二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.39 )
- 日時: 2018/03/18 01:10
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第三章 恐怖の館
「フォルティス団長!」
翡翠色の髪が覗く、白いフードを被った魔道士のようにも見える騎士が、
扉を開けて黒い鎧を着る白髪の女騎士を呼びながら入室する。
女騎士は椅子に座って、書類の整理をしているところであり、
騎士を見るや不機嫌そうな顔になる。
「グリモアール・・・入室する場合はノックをするよう言ったはずだぞ」
「それどころではありません!
いつまであのような愚かな命に従うおつもりなのですか!
あの非力な少女を、いつまで追いかけまわすのですか!?」
女騎士は顔をしかめ、グリモアールと呼んだ騎士を睨む。
「あの少女に肩を持つのか、グリモアール。
上官の命は絶対、反抗すれば死罪だと、そう私は教育したはずであるぞ」
「ですが・・・俺は納得できません。
民を守り、民のために剣をとる・・・それが団長の・・・
我らフォルティス隊の信念であると、団長は仰っていたではありませんか!」
グリモアールはフォルティスに怒声に近い大声を上げる。
「陛下があの「エルピス」という少女の持つ魔力を求めている以上、
我らの行動は変えられん。」
フォルティスは静かに瞳を閉じる。
「納得がいきません・・・・!
俺はこんなことをやるために騎士になったわけではありません・・・!」
「口を慎めラピス!貴様は陛下を侮辱するつもりか!」
「・・・・!」
フォルティスは机を力いっぱい叩き、大きな音を立てた。
そして一息おいて、続ける。
「貴様もわかっているはずだ、今の帝国に光を照らすものが現れぬ限り、
この帝国はこの先1000年後も変わらぬと言う事がな。」
「ですが、団長も本当は」
「下がれグリモアール。貴様に話すことはもうない。」
フォルティスはそういうと、グリモアールは何か言いたげにしていたが、
「失礼しました」と一言、部屋から退出した。
グリモアールは複雑な思いで廊下を早歩きする。
「・・・わかってはいる!わかってはいるんだ、理屈では・・・!」
ふと立ち止まり、窓から差す月明かりを眺める。
満月の夜であり、光は強く感じた。
「俺はこのまま、帝国に従っていいのか・・・?
俺の意思は、「民のために剣を握ること」・・・のはずなのに・・・・
わからない・・・・誰か、教えてくれ・・・・・・」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.40 )
- 日時: 2018/03/18 22:39
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
同時刻、自由の風拠点。
メンバーが集まり、複数の依頼を分担し、
各々の明日からの予定を話し合っている最中であった。
「あたし、飼い猫探しがいい!」
クーは手を挙げて立候補する。
レイは呆れて肩をすくめた。
「一番楽な仕事を選ぶのな・・・」
「ぶー!違うもん、戦闘経験皆無なだけだもん!」
クーはぷんすかと擬音を出すかのように怒る。
「ま、でも・・・流石に新聞記者に山賊退治をやらせるのはね・・・」
と、苦笑いしながらネイラも同意する。
手元にある依頼は、
「飼い猫探し」、「山賊退治」、「館の幽霊退治」の三つ。
山賊退治には、ルドガーとリベルテが既に立候補していた。
「じゃあ、ティルとレイは、幽霊退治にいってきて。」
「・・・・はぁ!?なんでだよ!」
ネイラの提案に即座に否定するレイ。
依頼の内容が嫌なのではなく、ティルと行くのが嫌な様子であった。
「こんなじゃじゃ馬と幽霊退治なんて無理だろ先生!」
「何が無理なのよ、あんただって闇属性の幽霊に闇属性をぶつけたりしたら、
あっちがパワーアップしちゃうじゃないのよ!」
「なんだとお前!」
「何よ!」
ネイラは言い争うティルとレイの頭にチョップを喰らわせた。
「喧嘩はやめなさい!つべこべ言わず行きなさい、いいわね?」
「は、はひぃ・・・・」
二人は同時に空気の抜けるような声で返事をした。
「てことで役割分担が決定したから、各々準備を怠らないようにね。
明日は各自決めた時間に出発ってことで。
夜更かしはダメよ?」
ネイラは各々にそれぞれの依頼書を渡す。
ルドガー、リベルテ、ネイラは山賊退治へ。
クーは飼い猫探しへ。
ティル、レイは館の幽霊退治へ行くことになった。
少年は今回は留守番することにした。
その後、相部屋であったティルとレイは、互いのベッドに座り、
向き合っていた。
部屋は窓が二つあり、窓の下にベッド、間にランプが置いてあるテーブル。
入り口付近には鏡のついたドレッサーとイスとテーブルが両脇に置いてある、
簡素であるが落ち着いていた。
「なあティル、お前幽霊とか大丈夫なのか?」
レイは依頼書の内容を確認しながらティルに尋ねる。
「あたりまえだのクラッカーよ!ていうか、あの―――が・・・」
「え?」
「あ、ごめんなんでもない!」
レイはティルの様子に首をかしげたが、まあいいかと依頼書に向き直る。
「館の場所ってどこなの?」
「この前、リベルテを助けに暗い森に行っただろ、あそこの中にあるぞ。」
地図を見せるレイ。
地図を見ながら、ティルは疑問を口にする。
「あの暗い森ってなんなの?
