二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.29 )
- 日時: 2018/03/15 20:39
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
正式な手続きを取り、晴れてギルド結成を果たして数日後・・・
ティル達は拠点選び、ギルドの人員募集、以来の整理などで大忙しあった。
「先生とレイって、村の自宅はどうするの?」
書類を整理しながらティルは忙しそうにしている二人に尋ねた。
ティル達が所属するギルド「自由な風」は、
街の片隅にある大きめの集合住宅の一室を拠点に活動している。
一応数十人は収容できるが、それ以上はまた買い直しをしなければならない。
ティルの家は燃えて無くなってしまったため、戻るところがないし、
少年はそもそも家がどこかすらもわからない。
その点、レイとネイラは農村フェルミエに自宅があるのだ。
それが気になったティルは疑問を二人にぶつけてみたのである。
ネイラは笑った。
「ああ、ここに来る前に売ったのよ。
だからこの拠点が借りれたでしょ?」
ティルはああ~と納得する。
「おれは村長の家に居候だったから、別に平気だ。」
レイも答える。
「じゃあ二人とも、こっちに住んじゃっても問題ないってことね。」
そしてティルは荷物を運んでいるルドガーにも尋ねる。
「ルドガーは?」
「え?ああ、俺は元々帝都で借家を借りてて、騎士になった時に出たから家はないよ。」
「なるほどね。」
ティルはそう言って、書類に印を押す作業に没頭した。
すると、外から、何者かが走ってくる足音がこちらに近づいてくるのが分かった。
勢いよくドアが開き、バンッという大きな音が部屋に響き渡る。
「すみませーん!ギルドの人員募集の張り紙を見てきたんですけどー!!」
ドアを開けた金髪の少女がニコニコ笑いながら飛び込むように入ってくる。
少女は金髪、前髪を揃えていて、後ろ髪は左側に三つ編みをリング状に黒いリボンでしばっている。
瞳は緋色で、瞳孔がないことから、虫族だと言う事がわかる。
服装は軽装で、黄色のケープ、黄色のワンピースの上に白の上着、
白の膝下まであるレギンス、黒の靴と
見た目は町娘に見える人物であった。
「えーっと・・・名前は?」
「あたし、「クー・ド・ヴァン」!帝都からきました!」
レイの質問に、クーは元気よく答えた。
クーは聞かれたことをすべて答えた。
彼女は帝都で新聞記者をやっていて、足の速さと情報の伝達の良さから、
「疾風のクー」という異名を恣にしていた。
しかし、不況の波が彼女の下へとやってきて、
昨日リストラされたそうである。
上司からは、「まあ、その人懐っこさと明るさがあればどこへでもやっていけるだろう」
と無責任な言葉を投げかけられ、途方に暮れてここまでやってきたという。
・・・・その割にはかなり元気である。
「「自由な風」って名前がもう、あたしっぽいし!
新しくできたばかりっていうなら、一緒に発足したいなって思うんです!」
クーは拳を握りしめてぶんぶんと上下に振る。
5人は自分の仕事を終わらせて、クーを椅子に座らせていた。
ネイラは少し悩んだ後、クーに笑みを投げかけた。
「そういうことなら、ギルドのメンバーに加えましょうか。」
「えぇ!?本気かよ先生!?」
レイは驚く。
クーはその場で飛び上がった。
「やったー!ありがとうございます、ネー先生!」
「ね、「ネー先生」?」
ネイラは突然のクーの発言に困惑した。
「あ、すみません、あたし友達とか知人にニックネームつける癖がありまして!」
「ぷっ・・・!」
クーの発言に思わず吹き出す少年。
ネイラは咳払いし、にこりと笑う。
「それも個性ね、よろしく頼むわ、クー。」
「はーい!」
レイは「まあいいか」とつぶやく。
ふとクーは思い出したかのように懐から紙切れを出す。
「そういえば一つ依頼を斡旋してもらったんだよ。」
クーは紙切れを広げ、皆に見せるように差し出した。
紙切れにはこう書いてあった。
神竜教の神官が何者かに拉致され、
魔神を祀る神殿にて数日後生贄として捧げられてしまう。
神官の名は「リベルテ・ウエントゥス」。
依頼の内容は、囚われた神官の救出。
そのあとは、報酬の金額が書いてあるのみである。
「えらいシンプルな依頼内容だなあ」
ルドガーはそうぼやく。
「報酬は二月くらい生活できるくらいの金額ね。
やる価値はありそうだわ。」
「つったって、どこの神殿だよそれ・・・」
「地図もあるわよ。」
