二次創作小説(新・総合)

加速する運命 ( No.541 )
日時: 2023/03/20 21:42
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

加速する運命

※原作のネタバレがあります、読む時は注意してください
※この話からこのシリーズ内では、ある名前だけ()による世界名はつきません。ややこしくなる可能性ありますがご容赦ください








あの襲撃があってから一週間ほど。
放課後、響と共に買い物に出ていた未来だが、浮かない表情をしている。
そんな親友の様子を響は心配そうに見る。


響「未来…」

未来「あ……大丈夫だよ、響」


声をかけられて未来は気づき、親友へと安心させようと微笑む。
けれどどこか不安が滲んだものになってしまう。


響「……なら、いいんだけど…」

未来「うん…」


少し暗い声で会話が終了される。
沈黙が訪れてそっと胸元に触れると、固いものの感触が服越しに伝わった。
思い出すのは昨日のことだ。

加速する運命 2 ( No.542 )
日時: 2023/03/20 21:45
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

月音により「立花ワールド」の装者である響だけではなく、未来まで「S.O.N.G.」本部に呼ばれ、彼女から渡されたものに目を見開く。
それを見た弦十郎は険しい表情で声をかけた。


弦十郎「月音くん、未来くんは確かに外部協力者ではあるが…」

月音「分かっていますよ、けれどこれが未来を守るのに一番の手なんです」


無表情で月音は言い切った。
未来の手の中にあるのは、トップの部分に円柱形の石のようなものがあるペンダント……シンフォギアの待機形態である、ギアペンダントだ。
しかもそのシンフォギアは未来だけでなく響にも強い縁があるものだった。
使われた聖遺物は、神獣鏡………一度、急拵えだったとはいえ響をこれ以上戦わせたくないという想いや愛を歪められた未来が纏い、蝕んでいたガングニールを消失させるとともに親友を救い出したものだ。
今はもう、存在しないはずだったもの。


響「あの、未来を守るのに一番ってどういうことですか?」

月音「あー、それはこの間に未来への襲撃があったじゃないですか?んでその前に響だけじゃなく、ザババコンビやセレナが出現したノイズの殲滅に向かったのを覚えてます?」

未来「覚えてますが……」

月音「あちらから見ると、タイミングが良すぎだと思わないですか?ノイズに対抗出来る装者達が離れてから、ウィリアム・フォルトゥーレスは未来達の前に現れたんですよ?一緒にいた麻琴達がノイズを倒せるとは知らず、ソロモンの杖を持ちながら」


ハッ、と全員が気づく。
ソロモンの杖をあちらが持っていて、装者達が近くにいない未来の前に現れた。
それはつまり…。


弦十郎「未来くんが目的、ということか」

月音「そういうことです。未来は外部協力者ですが、同時に「立花ワールド」の装者達と仲がいいが故の弱点にもなるんです」


特に響の。
その言葉は口には出さず、心の中に留める。
親友でもあり、響は未来に対して装者……というより「S.O.N.G.」関連のことを黙り、それによってすれ違ってしまい、拗れて仲違いしていたことがある。
和解し、仲直りもしたが……蝕むガングニールによる命の危機と戦ってほしくない、という気持ちが次第に芽生えたのも事実だった。


月音「本当は、私だって嫌ですよ、ものすごく渡したくなかったんですよ。だって未来はあの時、シンフォギアだけが戦う力じゃないって分かった。そんな彼女に渡したいなんて思わない」


けど、と月音は続ける。


月音「理由はまだ分からないが、未来が狙われている。未来が狙われ、襲撃されるたびに装者だけじゃなく、うちのを含めた他の世界からの者達が来れるとは限らない。それなら、本人が自衛のためにも持たせるしかない………あの襲撃があった日、私がこの世界にいたのは米国政府に、まだある神獣鏡の欠片を渡してもらうための交渉に来てたんですよ」

弦十郎「何故交渉なんて…」

月音「……シンフォギアに出来る聖遺物で、すぐにでも加工出来るのがこれでした。一応、こっちはこっちで調べる方法あるから調べたんですが、うちの悠姫が数値が低いものの適合したんですよね。何でだ、同じ声だからか」