一日中ず~~~~~~~っと暗いまんまだけど。」
「あそこは「暗黒の森」ていってな、魔神ディアボロスの骨、血肉が地下深くに埋まってるらしいんだ。」
「えぇ!?危ないところじゃん!」
レイの説明に慌てるティル。
「まあ、地下深くまで潜って何かしなければ復活することはないさ。
で、ディアボロスの魔力で、あの森は昼夜関係なく真っ暗だってことだよ。」
「なるほどねー。」
うんうんと頷くティル。
ふと外を見ると、街の明かりはほぼ消えて月明かりが街を照らし、
ほのかに明るくなっていた。
「もう寝ようぜ、明日は早く行って早く帰ってくるんだからさ。」
「そうね、おやすみ、レイ。」
ティルは笑顔でレイに挨拶し、
外の満月を見て、一瞬悲しそうな顔でつぶやく。
「・・・・おやすみ、お母さん。」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.41 )
- 日時: 2018/03/18 22:34
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
翌朝、ティルとレイは途中まで荷馬車で移動するという旅芸人に、
馬車に乗せてもらい、森の近くまでゆられていた。
持ち物はランプ、昼食、武器の予備、ナイフ、革袋の水。
少々心もとないが、幽霊退治なので荷物は少ない方がやりやすいだろう。
そんな考えである。
「ここまででイイアルか?」
馬車の御者は「暗黒の森」近くで馬を止め、二人に叫ぶ。
「はい、ありがとうございました!」
「ついでだからイイヨ、おふたりも気を付けるネ。」
御者はそういうと、馬車を走らせた。
ティルとレイはそれを見送って、森の方を見る。
「よし、入るか!」
「うん!」
ティルとレイは、「暗黒の森」へと歩き始めた。
真っ暗な森でランプに火を灯し、明かりをつけて進む。
森は相変わらず鬱葱としていて、気味が悪い。
「ここをまっすぐ行けば、近所で噂の「恐怖の館」だ。」
「恐怖の館って、どんなとこなの?」
レイは恐怖の館について話した。
近辺の村や街では噂になっている「恐怖の館」。
中に入ると、不気味な人形たちが並んでいて、来訪者を歓迎してくれる。
そこは元々「プラム・フィリア」というドール職人の持つ館であり、
彼女の作る繊細かつ美しく、見るものを圧倒させるビスクドールは、
大陸各地でも有名であり、「プラムズドール」という名前で骨董屋に並んでいた。
・・・しかしそれは50年も昔の話である。
帝国に目をつけられたプラムは、兵士に連れられ、
帝国監獄に幽閉され、人形を作らされた。
そしてそのままプラムは亡くなったと噂されている。
その後、廃墟となった館から、少女の笑い声や少年の笑い声が聞こえてくるようになり、
周辺の住民は「プラムの霊魂が人形に宿り、人形と話をしている」など、
不気味なうわさが絶えず、思い切ってギルドに依頼してみるも、
館に入ったギルドは、二度と戻ってくることはなかった。
その後何度も失踪し、ついにはティル達の「自由な風」に依頼がきたという。
「ってことだ。」
ティルは突然立ち止まり、全身を震わせる。
「ご、ごごご、ごめん、わた、わた・・・・
私、ちょっと用事を思いついて」
「おっと逃げるなティル。ギルドの名誉がかかってんだぜ」
怯えた様子のティルの肩を掴んで、レイはにたーっと笑う。
まるで新しいおもちゃを見つけた子供のような顔である。
「レイ!ホント勘弁して!そんな話聞いたらいけなくなるよ!」
「もうここまで来ちまったんだろ!!」
「いやぁぁ!もう帰らせてよぉぉぉぉーっ!!」
ティルは泣き出してしまった。
レイはそれを引きずり、歩き出す。
「わぁぁぁぁーん、まだ死にたくなぁぁぁぁーい!!」
