二次創作小説(新・総合)

Re: ポケタリアクロニクル-英雄の軌跡-【オリキャラ募集】 ( No.73 )
日時: 2018/03/27 21:03
名前: テール (ID: LAu9zylb)


草原に再び平穏が訪れた。
静かな風が顔をなで、草の流れる音が心地いい。
ティルは深呼吸した。


「・・・・。」

少年はそんなティルに近づいて、ティルに向かって手を掲げた。

「キミっ!」

ティルは少年に近づいてパンッと音を立ててその手を叩いた。

「やったね!」

少年は表情は変わらないが、頷く。







そこへ、フィーヌとカグラとリーヴェシア、数人の遊牧民が近づいてティルに近づいた。

「ティル、ありがとう。君のおかげで草原は救われた。」
「本当に、心から感謝いたします、ティル様。」

フィーヌとカグラは深々と頭を下げた。

「あ、いや・・・それよりも
 このまま草原を放置してたらまた炎竜が来るかもしれないわ。」

フィーヌはティルの言葉を聞いて笑みを浮かべる。

「御心配には及びません、清浄なる器を媒介にこの草原に結界を貼ります。」
「清浄なる器?」

ティルは首をかしげる。
すると、フィーヌは杯のような器を取り出した。
色は透明で、美しく光を反射している。

「これはリーヴェシア様により授かったものです。
 神竜の加護を持つこの杯であれば、草原全体の結界など容易いでしょう。」

フィーヌはそういうと、懐から革袋を取り出した。

「ティル様・・・いえ、ギルド「自由な風」への報酬でございます。
 お納めくださいませ。」

ティルは革袋を受け取り、中身を見る。
白色のコインが20枚ほど入っていた。

「・・・これ、白金貨!?」

白金貨とは、金貨よりも価値がある貨幣であり、1枚で半年は遊んで暮らせるほどの価値がある。

「草原を救ってくださったお礼です。
 それでも足りないくらいですわ・・・。」
「いやそんな・・・こんなにもたくさん、受け取れないわ!」

ティルは困惑した顔で首を横に振る。
そこへカグラが指を立てて笑う。

「受け取りなよ、君への信頼と感謝の気持ちだ。
 草原の民は、君に感謝しているんだよ、その気持ちを無下にするつもりかい?」
「う・・・」

ティルは言葉を詰まらせ、しばらく考える。
そして、静かに頷き、革袋を懐にしまった。

「そうね、ありがたく頂戴いたします。」
「あとひとつ、ティル様にお願いがあります。」

フィーヌはカグラとリーヴェシアの背中をたたいて、ティルの前に出す。

「こちらのおふたりが、ギルド「自由な風」へ加入したいと希望を出されております。」
「ちょ、強引だなぁ・・・」
「あはは・・・」

カグラは困惑しながらもティルに一礼する。
リーヴェシアも同じ様子である。

「もちろんいいけれど、二人の意思は?」

ティルは二人に尋ねた。

「僕は君たちと共に世のため人のため、働きたいかな。
 戦力もそこいらの傭兵やフリーナイトよりは役に立つだろうと思う。」
「私は、今覚醒しようと蠢く邪悪を討ち、この大陸に平和と安寧をもたらしたいのです
 ・・・・というと少し堅苦しいかもしれませんが。」

カグラは笑い、リーヴェシアは少し顔を赤らめた。
フィーヌも頷いて補足する。

「この草原は杯が壊れない限り、邪悪なる存在の侵入を許さないでしょう。
 リーヴェシア様もカグラも、あなた方の近くにいれば動きやすいですしね。
 しかし・・・炎竜が現れたとなると、「魔神の復活」は近いかもしれません。」
「「魔神の復活」?」

ティルは首をかしげて尋ねる。

「ええ、魔神教の動きが活発化してきているとお見受けします。
 教皇様もそれを警戒されておられまして・・・
 リゼさんやフェンリルさんもそれで彼方此方を飛び回っておられます。」

確かに、リゼとフェンリルは最近ギルドをよく訪ねてくる。
そう思ったティルは頷いた。

「魔神教の狙いは、魔神復活ってこと?」
「まだ推測の範囲ですが、おそらく。」

フィーヌは険しい顔でうなずく。


と、突然ぐ~という間抜けな音が鳴り響いた。
皆は辺りを見回すと、少年がお腹を抱えてうつむいていた。

「・・・・ぷっ、あはははっ!
 そうだよね、昼食をまだ食べてないもんね!」

ティルは笑いながら少年の頭を撫でる。
釣られて、周りも声を上げて笑っていた。

「よろしければ、私の家にいらしてくださいませ。
 ご馳走いたしますわ。」
「わーい!私もお腹ぺっこぺこ!」
「・・・♪」



ティルと少年は両手を上げて飛び跳ね、フィーヌについていった。


こうして、長い一日が終わり、
新たな仲間のカグラとリーヴェシアと共に、拠点へと帰るティルと少年。



しかし、邪悪なる存在の影は、静かに確実に・・・
ギルド「自由な風」に忍び寄っていたのである。