によると、
ゼファーは一本のクレイモアを携え、死闘の末討伐に成功したという。
左目の傷は、その時のもので、完全につぶれてしまっているらしい。
「見た目からしてすごいとはわかってたけど・・・」
ティルは目を輝かせてゼファーを見る。
ゼファーは顔を赤らめ、ため息をつく。
「・・・いや、たまたまだ。いや、それはどうでもいい!」
ゼファーは咳払いをする。
「エストニア、お前・・・目星はついているんじゃないのか?」
「はて、なんのことでしょう?」
エストニアは首をかしげるが、表情はそのままである。
「術者の居場所だ。・・・お前は周りの魔力を持つ人間を察知できる魔導書を持っているだろう」
エストニアは「ああ~」と手をぽんっと叩く。
「その手がありましたね、流石ゼッ君。」
「・・・・白々しいなお前・・・」
「何のことやら僕にはわかりませんが。」
エストニアはそういうと、魔導書を開き、詠唱を始めた。
エストニアの足元に青い光を纏う魔法陣が大きく描かれていき、
光の輪が円の字に放たれる。
「・・・・サーチ完了、洞窟が見えます。
その中で、魔導兵器を作っている模様です・・・かなり巨大な。」
「!!」
その場にいる全員が動揺する。
「場所は!?」
「あちらです、参りましょう。」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡- ( No.213 )
- 日時: 2018/05/22 22:44
- 名前: テール (ID: X9g0Xy3m)
エストニアの案内に一行はミッドガンド近辺のとある洞窟へと赴く。
外はまだ陽が高く、気温もかなり上がっているのだが、
洞窟内は鍾乳洞であるためか、ひんやりとした空気が肌に張り付く。
「滑りやすいので気を付けてくださいね。」
「えっ、きゃあっ!」
エストニアが皆に注意を促すと、シャルトが転んでしまう。
クーとハウルが慌ててシャルトを起こす。
「シャルシャルは相変わらずドジっ子なんだから」
「好きでドジっ子やってるわけじゃないんですけど・・・」
「怪我はない~?」
ゼファーはシャルトの靴を見る。
「だいぶ擦り減っている靴を履いているんだな。」
「父上の形見なので、手放すわけにはいかないと思いまして・・・」
シャルトは顔を赤らめながら笑う。
ゼファーはふうっとため息をついた。
「皆、先に行っておいてほしい、
シャルの靴を直したらすぐに追いつく。」
「ええっ!?でも・・・」
「肝心な時に滑って転んだら困る、足手まといだ。」
ゼファーはシャルトの手を引いて、座らせる。
ネイラはその様子を見て、頷いた。
「じゃあ、ゼファーさん・・・シャルトをお願いしますね。」
「ああ。」
「ごめんなさい・・・」
そしてしばらく歩き続け、奥へ進む一行。
さらに気温が下がり、寒気すら感じてくる。
「皆さん、静かに・・・」
エストニアが指を口元に添え、皆の足を止める。
ティルは剣を構えて、奥を見る。
「あの魔物・・・の尻尾?
どうやら、相当巨大なワイバーンっぽい魔導兵器みたいね。
・・・・一体何人殺したのかしら」
ティルの目から光が消える。
レイは拳を握りしめ、唇をかむ。
「レイ、落ち着いてください。」
プリムラがレイの手にそっと触れる。
「・・・・。」
「・・・・サーチの結果、術者はあの魔導兵器を作る人物のようです。
あと、他には誰もいません・・・一人のようです。」
「チャンスね。」
ティルはそういうと
「なるほど、かなりの手練れのようだ。」
黒いローブを纏う人物がティルの耳元で囁く。
「――!!?」
ティルは驚いて身構え、剣を握る。
一行の真ん中に、先ほどまで魔導兵器の近くにいた人物がここにいたのである。
その場にいる全員が武器に手を取って、出方を窺う。
その人物は黒いローブを全身に纏い、まるで闇を着込んでいるかのように、
顔、手などが黒い。
腰には禍々しい色の大剣と、暗い灰色の剣を下げている。
「・・・あの「魔導兵器」とやらもそうだが、あの術者は手ごたえがなかった。
貴様らはどうか?」
「えっ・・・どういうこと!?」
クーは思わず驚いて、奥をよく見てみる。
魔導兵器らしき魔物はピクリとも動いていない。
そして、湿気と辺りの水分と泥くさい臭いで気付かなかったが、
血の匂いがわずかに漂っている。
「仲間を殺したの!?」
「仲間・・・か、違うな剣聖の娘よ。」
「!?」
黒い男の言葉に、ティルは心臓を掴まれたような気分になる。
なぜ見ず知らずの男が自分の身分を知っているのか・・・
「な、なんで!?」
「これから死にゆく者に、知る権利はない。」
男がそうつぶやくと、剣を鞘からゆっくりと抜く。
ティルは剣を握りしめ、構える。
だが、背後で悲鳴が聞こえた。
蒼穹の傭兵団の数人が首から血を流し、倒れているのがわかった。
「皆さん!」
エストニアが叫ぶ。
イリスは慌てて杖を取り出し、杖を天に向かって掲げる。
光が皆を包んで、倒れている傭兵たちの傷を塞いだ。
「・・・・巫女か、まあよい。」
男はつぶやくと剣を構える。
禍々しい色の剣は柄に目玉のような装飾があり、刀身は鮮血を被ったかのように深紅に染まる。
一方、暗い灰色の剣は刀身が星色に輝き、見る者を圧倒する剣であった。
