二次創作小説(新・総合)

第14話 休日って、ほとんどやる事ないよね であります ( No.17 )
日時: 2018/09/09 18:14
名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)

ある晴れた日。万事屋には、ケロロと銀時がおり、ソファの上で寝転がっていた。
「………………暇であります………。」
「………………そうだなぁ……………。」
いつもなら、この時間帯には新八がもう来ているのだが、今日は新八にとって特別な日。あの大人気アイドル・お通ちゃんこと、寺門通のライブがあるのだ。新八は「寺門通親衛隊」隊長として務めており、その時だけは、人格が変わり、かなりの熱血漢となるのだ。
そして神楽は、冬樹や夏美たちにかぶき町を案内するという理由で、定春と冬樹をつれて外出していた。
その為今は、どうしようもないダメ主人公2人と寝ているトキキしかいないのだ。
「ほんとに暇で暇で………。どうにかなっちまいそうだよ……。」
「まだトキキが寝ているだけいいでありますよ。」
「そーだなー。また大騒ぎでもされたら、面倒だからな。ていうか、あいつどんだけ寝てんの?」
実は、トキキが寝てからもう丸2日は経っている。普通に考えたら有り得ないことだが、トキキの力の方が有り得ないので、今まで別に気にもしていなかった。
「ま、寝る子はよく育つっつーから別にいーや。」
「そーでありますな。」
適当に話を流した2人は、テレビならこの暇を潰してくれると思ったのか、テレビを付けた。しかし、生憎ながら、今の時刻は午前9時。その上、今日は平日の為まだニュース番組しかやっていなかった。
「はぁ〜……。ニュースしかやってないであります。」
「ったく……。何でこうも平日はやる事ないのかねぇ……。」
「銀時殿。仕事すればいいんでありますよ……。」
「仕事っつったって……、依頼もないのにどうしろっていうんだよ……。」
「だったら我輩が依頼するであります……。ガンプラ買ってきてー。」
「てめぇ調子に乗んじゃねぇぞクソ緑……。それただのおねだりじゃねぇか……。だったら俺が依頼する……。ジャンプとイチゴ牛乳買ってこーい。」
「万事屋が依頼してきてどーするんであります……。バカなんでありますかぁ……?」
「バカって言った方がバカなんでぇす……。お母さんから教わらなかったのか〜?」
「今さらそんな子供じみたこと、誰が真に受けるんであります……。」
気の抜けた声で口論を続ける2人は、段々馬鹿らしくなってきたのか、ため息をついて寝ることにした。そうしようとした瞬間、呼び鈴がなった。
「あのーー。すいませーーん。」
外から声が聞こえてきたが、2人は少したりとも反応しなかった。どうやらやる事がなさすぎて、動く気力すらないのだろう。しかし、ある一言でその気力が復活した。
「依頼……お願いできま」
「「ようこそ『万事屋銀ちゃん』へぇぇぇぇぇ!!!」」
ケロロと銀時が戸を突き破って出て来たものだから、依頼人であろう男性は、声にもならない悲鳴を上げた。
「あ、ずいまぜん……。何せやるごどがながっだものなんで……。」
「い……いえ……。」
依頼人の男性は怯えたような声でそう言った。
「さあさあさあ!早く中へ!」
そう言われ、男性は中へと入っていった。

「それで、依頼というのは?」
リビングのソファに座っていた男性は、懐から封筒を出してきた。その中には、一万円札が何枚も入っていた。
「報酬の方は先に渡しておきます……。今日、こちらに来たのは他でもありません。私の弟の無実を証明してほしいのです。」
男性は、深々と頭を下げてそう言った。
「つかぬことをお伺いしますが……、弟殿は何の罪を着せられたのでありますか?」
「弟は、真選組の隊士として働いていました。しかし……、ついこの間、久坂一派のスパイだという疑いをかけられ、逮捕されてしまったのです……。」
「久坂一派って……何であります?」
知らないんかい、と銀時が小声でツッコんだ。
「久坂一派ってのは、今巷で話題になってる過激派攘夷浪士軍団。さっきのニュースでもやってただろ?天人大使館連続爆破事件、天人無差別殺人事件など、随分大それたことしてる奴らだよ。」
「攘夷浪士って、ヅラ殿も確かそうでは?」
「久坂に比べたらヅラなんてまだ生ぬるいもんだよ。その首領でもあるさかげんすいは、血を見ると、興奮するっていう典型的なサイコパスだっていう噂らしいぜ。」
「そ、そんな危険な奴ら、野放しにしておく訳にはいかないでありますよ!」
「だけど、さすがの真選組も、久坂には手を焼いてるみたいだぜ。何せ、居場所が全くもって分からねぇんだからな。」
「そうなんです。それで、真選組は、隊士の中に内通者がいると考え始めたのです。」
「そして、お宅の弟さんが内通者だと疑われて、逮捕されたと……。」
「酷な話であります……。」
すると、男性は立ち上がり、銀時の前で土下座をした。
「お願いします!何としても、弟の無実を証明して下さい!弟は昔から、正義感が強く、人が嫌がるようなことが大嫌いなのです!そんな奴が……、こんな事する訳がないんです!だから……お願いします!お願いします!」
男性は今にも泣きそうな声で、何度もそう言った。
「か、顔を上げるであります!そんな土下座なんて……!」
「…………こいつは……、久々にマジの依頼だな。」
すると、個々の用事が終わったのか、新八、神楽、冬樹が帰って来た。
「ただ〜いま〜。あれ?銀ちゃんどうしたネ?」
「おいお前ら。支度しろ。仕事だ。」
いきなり仕事だと言われたので、何のことなのか、3人にはよく分からなかった。
「ちょっ、ちょっと銀さん!いきなり仕事って言ったって……!一体何のですか?」
銀時は新八達に訳を話した。今までロクな仕事しか来なかったからなのか、新八と神楽は驚きを隠せなかった。
「マ……マジアルか銀ちゃん……!」
「かれこれこのシリーズが始まって、14話目にしてようやく……!」
「久々にシリアス展開になりそうだから、オラワクワクすっぞぉ!」
「シリアスになるのがワクワクするんですか…?」
冬樹の問い掛けに銀時は答えた。
「今までコメディとして成り立ってきた『銀魂』にとって、シリアス回はごく稀なこと。これは久々に銀さんも、カッチョいい所を見せねぇと。」
銀時は着崩れた衣服を整え、机の上に置いてあった木刀を腰に収めた。
「おい緑。お前のお仲間もできるだけ連れてこい。人手が多い方が効率いいからな。」
「了解であります!」
「さぁ〜〜て!行くとしますかぁ!あ、そうだ。あんたのお名前は?」
銀時は依頼人の男性の名前を尋ねた。
「入江です!いりじゅうです!弟の名はいりひゃくぞうと言います!」
「そうか。依頼はしっかり承ったぜ入江さん。後は俺達に任せときな。よし。お前ら行くぞ!」

