二次創作小説(新・総合)

陽だまりへの襲撃 ( No.469 )
日時: 2022/01/14 21:17
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

マリアが「天羽ワールド」に着く少し前。
「立花ワールド」に着いたセレナは外出することを伝えるついでに弦十郎から話を聞き、少し落ち込んだ。
姉と話をしたかったのだ。


セレナ「入れ違いになっちゃった…でも、それはそれで買いやすいかな…」


気を取り直したセレナが小さく呟く。
確かに話をしたかったが今回、彼女が「立花ワールド」に来訪した主な目的は姉のCDの購入だ。
この世界の姉は自分が知っている頃より成長しているのは勿論、歌手としても行動している。
そうなると彼女のCDが欲しくなるのは必然だ。
奏だって翼のCDが欲しいと、よく口にしている。
なのでナスターシャとウェルの許可をもらってから「立花ワールド」に移動してきたのだ。


燐「失礼しま……あ?」

麻琴「あ、セレナ」

セレナ「あれ?」


CDはどれぐらいまだあるのかと考えながら、弦十郎が通信端末を用意するのを待っていると見たことがある二人と、見たことがない男性が司令室に入ってきた。


セレナ「御劔さんと、たしか、終夜さん、でしたか?」

麻琴「ああ、合っている」

燐「セレナも来てたのか」

セレナ「ええ……それで、その人は?」


セレナが指したのは、弦十郎に話しかけに行く男性。
長めの金に近い茶髪に左目に眼帯をしながらも灰色の瞳を持つ長身の彼を見て、二人はあぁと呟き。


麻琴・燐「あいつ窮奇」

セレナ「窮奇さん!?え、でも窮奇さんって虎…」

麻琴「人の姿にもなれるんだよ、あれは人間にかなり寄せた姿。本当なら黒と金の縦縞で長い髪だけど目立つし普段の人の姿で着てるものも目立つから、なるべく地味めの着てきてるし」

セレナ「地味…」


男性───窮奇を見る。
黒のズボンとシャツ、灰色の上着というシンプルな服装。
確かに地味かもしれないが、顔もスタイルも良くて背も高いのでそれでも目立つだろう。
言うべきか考えたが黙っておくことにした。
麻琴も燐も顔が整っているから、三人がともにいると目立つのは確実だ。
確実なのだが、どうにも本人達には自覚が無いらしい。
それなら言わない方がいいと思ったのだ。


セレナ「そういえば、三人はなんでここに?」


代わりとして、尋ねることにした。

陽だまりへの襲撃 2 ( No.470 )
日時: 2022/01/14 21:23
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

簡単に答えたのは麻琴だった。


麻琴「ウチが使ってる桜花………武器が神器でな。それで調べさせてほしいと前から言われてたから、さっきエルフナインに貸してきた。燐は…」

燐「俺は欲しいのがあるから窮奇と一緒にこいつについてきただけだ」


なるほどと納得していると、窮奇が戻ってくる。
その手には四つの通信端末。


窮奇「弦十郎から受け取ってきたぞ。セレナも街に出ると聞いたから一緒に持ってきた」

セレナ「あ、ありがとうございます」

燐「セレナも何か用があるのか?」

セレナ「そうなんです、実は…」


「立花ワールド」に訪れた理由をセレナが告げる。
それを聞いた燐が小さく、俺と似たようなものだなと呟いた。


燐「ならセレナも一緒に行くか?リディアンに寄って響と未来を道案内として回収してく気だったし」

セレナ「いいんですか?」

燐「おう。切歌と調も回収するか」


ナチュラルに回収って言ってるし、切歌と調が巻き込まれたな。
二人の会話を聞きながら麻琴と窮奇はそう思うのだった。

陽だまりへの襲撃 3 ( No.471 )
日時: 2022/01/14 21:29
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

なんとも言えない表情をするのは響と未来、切歌、調の四人。
授業が終わり、あとは帰るだけという状況で校門が騒がしかった。
何事かと思って見ればセレナや麻琴、燐、それから見慣れない人物がいた。
見慣れない人物は、まさかの窮奇ではあったが…。
顔が整っているだけでなく、半分は男性ということに生徒達が盛り上がっていた。
すぐに四人が慌てて校門に行けば。


