二次創作小説(新・総合)

風の街と漆黒の槍 ( No.440 )
日時: 2021/05/02 17:24
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

マリア・カデンツァヴナ・イヴはS.O.N.G.に所属する装者であり、世界の歌姫の一人でもある。
また、装者とギアに相性がある中でアガートラームとガングニール、二つのギアを纏うことが可能な「ダブルコントラクト」と呼ばれる非常に稀な存在だ。
歌姫として多忙な彼女は今日、午後にあったはずの仕事が先方の突然の用事で無くなって休みとなってしまった。
LiNKERは所持したままだが、アガートラームも念のためにとエルフナインが整備のために受け取っている。
しばらく考えてから、弦十郎に許可を取ってから「天羽ワールド」に訪問したのだが…。


マリア「あら?ドクター、どうしたの?」

ウェル「あぁ、マリアさん、こんにちは。それと僕はドクターじゃないですよ」


外出するところだったのか、見慣れない格好のウェルがいた。
片耳には銀色の、少し太めだが表面に細かく何かの模様が彫られたピアスをしている。


マリア「こんにちは。ごめんなさい、私達の世界のあなたをそう呼んでいたからつい…」

ウェル「別に構いませんが……どうしました?セレナくんなら先ほど、「立花ワールド」に遊びに行きましたよ。僕はこれから「仮面ライダーW」の世界に行くんです」

マリア「入れ違いになっちゃったわね…。「仮面ライダーW」の世界に?」


ええ、とウェルが頷く。


ウェル「櫻井女史にシンフォギアのことを教わってたフィリップくんが、工具を一つ忘れて帰りましてね。それを届けに」

マリア「なるほどね…」


納得し、思わずマリアは苦笑する。
そして、ふと思いついて「私が届けようか?」と告げるとあっさりと「お願いします」と返された。

風の街と漆黒の槍 2 ( No.441 )
日時: 2021/05/02 17:29
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

「仮面ライダーW」世界、風都。
街の至るところに様々な形状の風車があり、吹く風によって回っている、通称を「エコの街」。
そこにギアペンダントを着けたマリアがいた。
何故、アガートラームをエルフナインに預けたのにギアペンダントがあるのか?
理由はエルフナインや弦十郎からマリアがガングニールとも適合している情報をもらっていた「天羽ワールド」のメンバーが、奏から許可をもらった上で予備をマリアに貸し出したからだ。
風都の治安事情……特にドーパント絡みで良くないことと、前に月音からノイズが「戦姫絶唱シンフォギア」以外の世界にも現れる可能性があると告げられたことが理由だ。


マリア「ここが風都ね。いい風だわ…」


風都で吹かれてる風に気持ち良さそうに目を細める。
けれどすぐに困惑の表情になった。


マリア「場所は聞いてはいるけど……鳴海探偵事務所ってどこ?」


不慣れな街にある事務所名に、困っていたようだ。
すぐに月音に連絡を取り、住所と建物の特徴を聞いた彼女は街を歩く。
スタイルも顔立ちも良い彼女は人目を僅かに引くが、あまり気にしていない。


マリア「ここ、かしら?」


ある建物の前に立ち、軽く首を傾げる。
かもめビリヤードとある、二階建ての建物。
そこの二階が鳴海探偵事務所のようだ。

風の街と漆黒の槍 3 ( No.442 )
日時: 2021/05/02 17:36
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

事務所の扉の前に立ってノックすると、はーいという女性の声がする。
扉が開かれ、小柄な女性が出てくる。


「鳴海探偵事務所です、中へどうぞーっ!翔太郎くーん、お客様ー!」



扉を大きく開き、マリアを中へ案内する。
中に入るとすぐ近くのソファーに促されてマリアは座り、女性は奥へと引っ込んでいく。
彼女と入れ代わるようにソフト帽を被り、きっちりとした衣装の男性がやってくる。
と、彼は何かに気づいた表情でマリアを見た。


「あれ?あんた……月音が言ってたイヴさん?」

マリア「そう、だけど……あなたは?」

翔太郎「俺は左翔太郎、この街の探偵だ。よろしくな」


微笑みながら男性―――翔太郎は、対面にあるソファーに座る。
そこにお盆にマグカップを乗せた女性が戻ってきて、マリアの前にマグカップを置く。
中身はコーヒーのようだ。