いやぁ〜、このシリアスな感じ!私も結構好きですよぉ〜!
という訳で、今回からシリーズ初の大長篇「真選組の赤い悪魔篇」がスタートします!
今後もよろしくお願いします!

「真選組の赤い悪魔篇」オリキャラ紹介 ( No.18 )
日時: 2018/09/09 18:25
名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)

いりじゅう
今回の依頼人。逮捕された弟・百三の無実を晴らしてほしく、『万事屋銀ちゃん』へと依頼した。
名前のモデルは、「松門四天王」の一人・いりいち

いりひゃくぞう
依頼人・十二の弟。真選組の隊士として働いていたが、内通者と疑われ、逮捕された。
名前のモデルは、十二と同じ、入江九一。

さかげんすい
過激派攘夷浪士軍団・久坂一派の首領。血を見ると興奮するというサイコパス。
名前のモデルは、入江九一と同じ「松門四天王」の一人・さかげんずい

第15話 根拠無しで物事を決め付けるな であります ( No.19 )
日時: 2018/09/17 17:08
名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)

さて、こちらは真選組屯所前。
そこに、スーツを着た男と天人がいるのですが………、どう見ても軍曹と銀時さんですよね?

「ちょっと銀時殿。何で我輩達スーツ姿なんでありますか?」
「銀時?それは誰ですか?私は入江百三殿の弁護人、坂田堂銀一ですよ?」
銀時、いや坂田堂銀一はギザギザの銀髪を直しながらそう言った。
「正直な話、こうでもしねぇと話なんてさせてくれねぇんだよ。ここは頭の固い奴らしかいねぇから。」
「いやだからと言って、バレたらバレたで色々マズいでありますよ!」
「そん時はそん時だ。」
「『そん時はそん時だ』って、もうちょっと段取りというものをでありますなぁ!」
「さっきからごちゃごちゃうるせぇぞ。ここに何の用だ?嫌がらせだったら、公務執行妨害で現行犯逮捕だぞ。」
ケロロと銀時の口論が癪に触ったのか、屯所から真選組副長・土方が眉間にシワを寄せて出てきた。
「い、いやぁ〜。少々仕事のトラブルで揉め事が…。あ、そうそう。私が入江氏の弁護人である、坂田堂銀一です。よろしくお願いいたします。早速なんですが、入江氏との面会をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
銀時は、いつもの気の抜けた声を少し高くし、入江との面会を要求した。しかし、土方は相変わらず眉間にシワを寄せたままだった。
「………どっかで見たことある顔と銀髪だな。それに、その蛙みたいな天人……。」
「蛙みたいなじゃないであります!ケロロ軍曹であります!」
「ケロロ軍曹………。何か軍人みたいな名前だな。」
ケロロの発言により、土方はさらに不審に思った。これはマズいと思った銀時は、ケロロを連れて、少し離れた場所へと走っていった。
「バカヤロー!何が『ケロロ軍曹であります!』だ!ますます怪しまれてんだろーがぁ!」
「いやだってぇ……!我輩一応軍人だし……!」
「何とか誤魔化さねぇと……!」
銀時達は、再び元の場所へと戻ってくると、ケロロを片手に持ち、こう言った。
「いやぁ〜。実は彼、僕のアシスタントでして、親が軍人だったもんで、こういう名前なんですよぉ。いくら軍人だからって、流石にねぇ!ケロロくぅん?」
「そ、そうなんでありますよぉアハハ!小さい頃随分からかわれたでありますなぁ。」
若干苦し紛れな言い分だが、土方は……。
「………フゥー。そうか。入りな。」
納得したのか、土方はタバコの煙を吐くと、ケロロと銀時を屯所の中に入れ、面会室へと連れていった。
「しばらく待ってな。」
そう言い、土方は面会室から出ていった。
「……何とか誤魔化せたでありますなぁ。」
「ったく……。変な汗かいたぜ……。」
しばらくすると、アクリル板の向こう側から、1人の若い男性が2人の隊士に連れてこられた。おそらく、あれが入江百三なのだろう。
「割とイケメンだなぁ。」
「いやそこでありますか?」
百三は椅子に腰かけた。その顔は、すごく浮かない顔であり、下を向いていた。
「えー、私があなたの弁護人である、坂田堂銀一です。よろしくお願いいたします。早速なんですが、入江さん。あなたが逮捕された日のことを詳しくお聞かせ願えませんか?」
銀時が尋ねたが、百三は相変わらず顔を下に向けたままだった。
「百三殿、嫌だったら無理せず答えなくていいんでありますよ!」
「……いえ……。全て……お話します……。」
百三は、か細い声で話し始めた。
「僕が逮捕された日の前日の夜、偶然久坂一派の攘夷浪士を見つけたんです…。これはチャンスだと思い、後をつけてみたんです……。そしたら予想通り、久坂一派がそこにいました……。首領である久坂玄帥もいました……。」
「久坂達は、そこで何をしていたのですか?」
「……ある計画の話し合いをしていたのです………。しかし、僕はそれに夢中になりすぎて、背後から仲間が来ているのに気付かず、そのままスタンガンで気絶させられました……。」

