二次創作小説(新・総合)

聖なる夜の舞踏会 ( No.385 )
日時: 2020/12/24 15:40
名前: 月詠 (ID: nsrMA1ZX)

※シンフォギア編後、ネタバレあり注意
※第三者視点
※性転換?要素あり


――――――


「D,Gray-man」世界、黒の教団の新本部。
そこの室長室に麻琴はエクソシストの一人として呼ばれ、室長であるコムイの前に立っていた。
同じ任務なのだろう、少し癖のある髪の女性エクソシスト―――ミランダ・ロットーとラビ、何故かリュウガもいる。


コムイ「今回の任務なんだけど……実は前にアレン君とリナリー、そして協力してくれた窮奇が受けたのと似たようなもので、少し違うんだ」

ラビ「あの三人が受けたのと似てるけど違う?」


ラビが聞き返して首を傾げ、ミランダはハテナを浮かべる。
そもそもリュウガは何で自分がここにと言いたげな表情をする。
そんな三人を無視して任務の資料を読んだ麻琴がなるほど…と呟く。


麻琴「確かにこれは少し違うし、そしてあれよりも更に厄介だな」


窮奇が協力した任務の内容を本人から聞いてるからか、そう判断する。
三人も資料を読み……納得した。

今回の任務はある王族の王女の、婚約者を選ぶためのお見合いのようなものを兼ねたクリスマスダンスパーティーへの参加だ。
王女が持つ指輪には人を癒す力が宿っていると噂であり、イノセンスの可能性が高い。
ヴァチカンにも限界があるため急遽、数名のエクソシストの参加が決定した。

聖なる夜の舞踏会 2 ( No.386 )
日時: 2020/12/24 15:39
名前: 月詠 (ID: nsrMA1ZX)

麻琴とラビは最後の文章で任務の重要性を悟る。
ヴァチカンにも限界があるということは、下手したらその国とで戦争が起こってしまう可能性があるのだろう。
戦争を回避するためでもある任務だと。


コムイ「それでAKUMAがいた時や戦闘を考えてラビだけでなくAKUMAを感知出来る麻琴ちゃん、支援としてミランダ、協力者としてリュウガに行ってもらうよ」

リュウガ「いや待て、何で俺もなんだ?」

コムイ「最初はこういう任務だから、また窮奇に協力してもらえないか交渉した時に宝石とか使うようなものの偽物を作ったり入れ替えるようなのは自分より麻琴ちゃんのが向いてると言われてね。その時にお気に入りでもあるリュウガを協力者として入れれば、大人しくこの任務も受けてくれるって言われて………窮奇が連絡しておくって言ってたはずだけど…」


あれ?と首を傾げるコムイ。
何も聞かされてなかったリュウガは内心、窮奇に文句を言っていた。


ミランダ「えと……とりあえず分かったわ。パーティーが始まるのはいつ?」

コムイ「今夜の七時からだね」

麻琴「七時か……境界の館に戻って準備してくる。ミランダのドレスとかだが、それはウチが用意する」

ミランダ「いいの?」


きょとんとするミランダへと彼女は頷く。
彼女がドレスを持ってるとはあまり思えないので、窮奇に頼むことになるだろう。
そのため、館へ戻ることにした。

聖なる夜の舞踏会 3 ( No.387 )
日時: 2020/12/24 15:41
名前: 月詠 (ID: nsrMA1ZX)

館に戻ってきた麻琴は人型になっている窮奇にミランダのドレスの作成を頼む。
ドレスが出来上がるまでの間に自分が所有する異空間から、今まで転生してきた異世界で採掘したり購入したりとした手持ちの宝石や貴金属などを取り出す。
その中には百円ショップなどでも売られてる、針金やアクセサリー用のチェーンなどもあった。
頭に完成図を浮かべ、それを元にアクセサリーを作り始める。


窮奇「そういえば、麻琴はどうする気なんだ?」


自分が持つ異空間から布を取り出した窮奇が尋ねてくる。
んー、と声を出しつつアクセサリーを作る手は止めずに答えた。


麻琴「男装しようかなーって」

窮奇「男装って……パートナーはどうする気だ?」

麻琴「ミランダは何かあった時のためにもラビと一緒にいてもらおうと考えてるが……そうなるとリュウガを女体化させ、ドレスを着せてパートナーにするか」


思わず真顔になってしまった。
確かにリュウガは美形で、性転換すれば美女になるのは確定だろう。
それに麻琴はスカートやワンピース、ドレスなどの格好を苦手としている。
仕事や学生としてならば平気なのだが…。