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.42 )
- 日時: 2018/03/19 19:39
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
結局二人は古びた洋館へとたどり着いた。
外見は大きな館であるが、窓ガラスは割れ、蔦が壁に張り付いて伸び放題、
周りも雑草だらけでもう何十年も手入れされていないことがわかる。
そして何より、周りに人形の腕やら足やらが散らばっていて、
不気味な雰囲気を漂わせている。
ティルとレイはその外見を見て、息をのんだ。
「か、帰ろうよ・・・私まだ19歳なんだよ、死にたくない。」
ティルは森に入る前の威勢はどこへやら、涙を流しながらレイに訴えかける。
「仕事しろ、さもないと雷で焦がすぞ」
「やだー・・・」
結局中に入ることにした。
ティルはレイのマントを自身の体に巻き付けて、レイを盾にするかのように
レイについていく。
しかし、レイは
「おい、動きにくいだろ、マント破れるだろ!」
とティルに向かって叫ぶが、本人は首を振る。
「・・・・めんどくせえ」
レイはため息をつきながら前に進むことにした。
中は噂通り、無数の陶器人形がこちらをみつめ、歓迎していた。
少女、少年の人形たちは、無機質な瞳で見据えている。
それが無数にあるものだから、鳥肌も立ってくる。
「何も見えない・・・何も見えない・・・・」
ティルは小声で呪文のようにつぶやいていた。
レイはティルの呪文のおかげで怖さが半減し、呆れてため息をついた。
「気味悪いからやめろよ・・・」
ランプの明かりで薄暗いが、それが余計に不気味さを増している。
エントランスを見渡すと、中央に階段があり、
階段の踊り場にはレイの身長くらいはある肖像画が飾られていた。
肖像画は銀色の髪の少女が描かれていて、
少女が椅子に座り微笑んでいる・・・そのような絵である。
「この人が、「プラム・フィリア」?」
「かもしれんな、職人プラムの所有物だし、この館。」
階段を上がる二人、ところどころ床が腐って抜けている。
相変わらず人形たちが無数に並んで、ティルとレイを見つめている。
「もうやだ、帰ろうよ・・・」
「帰ってどうすんだよ!」
ティルは元の元気な姿などなく、泣きじゃくる子供のようであった。
変な話するんじゃなかったなと面倒になってきたレイ。
だが、ティルが心底怖がっているおかげでレイは怖さを感じなくなっていた。
二人は、廊下に並ぶ扉を一つ一つ開けて、中を見る。
中は床に穴が開いていたり、人形がばらばらになって散らばっていたり、
血か何の液体かわからないものがこびりついていたり・・・
どの部屋に入っても目ぼしいものは何もなかった。
「幽霊なんかいねえなあ・・・おい、ティル大丈夫・・・ティル?」
レイが後ろを見ると、ティルの姿はなかった。
「・・・嘘だろッ!?」
レイは慌てて来た道を戻ってティルを探す。
しかし、あるのは人形たちのみで、ティルどころか生身の人間すらいない。
「おい、ティル!ティルーッ!!」
レイは叫ぶがしんとした館に空しく響くだけであった。
「クソッ、どこに行ったんだよ・・・!?」
心臓が痛いくらいに脈打つ。
突然一人になり、不安と恐怖がレイに押し寄せてくる。
ふと、耳を澄ますと・・・
クスクス・・・
アハハハ・・・・・
少年と少女の笑い声が聞こえる。
それは一人や二人ではなく、何十人といった数の笑い声であった。
「これが、噂の・・・」
レイははっとして、考えた。
「人形師」という人形に死霊を入れて、操る魔術師の事を思い出す。
そいつが今迄調査にやってきたギルドを次々に失踪させていたとしたら・・・
「ティルが危ない!」
レイは走り出して、ティルの名前を呼びながら、部屋を一つ一つ探った。