どこぞの名探偵のような展開ですが、まあその部分はいいとして……。

「しかし、何故百三殿は逮捕されてしまったのでありますか?」
「……僕の携帯に、久坂一派の連絡先や、通話もしていないのに着信履歴があって……。それが証拠となり、結果、今の状態になっているのです……。」
「……銀時殿。これは……。」
「ああ。おおかた、気絶している間にあいつの携帯に連絡先を登録し、こいつを『内通者』とさせたんだよ。いわゆる冤罪。ただ……。」
「ただ?」
「その証拠がない限り、どうすることもできねぇ。どんなにその人が悪くなくても、証拠がねぇ限りその結果を覆すことはできねぇんだよ。酷ぇ話だろ?」
「……確かにそうであります……。」
銀時の言っていることは、何一つ間違っていない。だが、これが現実であると思うと、ケロロは辛く思えてきた。
「ですが、まだ希望はあります。顔を上げて下さい。」
「坂田堂さん……。」
「僕達が必ず、あなたの無実を証明してあげ」
銀時が言い終わる前に、大爆発がケロロと銀時を襲ってきた。どういう訳か、アクリル板の向こう側にいた百三は助かったが。
何が起きたのか分からず、ただアフロ状態のまま倒れているケロロと銀時に、2人の男が近付いてきた。
「おやおや。一体全体どうしたんですかぁ?坂田堂銀一さん。いや、坂田銀時くぅん!!?」
「旦那ぁ。何やってんですかぃ?」
土方が鬼のような形相で、沖田がバズーカを持ちながらこちらを見ていた。
「な、何をするんですか!?警察が一般市民にこんなことして、許されると思ってるんですか!?」
「不法侵入した挙げ句、職業偽装してる奴にそんな事言う資格があんのかぁ!?」
完全にご立腹の土方は、刀を抜き取り、銀時の方へと刃を向けた。
「だから言ったんでありますよぉ!どうするんであります!?」
「……チッ。せっかくいい話ムードだったのに、お前らのせいで台無しじゃねぇか。」
「(まさかの逆ギレでありますか!?)」
全然反省の色を見せない銀時に、ケロロは驚いた。
すると、土方の後ろに、困った顔をしている男性がこちらを覗き込んでいた。
「本物の弁護人はこの人だよ。何か怪しいと思ったら、やっぱりてめぇか。総悟。もう一発くらわせてやれ。」
「へい。」
土方の指示通り、沖田はバズーカを再び構えた。しかし、バズーカは銀時達ではなく、土方の方へと向いていた。
「……おい。何してんだてめぇ?」
「何って、指示通りもう一発くらわせるんでさぁ。土方さんに。」
「誰がそんな指示出した!?勝手に改ざんしてんじゃねぇぇぇ!」
「総太郎くぅん。この人うるさいからさ、発射しちゃってよぉ。」
「総悟です。んじゃ、遠慮なく。」
「待て待てぇぇぇぇぇ!!」
沖田が引き金を引こうとした、その時。
「そこまでだ。」
面会室の外から、声が聞こえてきた。
「沖田。貴様は勤務中だという自覚を持て。」
「……ケッ。めんどくせぇ奴が帰って来やがった…。」
「それと土方。すぐに感情的になるなと何度言えば分かる。」
「……何だ。帰って来てたのか。」
やけに低い声。その声に、まさかとは思ったが、ケロロは聞き覚えがあった。
「何事かと思って来てみれば……。懐かしい顔があるな……。」
その声の主は、面会室へと入ってきた。その姿は、ケロロと全く同じフォルムの天人だった。ただ一つ、違う所を上げるならば、体の色が赤色だということだった。
「こ……こんな所にいたんでありますか……!ギロロ伍長!!」
「……久しいな。ケロロ。」
そこには、真選組の隊服を着た、ギロロ伍長がいた。

第16話 目付きの悪さはしょうがないこと であります ( No.20 )
日時: 2018/10/07 18:46
名前: 若大将 (ID: Hh73DxLo)

