二次創作小説(新・総合)
- 悠姫の実験クッキング ( No.420 )
- 日時: 2021/03/08 23:13
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
※時系列不明、最低でも第一回料理対決の後
――――――
それは、研究者や技術者の属性を持つ二人の会話から始まった。
麻琴「そういえばさー、悠姫が食べ物を温めるとクトゥルフクッキングになるんだろ?それって食べ物なら何でもなん?」
ツキト「うん。条件知りたくてフライパンとか鍋とか使ったけど……「加熱する」ってのが条件みたいでね。今は加熱しないものしか作らない…というか、作れないよ」
不意に麻琴が話題を振ってきて、ツキトが代わりに答えた。
うん……あれは大変だったな…。
焼こうが炒めようがクトゥルフ化、煮ても茹でてもクトゥルフ化、揚げてもクトゥルフ化……。
悠姫は泣くし、ツキトと燐と私は連続の死闘で疲れたし…。
あれ以来、加熱しなくても済む料理やお菓子しか作らなくなったんだよなぁ。
麻琴「なら、使う道具とかの条件は?」
ツキト「は?」
麻琴「だから、道具だって。他の世界でクトゥルフになる奴らって、特定の食材を入れたりレシピから外れたりとかあるじゃん?だから道具が条件の可能性もあるよなって」
あー……、と声が漏れた。
ツキト「……ちょっと気になってきたね」
月音「えっ」
まさかの発言に固まってしまった。
- 悠姫の実験クッキング 2 ( No.421 )
- 日時: 2021/03/08 23:20
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
翌日、私達は赤椿の屋敷にいた。
赤椿の屋敷。
とある他元世界から送られてきた、避難の屋敷という建物の設計図を基にしつつもアレンジしたものだ。
建物は二階建ての武家屋敷に変えつつ、中にはカラクリ仕掛けを施していて魔力で稼働が可能になるようにした。
例えば一定の方向に動く床とか、回転する床とか……色々と…。
武家屋敷の周りを広々とさせつつも囲むようにした椿の生け垣があり、それらには燐が「虫がつかない」と「病気にならない」という効果を付与させたので手入れは普通のものと比べたら楽だ。
さらにその周囲を囲むように、広々としていて色鮮やかな蓮達が咲いている湖がある。
ここに来るには飛ぶか、唯一の緩やかなアーチ状になっている、朱塗りの和風な橋を渡るしかない。
そんな屋敷の庭で、縁台に緋毛氈をかけたものに座っていた。
お茶の入った耐熱性の透明なティーポットとカップ、紅のものがちらちらと見えるクッキーがある皿を乗せたお盆を挟み、私に拉致されてきて軽く死んだ目をする光実を隣にしながら。
光実「何で僕が……」
月音「すみません、悠姫のメンタルケアを考えるとどうしても…」
光実「いや、そういう理由なら構いませんが…」
深くため息を吐いてから、彼はクッキーを一つ取って食べる。
私は紅の蓮が咲いていて、薄紅に色づいた湯……工芸茶をティーポットからカップに注いでから口に含む。
ほんのりと甘酸っぱい香りがし、爽やかな酸味が口内を満たす。
- 悠姫の実験クッキング 3 ( No.422 )
- 日時: 2021/03/08 23:26
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
さて、クッキーとお茶を口にしたから落ち着いた。
光実「で、今は何をやってるんですか?」
月音「ホットプレートやたこ焼きプレートでパンケーキやベビーカステラ作ってますね。クトゥルフ化したみたいですが」
光実「ですよね……めっちゃ騒がしいし…」
ギャーギャーとか、ドッタンバッタンとか……聞こえてるもんね…。
月音「………魔蓮茶が美味しいなぁ」
光実「現実逃避しないでください」
あ、はい……ごめんなさい…。
魔蓮、別名でマジックロータスとは、この自元世界の「D,Gray-man」世界にあるとある村で発見された蓮だ。
旬というものは存在しなくて一年中咲いていて、最初は白だが途中から蒼から緑、黄、オレンジ、紅と色を変えていくという特色がある。
栄養を蓄えるとともに色を変えるらしくて紅の時が一番美味しくて栄養豊富だが、黒になると水の中に沈んでその下の土に潜り込む。
そしてそこから再び花が咲くようになる。
甘酸っぱい香りで味は爽やかな酸味なのだが体が受け付けない者には吐きそうなほど酸っぱ苦くなり、後味はべったりとした甘さに変化するという。
ただ、工芸茶と菓子の二種類で加工が出来るけど、どういうわけか誰もがどちらかしか受け付けないらしい。
工芸茶が受け付ける者は菓子を、菓子が受け付ける者は工芸茶を受け付けない、ややこしい花だ。
- 悠姫の実験クッキング 4 ( No.423 )
- 日時: 2021/03/08 23:32
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
しばらくは互いに無言で魔蓮を使用したお茶とクッキーを口にし、クトゥルフ騒動を聞き流す。
なんか必殺技とか聞こえるなぁ……。
月音「というかここ、新築なのになぁ………いや、麻琴がいるなら大丈夫そうだけどさぁ……」
光実「なら何でここにしたんです?」
月音「………人の被害を減らしたかったので。あっちは、ほら、色々と人が来ますから」
光実「あぁー……」
遠い目をしているが、納得したような声の光実。
納得してくれて嬉しいよ。
資料を借りに来たりとか、他の世界に行ったりとかで意外といるからなぁ。
ギャグカオス組がいたら事態が悪化しそうだから、ここに移動するしかなかったし…。
あとはクトゥルフ料理が他の世界に行かないようにしたかったのもある。
危険は少なくしたいからね。
光実「静かになってきましたね」
魔蓮クッキーを食べ終えた光実の呟きに、あぁ確かにと頷いた。
掲示板を使って状況はどうなってるか聞こうか考えたが、やめることにした。
無事に終わればそれでいいし、うん。
麻琴とツキトがいるならなんとかなるはずだ、多分。
- 悠姫の実験クッキング 5 ( No.424 )
- 日時: 2021/03/08 23:38
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
それからしばらくして。
なんか嬉しそうに大きめのバスケットを持った悠姫と、ほくほくとした表情で束ねられた数枚の紙を見てる麻琴、苦笑してるツキトがやってきた。
何があったんだ?
