二次創作小説(新・総合)
- 因縁は姿を見せる ( No.477 )
- 日時: 2022/04/10 23:08
- 名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)
襲いかかってきたノイズを、窮奇の鉤爪が連続で切り裂く。
彼の力が乗せられているからか、ノイズはすぐに炭素と化して消滅する。
同じように麻琴は黒刀で斬り、銃で撃ち抜いていく。
何故か彼女が持つ武器でも、攻撃を受けたノイズが炭素となる。
未来「何で…?」
燐「あれがあいつの能力の一つだ。願いや思いを込めることで、それらを実現させる力……今は翼とクリスのシンフォギアの力を付与させてるんだろうな」
戸惑う未来に説明しながら燐は、人の形に戻した右手の手のひらから槍を勢いよく射出させて結界を破壊しようとするノイズを迎え撃つ。
出自からして窮奇はそうだが、燐も完全聖遺物に近い存在になっている。
ベースが人間であるのは変わらないが、彼に混ざっている生物はどこで捕まえ、どうやって連れてきたのかは分からないが悪魔とドラゴンである。
悪魔はどこの出身か判明していないのでどうなのか分からないが、ドラゴンは宗教や伝承などによっては悪性にも善性にも変わる。
悪魔とされる場合もあれば、神とされる場合もあるのだ。
麻琴は半分は人外……さらに半分は女神と、神に並ぶとされる天狐の血を持っている。
理由は分からないが、魂の特性かもしれないと本人が数少なく語ったことだった。
それに、と考える。
キメラであるが故に人間を超えた身体能力を持つからこそ、聞き間違いではないと自信を持つことが出来る。
彼女が発動と呟く寸前に聞こえた、五文字の単語。
イノセンス、と言わなかっただろうか…?
「素晴らしい!まさか、シンフォギアを纏わずともノイズを倒せるとは!」
男が目を輝かせながらも、悪意に満ちた目で麻琴と窮奇を見る。
「けれど………体は保つのかな?」
歌い続け武器を振るうごとに顔色が蒼白になり、気合いで抑えているのだろうが時折手が震える少女に呟いた。
- 因縁は姿を見せる 2 ( No.478 )
- 日時: 2022/04/10 23:13
- 名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)
ノイズはほぼ排除され、歌も終盤になってくる。
近くのノイズ数体を黒刀で斬り払った瞬間に、それは起きた。
麻琴「ぐぅ……っ!」
燐「麻琴!?」
未来「終夜さん!?」
ごぽり…っ、と。
歌いきってしまうと同時に麻琴の口から血が溢れる。
まるで呼応するように銃と二振りの刀が消えた。
すぐに窮奇が残りのノイズを鉤爪で引き裂き消滅させ、体勢を崩した主を抱き留めた。
一気に大量の冷や汗を流し、咳き込みながら口から血を吐き出し続ける彼女からごっそりと神通力が抜けてるのを感知し、小さく舌打ちする。
「いやぁ、素晴らしかった。シンフォギアも纏わずに倒せるとは思わなかった。代償はあるみたいだが」
面白そうに言いながら、男はソロモンの杖を持つのとは反対の手、左手を懐の中に入れる。
左腕には幅が広い、黄金の腕輪がある。
それに思わず視線を移し、ある力を感じ取って怪訝に思った窮奇だがすぐに思考を切り替えた。
懐から左腕を振るうように引き抜くと、赤い発光体の入った結晶を取り出す同時に周囲にばら撒いた。
結晶は高めの音を立てて地面に転がると砕け、発光体が露出された。
発光体は六角形の赤い化学式のような紋様に変わり、そこから発光部位を持つノイズ───アルカ・ノイズが湧き出るかの如く出現した。
「さぁ、その瀕死の小娘と鉤爪の男の命が惜しければ来てもらおうかぁ!!」
さらに結晶をばら撒いて増えていく複数のアルカ・ノイズを従わせた男が、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
光の結界が無くなり、不安などから強張る未来の反応を感じ取りながら燐と、なんとか吐血が止まった麻琴を抱き寄せた窮奇は男を睨んで…。
──────Seilien coffin airget-lamh tron
──────Zeios igalima raizen tron
──────Various shul shagana tron
上空から、歌が降ってくる。
- 因縁は姿を見せる 3 ( No.479 )
- 日時: 2022/04/10 23:19
- 名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)
鋭い刃が薄く、硬いものに突き刺さる音がする。
次いで、ひび割れていく音が響き……。
パリィインッ!