「久しいな。ケロロ。」
ケロロは戸惑いを隠せなかった。今まで行方が分からなかったギロロが突然、真選組の隊服を着て現れたのだから。
「えっ?この赤いの、お前の仲間なの?」
「……そうであります!我が小隊の機動兵、ギロロ伍長であります!いやぁ〜ギロロ君!心配したんでありますよ!無事で良かったであります!」
ケロロはギロロの肩を組み、ギロロの無事を喜んだ。しかし、ギロロはケロロの発言に対して、全く反応せず、顔を反らしていた。
「………あり?ギロロくーん?」
「……………………………。」
「おいおいおい。何か怒ってるみたいだよぉ?」
相変わらず無反応のままだった。
「あ、あれでありますよ銀時殿!実はこいつ、照れ屋さんだから、あんまり初対面の人と接するのが苦手なんでありますよ!アハハハハ!」
「その割には随分顔険しいんだけど。明らかに嫌がってる顔だよね?怒ってる顔だよね?眉間にシワ寄せてるもん!」
銀時の言う通り、ギロロは眉間にシワを寄せていた。誰がどう見ても、不快に思っている顔だった。
「………ギロロ、どうしたんでありますか?」
さすがに不思議に思ったケロロは、ギロロに問い掛けた。しかし、先ほどと同様、無反応のままだった。
「ちょっとギロロ!聞いてるんでありますか!?」
さすがにいつまでも無反応のギロロに痺れを切らしたケロロは、ギロロの胸ぐらを掴もうとした。しかし、胸ぐらを掴もうとする前に、ケロロの手をギロロは払いのけた。
「………へ?」
ケロロは顔をキョトンとさせた。すると、ギロロはギロっとした目をケロロへと向けた。そして…。
「……ケロロ。単刀直入に言おう。……………俺はケロロ小隊を離脱する。」
突然の発言にケロロは戸惑った。

ケロロ小隊を………離脱……?

「…………銀時殿、V字殿、サディスト殿……!」
「いやV字殿って何?土方だ。土方十四郎だ。」
「誰がサディスト殿でい。俺は沖田総悟でさぁ。」
「いやお前は何にも間違ってねぇよクソサド殿。」
「そして、ギロロ………!我輩……、こんな悪質なドッキリは好きではないんでありますよ!!」
…………………え?
ケロロの発言に、辺りはしんと静まりかえった。
「こんなどこにでもありそうなドッキリ、数々の番組に出てきた我輩にとってはすぐに分かるんでありますよ!そうなると、どこかに隠しカメラでもあるんでありましょ?どこかに『ドッキリ大成功!』とかのパネルでも隠してるんでありましょ?全く、ドッキリにしては随分ベタでありますなぁ!もうちょっとひねりというものをでありま」
「緑。」
銀時がケロロのロングトークを遮断した。いくら事実を受け入れたくないとはいえ、ありもしないことを言い続けるケロロに対して、銀時は事実を受け入れさせようとした。が………。
「お前、これがドッキリだとしてもだな、その発言はマズいだろ。例えドッキリだって分かっても、そこは黙ってなきゃ。」
「そうでさぁ。番組がぶち壊しになっちまうだろ。これ、テレビ業界での常識でさぁ。」

いやツッコむところそこなんですか!?今までのシリアス展開はどこにいったんですか!?

「ちょっと待てぇぇ!何でいきなりテレビの話になってんの!?横見てみろ!百三凄い気まずそうな顔してるんだけど!」
「外野は黙ってろやクソ方。」
「誰がクソ方だゴラァ!少なくとも、魂までクソなお前に言う資格なんてねぇんだよ!」

あーちょっとちょっと!土方さんまで!皆さん落ち着いてくださいよ!一回冷静になって下さい!




「……ギロロ……、何ででありますか!?何でいきなり……!」
ようやく、シリアス展開に戻れたので、改めてギロロに問い掛けた。
「……俺は……、今までの自分を捨てた。」
すると、土方がタバコの煙を吐き出し、口を動かした。
「6日前、俺の部屋から爆発音が聞こえてな。何事かと思って見てみたら、真っ黒になってアフロ状態になっていたこいつがいてな。どうやら、総悟が仕掛けた爆弾が起動して、その爆発に巻き込まれたみたいでな。」
「元は土方さんを極楽浄土へと導くためだったんですけどねぇ。」
「誰を極楽浄土へと導くだって?」
土方は沖田を睨み付け、刀を鞘から抜き取り、沖田の方へと向けた。
「ただの独り言でさぁ。」
棒読みで沖田はそう答えた。
「ちょっと待つでありますギロロ!『今までの自分を捨てた』って……どういうことでありますか?」
「………ケロロ。今まで俺達が地球ペコポン侵略できなかった理由は何だと思う?」
「そ……それは……。」
「おそらく、ここが『銀魂』の世界なんだろう。貴様のせいで俺達まで連れてこられたな。今までの貴様の身勝手な行動には、痺れを切らしていた。こんな奴が自分の隊長だと思うと、情けなく思えてきた。そして何より………、1人の女ペコポン人にうつつを抜かしていた、不甲斐ない自分に嫌気がさしてきた……。」
ギロロは右手を強く握り締めた。そして、ケロロは少し顔を下に向けていた。
ギロロの言っていることは、何も間違っていない。ほとんどの原因は、隊長である自分。それ故に、幾度も作戦に失敗してきた。そんな風に思われて当然だ。
「だから……ケロロ小隊を抜けるんでありますか?」
「……まあ、そういうことだ。だから、お前らはもう元の世界に帰っていい。」
「えっ!?じ、じゃあギロロはどうするんでありますか!?」
「………さっきも言ったが……、俺はもう今までの自分を捨てた。つまり、軍人であった自分を捨てたことになる。今度からは…………、真選組参謀・ギロロ伍長として、この世界の治安を守る。」
「……………………。」
「緑…………お前……。」
ギロロの決意に対し、ケロロは何も言わなかった。
「それと土方。さっき近藤が呼んでいたぞ。」
「ん?そうか。」
そして、ギロロは土方と共に真選組局長・近藤の元へと行くため、面会室を出ていった。
ギロロはケロロの方を振り向くことなく、向かっていった。その背中は、どこか悲しそうな様子にケロロには見えた。