未来「そういえば確かに似てる…」

響「雰囲気は違うけどね…」


声の部分で思わず呟く二人。
何故か未来と悠姫、弦十郎と燐は声が似ている。
似ているというより同じ、と言えるほどだ。
話す時の雰囲気や口調で区別はつくが、それでも時折間違う者達もいる。


月音「悠姫に使わせてもらおうか考えていましたけど、狙われて襲撃された以上は未来に持たせようと考えを変えたんです。あまりいい思い出でもないかもですが、一度は纏えたことがある以上、未来本人が使った方がいいですし…」

未来「………」

月音「………無理強いはしません、とりあえず一週間くらい持ってみて少しでもいいから考えてみてください。念のため、麻琴が三日三晩かけて作った完全害なしLiNKERを召喚する、一回限りの使い捨ての召喚陣をそれの表面にうすーく刻み込んであるんで。ギアペンダントを強く握り締めたら召喚しますから」

弦十郎「さりげなくとんでもないこと言ってないか?」

月音「気のせい」


思わずツッコミを入れる弦十郎と月音のやり取りをスルーしながら、未来はギアペンダントを見る。

加速する運命 3 ( No.543 )
日時: 2023/03/20 21:47
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

思い出したことを忘れようとするかのように、ひっそりとため息を吐き出す。
心配をされている、というのは分かる。
守るためにも、というのも一応分かる。
けれど、『装者達と仲がいいが故の弱点』という言葉が引っかかる。
確かに、自分は響達のようにシンフォギアを纏って戦うことは出来ない。
シンフォギアだけが戦う力ではないことを響から教えてもらった。
だから響達を支えたいとも思っているが…。


響「……あのさ、未来…」


未来を見て、話しかけた時。
どこかで、爆発音がした。


響「!?今のは…っ」

未来「!響、あそこ!!」


思わず爆発音が聞こえた方へと、二人は振り返る。
その間にも人々は悲鳴などをあげて逃げ惑っている。
人々が逃げるのとは反対方向、そこには三人の女性と少女に守られた少女、白を纏う男性がいた。
男性は数体のアルカ・ノイズを従えていた。

加速する運命 4 ( No.544 )
日時: 2023/03/20 21:49
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

時は少し遡る。
逃亡をしていた四人は広場にある森林の中で休むことにしていた。
人形の少女と、ある理由から黒髪の女性は大丈夫だが動物耳の少女とメッシュの少女の体力が心配になったのだ。


「ごめんね、三人とも…巻き込んじゃって…」

「気にしないで。私達もあんな奴らに従いたくなかったってのもあるから」

「そうだぜ、稀血が必要なくなったのは嬉しいけど……こんな体にされても、忠誠を違う気は無いしな!」

「でも、心配ではあります…あの三人は洗脳されてるから、躊躇も無さそうでありますし…」


少女の言葉に全員が黙ってしまう。
確かに彼は強い、それは全員………特に人形の少女が確信を持って言える。
同時に、あの三人は彼なりに大切な存在だ。
なにせ、彼が留守にしている隙に少女を守った“三人”は、数多くいた部下達とともに殺された。
上司であり長である彼の、特別だけが残されたのは人質としてだけではない。
他の使い道もあるからだ。
三人もそれを知っているから、彼女を守っていた。
だが、あの日の少し前に洗脳を施されてしまった。
抵抗もしただろうが、いくら錬金術師で長く生きてきたとしても人間だ。
種族による力量の差は埋められないだろう。
完全である“彼”だって殺せたのだ、それを考えると彼が無事な可能性は低い。


「とにかく、「S.O.N.G.」に向かいましょう。「S.O.N.G.」じゃなくても装者か、出来れば関係者に会えるといいけれど…」


女性の言葉に少女達は頷く。
体力も回復し、休憩を終わらせた四人が広場を出る。
目指すは「S.O.N.G.」本部か、関係者の誰かだ。
だが、広場を出て少ししたところで。


「見つけたよ、やっとね」


彼が四人の前に現れた。
どこか昏い光を宿し、虚ろにも見える瞳を四人────特に、人形の少女へと向けて笑みを浮かべながら。

加速する運命 5 ( No.545 )
日時: 2023/03/20 21:51
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

逃げる四人を彼は追う。

何故、自分は追っているのか?
四人が逃げるからだ。
何故、逃げているのか?

