二次創作小説(新・総合)

始まりは静かに ( No.269 )
日時: 2020/04/29 16:48
名前: 月詠 (ID: G1aoRKsm)

美しい歌声がその場を支配する。
相方は涙を流し、動かしにくい体を必死に動かそうとしている。
やめろと、歌うなと。
命を燃やして力へと変えるなと。
本当はまだまだ、君と歌いたいと言いたかった。
本当はまだまだ、羽ばたきたいと告げたかった。
けれど、奴らを倒すには、この歌を詠唱うたうしかなかった。
だから……。


(ごめんなさい、―……そして…)


今までありがとう。
嗚呼、風が舞い…



――――――



美しく優しい音を紡ぐ両親。
二人を亡くし、捕虜として生きて、拾われた。
歌も大人も嫌いで、痛みこそが人を繋ぐと言われて痛めつけられて。
恨んだこともあった。
けれど狭かった世界を広げてくれたのも、何かを教えてくれたのも。
全部、あんたでもあったんだ。
少しずつ不器用な優しさをくれたことに恩返ししたくて。
だから……。


(パパとママの夢を受け継いで…――――、あんたのもう一つの夢を守る……!)


今までありがとう。
雪のように冷たくなってた心に温もりをくれて…



――――――



走り寄り、すぐに突き飛ばした。
向かってくる瓦礫はこちらを捉えてきて、逃げられないと悟った。
せめてと微笑む。
これ以上に傷つき血を流す貴女を見たくないから、厳しくも優しい貴女に託したいから。
愛してると伝えるためにも。
大好きよと伝えるためにも。
どんなに痛くても絶対に涙は流さないわ。
だから……。


(―――、貴女は生きて……――、あの子をお願いします……)


今までありがとう。
独奏ひとりじゃないから…



―――――――



ずっとずっと、痛くて、苦しかった。
それでも笑顔を浮かべることが出来たのは、二人でいれただけじゃない。
守ってくれた、貴方もいたから。
二人で調べ歌うのを聴いてくれて、嬉しかったのを覚えてる。
その腕を異形に変えられたのを見た時に、決意したのだ。
恩返しをするなら、みんなに生きていてもらうにはこれしかないと思って。
本当は怖かったけど、生きていてほしいから。
だから……。


((大好きでした、―――博士…))


今までありがとう。
もう怖くないよ、月と太陽が寄り添ってるから…



――――――



本当は知っていました。
貴女が生み出したかったのは、別のモノだと。
だけど命は奪わずに、育ててくれました。
その知識を、その技術を、教えてくれました。
あの柔らかな笑みの想い出は、焼却することを選ばなかった。
命題の意味を通して知り、共に歩み始めた時のことも焼却しなかった。
この命は、そのために使います。
だから……。


(――――……パパとの約束を、世界をってください…)


今までありがとう。
そのためにも、生まれたのかもしれないから…

始まりは静かに 2 ( No.270 )
日時: 2020/05/02 22:42
名前: 月詠 (ID: a0p/ia.h)

あの戦いから数ヵ月。
癖毛で薄茶色のショートヘアの少女が、潜水艦の中を小走りする。
そしてある部屋に着くと、自動でドアが開かれて中に入る。


響「師匠!立花響、到着しました!」


びしっと敬礼する少女――立花響。
そんな彼女に師匠と呼ばれた、大柄な赤毛の男性――風鳴弦十郎が申し訳なさそうにする。


弦十郎「すまないな、響くん。学校が休みだというのに…」

響「いえ、大丈夫です。それに未来も、今日は用事があるって言ってましたし……あの、何があったんですか?」

弦十郎「実は…」


弦十郎の言葉に首を振ってから響が答え、問いかけると彼は説明する。
響以外のシンフォギア装者や、数ヵ月前に仲間になった少女が体調を崩して寝込んだこと。
そのため、彼女達が回復するまでは一人で戦うことや、シンフォギアの整備が出来ないこと。
もしかしたら出撃する回数が増えるかもしれないこと。
すまないと謝る彼に、大丈夫ですと彼女は返す。



―――――シンフォギア。
それは統一言語を奪われた、太古の人類が生み出した人間のみを殺す兵器に対抗する手段。
「聖遺物」と呼ばれし神話や伝承に存在する武器の欠片から、旧特異災害対策機動部二課所属の技術主任に所属していた故・櫻井了子が提唱した「櫻井理論」に基づいて作られたFG式回天特機装束である。
現行憲法に抵触しかねないため、完全秘匿状態となっているが。

けれど欠片だけではその力は発揮されず、兵器を倒すことは出来ない。
ならば、どのように力を発揮・増幅させるか。
それは、それぞれの「聖遺物」に適合した者達が紡ぐ「歌」である。
装着者の精神状態に合わせて内蔵された機構から旋律を奏で、合わせて歌うことでフォニックゲインと呼ばれるエネルギーのようなものを高めて出力を上げていく。
その構造からとても分かりやすく言うと「戦うことが出来るカラオケマシン」のようなもの。
また、装着者への負荷を最低限とするために数多のロックなどがかけられている。
開発者ですらも知らない姿や力を秘めている。

現在、シンフォギアは六機が現存。
天羽々斬あめのはばきり、イチイバル、ガングニール、イガリマ、シュルシャガナ、アガートラーム。
それに合わせてシンフォギア装者も六人いる。

始まりは静かに 3&後書き ( No.271 )
日時: 2020/04/29 16:51
名前: 月詠 (ID: G1aoRKsm)

とある世界。
長い赤毛の女性が、銀髪の男性を見た。


「どうしたんだよ、博士?」

「忙しいのにすみません。実はあなたに調査に向かっていただきたくて…」

「調査?アタシが?」


女性の問いかけに、男性は地図を取り出して机に広げる。


「調査と言っても、正確には護衛ですね……実は空間に浮かぶ亀裂みたいなのが見つかりました」

「亀裂…」

「はい。それで彼女達が調査に向かうのですが…“ノイズ”や錬金術師達が現れる可能性もあるので、念のために」


納得した女性は頷き、りょーかいと告げる。
と、そこで彼女はふと思い出す。
仲間である明るい茶髪の少女のことだ。


「あれ?あの子は?」

「あの子には念のためにこちらにいていただくことになりました。許可はもらってますよ」

「そっか。なら準備してくるよ」

「分かりました。時間が近くなったらお知らせしますね」


女性はその部屋を出て、自室へと向かう。
その首には、赤く輝く円柱の石みたいなのがトップのペンダントがかけられていた……。


――――――


後書き





料理対決の裏回の執筆の息抜きに書いたもの。
新たな追加ジャンルでもあります。
………またシリアスかも?