第17話 涙はラストシーンで流せ であります ( No.21 )
日時: 2018/10/08 18:56
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「てな訳で、今日はもう帰って下せぇ。」
「いやね沖田くん。帰るのはいいんだけどさぁ……、何これ?」
真選組屯所の広大な庭に、巨大な大筒が1つ。その中には、ケロロと銀時が入れられていた。
「ちょっとーーー!!何で我輩達大筒に入れられてるんでありますか!?◯すつもりでありますか!?」
「◯す?何言ってんですかぃ。心優しい親切なお巡りさんが、あんたらをお家まで送り届けてやろうとしてるんでさぁ。」
「聞き間違いかなぁ!?魂腐った外道な腐れポリ公が、俺達を地獄に突き落とそうとしてる、って聞こえたんだけどなぁぁ!!?」
「この人ほんとに警察なんでありますか!?」
沖田は笑みを浮かべてこちらを見ていた。しかし、その笑顔に善なる要素は全く無く、目には一切光がなかった。
「んじゃ、そろそろお帰りの時間なんで。」
そう言い、沖田は導火線に火を点けた。
「いやいやいやいや!!ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!」
「ゲロォォォォ!!助け」
言い終わらないうちに、ケロロと銀時は遥か上空へと飛んでいった。そして、空の彼方から、悲痛な叫び声が木霊した。
「ばいばぁい。」
沖田は先程の笑顔で、上空に手を振っていた。



その頃、万事屋銀ちゃんでは……。

「軍曹さん達遅いですぅ。」
中には、新八、神楽、定春、タママ、ドロロ、冬樹、夏美、桃華、モア、小雪、そして何故かクルルもいた。
「あの……あなた誰ですか?」
まだクルルのことを知らない新八が、クルルにそう尋ねた。
「あ?クルル曹長だ。んま、よろしくな。くっくっく〜。」
「(凄い嫌らしい人だな……。ていうか、この人の声……どこかで…。)」
「それにしても、ボケガエルと銀さん、何してるのかしら?ボケガエルが『聞き込みを手伝ってほしい』って言うから手伝ってあげたのに。」
「まあまあ姉ちゃん。すぐに戻ってくるよ。」
冬樹がそう言った直後、勢いよく天井が崩れ落ちた。
「えぇぇぇぇ!!?」
「夏美さん!危険だから下がってください!」
小雪が夏美の前に立ち、短刀を構えた。
「………あれ?これは……!」
「ほんとネ冬樹。……すぐに戻ってきたアル。」
そこには、真っ黒焦げになったケロロと銀時がいた。
「「た………だい…ま……。」」

「ったく……。酷い目に会ったぜ…。」
墜落したその後、新八とモアに手当てをしてもらったケロロと銀時は、全身包帯だらけの状態で横になっていた。
「あの沖田という奴、絶対許さないであります…!あいたた…!」
「おじさま、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫でありますモア殿…。ちょっと痛むだけで…いててて…。」
「おじさまにこんな酷い事するなんて…、そんな人はどんな人だろうが、まとめて吹き飛ばします!」