ティルは紙切れに描かれている絵を指さす。
神殿の位置はこの街からさほど離れておらず、近い場所であった。
「それじゃ、ギルド発足第一回目の依頼は、「神官救出」に決定ね。」
ネイラは皆に伝える。
「しょうがねえ、二月分の報酬だしな。」
「よし、成り行きでギルドに入ったとはいえ、燃えてきたぞ!」
レイもルドガーもやる気を出していた。
クーもその様子を見て、嬉しくなってくる。
「それじゃ、明朝に出発しましょう。
各自休息、準備は怠らないように。いいわね?」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.30 )
- 日時: 2018/03/16 14:16
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
翌朝、地図を見ながら目的地へと進むギルド「自由な風」。
比較的温暖な地域であるこの辺りは、
春の温かい光とそよ風に誘われて、ワタッコ族やチルタリス族が渡ってきて、集落をつくっていた。
そんな草原を歩んで、どんどん北上する一行。
「あー、あったかいお日様ねー。眠くなっちゃう。」
「寝たら雷落とすからな、クー。」
クーが眠そうにしていると、レイは魔導書を取り出す。
「もう、冗談やめてよレイレイ!」
「れ・・・レイレイ・・・」
「そろそろ神殿につくわよみんな、準備は良い?」
「ああ、俺はいつでも大丈夫だ。」
「うん!キミも大丈夫?」
ティルは少年を見て尋ね、少年は頷いた。
ティルはそれを見ると、にこりと笑い、前を見る。
「よーし、神官様を救出するわよ!」
神殿は鬱葱としている黒い森に囲まれ、真昼間だというのに真っ暗であり、
まるで真夜中である。
「クーちゃんは真夜中でも周りがよく見えるのだ!」
「虫だなぁ」
クーは文字通り目を光らせ、木陰に隠れて周りを見渡していた。
その様子に、レイは呆れる。
「侵入できそうな場所ってあるかしら?」
「うーん」
クーは神殿を見る。
神殿はほのかに明るい。
炎が灯っていて、そこから光が漏れているのだ。
神殿の周りには、剣士や黒いローブの魔道士、鎧を着た騎士などがいた。
騎士の様子からして、フリーナイトだろうか。
兵の数は少なく、警備は手薄だと言う事がよくわかる。
クーは見たままの様子を全員に伝えた。
「正面突破は厳しそうだが、裏から侵入を試みてみるか?」
ルドガーは一番手薄の裏口を指さす。
確かに、裏口の警備は他より手薄である。
「流石ルーくん!あたしもそう考えてたとこだよ!」
「る、ルーくん・・・・」
「前衛は私とティル、ルドガーとクーで行きましょう。
いいわね、みんな?」
ネイラの提案に頷く全員。
ネイラはそれを見て、裏口へ進むよう促した。
裏口は予想通り、警備が手薄であり、
資格を利用して警備を倒して中へと侵入した。
「しかし引っかかる・・・重要施設のはずなのに、なぜこんなに警備が手薄なんだ?」
「・・・・他のギルドがもう侵入しちゃってるとか?」
レイは疑問を口にし、ティルはなんとなく口にしてみる。
「それならそれで依頼がパーになるけど、
囚われてる神官が無事だし、それでいいと思う。」
「まあね、今回の目的は「神官の保護」だもんね。」
ルドガーに同意するティル。
ネイラもそれに頷く。
「神官様ってどこにいるのかなー?」
クーは周りをきょろきょろする。
神殿内は石造りであり、窓などが一切ない。
壁に灯っている炎の光がなければ、暗黒に閉ざされるような場所である。
空気も重く湿っていて、かび臭い。
こんな環境に閉じ込められてたら気もめいっちゃうだろうなぁ
とクーは考えた。
「しっ、隠れろ!」
レイは小声で叫ぶ。
一行は物陰に隠れ、やり過ごした。
扉の前に、一人の騎士が立っていたのである。
騎士は眠そうにあくびをしながら周りを見ている。
他はだれもいない。
「警備の人かな」
「そうみたいだ、あれなら・・・」
ルドガーはそう言いながら周りを見る。
他には誰もいない。
「ねね、誰かがあの人と交代したら、すんなりあそこに入れるんじゃない?」
「それもそうだな、他の部屋には見張りはいなかったが、
多分察するに、あそこに何かいるんだろう。」
クーの提案に同意するレイ。
「じゃあ誰が行くか」と全員悩み始め、皆ルドガーを見つめる。
「・・・俺?」
「まあ、この中で一番騎士みたいな格好だし。」
「お願いできるかしら」
ティルとネイラはにこっと笑ってルドガーに頼み込む。
ルドガーは、「とほほ・・・」とうなだれ、堂々と見張りの騎士の前に歩み寄った。