男に向かって、少年とティルは剣を構えて突進する。
二人の剣を男は軽々と両手の剣で受け止め、受け流す。
「この程度か、名もなき少年、そして剣聖の娘よ。」
「・・・・!?」
「こいつ・・・・!」
二人は連携して男の隙を突こうと剣を振り、体術で男に攻撃を仕掛ける。
だが、男は隙すら見せずに、二人に対応する。
「だあぁぁぁっ!!」
そこへシャルトが男に切り込む。
しかし、男はそれすらも弾き飛ばした。
「ハイランドの公女か・・・だが、甘い。」
男はそういうと、シャルトの腕をつかんで、壁にたたきつける。
「ぎっ・・・!!」
「シャルちゃん!」
シャルトはたたきつけられ、声も出ない。
ハウルがシャルトに近づいて、介抱した。
男の隙の無い武術に、その場にいる全員が息をのむ。
「おらァ!!」
ゼファーがクレイモアを男にたたきつける。
だが、クレイモアの斬撃すら軽々と受け止め、ゼファーを押し返す。
「何っ!?」
「ミッドガンドの独眼竜・・・貴様のような小童がな・・・」
男はそういうと、ゼファーを剣を使って捻じ伏せる。
「ぐあっ!」
ゼファーは悲鳴を上げ地面に突っ伏す。
男はゼファーの様子を見て、鼻を鳴らし、見下ろした。
ゼファーですらあの様子・・・
皆の戦意は、消失しかけていた。
ティルは、ふうっと深呼吸をして、瞳を閉じる。
「だいぶ苦戦してるみたいだね?」
ティルヴィングがティルに囁く。
「別に」
ティルはははっと力なく笑う。
「ティル、私の力を使って。」
「はぁ!?なんで」
「あの男、私の同等・・・いや、それ以上の力を持つ。
もしかしたら・・・・」
ティルは考える。
「ねえ、なんか昔さ・・・
「力を貸すから身体をよこせ」っていう破壊神の絵本を読んだことがあるんだけど、
あんたはそんなことしないわよね?」
「・・・・あの本か、私はしないよ。
だって壊してもいいことないじゃん、美味しいものも食べられないし。」
ティルヴィングが笑う。
「で、どうする?」
「・・・・ホントはやりたくないけど・・・いいわ、貸して。」
ティルはそういうと、瞼を開け、男を見据える。
「・・・・。」
男は何かに感づいた様子でティルを見る。
「みんな、ちょっと待ってね、こいつを泣かすから。」
ティルはそういうと、剣を構え、姿勢を低くする。
「よかろう、ならば相手をしてやる。」
男は剣を構え、ティルを凝視した。
プリムラは、ティルの様子に何かに気づいたようで、じっと見つめる。
男とティルは次の瞬間ふっと消え去り、金属がぶつかり合う音と共に火花が散る。
剣を打ち合っているのである。
「なるほど、破壊神の力か!」
「あんたにはちょうどいいハンデでしょ!」
「面白い・・・」
男は意気揚々とした声でティルの剣を受け止める。
再び剣を打ち合う。男の双剣をティルは物ともしなかった。
男は左腕の剣を横に斬るが、ティルは背中を反ってそれを避け、
右腕の剣を見切って宙返りを打ち、下から剣を振り上げるように斬り上げた。
男はそれを避けた・・・かと思いきや、フードがわずかだが切れていた。
男はそれを見つけ、動きを止め、剣を鞘に納める。
「あら、どうしたの?」
「・・・・興がさめた。今日のところは帰ろう。」
男がそういうと、振り返って歩き出す。
「待て!・・・貴様何者なのだ!?」
ジャンヌは男に向かって叫ぶ。
「帝国直属の暗黒騎士・・・名を「ミスラ」と言う。」
そう言い残して、ミスラは姿を消した。
「結局、「ミスラ」という人物は何者だったんでしょうか」
エストニアはそうつぶやく。
隣にはジャンヌがいた。
「帝国直属の暗黒騎士・・・噂には聞いたことがある、
なんでも陛下の命なしで自由に動く闇に包まれた騎士だと。」
「なるほろ。こりゃ団長アンド五大ギルドに報告ですねえ。」
エストニアはそういうと、ぱぱっと荷物をまとめる。
「ジャンヌさん、あなた・・・ミットヴィルクングにきたら、
一番に「蒼穹の傭兵団」に来てください。
団長と話をしてもらいますから。」
「えっ・・・ああ、わかった。」
ジャンヌは戸惑いつつも、頷いた。
そしてエストニアは傭兵団を呼び、早々に帰還した。
「何とも言えない結果で終わってしまったけど、
帝国が仲間割れしたって認識でいいのかしら?」
「わからん・・・だが、ミッドガンドもこれから無事でいられなくなる。
だから、ハイランド、ローランド、エルミネア、リーベルに協力を促し、
反乱軍の結成及び、計画を練っていかねばならん。」
ゼファーがそういって空を見上げる。
「・・・だいぶ話が大きくなったわね、帝国もやる気ってことかしら」
「そうだな・・・まだ謎は多いけどな。」
ティルとレイは顔を見合わせ、頷いた。
そして、「自由な風」も帰還することにした。
そして、その夜・・・
「自由な風」の拠点に戻ったティル達はしばしの休息をとっていた。
そして、剣を磨いているティルの目の前に、プリムラが現れる。
「どうしたの、プリムラ?」
ティルは月明かりに照らされるプリムラを見る。
少年は既にベッドで眠っていた。
「ティル・・・・」
プリムラが口を開いた。
「死んでください。」
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