いや、この星の人全員吹き飛んじゃうんで、それはちょっと……。

「それにしてもあんたら、真選組に行ってまで何してたんですか?」
「決まってんだろ。入江百三に聞き込みに行ったんだよ。その情報をお前らに言う前に……、こいつから言わなきゃいけねぇことがある。」
銀時は親指をケロロの方へと向けた。あまり言いたくなさそうな顔だが、ケロロは今まであった出来事を全て話した。当然、ギロロ伍長のことも……。
「………真でござるか……隊長殿……。」
「嘘よね……ボケガエル……?」
「……全部事実であります。ギロロ伍長は今日をもって、ケロロ小隊を抜け、真選組参謀として、この世界に残るつもりであります……。」
「……………………………。」
しばらく沈黙が続いた。受け入れがたい事実を突き付けられ、何と言えばいいのか分からないのだろう。
先に口を開いたのはドロロだった。
「隊長殿は、それで良かったのでござるか?ギロロ殿がこの世界に残ることに……、異議はないのでござるか……?」
「………………。」
「軍曹……。」
「……これは、ギロロ自身が決めたこと……。我輩に……それを止める権利はないであります……。」
「軍曹さん……。でも……、ギロロ先輩がいなくなるのは……。」
タママは少し目に涙を浮かべた。
「ボケガエル……ほんとにいいの……?」
夏美も目に涙を浮かばせた。
ケロロは小さく頷いた。だが、ケロロの体は小刻みに震えていて、顔から雫が垂れてきた。
「……本当は……我輩だって……!我輩だって……!」
右手を強く握り締めて、ケロロは涙を拭った。
「ケロロさん……。」
「……何だかんだ言って、結局一番辛いのはてめぇだったんだな……。」
「おじさま………。」
すると、銀時はふと窓を見た。どうしたのかと思い、冬樹が銀時の方へと近付くと、突然、
「てめぇら!!伏せろ!!」
と銀時が叫んだ。状況が分からないまま、言われるがに伏せると、窓から何かが勢いよく飛んできた。
「これって………火炎瓶!!?」
飛んできたのは、火炎瓶だった。
「早く水持ってこい!!」
「そういうと思って、もう持ってきたネ!」
「おお!でかしたかぐ……ら?」
そこには、確かに神楽がいた。しかし、神楽はお腹がパンパンに膨らんでいるタママを手に掴み、まるでバズーカを放つような体勢をとっていた。
「行くアルよ、みんな!!」
「ちょっと待って神楽さん!タマちゃんどうしたんですか!?」
「うぷっ………苦…しい……。助け……て…。」
タママは、いかにも何か吐き出しそうな顔で助けを求めた。
「……まさか……神楽殿……!」
「行くアル!!ハイドロポンプならぬ、タマドロポンプネーーーー!!」
そう言い、神楽は思い切りタママの腹を殴ると、タママの口から大量の水が出てきた。それは、とんでもない勢いで皆の方へと向かうと同時に、火炎瓶の方にも向かっていった。
バッシャーンという音が室内に響き渡った。通行人は、万事屋の窓から少量の水が外に出てきたのを不思議に思った。
「フゥーー!鎮火完了!!」
そう言い、神楽は手に持っていたタママを床に放り投げた。
「神楽ちゃん。僕達の怒りの炎も鎮火してくれないかなぁ?」
水浸しな新八達が怒りを露に神楽を睨み付けた。
「まあまあ、火は消せたから、結果オーライアル!」
「にしても……、誰が火炎瓶を…?」
「銀さん。さっきやたら窓を気にしてましたけど、どうしたんですか?」
冬樹が銀時に尋ねた。
「ん?ああ、何か人の気配を感じてな。覗いてみようと思った瞬間、これが飛んできてな。」
「そういえば私、ちらっと見えたんですけど、走り去っていく2人の男を見ました!」
小雪の発言に、銀時は何か思い付いたかのように、目をぱっちりさせた。
「その2人の男の服って………何色だった?」
「えっ……確か、赤でした!」
「…………マズいな……。」
銀時が少し気まずそうな顔をした。
「えっ?何がマズいんでありますか?」
「……どうやら、俺達はもう嗅ぎ付けられちまったみたいだな。」
「嗅ぎ付けられたって……まさか!」
「ああ。……久坂一派にな。」

第18話 あんこかクリームかカレーか であります ( No.22 )
日時: 2018/11/02 08:22
名前: 若大将 (ID: jQF4W0MP)

これでいい。これでいいんだ。
そう心の中で繰り返し言い聞かせた。
ケロロと銀時が屯所を去ったその後、ギロロは大量のアンパンが入ったビニール袋を持って、あるアパートへと向かっていた。
「……しかし、何故こんな大量のアンパンが必要なんだ……?土方が言うには、『最低でも100個は持っていけ』と…。まあいい。」
そうこうしているうちに、目的のアパートへと着いた。あらかじめ土方に言われた部屋のインターホンを押すと、中から、いかにもモブな感じを引き立ててる男が出てきた。
「お、もしかして、あんたが副長が言ってた新しい参謀さんですか?」
「ああ……。そして、お前が真選組監察である、山崎という奴か?」
「そう。俺が監察の山崎。山崎退です。よろしくお願いします、ギロロ伍長さん。」
「こちらもよろしくな。」
そう言い、ギロロは部屋へと入った。
「これ……ほんのささやかな気持ちなんだが…。」
ギロロは大量のアンパンが入ったビニール袋を突き出した。すると、山崎は急に動きを止めた。
「……………………。」
「……お、おい山崎?」
ギロロが山崎の肩を叩こうとすると、突然、山崎はビニール袋の中から、1つのアンパンを取り出し、袋を開けた。そして、アンパンを右手に持ち、それをギロロの顔面へと投げ付けた。
「!!!??」
「キエェェェェェェェェ!!!アンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアソパソアソパソアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパンアンパン!!!!!」
豹変した山崎は、目を充血させ、アンパンを投げ続けてきた。
「おい!!どうしたんだ山崎!正気に戻れ!」
ギロロの声など届くはずもなく、山崎はアンパンを投げ続けた。そしてそれをギロロはかわし続けた。
山崎が投げたあるアンパンが押し入れの扉をぶち抜いた。その中には、衝撃的な物が入っていた。
「な、何だこれは!!?」
その中には、おびただしい数のアンパンの袋、さらに、食べかけのアンパンが敷き詰められていた。そこから出てきた腐敗したあんこの臭いが、ギロロの鼻を襲った。
「何だこれ…!妙にあんこ臭いと思ったら……こういうことだったのか……!」
「見たな………。見たな……!」
気付いたときにはもう遅かった。振り向くと、山崎が両手にアンパンを持ち、立っていた。
「!!!!」
「キエェェェェェェェェ!!!!!スプァァァァキングゥゥゥゥ!!!!!」
その瞬間、部屋から何かがスパーキングしたような音が響き渡った。