「コーヒーどうぞ」

マリア「あ、ありがとう」

「いえいえ」


マグカップを持ち上げ、軽く息を吹きかけてから一口飲んだ。一息つくのを見てから、翔太郎は女性のことを紹介する。


翔太郎「それで、こいつは所長の亜樹子だ。亜樹子、この人は前に月音が言ってたイヴさんだ」

亜樹子「あ、この人が!?初めまして、鳴海探偵事務所所長の照井亜樹子です!よろしくお願いします!」

マリア「マリア・カデンツァヴナ・イヴよ、マリアでいいわ。よろしくね」


この子が所長なのかと内心で少し驚きつつも微笑む。
綺麗な人ーと呟きながらも亜樹子が首を傾げた。


亜樹子「でも、何でマリアさんがここに?」

マリア「「天羽ワールド」に行ったら忘れ物のこれがあったと聞いて、届けに来たのよ。たしか……フィリップ?って人の」

翔太郎「あいつのか……すまないな、わざわざ持ってきてくれて…」

マリア「気にしないで」


彼女が工具を取り出して見せ、持ち主の名前を出す。
察した翔太郎が苦笑して受け取ると。


「翔太郎、シンフォギア世界の「天羽ワールド」に忘れ物をしたから取りに……おや?」


不意にいくつかの帽子を掛けるフックなどがついた壁……地下ガレージに繋がる扉が開かれる。
そこから髪を文房具のクリップで留め、片手に本を持った少年が出てきてきょとんとした。

風の街と漆黒の槍 4 ( No.443 )
日時: 2021/05/02 17:42
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

少年―――フィリップが忘れ物だった工具をマリアが持ってきたと知ると、礼とともに自己紹介してから。


フィリップ「ならついでに風都を観光していったらどうだい?翔太郎をつけるから」


という彼の提案により、マリアは翔太郎に案内されて風都の観光をしていくことになった。
ペット探しの依頼も終わっているからか、亜樹子も賛成してしまった。
まぁ、届けただけで終わらせるのもと考えたマリアと翔太郎が頷いたから、ということもあるが…。


マリア「あなた、職業のこともあるんだろうけど知り合いが多いのね」

翔太郎「風都は俺の庭だからな。それにフィリップ以外で、街で集める情報の面でも頼りにしてる奴らもいるし」


通称を「風都イレギュラーズ」と呼ばれる者達や、今までのドーパント絡みの事件などでの関係者達。
彼ら彼女らから翔太郎は何回か声をかけられていた。
見慣れないマリアに対する質問も多かった。
ただ、「風都イレギュラーズ」には何故か恋人なのかと言われ、否定すれば「翔ちゃんだもんねぇ…」と呟かれていたが。


マリア「情報屋、ってことなのかしら?」

翔太郎「そういうこと」


頷く翔太郎の姿に納得する。
そうやって二人で歩きながら案内と観光をしていると。


「あ、探偵」

翔太郎「ん?」

マリア「?」


女性の声が聞こえて振り向く。
そこには長めの茶髪で、赤いラインがある黒いジャケットとショートパンツを身につけた女性がいた。
ペンダントを着けていてトップ部分は銀色の台座に上から下に、色は透き通った透明でイバラが絡みつき、ところどころに小さな真紅の薔薇が咲いた十字架が閉じ込められているというデザインだ。


翔太郎「レイカか、どうした?あ、マリア、こいつは羽原レイカ。レイカ、この人は」

レイカ「知ってる、克己や月音から聞いたり境界の館の図書室で見たから。マリア・カデンツァヴナ・イヴ、でしょ?よろしく」

マリア「よろしくね」


女性―――羽原レイカも、よろしくと告げる。


マリア「そのペンダント、綺麗ね。どこで売ってるの?」

レイカ「これ?このペンダントそのものは売り物じゃなくて、手作りの貰い物なんだよね」

マリア「手作り!?」


手作りと聞いて本気で驚く。
完成度はなかなかに高く、あまり手作りには見えない。
細かい細工もあると言われ、台座の裏を見せてもらうと縁の部分には蔓草のような植物が、真ん中には髪を結い上げた女性の横顔が彫られている。

風の街と漆黒の槍 5 ( No.444 )
日時: 2021/05/02 17:49
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

ペンダントの裏側の細かい細工に、本当に手作りなのかと疑ってしまう。
翔太郎が何も言わないということは本当なのだろう。
作った人は器用ね…、と呟くしか出来なかった。


レイカ「と、話してる場合じゃなかった……探偵、さっきアクセルからうちに連絡あったんだけど」

翔太郎「照井から?何があったんだ?」

レイカ「………彼女がいる前で少し話しづらいけど、関係あるかもしれないし、なくても気をつける必要があるからね…。実は、路地裏で炭の塊みたいなのが見つかったらしいよ」

