二次創作小説(新・総合)
- 隠す心 ( No.309 )
- 日時: 2020/06/25 18:05
- 名前: 月詠 (ID: FpNTyiBw)
※時間軸はシンフォギア編後となってます。
※第三者side
――――――
悠姫はどうして光実を好きになったデスか?
それを聞いて彼女は少し考え込む。
境界の館の談話室に三人はいた。
切歌「あ、別に変な意味で聞いたんじゃないんデスよ!ただちょっと気になって…」
調「切ちゃん…」
切歌をジト目で見る調。
ジト目による視線にたじたじになっていると。
悠姫「………多分、好き、なのはそうなんだけど…恋愛感情なのかは分からないかな。好きになった理由も分からないけど」
調「分からないの?」
悠姫「うん。いつの間にか好きになってた感じかな」
頷く悠姫の姿に、よく分からないと言いたげな雰囲気の切歌と調。
そんな二人に、彼女は話し始める。
自分がいた世界での出来事や、この世界に来たばかりの頃の話を。
悠姫「私さ、心臓に紘汰さんが持ってるのと同じもの……もう一つの極ロックシードと宿してるの。オーバーロード…紘汰さんや舞さんみたいな種族に変える力は変わって、ロックシードを生み出したりアーマードライダーを召喚する力になってるけど」
心臓に宿す。
二人が思い出すのは響のことだ。
彼女は中学生の時に行ったツヴァイウィングのライブに行き……数多のノイズに襲撃されたそこで、攻撃を防いで欠けた“奏”のアームドギアの欠片が胸に突き刺さり、数年の時を経てガングニールのシンフォギアへと覚醒した融合症例だった。
けれど聖詠を歌い、シンフォギアとして纏うたびにガングニールは響との融合を深め、命を奪おうとしていた。
今は心臓にあったガングニールは消失し、マリアが纏っていたものを譲り受けて装者として活動している。
- 隠す心 2 ( No.310 )
- 日時: 2020/06/25 18:07
- 名前: 月詠 (ID: FpNTyiBw)
そんな二人に気づかず、悠姫は続ける。
悠姫「学校からの帰りに錆びてた極ロックシードが道に落ちててさ、何だろうって思って拾ったら、インベスに襲われたんだ。私がいた世界には仮面ライダーという作品そのものが無くて、だから分からなくて……びっくりしたし死ぬかもって思ったんだ」
切歌・調「えっ」
悠姫「そしたら、いきなり錆びてた極ロックシードが光って……私の胸に入った。気がついたら鎧武に変身してて、インベスを倒してた」
あれは本当にびっくりしたなぁ、と呟く。
琥珀色の目は遠くを見るような眼差しだ。
悠姫「変身が解けたら、怖くなって慌てて帰って……忘れようとして………出来なかった。私の胸に極ロックシードが入っていったのも、変身してインベスと戦ってたのも、誰かが隠れて隠し撮りしたか何かしたのかその動画がネットに広められてたから」
感情を削ぎ落としたような無表情で、そう続けた。
そのまま思い出すのは、その後のこと。
生放送……つまりはリアルタイムだったという動画によって危険な存在だと認識された。
自分の言葉も聞こうとしない親からもその動画を突きつけられ、異質なものを見るような目で問い質され…悠姫は逃げ出した。
頼ろうとした友人は好奇心と恐怖心が入り交じったような目で見てきた上に、テレビ局などに情報を売っていた。
誰も自分を知らない場所に逃げようにも、持っていた財布に入っていた金額は一般的な高校生のものと変わらなかった。
それにネットは世界中に張り巡らされてる。
だから隠れ、逃げるしかなかった。
人々の好奇心や恐怖心が、次第に捕獲しようと動き、研究などのために命を狙ってくる動きに変化するのを感じながら。
悠姫「詳しくは言わないけど、命も狙われてね。一週間くらいは公園の水飲み場で水飲んでなんとか凌いでた、と、思う……ご飯関連はあまり覚えてないから曖昧だけど」