窮奇「……今回はドレスを着ないか?俺、久々に麻琴のドレス姿が見たいし作りたい」

麻琴「………窮奇がそう言うなら、そうしようかな」


少し考えてから麻琴がそう言う。
今回の任務の話を聞き、少しはリュウガにいい思いをさせようと思っていた窮奇は一安心した。
主のドレス姿が見たいというのも本音だが。

聖なる夜の舞踏会 4 ( No.388 )
日時: 2020/12/24 15:48
名前: 月詠 (ID: nsrMA1ZX)

ドレスやアクセサリーが完成し、「D,Gray-man」世界に戻ってから。
汽車で現地に移動し、始まるまで時間があるので近くにあるホテルに入る。
そこで着替えることになったのだが……。


麻琴「ミランダ、少しいいか?ミランダは踊れるのか?」

ミランダ「え?少しだけなら……最近になってたまに窮奇がやってきて私とリナリーちゃんにダンスを教えてくれるから、それで…」


自分の式が意外なことをしていたという事実に僅かに驚く。
が、すぐに落ち着きを取り戻した。
別に彼は変なことはしていないのだから、取り乱す必要もない。


麻琴「そうか……なら、いい。着替えるか…ミランダのはこっちだ」


持っていた二つのトランクケースをベッドに置き、どちらも開く。
着替えようとミランダがその中を覗き込み……ヒッ、と短く悲鳴を漏らした。
心なしか顔色も青ざめている。


ミランダ「む、無理よ!こんな高価なドレス、私には似合わないし着れないわ!!」

麻琴「安心しろ、これは窮奇が作ったものだから予想より安い。このアクセサリーだってウチが作ったから、店で買うより遥かに安いしな」

ミランダ「で、でも!!」


作ってきたアクセサリーを見て、さらに青ざめるミランダ。
仕方ないと言わんばかりに麻琴は彼女を無理矢理にでも着替えさせることにした。

聖なる夜の舞踏会 5 ( No.389 )
日時: 2020/12/24 15:54
名前: 月詠 (ID: nsrMA1ZX)

ホテルのロビーにて。
黒のタキシード姿のラビとリュウガは、ミランダと麻琴を待っていた。
ラビはいつものバンダナは無くて髪を下ろしており、眼帯もタキシードにふさわしいものに変えている。
リュウガは髪を整えており、いつもとは少し雰囲気が違う。


ラビ「そういえばリュウガって踊れるんさ?」

リュウガ「ラビ………逆に聞くぞ?俺の世界、特にミラーワールドにそういう文化があるように見えるか?」

ラビ「あ……」


なんとなく察してしまった。


リュウガ「それ以前に、麻琴がドレスを着ると思うか?あの、麻琴が」

ラビ「思わない」


その即答に、だろうなと苦笑した。
彼女がスカートやワンピースの類いを苦手としているのは全員が知っている。
だから今回も着ないだろうと考えているのだ。
と、ホテルにいた客や従業員からざわめきが聞こえてきた。
そちらを見れば全員がどこかを見ている。
視線の先を辿り………固まった。

聖なる夜の舞踏会 6 ( No.390 )
日時: 2020/12/24 16:10
名前: 月詠 (ID: f3ScG69M)

ミランダは上半身はぴたりと体に沿いつつもVラインのネックに薄紫のレースを重ねた五分丈の袖、胸元には少し色が濃いビーズを使って花が描かれ、腰から下のアンクル丈なスカート部分はストレートラインよりは広がっているがAラインよりは広がっていない、ソフトストレートラインの深い紫のサテン生地なドレスだ。
足には金色のパンプスを着けている。
髪は丁寧に整えられており、金の薔薇の髪飾りで飾っている。
耳には金色の土台にアメジストの薔薇が垂れている大振りのイヤーカフを、首にはアメジストが埋め込まれた薔薇を中心とした金のネックレスという装飾が着けられている。

麻琴は上半身はぴたりと体に沿って背中が大きく開き、デコルテと肩を出したオープンショルダーで腰から下のアンクル丈なスカート部分が広がったAラインの黒いサテン生地のドレス。
スカートには同色だが大小様々なビーズが縫いつけられていて、光に当たって輝く。
腕と足にはドレスと同じ布が使われたグローブとパンプスを着けている。
髪は結い上げており、どことなく龍を模したように見える銀の髪飾りで留められている。
耳には銀の台座に赤い宝石が嵌め込まれたノーホールのピアスが、首には赤い宝石が嵌め込まれた蝶を模したネックレスが着けられている。