翔太郎・マリア「⁉︎」


炭の塊と聞いて、翔太郎とマリアは驚いた表情になる。
特にマリアには心当たりがあった。
月音から聞いていた、ノイズが「戦姫絶唱シンフォギア」世界以外の世界にも現れるかもしれないという話。
あの話が現実味を帯びてきている。


レイカ「ノイズかもしれないけど、ドーパントの可能性もあるんだよね」

翔太郎「確かに…あり得なくはないな」


地球の記憶が収められた、USBメモリのような見た目のもの―――ガイアメモリ。
それを仮面ライダーの変身者以外が使うと、ドーパントと呼ばれる怪人となる。
変身者である彼らは特殊なドライバーを使うことで、ガイアメモリの悪影響を受けずにいる。
ガイアメモリには中毒性があり、完全に断つには仮面ライダー達がメモリを破壊するしかない。

気をつけるようにとレイカに告げられてから、彼女と別れて。
次はどこに行こうかと二人が話していると翔太郎の持つ、どこか変わった形状の携帯―――ガジェットモードのスタッグフォンが着信音を鳴らした。
マリアに断りを入れてからすぐに通話に出る。


翔太郎「はい、もしも」

『左、今どこにいる』

翔太郎「大道?どうした?」


聞こえてきた相手―――大道克己の声に少し驚く。
が、すぐに真剣になって質問した。


エターナル『ノイズが現れた!今は俺が変身して何体か倒しているが、数が多すぎる!!』

翔太郎「ノイズが!?」

マリア「!」


ノイズと聞いたマリアが反応する。


翔太郎「すぐに向かう!場所は!?」

エターナル『ああ、場所は…』


エターナルは場所を伝えるとすぐに通話を切った。
それほど数が多いのだろう。
伝えられた場所までのルートを考えると、途中に鳴海探偵事務所がある。
途中からバイク───彼らの専用マシン、ハードボイルダーに乗っていき、マリアは事務所にいさせようと翔太郎が考えた時。


マリア「私も行くわ」


戦士の表情をしたマリアが、彼にそう告げた。

風の街と漆黒の槍 6 ( No.445 )
日時: 2021/05/02 17:56
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

エターナルは三十を超える数のノイズを相手に戦っていた。
何体か倒しているが、数が減っていない。
いや、むしろ…。


エターナル「増えてる…」


小さく呟いた。
彼が倒せばまるで充填されるかのように、倒されたノイズの二倍ほどの数が現れている。
それでもエターナルが次々と倒しているので、それほど増えているようには見えないが。
NEVERだから疲労はたまりにくいが、翔太郎が早くここに着くことを願ってしまう。
そんなことを考えていると、変身することで強化された聴覚にバイクの音が聞こえてくる。



────Granzizel bilfen gungnir zizzl



美しい歌声とともに…。

風の街と漆黒の槍 7 ( No.446 )
日時: 2021/05/02 18:04
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

緑の後輪と黒の前輪というデザインが施されたバイク。
運転手の後ろに乗っていた人物は、バイクから飛び立つように降りると刃が大きい、黒の槍を構える。
壮大かつ誇り高いような音楽が鳴り響き、それにふさわしい歌をその人物が歌い出した。


BGM『烈槍・ガングニール』(「戦姫絶唱シンフォギアG」挿入歌)


その人物───マリアは、迷いなく一体のノイズへ槍を突き刺して横に薙ぐ。
貫かれ、両断したノイズは炭素と化した。

彼女は黒と赤のスーツと武装を纏っており、角のようなヘッドギアもある。
そのギアは、奏や響のものと似ている。
まさに「黒のガングニール」と呼ばれるにふさわしいほど。


エターナル「左、何でここに彼女が……?」

翔太郎「フィリップの忘れ物をマリアが届けてくれて、礼も兼ねて風都の観光案内してたんだよ」


あぁ、なるほどと納得しながらエターナルは、翔太郎へと向かってきていたノイズを蹴りで粉砕する。
その間に翔太郎は二つのスロットがある、機械的なベルト───ダブルドライバーを装着する。
すると、鳴海探偵事務所で調べ物をしていたフィリップにもドライバーが出現し、装着された。
二人は自分達のガイアメモリを取り出し、起動させる。


『サイクロン!』

『ジョーカー!』

フィリップ・翔太郎「変身!」


ガイアメモリから音声───ガイアウィスパーが発せられた。
フィリップが緑のガイアメモリ───サイクロンメモリを右のスロットに装填すると、それはどこかへ転送されて意識を失った彼は倒れる。
転送されてきたサイクロンメモリを翔太郎は押し込み、左のスロットに黒いガイアメモリ───ジョーカーメモリを装填し、バックルを展開する。


