二次創作小説(新・総合)

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.49 )
日時: 2018/03/21 13:31
名前: テール (ID: LAu9zylb)

ティルとレイが案内されて入った場所は、ただの私室であったが
アイスブルーの髪を二つに結わえて、リング状にまとめたおさげの少女が椅子に座って人形と会話をしている最中であった。

橙色の服の下に白いシャツ、青い短パンの可憐な少女は、
その青い瞳をこちらに向けて、二人の人形に気づく。

「あ、ルビー、サファイア、どうしたの?
 新しいおともだちを連れてきてくれたの?」

ルビーとサファイアと呼ばれた人形は、少女に泣きつく。

「うわぁぁ~ん、怖かった!」
「この人人間じゃないよ!」
「悪かったわね!」

サファイアに思わず叫んで突っ込むティル。
レイはまたため息をついた。
ティルは咳払いし、少女に指をさす。

「あんたが件の「幽霊」ね!?・・・ってこの子生きてるの?」
「生きてるだろうな、足あるし。」

「あなたたち、だあれ?」

少女は二人に尋ねる。

「私はティル・ソティス。しがない剣士をやってるわ。」
「おれはレイ・レグルス。同じくしがない祓魔師だ。」

少女は二人の自己紹介に頷いて、笑顔を見せる。

「スピカは「スピカ・フィリア」なの。
 「ネクロマンサー」をやってるのよ。」

「なるほど、幽霊ってのは死霊のことだったのか。」

レイは頷く。
ティルは早速スピカに交渉をしてみる。

「ねえスピカ、ここの人形たちが近所の村に迷惑をかけてるの。
 みんな困ってて、私たちに頼み込んできたのよ。
 もうこんなことはやめて、私たちについてきて村の皆に謝りましょう?」
「うんいいよ。」
「どうしても・・・は?」

スピカの素直すぎる返事に二人はずっこけそうになった。

「スピカのやってることは悪いことなのね?
 スピカ皆を困らせるのをやめるの。皆に謝るの。」

スピカは笑顔でそう答えた。

「スピカちゃんがそういうなら」
「私たちもやめる。」

ルビーとサファイアもスピカに同意して、武器を下ろした。
あっさり依頼達成した二人はぽかんと口を開けたままスピカたちを見た。


「ま、まあなんにせよ・・・幽霊退治ができたみたいだし、村に報告にいこっか。」
「そ、そうだな」

二人はスピカを連れて館を出ることにした。
ルビーとサファイアもスピカについていった。















そして、暗黒の森のすぐ近くにある村にたどり着いた三人は、村人に歓迎された。
そして、村長がティルの下にやってきて、頭を下げる。

「ありがとうございます、これで幽霊に怯えずに済みます。」
「いえ、これも当然のことをしたまでです。」
「これは心ばかりの謝礼です、本当にありがとうございました。」

村長はティルに革袋を渡した。
ティルは中身を見ると、40枚ほどの金貨が入っている。
ティルはそれに頭を下げた。



「おい、そいつもしかして、「悪霊憑き」じゃねえのか!?」

ふと村人の一人が指をさして叫ぶ。
スピカは「悪霊憑き」という単語に、ビクッと身体を震わせた。

「本当だ!「悪霊憑き」だ!」
「なんでこんなところに?」
「また災厄をもたらすのか・・・!?」

村人たちは口々に騒ぎ出す。
村長も、スピカを見て顔をしかめる。

「どういうことだ?」
「・・・・。」

レイは訳が分からず困惑している。


そしてスピカの頭に石が投げつけられる。

「ひゃっ!」
「出ていけ「悪霊憑き」!」
「そうだそうだ!」

皆口々に「出ていけ」と叫ぶ。

「おい、やめろ!」

レイは叫ぶが、意味をなさない。


ティルはその光景を見て、過去の自分を思い出す。





<あっちいけ「邪竜の子」!>
<お前さえいなけりゃこの村は滅びることはなかったんだ!>
<死んじまえ!!>



「すみません、村長・・・報酬はお返しします。」

ティルは顔に影を落として、無表情で村長に革袋を渡す。
村長は困惑した表情でティルを呼び止めるがティルは振り返り、レイとスピカの下へ歩み寄る。

「早くこんな村、出ましょう。」

ティルはそれだけ言うと、そそくさと立ち去る。

「お、おい!」
「・・・・。」

3人は村を後にした。
















そして、三人は拠点へと帰ってくる。

「おかえりティル、レイ!・・・・その子は?」

ネイラが出迎えてくれた。
ティルは先ほどの表情から一変、明るい表情で皆を見る。

「ただいま!いやー、大変だったよ!」

レイもティルの様子にひきつった顔で「ただいま」と一言。


「ティル、何があったの?」
「あぁ、うん。実はね・・・」

ティルはスピカを中に入れて、今迄の経緯をすべて話した。








「なるほど、報酬はその子になってしまったのね。」
「・・・ごめん。」

ティルは暗い顔でネイラに謝る。

「いいのよ・・・・それじゃあ、仕方ないわ。」

ネイラはティルの頭を優しくなでた。
クーはスピカに近づいて、笑顔を向ける。

「ねね、あなたの名前は?
 あたし、「クー・ド・ヴァン」!よろしくね!」
「スピカ・・・スピカは「スピカ・フィリア」なの!」

スピカはクーの笑顔につられて満面の笑みを浮かべる。
そこへリベルテも近づいて、スピカと会話をする。


「スピカはもう大丈夫そうだな。」

ルドガーは3人の様子に安堵の表情を浮かべる。

「ちなみに、スピカは男だから、多少は荒い使い方でも大丈夫だそうだ。」
「へー男・・・は!?」

レイの発言にティル、ネイラ、ルドガーは驚いて声を上げた。
レイはスピカに聞いたことと経緯を全部話す。



スピカは元々、プラムの孫で両親はまさに今回依頼してくれていた村に住んでいた子供であった。
しかし、スピカの「人形に死霊を入れて使役する」という能力を
村の人々と彼の両親は気味悪がって、5年前に恐怖の館に追いやったという。
スピカは人形に死霊を入れて、友達を作っているうちに、
自分の意思を持つルビーとサファイアが誕生してしまった。
ルビーとサファイアは寂しがるスピカのために「おともだち」を作るために
森に入った心の弱い人間を館に呼び込んで魂を抜いていたという。
少女と少年の笑い声は、人形の声であり、
ギルドたちの失踪は、人形たちに魂を抜かれていたのである。
それが「恐怖の館」の真相であった。



「つまり、レイは心が弱かったのね。」
「う、うっせえな!」

レイは顔を真っ赤にする。

「まあなんにせよ、みんな無事でよかったわ。」
「そうだな!」

ネイラもルドガーも笑いながら二人の肩をたたいた。




「で、スピカはどうするんだ?」
「本人に聞いてみましょ、スピカ!」

スピカはティルの呼び声に気づいて近づいた。

「なあに?」
「あなた、これから私たちと「お友達」にならない?」

スピカは首をかしげる。

「それって、死んでくれるの?」
「なんでやねん!違う違う!」

ティルは手を左右に振って、スピカと目を合わせる。

「本当の意味で「友達」になるの。
 あなた自身を見てくれる、あなた自身を信じてくれる存在・・・
 それが「友達」なのよ。」

ティルは続ける。

「逆に、あなたも私たちを見て、信じるの。」

スピカは周りを見る。
全員がスピカに対して笑顔を向けていた。

そしてスピカは頷いて笑顔になる。


「・・・・うん、スピカ友達になるの、ティル!」
「よーし、じゃあ私たちは今日から友達ね、よろしく!」