「・・・・ふぁ、誰?」
「ああ、すみません、そろそろ交代の時間だと・・・」
眠そうにしていた騎士は「ああ」と頷いて、その場から離れる。
「あ、じゃああとよろしくね。
中の神官は、おとなしいから割と楽だよ」
そういって闇の中に紛れて消えてしまった。
その様子を見て、一行がルドガーに近づく。
「割とあっさり依頼が達成できそうね。」
「そうね、中へ入りましょう。」
ネイラはそういうと、ルドガーは扉を開く。
中は明かりがあるが薄暗く、大きな窓の前に人影があった。
人影は扉が開く音が聞こえて、振り向く。
「え、あっ!?も、もうお食事の時間でしょうか!?」
人影は慌てて皆を見据える。
人影は少し背が低い少女で、髪は煤けた白い髪で背中近くまである長い髪、前髪で目元まで隠れているが、左目は微妙に見えている。
頭は緑色のくるんと渦を巻いた羊の角のようなものが生えている。
服装はブラウンのケープマント、白のローブを着ていている。
少女は慌てている様子で一行を見ていた。
「あ、えと、えと・・・!」
「安心してください神官様、我らは依頼であなたを助けに参りました!」
「えっ・・・?」
ルドガーは一歩前に踏み出す。
すると突然、壁にかかっていた、悪魔の彫像が、ガコンと大きな音を立てて、目を真っ赤に光らせる。
「侵入者ダ!侵入者ダ!」
彫像から甲高い声が響き渡り、かなりの大音量でひとつの単語を繰り返す。
すると、部屋の外から多数の足音が聴こえる、
こちらに向かってきているのがよくわかった。
「えっ、あっ!皆さん!早く逃げてください!!」
少女は慌てて皆を逃げるよう促す。
「ルドガーの不幸もここまで・・・!」
「他人のせいにしないで!」
「この状況・・・どうやって逃げるのよ!?」
一行は慌てていた。
「よし、窓から逃げよう!」
クーはそう叫んで、窓へ飛び出す。
「ちょ、クー!?」
「クーの言うとおりね、レイ、ちょっとの間動かないでね。」
「は?え、ちょ、えぇぇぇーッ!!?」
ネイラはレイを抱き上げて、クーに続いて窓から飛び出す。
「・・・!!」
「え、キミ!?きゃあぁぁぁぁーっ!!」
少年もティルを抱きかかえ、窓から飛び出した。
身長が低いので非力かと思いきや、男らしい様子にティルは顔を真っ赤にした。
そこにバンッと大きな音を立て扉が開き、多数の騎士がなだれ込む。
「侵入者が、神官を取り戻しに来たか!」
「あひぃ!もうダメです・・・!!」
「くっ、君、俺に捕まってろよ!!」
ルドガーは意を決して、少女を優しく抱き上げ、窓から飛び出した。
騎士たちはルドガーを追いかけて窓から手を伸ばすが、一歩遅く、
ルドガーと少女は窓から落ちていた。
「ひゃあぁぁ~~~っ!!」
少女は落下の浮遊感に恐怖を覚え、思わず叫ぶ。
地上が近づいている、ルドガーは何も考えずに飛び出してしまったので、何の策もない。
両手もふさがっていて、武器も持てない。
ルドガーと少女はもうダメかと思い、共に目をぎゅっと瞑った。
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.31 )
- 日時: 2018/03/16 18:56
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「まったく、脱出の事まで考えないなんて、まだまだ未熟ですわね。」
鈴のように静かに、凛とした声と共に、何かがルドガーと少女を受け止めた。
ルドガーと少女を受け止めたのは、岩でできた巨人であった。
巨人はルドガーと少女を地上へと下ろすと、崩れてただの岩になってしまった。
「ルドガー!」
「よかった、無事みたいね。」
ティルとネイラが駆け寄る。
ルドガーは少女を抱いたまま、ぽかんとしていた。
「皆さん無事、リベルテ様をお救い頂いたようですね。
教皇に代わりまして、お礼申し上げます。」
一行の目の前に現れた、一人の女性。
アイボリーカラーの髪、碧眼の、シスターを思わせる服装の妙齢の女性・・・
狼の耳と身体の半分くらいある、ふわふわした狼の尻尾が特徴的である。
シスターは深く頭を下げる。
「あなたは一体?」
ティルはシスターに尋ねた。
シスターは目を細めて胸に手を当てる。
「私は「リーゼロッテ・ラスヴェート」。
神竜教の聖職者をやっております、お気軽に「リゼ」とお呼びくださいまし。」
するとリゼは神殿を見上げる。
「ここではなんです、早くミットヴィルクングへ戻りましょう。
報酬のお話もあります。」
リゼはそういうと、スカートの裾を持ち、走り出した。
「あ、ちょ!?