燐「よし、四人とも来たな。なら行くぞ」


と、とてつもなくいい笑顔の燐に捕まり、何故か一緒に街中を歩いている。
さすがに財布や携帯などの必要なもの以外の荷物は燐の魔法で彼女達の部屋に転移してもらい、制服では目立つからと麻琴の霊布で私服に変えられた。
こうなったら楽しむしかないと、四人は考えることにした。


調「セレナは何しにこっちに?」

セレナ「実は姉さんのCDを買いに。御劔さんも欲しいものがあるとさっき…」

未来「燐さんも?」

燐「ああ。俺はハンドメイド……アクセサリーや雑貨を手作りする趣味があってな、ネットで売ったりしてる。サイト作ってそこでメールもらったりしてな。今日の麻琴がつけてるバレッタが俺が作った奴だな」

響「え、これが!?」

切歌「すごい可愛いやつデスよ、これ!?」


響と切歌が驚いて麻琴………正確には、彼女がつけてるバレッタを見る。
境界の館でいつも見かける着流しではなく、中に白いインナーを着ているとはいえ背中と胸元の肌が少し見える程度には深さがあるVネックで裾が太もも半ばまでの暗めに赤いオーバーシャツに、膝丈の白いレギンスという洋服だ。
髪はハーフアップにされ、束ねた部分を小振りで立体的な、透き通る赤の椿の花がいくつか咲いており、周りには小さな蝶のチャームや光に当たると上品に輝く丸い玉があるバレッタで留めている。


麻琴「宣伝ってやつだ。服は窮奇が選んだ」


あぁ……、と思わずシンフォギア組は納得した。
まだ短い付き合いではあるが、いつも着流し姿なのを思い出すと納得しかなかった。

陽だまりへの襲撃 4 ( No.472 )
日時: 2022/01/14 21:36
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

それぞれの目的のものは燐が百円ショップ、セレナがCDショップと別々の場所にあるので二手に分かれて行動することになった。
CDショップには切歌と調、セレナの三人で百円ショップには響と未来、燐、麻琴、窮奇の五人という形だ。
人数に少し偏りがあるが性別的なものと、別世界の存在とはいえ三人でしか通じないような積もる話もあるだろうという判断だ。


未来「いっぱい買いましたね…」

燐「欲しい色合いのラメパウダーや、よく行く世界には無い型とかがあったからな。試作用にこの世界のレジンもいくつか買ったし、帰ったらやってみる気だが………お前らも時間あったらやるか?」

響「いいんですか!?」

燐「ハンドメイド仲間が欲しいからな。あとでセレナ達も誘うか」

麻琴「楽しそうな会話だな」

窮奇「だな」


何やら楽しそうな三人を、二人は生暖かい目で見る。
セレナ達と合流しようと思い、窮奇が連絡を取るために通信端末を取り出そうとする。
その前に、響が持つ通信端末から着信音が鳴った。
断りを入れてから彼女は四人から離れて通信に出た。
聞こえてくる言葉から察するに、相手は弦十郎のようだ。
通信を切ると響は申し訳なさそうにしつつも、真剣な表情で戻ってくる。


響「ごめん、任務が入ったから…」

未来「分かった、気をつけてね?」

響「うん。あの、未来をお願いします」

窮奇「ああ」


窮奇が頷くのを見た彼女は、すぐにどこかへと走っていく。
そこに未来の携帯からメールの着信音が響いた。
確認するとどうやら、切歌達にも連絡が行ってセレナを含めた三人で任務に向かうことになったようだ。

陽だまりへの襲撃 5 ( No.473 )
日時: 2022/01/14 21:42
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

メール内容を見るにかなりボカされているが響と三人に入った任務はどうやら、アルカ・ノイズが現れたのでそれらの殲滅らしい。





──────アルカ・ノイズ。
「バビロニアの宝物庫」より現れるノイズのレシピを基にし、キャロルが錬金術によって生み出したノイズの亜種。
従来のノイズと比較して出力スペックに大差はない。
が、細部ディテールはオリジナルとは異なっており、武士型やバナナ型のようなアルカ・ノイズ特有の個体も存在する。
専用のテレポートジェムを使って召喚され、ノイズのようにソロモンの杖を用いずともコントロール可能となっている。

