二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.51 )
- 日時: 2018/03/22 00:33
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第四章 蒼炎の狐
ユースティア帝国現皇帝「ヒュドラ・ベル・ユースティア」は、
未だ誰もその姿を見たことがない。
側近や宰相、参謀ですら姿を見たことがない。
謁見を申しだされた場合、ベールに包まれた玉座に案内されるのである。
そのことを口にするだけで死罪になるという。
しかし、ヒュドラの姿を見た者が一人だけ存在する。
ヒュドラはその人物を無傷で捕らえる様に兵士に命を出していた。
だが、いまだにその者を捕らえることができていない。
ユースティア歴600年5月12日
ギルド「自由な風」が発足して約1か月が経った。
大陸は春の暖かさから徐々に夏に変わりゆく時期である。
自由の風のメンバーであるティルは、午前中に依頼を終わらせ、
夕食の買い物を済ませてから帰るところであった。
「えーっと、野菜も買ったし、肉もOK。あと足りないのは・・・・」
ティルはそうつぶやきながらメモを見ながら歩いていると・・・
「おわっ!」「きゃあっ!」
ティルは何者かとぶつかってしまった。
「あだだ、ごめん!急いでて・・・!」
「いえ、こちらこそよそ見してて・・・!」
ぶつかった青年は、赤毛の髪、白を基調としたマントと服装。
髪の先は黒く、頭の上からは犬のような耳が生えている。
どうやらルガルガンのようであった。
青年は紅い瞳でティルを見据えた。
「はい、ごめんよ・・・それじゃ!」
青年はマントを翻して走って去ってしまった。
「随分慌ただしい人ね・・・」
ティルはそういうと、自分も帰路についた。
「ただいまー。」
ティルは拠点へと戻ってきた。
「ティル、おかえりなの!」
留守番をしていたスピカがティルが戻ってくるなり、抱き着く。
ティルはそれを受け止め、スピカの頭を撫でた。
「おかえりなさいませ、ティル様。」
もう一人出迎えてくれた人物がいた。
「ただ・・・って、あなた!リゼさん!?」
「覚えていただいて光栄の極みでございますわ。」
拠点で待っていたのは、先日リベルテ救出の依頼を出してくれた、
正体不明の聖職者、リーゼロッテ・ラスヴェートであった。
「本日は「自由の風」の皆様にお願いがあってきたのですわ。
ああ、ネイラ様や他の皆さまも交えた方がいいですわね。」
そういうと、窓の外を見る。
「皆は多分もっと後に帰ってくると思うわよ」
「それでしたら少し用事があります。
一旦戻りまして、またこちらへ参りますわ。」
それだけ言うと、リゼはスカートを広げながら一礼した。
スピカはそれを見送ると無邪気に尋ねる。
「ねね、スピカ、お腹空いた!」
「じゃあお昼にしよっか。」
陽は天空高く上っている、ちょうどお昼時であった。
ティルは買ってきた食材をいくつか取り出し、料理を始めた。
そして陽は傾き、赤い夕陽が街を照らす頃・・・
皆が戻ってき始めた。
皆が戻ってきたことを確認したティルは、夕食をテーブルに並べ始める。
スピカと少年がティルの手伝いをして、人数分並べた。
どんなに忙しくとも、夕食時は必ず皆で集まることを約束し、
談笑を楽しむのが、このギルドの決まり事であった。
朝、昼は皆が集まることはできないが、夜は大事な用がない限りは、必ず全員集まっていた。
夕食が終わり、それぞれ今日の成果を話し合っていた。
すると、入り口のドアからノックの音がする。
少年が入り口のドアを開けると、そこにはリゼと赤髪の騎士がいた。
「夜分に失礼いたしますわ、皆さまは揃っておいでですか?」
リゼは少年に尋ねると、少年は頷き、中へと案内する。
「お久しぶりですね、リゼさん、それとそちらは?」
「この騎士は私の後輩のフェンリル・クレプスクルム。
未熟者でありますが、かなりの手練れです。」
フェンリルはぺこりと頭を下げる。
ティルはフェンリルに対し指をさす。
「あなた、お昼のぶつかってきた人!」
「あなたがまさかリゼさんのお知り合いだとは思いませんでした。
お昼のご無礼をどうかお許しください・・・」
「で、今日はどういったご用件で?」
ネイラは二人に尋ねる。
「はい、ある人物をこちらにおいていただきたく存じます。」
「ある人物?」
ネイラが言葉を繰り返していると、
フェンリルのマントの陰から黒髪の少女が現れた。
「この方は「イリス・フール」様。
見習いシスターであり、貴族出身ですから、世間知らずな場面もありますが、
その腐った根性を直してほしく思い、こちらに参りました。」
リゼはイリスを指して説明する。
イリスは腰に手をあてて、ふんぞり返った。
「汚い家ですが、特別に許して差し上げますわ。
私は「イリス・フール」。シスターをやっておりますの。
怪我をなさいましたら、私が治して差し上げますわ。」
傲慢な自己紹介に苦笑いする一同。
「まあ少々性格に難ありですが、仲良くなさってくださいませ・・・」
リゼのフォローに、ネイラは無言でうなずいた。