思い出そうとすれば、頭に鋭い痛みが走る。
まるで思い出すことを妨害するように。
それが不自然で気になっているが、優先するものがある。
まずは彼女達を捕まえようと考える。

気づけば街まで来ていた。
彼女達はぶつからないように避けながらも、人の波に紛れて撒くつもりだろうか?


「仕方ない、それなら…っ?」


結晶を取り出し、ばら撒いてアルカ・ノイズを出そうとして……一瞬、体が勝手に動きを止めた。
頭の中に、やってはいけないという、自分の声も…。
どういうことだと疑問に思うも、すぐに結晶をばら撒いてアルカ・ノイズを出現させる。
何人かが気づき、悲鳴をあげ、逃げ出していく。
逃げ遅れ、犠牲となった者も出始める。
逃げた者達を人質にするかとも考えるが、被害などが増えると気づいたのか彼女達は止まっている。
人形の彼女を守るように三人が背を合わすように囲み、アルカ・ノイズと自分を睨む。
何故か、それが悲しいと感じてしまう…。


「さぁ、戻ろうか、僕達のところに」


笑みを浮かべ、手を差し出す────…寸前。
聴き慣れない歌声が響き、黄色の影が自分の前に躍り出てきた。

加速する運命 6 ( No.546 )
日時: 2023/03/20 21:54
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

アルカ・ノイズと男性に向かうように、女性達を守るために。
シンフォギアを纏った響は、その間へと割り込んだ。
背を向けている相手達へと、肩越しに僅かに顔と視線を向ける。


響「大丈夫ですか!?」

「う、うん!大丈夫!!」

「さっきの歌声と、その姿……シンフォギア!?」

「助かったであります…!」


守られている少女が頷き、メッシュと動物耳の少女が驚愕しながらも安心したような表情で見ている。
黒髪の女性は何も言わないが、彼女も安心したと言いたげな表情になっている。


「シンフォギア……!」


苦々しい表情で男性は響を見ている。


響「聞きたいことはあるけど早く逃げてください!」

未来「こっちです!」


通信機を持ち、「S.O.N.G.」に簡単に報告をした未来が四人へと声をかけた。
そうはさせるかと男性がアルカ・ノイズに指示するが、邪魔はさせないと言わんばかりに響がアルカ・ノイズを倒していく。
移動してきた四人と合流した未来は避難場所に先導しながら、安心させるように話しかける。


未来「「S.O.N.G.」には既に連絡は通してます、他の装者もこちらに向かっています!」

「分かったわ、そして…ごめんなさい……本当はあの人に見つからずにアナタ達に会いたかったのだけれど…」


申し訳なさそうに言葉を紡ぐ女性に、いいえと首を振る。
気になることはある。
シンフォギアのことを知っているらしき様子はもちろんのこと、動物の耳や尖った耳なども。
しかし今は人命を優先させるしかない。
アルカ・ノイズに対抗出来るのは、今この場では響しかいない。
自分もシンフォギアを持ってはいるが……。


「嘘……!?」


その声にハッ、と考えの沼に沈みかけていた意識が戻る。
すぐに立ち止まると、彼女達の前に大量のアルカ・ノイズがいた。
いつの間にと驚きながらも、違う逃走経路を探ろうと周囲を見回すが囲むようにアルカ・ノイズの群れが近づいてくる。
女性と、メッシュと動物耳の少女の三人は守っていた少女だけでなく、未来も自分達の輪の中に入れてアルカ・ノイズを睨んで構えた。

加速する運命 7&8 ( No.547 )
日時: 2023/03/20 21:56
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