ノイズとは異なる運用思想の下に改良が施され、世界の解剖を目的とした「解剖器官」を持っている。
本来はノイズに無い発光部位があり、触れた対象を文字通り「分解する」特性を獲得した
分解された対象は無機物も有機物も炭素とも異なる赤い塵へと崩れ果てる。
その分解対象はノイズによる炭素転換の減衰機能を備えていたはずのシンフォギアも含まれている。
後にシンフォギアが強化されて以前と変わらぬパワーバランスとなるが、その能力はノイズに対応出来る唯一無二の存在たるシンフォギアの優位性をも分解せしめてみせたことがある。

しかし、その分解能力を発揮するには、位相差障壁のエネルギーを解剖器官に回す必要がある。
結果、従来のノイズと比較して防御性能が損なわれ、シンフォギアを用いずとも一般の銃火器でも駆逐可能という欠点を持ってしまう。
ただし触れれば分解されるのは変わらず、大型でない限り一体一殺が基本だったノイズと違い一体で複数人の分解が可能。
故に通常物理法則に対しては圧倒的に有利に立っている事には
変わりない。

「立花ワールド」と「天羽ワールド」、どちらにも存在している。
現在はパヴァリア光明結社という組織に基本となるレシピがある。
魔法少女事変アルケミックカルト以降、内紛などがある国で使用されていることがあるらしく、シンフォギアを纏える装者達が鎮圧に行くこともある。
ただ、「天羽ワールド」ではキャロルが出撃する時があるらしい。

陽だまりへの襲撃 6 ( No.474 )
日時: 2022/01/14 21:49
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

こうなったら「S.O.N.G.」の本部内でみんなの帰りを待った方がいいだろうと話し合い、歩き始め…。


麻琴「止まれ」


麻琴が制した。
あまりにも真剣で硬い声に未来が驚いて固まる。
窮奇の姿はいつの間にか人型での元のものに戻っていて両手に鉤爪を装着して警戒し、燐も左目の下には紅い鱗が出ている。
そして気づく、先ほどまで周りに通行人がいたのに今は誰もおらず、何も聞こえてこない。
街中だというのに自分達以外の気配と音の無さに、未来はどこか恐怖を感じる。


麻琴「投影トレース開始オン。そこにいるのは分かっている」


セーフティを外した銃を投影した麻琴は、それの銃口を近くの建物の角へと向けた。
誰もいなさそうなそこから、人が出てくる。

肩を越す程度の長めの銀髪に、灰を混ぜたような薄い紫の瞳の男だ。
どこかで見たことがあると、未来は感じる。
いったい、どこでなのか?

記憶を巡らせようとして、気づく。
恐ろしい気配が近くから、感じられる。
見てはいけないと脳が命じるのに、体が勝手に動いてしまう。
そして、見た。
完全に瞳孔が縦に長く鋭くなり、紅い鱗は左目の下だけでなく頬にまで出ていて…背に、蝙蝠を思わせる翼が生えた燐がいた。
角や尻尾が出ていないため、完全なキメラ姿ではない。
けれど、殺気が漏れ出ている。
それに気づいた窮奇が舌打ちし、妖気で未来を包み込んで守ってから燐に声をかけようとして…。


「おやぁ?あの時の成功被験体じゃないかぁ」


銃口を向けてきている麻琴ではなく、燐を見てねっとりとしたような声を出す。


燐「殺す」


一言、呟いたと思えば。
一瞬でその場から燐の姿が消え、次に姿を見せた時には肘から先が剣の刀身になった彼が男の前に現れて振り上げていた。
待て!、と麻琴が制止するも遅く既に振り下ろされて。


「危ないなぁ」


男は呟き、右手で何かを軽く振り払うような動きをする。

陽だまりへの襲撃 7 ( No.475 )
日時: 2022/01/14 21:54
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

