二次創作小説(新・総合)

簪を贈る ( No.354 )
日時: 2020/10/22 17:47
名前: 月詠 (ID: B0dMG1jJ)

しゃら…っと、結い上げられた髪を飾る簪の飾りが音を立てた。
髪に挿していない、反対側の先端には細く小さな鎖が何本か垂れ下がり、それらの途中や先に小さな雪の結晶を模したものがつけられている。
特に目を引くのは真ん中にある、控えめながらも大きめで透き通った青の石。
華やかで可愛らしい簪を挿したつららは、はにかみながらも尋ねた。


つらら「ど、どうでしょうか?似合ってますか?」

リクオ(夜)「ああ、よく似合ってる」


夜であるためか、夜の姿……つまりは妖怪としての姿になったリクオは頷く。
ありがとうございますとつららは嬉しそうにし、みんなにも見せてきますと部屋を出ていく。
そんな彼女の姿を微笑みながら見送って…。


リクオ(夜)「で、どうした?」


庭に向けて声をかけた。
庭、それも池の水面から人が現れる。
少しも濡れていないが、当然である。
現れたのはリュウガ――ミラーモンスターなのだから。


リュウガ「あー……ぬらりひょんに用事があって来たんだが…その前に聞きたいことが出来て………」

リクオ(夜)「聞きたいこと?」


思わず首を傾げるとリュウガは頷き。


リュウガ「つららが着けてたみたいな簪が売ってた店、教えてくれるか?」


問いかけた。

簪を贈る 2 ( No.355 )
日時: 2020/10/22 17:54
名前: 月詠 (ID: B0dMG1jJ)

翌日。
リュウガに声をかけられた麻琴は振り向いた。


麻琴「どうした?」

リュウガ「麻琴って基本的に和服だろ?これ、合いそうだなと思って」


そう言ってリュウガが差し出したのは簪。
一本挿しのタイプで、挿さない方の先端には薄紅の桜が何輪か咲いているような飾りがつけられ、その根本からは何本か長さが異なる細く小さな鎖が垂れ下がっている。
鎖の途中や先には小さな蝶や桜の花弁の飾りがある。
上品で華やかな簪を見た麻琴が、珍しくピシッと固まった。
不思議そうにリュウガが見つめてると復活したのか、見上げてくる。


麻琴「ええっと……本っ当に、ウチがもらっていいのか?」

リュウガ「?ああ、髪型が違うところをあまり見たことないし、和服に合うなら簪だろ?それでリクオに店を教えてもらって、麻琴の二つ名の一文字に合わせて桜にしたんだが……」


趣味に合わなかったのだろうか?
少し不安になっていたら、彼女はそっと簪を受け取った。


麻琴「なら、もらうよ…その……あ、ありが、とう」

リュウガ「……………どういたしまして」


本当に珍しく。
顔どころか耳まで真っ赤にして、麻琴が礼を言ってくる。
なんとか一言だけ返してから、それじゃ、と言って近くにある窓の表面を使ってミラーワールドに入った。
ミラーワールドに入ってから。


リュウガ「麻琴が可愛いどうしよう」


膝から崩れ落ちて顔を真っ赤にし、呟いた。

簪を贈る 3&後書き ( No.356 )
日時: 2020/10/22 18:02
名前: 月詠 (ID: B0dMG1jJ)

リュウガからもらった簪を片手に、和室に改造された自室に入った麻琴は簪を台の上に置く。
落ち着いてきてはいるものの耳や頬に赤みが残ったままだ。


麻琴「………うん、現代を生きるリュウガは多分知らないはず。ウチが変に深読みしちゃってるだけだ、うん」


それでも赤みは残ったままで。


麻琴「まったく……江戸時代も生きたことがあるってのも、その時代での知識とかがあるってのも困りもんだな」


簪を見ながら呟いた。
少しだけ嬉しそうに笑いながら。


――――――


後書き


「ハロウィン小説を書いてたらオチが行方不明になり、ポンと浮かんだこの簪の話に移行しました。久々に数を少なく書いたな」


「今回は私の中でも本当に珍しくリュウガの行動で麻琴が真っ赤になるという話でした。リクオとつららもポンと浮かんだので冒頭に…」


「ちなみに着物を贈る意味を調べてたら簪のものも見つけ、そこから発展してたり……ではまた次回!」