ガラスが割れるような、甲高い音とともに見えない何かが破られたのが分かった。
空気が変わり、アルカ・ノイズへと小型の丸い刃──丸鋸が無数に放たれる。
『α式・百輪廻』
アルカ・ノイズのみを刻んでいく丸鋸に続くように、彼らの前に三人の少女が着地すると振り向く。
セレナ「大丈夫ですか、みなさ…終夜さん!?」
切歌「く、口元や地面にすごい血が!?」
調「麻琴の状態は酷いけど、彼女以外の無事を確認しました!救護班の手配をお願いします!」
弦十郎『分かった、急がせる!』
麻琴の状態にセレナと切歌がさすがに戸惑うも、調はすぐに報告する。
三人はシンフォギアを纏っていた。
ぴったりとしたクリーム色のようなスーツの上に白銀に輝く武装を纏い、各部装甲には花弁を思わせる意匠を持っていて妖精を彷彿とさせる、アガートラームのシンフォギア姿のセレナ。
ぴったりとした白と緑のスーツに物語の魔女の帽子を思わせるヘッドギア、主に肩に武装がある、イガリマのシンフォギア姿の切歌。
ぴったりとした白とピンクのスーツに手足と、ツインテールを収納したヘッドギアにメインカラーがピンクの武装を身につけた、シュルシャガナのシンフォギア姿の調。
未来「調ちゃん、切歌ちゃん、セレナちゃん…!」
燐「助かった…」
見慣れた二人の後輩と、あまり見慣れていないものの最近仲良くなってきていた少女のシンフォギアの姿に、思わず安心したような表情を未来が浮かべる。
そんな彼女を見てから三人は歌いながらアルカ・ノイズの殲滅を始めた。
戦力が減ったと思ったが、減らなかったどころか増えたことに燐は安堵しつつ考える。
- 因縁は姿を見せる 4 ( No.480 )
- 日時: 2022/04/10 23:26
- 名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)
先ほどの割れた音はおそらく、結界だろう。
人の気配が一切なかったことから察するに、人払い系かもしれない。
だが、と眉を顰める。
結界は物や術者によっては機械類などの電波も遮断することが可能なので、使われていたのはまだ分かるのだ。
けれど自分達は結界に気づく前でも、その後でも一度もS.O.N.G.から借りた通信端末に触れていない。
燐「どうやって…」
それなのにタイミングよく三人が来た。
疑問の声を漏らすと、吐血してから一言も言葉を発しなかった……否、発せれていなかった麻琴が僅かに顔を上げる。
麻琴「…こ、の……世界来るま゙、え、に…月音…頼んだ……」
燐「………もしかして、あれか?おふくろに「未来の生体反応が世界から感じ取れなくなったらすぐにS.O.N.G.に連絡して装者とか送るように言え」って言ったやつ」
問いかけると顔色が悪い麻琴が僅かに頷く。
あぁ、と燐だけでなく窮奇も納得していた。
さらに窮奇からしたら朝に起きた時から主が「嫌な予感がする」という第一声を、険しい表情で告げてきたのもある。
本人は無意識だったのか覚えていなかったようだが。
未来「えっ、あの人そんなこと出来るの」
燐「諸事情でな。契約事項だから詳しくは言えねぇけど」
思わぬ情報に未来が軽く驚く間に、アルカ・ノイズは殲滅された。
再び彼らの前に三人が守るように立つ。
男へと切歌と調が警戒するが、彼の姿をきちんと見たセレナが目を見開く。
セレナ「ドクター・ウィル…!?」
調「ドクター……?」
切歌「こいつがセレナの世界のドクター…!それに持ってるあれは!」
「久しぶりだねぇ、セレナくん。そして初めましてかな、そちらの切歌くんと調くん」
セレナの言葉に切歌と調が警戒を強め、男は親しい者と会ったような表情で声をかけた。
- 因縁は姿を見せる 5&後書き ( No.481 )
- 日時: 2022/04/21 21:59
- 名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)
と、男の背後に誰かが現れる。
まるで真夜中のような、ごく暗い紫みの青の髪にトパーズ色の瞳。
整った顔立ちをし、人間離れしてるせいか性別の分からないその人物は男へと声をかける。
「ウィル、退いた方がいいよ。アルカ・ノイズもノイズだから分が悪いし」
「ですが…」
麻琴「……ク…」
窮奇「貴様は…!」
その人物───声からして男だろう───を見た窮奇が先ほど以上に警戒し、睨みつける。
彼に支えられていた麻琴の指が、ピクリと反応する。
「お、窮奇じゃん、久しぶりぃ。その死にかけは麻琴かな?ウィルを退かせるためだけに来たんだけど懐かしい顔が見れるとは」
未来「あの人のこと知ってるんですか…?」
窮奇「知っている奴だ、なんせ…」
未来からの問いかけに答えながら、窮奇は睨みつけるのをやめず。
窮奇「友人として近づき、麻琴の相棒と、俺を殺したんだからな」
答えた途端。
麻琴「レジーク…っ…!」
殺意と憎悪が混ざった声を麻琴が発し、いつの間にか顔を上げて青髪の男へと睨みながら殺気を向ける。
殺気は制御されているのか、それとも抑えているのか。
装者達と未来、燐、銀髪の男が声に驚くのみで終わる。
青髪の男……レジークと呼ばれた彼は楽しそうに笑みを浮かべた。
「ははっ、死にかけだけど元気そうで良かったよ、麻琴。遊んであげたいけど、そのための準備に忙しいから今日は相手出来ないよ?」
麻琴「ふざけるな…!貴様は今、ここでぇ……っ!」
「そんな状態の体で?人間もいる場所で?また、窮奇を僕に殺されるかもよ?」
麻琴「!」
未だに動かない体と、周りにいる者達や窮奇について指摘されると麻琴が思わず躊躇する。
その隙を突くように、青髪の男の背後に黒く、どこに繋がっているかも見えないような穴が出現する。
「あはは、そこで躊躇っちゃうんだ。それだとまだ僕を殺せないよ〜。じゃ、行こっかウィル」
「……はぁ、分かりましたよ。目的を達成出来ないのはあれですが、まだチャンスはありますからね」
切歌「待つデス!」
麻琴「レジーク、待て!レジークぅううう!!」
その穴へと二人の男は入っていき、姿を消す。
いくつかの謎を残しながら。
──────
後書き
「めっちゃ時間かかった!とっ散らかった感がありますが書きたかったシーンの一つが書けました!」
「また時間かかるかも……また次回で!」