逃亡してた頃は水以外に何か口にしていたかと考える。
GPS機能で居場所が特定される可能性も考え、携帯は適当なごみ捨て場に捨てていた。
- 隠す心 3 ( No.311 )
- 日時: 2020/06/25 18:08
- 名前: 月詠 (ID: FpNTyiBw)
うーんと考える悠姫。
こっそりと、小さな声で切歌と調は話し合う。
調「これ、聞いて良かったのかな…」
切歌「分からないデス……でも悠姫から話し始めたデスし…」
悠姫「いよいよ死を覚悟した時かなぁ……月音さんに会ったのは」
記憶に無い食事事情はどうでもいいと判断したのか、続きの言葉を言う。
月音の名前が出て二人は首を傾げる。
切歌「月音さんデス?」
悠姫「うん、走り回ったのか服はよれよれだし髪はぼさぼさだし、軽く息切れしていつもの大鎌に乗って浮遊しながら」
調「不審者かな?」
切歌「通報される見た目デス」
思わずツッコミを入れる。
確かに今、思えば不審者だなと納得する。
あの頃はそんなことを考える余裕も無かったが。
悠姫「月音さん、私を保護しに来たって言ってたの。私がいた世界とかの座標とかの特定が出来なくて、遅くなってごめんって言いながら」
調「座標?」
悠姫「他の世界に行くには世界の座標……分かりやすく言うなら場所とかを必要があるみたいだけど、詳しくは私も分からないかな。本人も説明が難しいから出来ないとか言ってたし」
切歌「案外適当デスね…」
呆れる切歌の表情に思わず苦笑する悠姫。
- 隠す心 4&後書き ( No.312 )
- 日時: 2020/06/25 18:10
- 名前: 月詠 (ID: FpNTyiBw)
けれどすぐに苦笑は消えた。
悠姫「極ロックシードを私の体から出すためにも、月音さんに連れられてこの世界に来たけど……ちょっと色々あってね。調べてみたら、心臓と極ロックシードが一体化してた」
今でも思い出せる。
自分の日常を壊したモノが、心臓と一つになっていた絶望を。
強張った表情で検査結果を見て信じられないと言いたげな月音を。
悠姫「その後に月音さんにここに住むか、それともあの動画に関連した出来事や感情などを世界から消して元の世界に帰るか聞かれて……ここに住んでるの。両親のことは今でも親とは思ってるけど、ちょっとね………一時期、人間不信になったよ」
切歌「そうなんデスか!?」
調「そう見えないけど…」
悠姫「今は克服したから。光実さんが切欠になってね」
悠姫は苦笑して。
悠姫「あの頃は月音さん以外はみんなが敵だと思い込んでたんだ、色々あったし。なるべくツキトや燐さんにも会わないよう部屋にも引きこもってたし」
調「ちょっと意外」
悠姫「身を守る術だと考えてたから……で、ある意味で似たような経験しててアーマードライダーだからと会わされたのが光実さんだったんだ」
警戒する悠姫を見て苦笑する光実を思い出す。
何回か交流を続けるうちに直接的に会うのではなくドアや電話越しに会話したり、手紙でやり取りをした。
そのおかげか少しずつ様々な人と会話や触れあったりなどが出来るようになり、今ではこうやって普通にしている。
いつの間にか抱いていた、ほんのりとした何かを光実に対して感じながら。
悠姫「だから恋愛感情かって言われると自信無いかなぁ」
そう締めくくった悠姫の言葉に、そっかぁと二人は納得した。
――――――
後書き
「というわけで不意に思いついた短編小説です!悠姫の過去ですね」
「わりとこんな感じの過去でした」
「でも何で悠姫がいた世界に極ロックシードがあって錆びてたのか、インベスがいたのか、誰が動画をネットに流したのか」
「その謎は明かされてません。調査中です」
「この謎は、いつ解けるんでしょうね?」