悠姫「あれ、光実さん?どうして…」
月音「彼は私が呼んだんです。悠姫、そのバスケットは?」
悠姫「これですか?実はちゃんと作れたんです!プレート系以外の道具で、ですけど」
月音・光実「えっ」
まさかの言葉に本気で驚いた。
確かに☆5の腕前だが、加熱するとクトゥルフ料理化するという特性がある悠姫。
なのにちゃんと作れた?
クトゥルフ化をしなかったのだろうか?
いや、必殺技とか騒動とかは聞こえていた。
どういうことだ?
麻琴「悠姫のクトゥルフクッキングの条件で、加熱すること以外にもあったんだよ」
困惑する私達にそう麻琴が告げてきた。
どういうことなのかと思ったが、悠姫がちゃんと作れたというものを食べたい。
悠姫とツキトがもう一つの緋毛氈をかけた縁台を“ワープ”で持ってきて、バスケットの中身をそこに置いていた。
……ただ、あのバスケットはどこにあったのものなのか地味に気になるが。
- 悠姫の実験クッキング 6 ( No.425 )
- 日時: 2021/03/08 23:44
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
バスケットから出されたのは焼きたてなのか僅かに湯気が見えるいくつかのマフィンみたいな形のチョコケーキや、魔蓮が使われてたのとは違う普通のクッキー。
さらには大きい水筒。
………水筒、これ、2Lの飲み物が入るくらいの大きさなんだが…。
チョコケーキもわりと大きめだし……バスケット、そんなに大きくないのに何で…?
まぁ、いいや…。
麻琴がチョコケーキを投影した皿に乗せて、同じく投影したフォークと一緒に配ってくれた。
チョコケーキの見た目はすごくまともだ、ちょっとしっとりしている感じがする。
見たことあるような気がしながら、一口のサイズにしようとフォークで割ると……。
月音「おぉ……っ!」
割った断面、その中からとろりと溶けたチョコが流れ出てきた。
なるほど、フォンダンショコラか!
慌てて一口分のサイズに割って、溶けたチョコと生地を絡めて食べる。
熱いけど濃厚で滑らかなチョコとしっとりとした生地が見事にマッチしていて美味しい。
とてつもなく美味しいが、疑問がある。
何でまともに作れたんだ?
私と同じようにフォンダンショコラを食べる光実も、どうやら同じ疑問を持ったらしい。
彼はフォンダンショコラを食べながらも麻琴を見た。
- 悠姫の実験クッキング 7&後書き ( No.426 )
- 日時: 2021/03/08 23:49
- 名前: 月詠 (ID: iTqIkZmq)
説明してくれた麻琴曰く、悠姫が「直接加熱してる」以外に「食材や調味料の投入以外で加熱してる最中の料理に手を出す」という条件が揃うとクトゥルフ化するとのこと。
この「加熱してる最中に手を出す」というのはフライ返しや木ベラ、菜箸、お玉などでかき混ぜたりひっくり返すアクを取ることや、フライパンや鍋を揺らしたりすることなどらしい。
けれど炊飯器とか、レンジやトースターのオーブン系などの時間などを設定すれば自動で加熱してくれる調理家電を使えばクトゥルフ化は回避。
お茶などの熱い飲み物関連とかもクトゥルフ化はしなかったと、ツキトが補足してくれた。
なるほど、だからこの麦茶は熱々だけど普通に飲めるのか。
光実「良かったね、悠姫。すごく美味しいよ」
悠姫「ありがとうございます」
嬉しそうにふわふわ笑う悠姫と、ほほえましいというように眺める光実。
二人を見ながらひっそりと、炊飯器やオーブン関連を使う料理のレシピや道具を探そうと私は心を決めた。
――――――
後書き
「というわけで悠姫のクトゥルフクッキング克服話でした!彼女の料理の幅が広がったよ!」
悠姫「加熱するのに使う道具が炊飯器とオーブンレンジ、電子レンジ、オーブントースターですがそれでも作れる料理のレパートリーが増えたのは嬉しいです!洗うのが大変になりますが、魚焼きグリルも上手く活用すればそれも使った料理が作れそう」
「そこらへんはあとで設定集を書き直すから……それではまた次回!」