二人とも薄く化粧をしており、普段よりも美しくなっている。
ラビから何かが発砲されたような音が聞こえてきた気がするが、いつものことだとそこはスルーした。


ミランダ「は、初めてこういうドレスを着たんだけど…」

ラビ「すっごい似合ってるから安心するさ!ミランダは上品かつ豪華で、麻琴は可愛い感じにしたんさね?ぜんぜん違和感ない!!」

麻琴「ドレスを作ったのは窮奇だからな、それに合わせてアクセサリーを作れば違和感なんて無くなる」


緊張してるミランダに声をかけつつ疑問を持つラビに、当然だと言うように麻琴が答える。
リュウガはまだ固まったままだ。

パーティーが始まるまであと少しだからと、移動することに。
その際、固まっていたリュウガは麻琴に腕を組まれて、やっと動き出したのだった。

聖なる夜の舞踏会 7 ( No.391 )
日時: 2020/12/24 16:22
名前: 月詠 (ID: lEZDMB7y)

きらびやかな会場には、多くの着飾った男女がいた。
会場の中や外にAKUMAがいないことを麻琴が気配で確認してから、二手に分かれることにした。


麻琴「しかし、リュウガもよく似合っているな」

リュウガ「そ、そうか?」


ああ、と頷く。
現に視線を向けてくる女性も何人かいる。
基本はリュウガに向けられているが、麻琴に対しては敵意だ。
正直、痛くも痒くもないので無視するだけだが。

さて、王女はどこにいるのかと探していると周りがざわつき始める。
特にざわつく方を見れば、その先に少女がいた。
長い銀色の髪に紫の瞳の、ドレスを着た美しい少女だ。
彼女が身に付けている指輪から神気を感じ取れる。


麻琴「ビンゴだな。彼女が王女だ」


小さな声で話しかければ、そうかと返される。
その声には真剣さが出ている。


リュウガ「けど、よく分かったな」

麻琴「あの指輪から神気が感じられたからな…」


そう話していると、こちらを見た王女が近づいてくる。
彼女の視線の先はリュウガだ。
気づいた麻琴の中で、どことなく面白ないという気持ちが湧いてくる。
湧いてくる理由は分からないのだが……。

聖なる夜の舞踏会 8 ( No.392 )
日時: 2020/12/24 16:28
名前: 月詠 (ID: f0TemHOf)

少し考えてから。


麻琴「ちょっとトイレ行ってくる」

リュウガ「は、ちょっ…」


麻琴はリュウガから離れ、どこかに行く。
ドレスのスカートを軽く持ち上げ、すいすいと人の間を滑るように移動して抜けていく。
あっという間にいなくなった彼女に、彼はぽかんとしてしまった。
その間にも王女はリュウガへと近づいてきていて…。


「あ、カッコいい…」


ふと、どこからかそんな声が聞こえてきた。
聞こえてきた方向を見れば声の主は女性で、パートナーとともに誰かを見ている。
視線の先を辿ると、一人の人がいた。
膝まである長い髪は根本から毛先へと、紅から金へグラデーションになっていてうなじの辺りで一つに束ねられ、瞳は銀色の美形の青年だ。
タキシードを着ていることから、彼も参加者なのだろう。
周りの女性達は彼に見惚れている。
王女も彼を見て少し頬を赤らめ、リュウガではなく彼へと近づいていく。


リュウガ「あの雰囲気…誰かに似てるような……?」


人間ではあるが、限りなく人外に近いような雰囲気の青年。
誰に似てるのかと思い出そうとして、凝視していたからだろうか?
目が合ってしまった。
逸らそうとした時。


リュウガ「……?」


青年が優しく微笑みかけてきた気がした。
謎に思って首を傾げている間に、王女が彼にダンスの申し込みをした。

聖なる夜の舞踏会 9 ( No.393 )
日時: 2020/12/24 16:34
名前: 月詠 (ID: f0TemHOf)

美形の青年と美しい少女のダンスは、人々の視線を引き寄せる。
それはもちろん……。


ミランダ「すごい…」

ラビ「絵みたいだな…」


この二人もだった。
ラビは考える。
先ほどまで何気なさを装って、この会場にいる男性達の顔などは覚えておいていた。
けれど記憶の中に、王女と踊ってる青年はいなかった。
なら彼は誰なのか?
そう考えている間にも二人のダンスが終わる。
青年が王女の手を取り、指輪に軽くキスを落としてから離れてそのまま去っていこうとする。
一瞬、追いかけようとしたが。