自分の周囲にいたアルカ・ノイズを倒した響は、彼女達の方を見て向かおうとする。
それを妨げるように男性が立った。


「邪魔はさせないよ、悪いけどね」

響「どいて!」

「聞けないね、そんなこと。それに出来れば全員回収と頼まれているんだ、あの人からは」


あの人……?
誰だと思うが浮かぶ人がいない。


「では、やろうか」


すぅ、と目を細めて彼は構えた。






──────






ごめんね、と少女が未来に謝る。


「ほんとはね、アダムはこんなことしないの、でも今はいつものアダムじゃないんだ」

未来「アダム……?」

「ティキの…あ、ティキの名前はティキっていうの。アダムはね、ティキの大好きな人なんだ」


少女─────ティキは申し訳なさそうにしながらも、優しく微笑む。
けれど、すぐに表情を引き締める。


ティキ「みんなだけじゃない。アナタ達や一般の人達も巻き込んじゃったから………ティキが、今のアダムの元に戻れば…」

「!ダメであります!!」

「そんなことしたら、アダムがティキを逃がした意味が無くなるんだぜ!!」

「それに、あなたは局長から預かった記憶があるのでしょ?…それを返すためにも、今戻るのはだめよ」

ティキ「だけど…!」


じわじわと近づいてくるアルカ・ノイズを睨みながらの三人の言葉に、ティキは苦しそうな顔で言葉を返そうとして出来なくなる。
そんな四人の姿を見ながら、服の下にあるギアペンダントに触れた。
三人とアルカ・ノイズの隙間を縫うように、男性と響の方を見る。
こちらに来ようとしながらも必死に攻撃を防ぎ、防げないものは避けたりいなしたりする響と、躊躇いもなく攻撃を加えながら妨害している男性。
ほぼ一方的な形で彼女は押されていた。


未来「響…」


自分に力があれば、と思ってしまう。
シンフォギアだけが戦う力ではないと、理解しているのは変わらない。
それでも、それでも………!!


未来「助けたいんだ…」


押されてる、一方的にやられそうな響を。


未来「支えたいんだ…」


響だけじゃない、シンフォギアを纏い戦う装者を、「S.O.N.G.」のみんなを。
ただ、ただ守られるだけで、いたくない。


未来「守りたいんだ…!」


響だけじゃない、みんなが傷つく姿を、いなくなるのを見たくないから…!
ティキ達のことは、よく分からないけれど、彼女達のことも守りたいと私の中で声をあげるものがあるから…!


未来「お願い、力を貸して…神獣鏡!」

ティキ「え…?」


服越しに強くギアペンダントを握り締めると、LiNKERが現れてそれを掴む。
自分の首筋に当て、その薬液を注入した。

加速する運命 9&後書き ( No.548 )
日時: 2023/03/20 22:00
名前: 月詠 (ID: 86FuzJA.)

肩で息をしつつ、警戒を怠らず。
隙を見て未来達のところに向かおうにも、邪魔されて。
疲労が溜まってきている響は、どうすればいいか考える。
隙がありそうで無く、隙だらけになったかと思うとそこを突いて向かえると思った瞬間には無くなってしまう。
どうすればいい、どうしたら突破出来るのか?


「すまないが、消えてもらうよ、ここで」


男性が響に手を向けて……。


──────Rei shen shou jing rei zizzl


歌声が、聞こえた。
思わず、歌声の主がいる方を見てしまう。
と、同時に内側から光線が放たれて五人を囲むアルカ・ノイズの群れの一部を消滅させた。
そこにいたのは四人と、響には見たことがある姿の少女。

白と紫の、どことなく中華風を思わせるインナースーツを纏い、腕には口の部分に鞭のようなものがついた、二の腕から指先までを黒のグローブが、足には物々しくて暗い紫の武装が纏われている。
目元を覆っていたバイザーが上下に分割され、獣の牙を連想させるようなヘッドギアに変わり、後頭部には宝石がついた飾りようなもの……ダイレクトフィードバックシステムがある。


未来「私、これ以上響の背中を見たくない!響の見てるものを一緒に並んで見ていきたいの!みんなのことも守りたい!だから、戦う!守られるだけじゃない、並んで、支えて、一緒に笑いあうために!!」


鉄扇型のアームドギアを持ち、構えた未来は決意の光を宿した瞳でそう言い切った。






──────






後書き





久々にこっち更新しました!
本当に久々にシンフォギア見たおかげか、長く時間かけて半分までしか書けなかったのがなんとかこの話を書き切りました…。
実は未来の再びの装者化シーンは書きたかった話の一つで、シンフォギア編を始めたきっかけです。
まだ書きたいシーンあるんだよな…それではまた次回にて!



補足:
小説カキコ限定の追記

この話からタイトルも本文内にも記載することにしました。
自分で読み返していてタイトル分かりづらいなとなったので。
以上、補足でした。