『サイクロン!ジョーカー!』


再びガイアウィスパーが響き、風とともに彼の身体を何かの欠片のようなもので覆っていく。
そしてそこに立っていたのは、風が吹く街を守る戦士であり二人で一人の探偵でもある仮面ライダーWだった。


W(フィリップ)『ノイズか…いつかはこの世界にも来る可能性を考えていたが、こんなに早くとはね』

W(翔太郎)「いくぞ、フィリップ」


ああ、と右の複眼が点滅しながら翔太郎の体にいる、意識の状態のフィリップが答えるとWとエターナルはノイズへと突っ込んでいく。

風の街と漆黒の槍 8 ( No.447 )
日時: 2021/05/02 18:14
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

歌声が響く中での戦闘。
慣れていない状況に三人の意識は一瞬ではあるがマリアへと向いては、すぐにノイズに戻る。
まぁ、意識が向くのには知識としては知っているが、彼女が生身に近い武装だからというのもあるが…。
不意に彼女の歌が止まる。
どうしたのかとWが声をかける前に、それが現れた。

怪獣とも芋虫とも取れるような独特のフォルムを持ち、大型のノイズ─── 強襲型ギガノイズ。

強襲型ノイズは口や体のようなところから、蛙やナメクジを思わせるものや人型のノイズを吐き出していく。
それを見たW(翔太郎)とエターナルは僅かに驚く。


W(フィリップ)『強襲型ノイズ…!厄介だね、奴は他のノイズを出すことが出来る』

マリア「奴は私がやるわ」


Wとエターナルの前に、マリアが立った。
思わずWが止めようとするが、その前に彼女が槍の矛先を強襲型ノイズへ向ける。
槍の矛先が展開し、エネルギー砲を発射した。



『HORIZON†SPEAR』



エネルギー砲が放たれた強襲型ノイズは、まともに食らってしまう。
当たった場所から黒く、炭素と化して風に乗って飛んでいく。


W(翔太郎)「うわ、すげぇ…」

W(フィリップ)『なるほど、あれが彼女のシンフォギアでの技か…!ぞくぞくするねぇ』

エターナル「するな、彼女の格好的に問題発言にしか聞こえないからするな」


素直に感心する翔太郎の中で好奇心が騒いでいるフィリップの発言に、マスクの下で真顔になったエターナルがツッコミを入れる。
そうしながらも、ノイズを殲滅していく手を止めないのは戦士だからだろうか。

風の街と漆黒の槍 9&後書き ( No.448 )
日時: 2021/05/02 18:18
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

最後の一体のノイズを、マリアの槍が両断した。
炭素になったそれを見てから周囲を警戒する。
何も出てこなくなったのを確認してから、彼女はシンフォギアを解いた。
Wとエターナルも解こうとすると、青の差し色が入ったビートルフォンがライブモードでやってくる。


マリア「……………白いカブトムシ……?」

エターナル「俺のだな」


エターナルが手を差し出すと白のビートルフォンはそこに乗る。
ギジメモリを引き抜き、ガジェットモードに変える。
すると、ビートルフォンから着信音が鳴った。
変身を解かずに彼はそのまま通話ボタンを押し、少し離れながら電話に出る。
シュールな光景だなと思いつつWも変身を解き、翔太郎へと戻る。
翔太郎の体から離れたフィリップの意識も、自分の体に戻って目覚めてるだろう。


マリア「…ごめんなさい、私達の世界のことに巻き込んで」

翔太郎「気にすんな、近いうちにこういうことが起こるかもって話はフィリップとしていたんだし。それが思ったより早かったってだけだ」


申し訳なさそうにするマリアへと、翔太郎は苦笑しながら告げる。
でも…、と彼女がさらに何か言おうとして。


エターナル「は……?「立花ワールド」で襲撃があった!?」


誰かと通話していたエターナルの言葉が聞こえてきた。


──────


後書き


「スマホになってから初のシンフォギア編の更新です。文字打つの大変…」


「短編では既に散々絡んでたけど、シンフォギア編では初の仮面ライダーとシンフォギア編の絡みです。やっと書けたよ…」


「ちなみにスマホに変えてから、ゲームアプリも入れましてアルケミアストーリーとクッキーランオーブンブレイクの二つをやってます。超楽しい。
アルストはプレイヤーが麻琴でYOMEは悠姫ですが、意識の一部だけ持ってきた別の世界の存在設定です」


「次はいつ更新出来るか不安ですが……それではまた次回!」