・・・・みんな、リゼさんの言う通り、早く行きましょ!」
ティルは一行にそういうと、皆リゼを追いかけるように走り出した。
拠点へと戻ってきた一行は、リゼと少女を椅子に座らせ、お茶を出す。
二人は礼を言ってから、お茶を口にする。
「まず、この神官は何者なんだ?」
レイは少女を指さしてリゼに尋ねる。
「この方は「リベルテ・ウエントゥス」様。
アークビショップでも数人しかいない、全ての魔術を扱う方です。
神竜教の枢機卿なのでございます。」
リベルテは、頭を下げる。
ネイラもすかさず質問する。
「依頼書には、あの神殿には「魔神を祀る」とありましたね。
機密に触れない程度に、あなた方とあの神殿についてをお聞かせ願えないかしら?」
リゼは頷いて、説明を始めた。
「神竜教」とは、神竜アナンタを神として崇める宗教であり、
大陸の人々は神竜アナンタを主神として信仰している。
神聖魔法は、神竜アナンタから光の魔力を受け取り、癒しや浄化の力を使う事ができる。
各地にいるプリーストやシスター、僧侶などの使う杖は、神竜との契約の証であり、
祈りをささげることで、治療などを行えるのである。
それに対し、魔神ディアボロスを主神として信仰する「魔神教」。
魔神教は、月に一度神竜教の神官を捕らえ、生贄として黒い炎で生きたまま焼くという
恐ろしい儀式を行っているという。
暗黒魔法とは、人の恐怖や憎悪などの負の感情を糧とし、
破壊や束縛などの力を扱うのである。
「この世に悪というモノがあるとすれば、それは「人の心」か」
という言葉があるように、闇の力とは、人が生み出しているものなのかもしれない。
リゼの説明を聞いた後、レイは拳を握りしめる。
リゼは懐から、革袋を取り出す。
「こちらが報酬です。皆さま・・・本当にありがとうございました。」
ネイラは革袋を受け取り、中身を見る。
金貨が50枚ほど入っていた。
「確かに受け取りました。」
「ああ、それと・・・」
リゼは思い出したかのように提案する。
「リベルテ様をこちらのギルドにしばらく置いていただけませんか?」
リベルテはリゼの言葉に必死に頷く。
クーは尋ねる。
「なんで?」
「リベルテ様がこちらのギルドにいたいと願い出ました故。
本来ならば気絶させてでも連れ戻したいところですが、
あなた方なら信頼に値する・・・そう判断いたしました。」
「はい!えっと、赤い髪の騎士様・・・いえ、
ルドガー様は私を抱きかかえて助けてくださったんです!
・・・・えと、えっと・・・」
顔を真っ赤にさせるリベルテに
「要は「好きになったから一緒にいたい」ですわ」
とリゼが補足した。
まるでトマトのように顔を真っ赤にさせるリベルテ。
「ち、違います!お、おお、お礼がしたいのです、命の恩人ですから!」
リゼは目を細め、「そういうことです」と言った。
ネイラは悩み、そして頷く。
「いいですよ。ただし、枢機卿だからといって、容赦はしませんので」
「構いません、最近運動不足気味でしたし。」
リゼはにこりと笑う。
「では、リベルテ、これからよろしくお願いね。」
「は、はいぃ!」
ネイラはリベルテに向かって手を差し伸べ、リベルテはそれに応じ、
握手を交わした。