数時間後…………。

「もぐもぐ……。どうだ……。1ヶ月振りの米は?」
「……………うまい以外何があるんですか…。」
ギロロは出前を取り、山崎と共にカツ丼を食べていた。
「それにしても、何故アンパンしか食べてなかったのだ?他にもパンはいくらでもあるだろ。クリームパンやカレーパンやら…。」
「アンパンと牛乳。これが俺の張り込みの作法ですよ。逆に、そんなもの食べたら、アンパン◯ンにボコボコにされますよ。ばいきんだけじゃなく、他のパンたちも敵視してますからね。」

いやそんなことありませんよ!?ていうか、そんな闇深い作品でしたっけあれ!?

「それより、どうだ?何か掴めたか?」
「1ヶ月も張り込みしてりゃ、そりゃ何かしら掴みますよ。間違いない。あの廃ビルが久坂一派のアジトですよ。」
山崎は、少し奥にあるビルを指差した。長いこと使われていない廃ビルのようだ。そして、今度はある1本の道を指差した。
「あの廃ビルに行くには、この一本道を通る以外手段がない。そして、その道を通っているのは、久坂一派の連中ばかり。この監察レポートを見てください。それに、この1ヶ月間俺が見てきた全ての情報が書いてあります。」
そう言い、山崎はギロロにあるレポートを手渡した。
「なになに……。『監察生活13日目、最近たまさんがこの辺りを通るようになってきた。今まで退屈なことこの上なかった監察がまた楽しくなってきた』……。
『監察生活17日目、久坂一派の攘夷浪士がたまさんに気安く話し掛けてきた。てめぇなんかがたまさんに喋りかけて来ていいと思うんじゃねぇぞ!』…………。
『監察生活25日目、ああたまさん。どうして貴方はたまさんなんだ?どうして俺の玉は◯◯◯◯(ピー)なんだ?ああたまさん。ああたまさん。』………。
『監察生活29日目、たまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまきんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさんたまさん』って貴様は何を見てきたんだぁーーーー!!!!」
ギロロは山崎に飛び蹴りをくらわし、銃を乱射した。
「よく見たらこれ、『久坂一派監察レポート』じゃなくて『たまさん観察レポート』じゃないか!この1ヶ月間なに見てきたんだ!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!久坂一派のやつならちゃんとあります!渡しますからぁぁ!」
怯えながらも、山崎はちゃんと久坂一派の情報が記されている『久坂一派監察レポート』をギロロに手渡した。確かにちゃんと久坂一派の情報が書いてある。
「………若干あんこがこびり付いてるが……、まあいい。」
あんこの臭いを気にしつつも、ギロロはそれを読んだ。
「………お前の情報が確かなら、この廃ビルでほぼ間違いないな。」
「ん?あれは………!」
ふと山崎は、何かを見たのか窓の方へと向かった。
「どうした?まさか、久坂一派に動きが…!?」
「あ、いえ。たまさんがいたもんでぇぇぇぇぇぇ!すいませんすいません!!!」
「貴様……まだ引きずってたのか……。」
ギロロはギロッとした目をさらに鋭く尖らせ、山崎にバズーカを向けた。
「勤務中に女にうつつを抜かすとは……。真選組隊士として恥を知れ。」
完全にご立腹なギロロは、バズーカの引き金を引いた。爆発音とあるモブの悲鳴が響いた。
「………ごほぁ……。」
真っ黒焦げになった山崎は、部屋の壁にめり込んでいた。
「………まったく……。」
ギロロは大きくため息をついた。
「えぇ!?たまさんって、からくりなんですか!?」
「はい、そうです。」
「とてもそんな風には見えません。てゆーか、吃驚仰天?」
「それは私の台詞ですよ。モア様も人間に見えて、実は天人だなんて。」
この声……もしかして……。
ギロロはそう思い、窓から外を見た。そこには、たまと夏美とモアがいた。
「(夏美……!それにモアまで……!)」
「ところで、さっきの爆発は……?」
「ああ。気にしなくてもいいですよ。大方、真選組が攘夷浪士でも発見したんでしょう。」
「真選組……ですか……。」
夏美は少し浮かない顔をした。モアも同様に。
「……どうされたのですか?」
「……ギロロさん、本当に戻って来ないつもりなんでしょうか……。」
「あいつ……。もう元の世界に帰っていい、ってふざけたこと言ってんじゃないわよ……。あんたのこと置いていけるわけないでしょ…。早く戻ってきて…ギロロ…。」
夏美の涙を見て、ギロロは申し訳なさそうな顔をした。
「………夏美……。……すまない……。例えどんなことを言われようと…、俺は考えを変えるつもりはない。」
「何ですか?あんたも女にうつつを抜かしてんですか?人のこと言えませんよ?」
アフロの山崎が壁から抜け出してきた。
「貴様と一緒にするな。というか、お前がやってることはただのストーカーだ。」
「うっ……。」
気まずそうな顔をすると、山崎の携帯電話が鳴った。
「あ、はい。山崎です。副長どうされましたか?」
『山崎か?本来なら、今日で張り込みは終了なんだが、もう3日だけだ。もう3日間だけお願いできるか?』
「いえ、別にいいですが、何かあったんですか?」
『新情報だ。久坂の奴、頻繁に江戸中の機械からくり技師たちの所に立ち寄ってるらしい。おそらく、機械からくりを使って何かでけぇことでもするんだろう。そこでだ。お前の任務を変える。久坂を尾行しろ。この3日間で、久坂を尾行し、何を企んでるのか調査してほしい。』
「はい。分かりました!」
『それと、そこにギロロがいるな?あいつにも同行してもらう。』
「ギロロさんもですか?…分かりました!必ず情報を掴んでみせます!」
『ああ。頼んだぞ。』
電話を切り、ギロロにも同行することを伝えた。
「そうか。お互い頑張ろう。」
「はい。って……、一ついいですか?」
「どうした?」
「……………この部屋、どうします?」
「あ。」
辺りを見渡した。先程のせいで、部屋はボロボロになっていた。
そして、あの爆発のせいで、押し入れの中の食べかけのアンパンがそこら中に散らばっていた。
………どうしよう?
ギロロと山崎は同時にそう思った。

