二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.45 )
- 日時: 2018/03/20 21:20
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「ああ、もううんざりだ・・・」
レイは暗闇の中で一人うなだれる。
進めど進めど肢体がバラバラになった人形しかない。
頭がおかしくなりそうである。
「ティル、どこいったんだよ・・・」
レイはおもむろに周りを見渡す。
暗闇は容赦なくレイを飲みこもうと迫ってくるようにも見える。
ふと、扉の隙間から光が漏れていることに気が付く。
「・・・?」
レイはその光に吸い込まれるように、近づく。
そして、隙間から中の様子を覗いた。
中には、赤いロングのワンピースの上に白いエプロンを着ている金髪の女性が
台所で調理をしている最中であった。
レイは凝視する。
見間違えるはずがない、その女性は自分の母親であった。
レイは扉を開けようとノブに手を触れる。
「母さ」
「レイ!」
突然、レイの名前を呼ぶ声が聞こえた。
そこで、レイの意識はぷつんと途切れた。
「おーい、レイ!」
赤く長い髪を白いリボンで巻き付けている少女が、
レイを膝の上にのせて、名前を呼ぶ。
「いい加減起きなさいってば!!」
少女はレイの両頬を叩いた。
「いでっ!」
レイは痛みで目を開けて少女の顔を見る。
「あれ・・・・ティル・・・・?」
「あれ?・・・・じゃないわよ生意気小僧!どんだけ心配したと思ってんのよ!!」
ティルは怒っている様子であった。
「あれ、お前どこかに行ってたんじゃ・・・」
「は?」
レイの質問にティルは半ば怒ったように聞き返す。
「あんた、何も覚えてないの?森に入った瞬間の事!」
「え?」
「森に入った瞬間・・・・」
ティルは説明した。
「よし、入るか!」
「うん!」
二人は暗黒の森に一歩踏み出した。
その瞬間、ティルは耳を塞ぐ。
キーンという甲高い音が聞こえたからだ。
「何よこの音!レイ、大丈夫・・・・レイ?」
ティルは周りを見渡す。
レイの姿がどこにもない。
「ちょっともう!どこ行ったのよレイ!」
ティルは叫んでレイを呼ぶ。
しかし、返事は帰ってこない。
「・・・もう、世話のかかるガキんちょね!」
ティルは急いで恐怖の館へと走り出した。
真っ暗な森はランプがなければ前が見えず、抜け切るのは困難である。
ふと、耳を澄ますと・・・
カエレ カエレ・・・
クルナ クルナ・・・
と、少年と少女の声が聞こえる。
しかしティルは叫んだ。
「だーれが帰るもんですか!こう見えて私は肝試しを出禁にされた女なのよ!」
何の自慢だかわからない自慢を叫びながら森を走る。
森を抜けると、不気味な館にたどり着いた。
噂の恐怖の館である。
「レイが幽霊にさらわれたとか、ダジャレなんかいってんじゃないわよ!!」
ティルは女の子だとは思えない足取りと歩幅でずんずんと進み、
入口の扉を開ける。
すると、エントランスには無数の人形がこちらを見つめていた。
「たのもー!ゴーストキラーのティル様がお越しよ!歓迎なさい!!」
ティルは内心、気分が高ぶっていた。
なぜなら、得体のしれない者と戦えるなんて滅多にない経験であり、
帰ったらみんなに自慢してやろうとウキウキしていたからだ。
ティルの要求通り、目の前にふたつのビスクドールが闇から現れた。
「うるさいね、お兄ちゃん。」
「うるさいね、お姉ちゃん。」
二つの人形はお互いを見合わせて喋り出したのである。
「なによ、喋れるんじゃない。
だったら質問させて、レイはどこ?」
「教えない。」
「教えない。」
二人は交互にティルの質問に答える。
「もう一度聞くわよ、バラバラにされたくなかったら答えなさい。
レイはどこ?」
「みんな、やっちゃうよ!」
「このじゃじゃ馬をあいつらと同じようにしてやろう!」
二人は叫ぶと、周りの人形たちはカタカタと動き出し、
一斉にティルに襲い掛かった。
「そうこなくっちゃおもしろくないわね!!」
ティルは笑いながら持っていた銀色の剣を鞘から抜いて、
居合い切りで人形達を数十体切り倒す。
居合い切りというより、剣から刃のような衝撃波を出したのだ。
「・・・・!?」
「みんな!!」
「骨がないわね、人形だからか。」
ティルは剣を回して人形たちに向ける。
「レイを返しなさい、そしたら人形が砕けずに済むわよ。」
「僕たちが相手。」
「私たちが相手。」
二人は同時に叫ぶ。
表情は激怒した様子であった。
「あんたたちの手足でも折れば吐いてくれるかしら?」
ティルは剣を構えた。
二人の人形もそれぞれランスと魔導書を取り出す。
と、その間にティルはランスを持つ少年の人形に斬りかかった。
「!?」
ティルの剣をランスで受け止めた。
すかさず魔導書を持つ人形が、魔法を放つ。
「アイスブレード!」
ティルの真上から氷柱の槍が降り注ぐ。
しかし、ティルはそれを剣で斬り、粉々に砕いた。
その隙をついてランスを持つ人形がランスを向け、突進してくる。
ティルはすかさずランスをくるんと回って避け、人形の腕をつかむ。
「・・・!」
「捕まえた。」
「お兄ちゃんを放して!」
魔導書を持つ人形が魔法を放とうとすると、ティルは腕をつかんだ人形を盾にする。
「・・・!!」
「私ね、今怒ってんだよね。」
ティルは張り付いた笑顔を見せる。
「まあ、勝手に入ったのはこっちなんだけどさあ・・・・
素直に言う事を聞いてくれれば許そうと思ったんだけど・・・・」
そして目をうすーく開く。
「攻撃までしてきたんだから、これは正当防衛よねえ?
つまり、ここでこいつの腕をへし折っても、私は無罪なわけで・・・」
ティルの顔は、満面の笑みであったが、
その放っているものは全くの別物であった。
「ご、ごめんなさい!」
「言うよ!言います!!」
その覇気に怖気づいた二人は慌てて謝罪する。
そして、レイの居場所を教えてくれた。
「次逆らったら、首をへし折るから。」
念を押してドスの効いた声で二人に告げる悪魔のようなティル。
二人は泣きそうな顔であった。
「というわけよ。」
「いや、人間相手じゃないからってやりたい放題すぎんだろ!」
レイはティルの話を聞いて、慌てて突っ込む。
「ふふん、死んだ奴が生きてる者を超えようなんざ150年早いのよ」
ティルは鼻を鳴らした。
「で、あんたたち、あんたたちのマスターはどこよ?
言わないと・・・」
「あ、案内するよ!」
「だから壊さないでぇ!!」
素直に答える二人は、かなり怯えている様子であった。
「すんなり進みそうだなぁ・・・」
レイは呆れてため息をついた。
人形の後を追い、ティルとレイは館のさらに奥へと進んだ。