簡単で、軽い動き。
誰がどう見てもそうだとしか思えないのに。


燐「ガッ…!?」


動きに合わせるように、何かによって燐が弾かれる。


窮奇「燐!」


すぐに窮奇が動き、燐を受け止める。
受け止められた燐は窮奇に礼を言いつつも男を見た。
その瞳は困惑を浮かべている。


燐「何だ……あの力は………!?」


男は答えず、右手を掲げる。
その手には紫の宝石みたいなものがあり、どことなく剣を思わせる銀の物体が握られている。
それに見覚えがある未来の目が見開かれた。


未来「何でソロモンの杖が…っ!?」


あの時、確かにゲートの向こうへと封印したはずなのだから。



──────ソロモンの杖。
それはかつて、研究などのために米国政府が櫻井了子、もといフィーネに譲渡した完全聖遺物。
杖と呼ばれているが実際には鍵であり、「バビロニアの宝物庫」の扉を開くことが出来るもの。
その機能はノイズを任意発生させること。
さらには七十二種類のコマンドを組み合わせることにより、より複雑で精緻にノイズのコントロールを可能とすることだ。

一度でも励起されれば常人でも制限を受けず、行使が可能なのが完全聖遺物の特徴だ。
雪音クリスの歌声により励起されたソロモンの杖も、同じように誰でも使えてしまうことが分かっている。

陽だまりへの襲撃 8&後書き ( No.476 )
日時: 2022/01/14 22:00
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

男が意外だとでも言いたげに未来を見た。


「まさか、この完全聖遺物を知っているとは……まぁ、いい。そこの黒髪の小娘と、ついでに成功被験体はもらおうじゃないかぁ」

窮奇「させると思うか?」


警戒を滲ませた声で窮奇が言うも、男は気にせず笑みを浮かべた。
悪意に満ちた笑みを。

銀の物体────ソロモンの杖を横に薙ぐように動かす。
それの紫の宝石のようなものから、光線が放たれる。
その光線は四人を避け、あるいは囲むように着弾するとそこから極彩色の存在、ノイズが大量に現れる。
対抗手段がない未来が短く悲鳴を上げるのを聞いて、窮奇から離れた燐は彼女を左腕で抱き寄せた。


未来「燐、さん…?」

燐「気持ち悪いだろうが我慢してくれ」


未来は「立花ワールド」にいる、装者の全員と関わりがある。
奴は彼女をもらおうと言った。
つまりは何か利用しようとしている。
彼女が連れ去られ、利用されたなら………装者達、特に親友の響などが酷く動揺したりするだろう。
最悪、前のように響が再び聖詠を歌えなくなりシンフォギアを纏えなくなる可能性もある。
あり得なくはない可能性を考え、自らの感情を無理にでも抑えつけて未来を守ることを優先することにした。
男への殺意があるのは変わらないが…。


麻琴「仕方ない…─────発動、第二解放…───…」


ちらっとそれを見てから、麻琴は嫌そうに何か小さく呟く。
一瞬だけ黒と白の翼が見えた次の瞬間には、漆黒と純白の刀が二振り現れる。
空いている方の片手で白刀を掴んでから再び何か呟きながら未来を抱き込んでいる燐の足元に投げ突き刺すと、光で出来た半球状の結界が張られた。
新しく持った黒刀と銃を構えてから軽く息を吸い込むと。



BGM『BAYONET CHARGE』(アニメ「戦姫絶唱シンフォギアGX」挿入歌)



どこからか音楽が響いてくる。
音楽の発生源は、方角からして……麻琴だ。
黒刀には蒼の、銃には紅の光が宿る。
同時に、窮奇とともに彼女が歌いながらノイズの群れへと突っ込んだ。

歌声は普段のような、年齢は分かるものの性別が一切感じられない中性的な声ではない。
最初は低めではあるものの凛とした、歌声。
次には高めで透き通っている、歌声。
二つの歌声を、未来は知っている。
「S.O.N.G.」本部などでのモニター越し、あるいは何かあって直接的に。


未来「翼さんとクリスの…?」


呟きは二つの歌声が重なった、麻琴の歌声に消えた。






──────


後書き





「更新遅くなった上にリアル諸事情で新年の挨拶が出来ずすみません、作者です」


「書きたいシーンや盛り込みたいこと書いてたんですが、執筆がぐだぐだに長くなるなと思ったので半分ほどカットして更新することにしました。中途半端なところで申し訳ない…」

「更新ペースがマイペース過ぎる私ですが、出来れば今年もよろしくお願いします…」