ラビ「ん?」


透明な何かが肩に乗ってきた感覚がある。


『イノセンスの回収は完了した。あとは楽しんでも大丈夫だと思うぞ』

ラビ「!?」


何かから聞こえてきたのは、性別を一切感じさせないほどの中性的な声。
いつの間にと思う前に、何かは消えてしまう。
その時にはあの青年を見失ってしまっていた。

聖なる夜の舞踏会 10 ( No.394 )
日時: 2020/12/24 16:40
名前: 月詠 (ID: sqo3oGwV)

後ろから気配を感じたリュウガは振り返る。
そこにはいつの間にか麻琴が戻ってきていた。


麻琴「ただいまー」

リュウガ「あぁ、うん、おかえり…」

麻琴「それと任務は終わったよ」

リュウガ「は?」


言われた言葉にきょとんとしてしまう。
任務が終わった?
いつ行動したんだ?
そんなリュウガの困惑が伝わったのか、自分達の周りに誤認識系の結界を張ってから。


麻琴「さっき王女と踊ってた男がいたやろ?あれ、術で男装したウチ」

リュウガ「はぁ!?」


麻琴は暴露した。


麻琴「このダンスパーティーは婚約者を選ぶためのものでもあるから、彼女は何人かの男と会話や挨拶、相性を確認したりするために踊ったりなどする必要があった。それを利用して近づき、踊ってる隙にすり替えたんだ」

リュウガ「………危ない橋を渡ったのか…」

麻琴「こうでもしないと近づけなかったからな。リュウガやラビがもし、彼女に申し込まれて踊って気に入られでもしたら大変だろう?」


あー、と思わず納得の声が漏れてしまう。
確かに王女に気に入られるということは、婚約者にされる可能性が高いということだ。
自分は踊れないが。

聖なる夜の舞踏会 11 ( No.395 )
日時: 2020/12/24 16:46
名前: 月詠 (ID: sqo3oGwV)

それに、と麻琴は続ける。


麻琴「適合者ではない彼女がイノセンスを所持し続けていれば、いつか千年伯爵達に狙われる。ならばとっととすり替えた方が彼女のためにもなる、あの指輪にも癒しの術式を込めてあるが数日で無くなるように設定したから噂も近いうちに変わる」

リュウガ「………そうか」


もう苦笑しか出ない。
結界を消して再び腕を組んでくる彼女を見下ろす。


リュウガ「……そういえば言い忘れていたが、よく似合ってるぞ。そのドレス」

麻琴「ありがとう」

リュウガ「ドレスの生地が黒くて宝石は赤いから、お前の白い肌を引き立てるように映えてるし、華奢だけどスタイルもいいからバッチリ決まってる。元から可愛いのに化粧してるからか、さらに可愛さも上がってる。まぁ、総合的に言うと素材がいいからこんなに着飾っても着せられてる感が無く、むしろ着こなしてこんなに綺麗になるんだなって思った」

麻琴「………あ、ありがとう…」


そこまで言われると思わず、麻琴が顔を赤くする。
その反応に首を傾げてから。


リュウガ「……っ!」


わりと恥ずかしいことを言ってしまったと自覚し、リュウガも顔を赤くした。
ラビとミランダが合流して声をかけてくるまで、二人は固まったままだった。

聖なる夜の舞踏会 後書き&オマケ ( No.396 )
日時: 2020/12/24 16:53
名前: 月詠 (ID: sqo3oGwV)

後書き


「今回はクリスマスってことでクリスマスダンスパーティーって連想し、こうなりましたー」


「クリスマス要素が消えてしまいましたが!」


「なんか麻琴の出番が多いなと思ってる方は正解です……書きやすいから、ついつい出してしまいます…」


「他のキャラの書かないとなぁ………以上、ここまで!ではまた次回!メリークリスマス!」


――――――


オマケ(月音side)


「D,Gray-man」世界から麻琴が帰ってきた。
帰ってきた、が………少し顔が赤い。
どうしたのか聞いたら、任務で参加したダンスパーティーでのことを教えてくれた。
まぁ、男装については予想内だけど……まさかリュウガが王女に見られて面白くないと思うとはなぁ。
そこを少し意外に思いつつ、ドレス姿を褒められたとさらに顔を赤くしながら。


麻琴「その時に、あー……なんというか、ちょっと、な?………なんか、心臓がバクバクって早く動いて…確かに窮奇やあいつ以外の男に何回か褒められたことはあるけど、リュウガに言われた時はいつもと違ったというか…」


と、麻琴に言われてしまった。
これ、ちょっと進展したのかもしれないな。
思い出したのか机に突っ伏す彼女をつつきながらそう思った。