第19話 人は利点もありゃ、欠点もある であります ( No.23 )
日時: 2018/11/09 22:58
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

さて……、ケロロ軍曹達が『銀魂』の世界にやって来て、1週間が経ちました。

「新八さん。なかなか情報掴めませんね。」
「そうですねぇ…。」
今日も、各自分かれて聞き込みに行っている万事屋一行。
冬樹と新八、神楽と夏美と桃華とモアと小雪、タママとドロロ、ケロロと銀時にそれぞれ分かれているのだが、有力な情報は全然掴めないまま。このままでは、百三の無実は証明されない。

一方、ダメ主人公サイドでは、ある男に会いに行っていた。
「え?桂さんの居場所?」
公園のベンチで昼寝をしていた623に、桂の場所を聞きに来たのだ。
「そーそー。ヅラに聞きてぇことがあってな。ていうか、何話振りすぎて、すっかりお前の存在忘れてたわ。」
「そいつは酷いなー。じゃあ教えてあーげなーい。」
「子供みてぇなこと言うなよ。あいつの居場所知ってる知ってんのは、一緒に行動してたお前しか知らねぇんだからよぉ。」
「うーん……。桂さんから口止めされてるしなぁ…。それと、確か銀時さんって、昔からの馴染みなんだっけ?『いい加減で、チャランポランで、天パで、足臭くて、やっぱり足臭いし、挙げ句の果てに足臭いし』って桂さんからの情報なんだけど。」
「それ情報じゃないよね?ただの人権侵害だよね?ていうか俺=足臭いってイメージ定着し過ぎてない?」
「いや……正直なこと言うと……ちょっと……。」
「わ、我輩も……。」
623とケロロはあからさまに嫌そうな顔をして、鼻をつまんだ。
「ぶっ殺されてぇのかてめぇら!んな訳ねぇだろ!何で靴越しからも臭いが伝わってくるんだよ!」
流石にそのような態度を取られて、銀時はキレてツッコんだ。
「いやだって銀時殿……、あれを見るであります……。」
ケロロが指差す方向には、2羽のカラスが地面に横たわっていて、この公園を住みかにしていた野良犬達が、息を荒くして痙攣していた。
「あれも俺のせいってか!?だったらお前らとっくに死んでんだろーがぁ!!」
「ゲロォ……!息苦しくなってきたであります…!」
「ねぇお前ら、わざとなの?それともマジで臭いの?俺結構傷ついてんだけど。」
ただの芝居なのか、それとも本当に苦しんでるのか分からなくなってきた。
「ねえねえ。何か臭くない?」
「ほんとー。ねぇ、あのおっさんから臭いしてくんだけどー。」
「うわ、ほんとー。マジ最悪なんですけどぉ〜。」
何か後ろからコソコソ聞こえると思い振り返ると、2人のギャルが銀時の方を見て悪口を言っていた。よく見ると、公園にいたほとんどの人が銀時の方を向いて何かコソコソ言っていた。
え……………。マジで……。マジなの……………。
銀時の顔がだんだん白くなっていった。
「……ちょっと、足切断してくる。」
そう言い、銀時は公園から出ていこうとした。
「……そうかぁ。皆平然を装って、俺の足の臭いに耐えてたのかぁ…。そうかそうか。だったら、これ以上被害が拡大する前に、その元凶を絶たなきゃあな…。」
「その前に銀時殿…。靴の裏を見るであります。」
言われた通り、靴の裏を見ると、そこに赤い字で何か書いてあった。
「………『ドッキリ大成功!!!!!』…!!?」
その瞬間、周りからドッと笑い声がした。
「ゲーロゲロゲロ!!見事に大成功でありますよ623殿!」
「ご協力してくれた皆さん、ありがとうございます!」
まだ状況が掴めず、銀時は棒立ち状態できょとんとしていた。
「いやぁ〜!この『真選組の赤い悪魔篇』、シリアス回でありますけど、ずっとシリアスってのもねぇ〜!そこで!我輩が提案した説、『マジの反応されたら誰でもそう受け入れてしまう説』を623殿と協力し検証してみよう、という発想に至ったわけであります!銀時殿、なかなかいいリアクションでありましたよ!」
「……ああ。そうか。ドッキリか。…そうかそうか。いやぁ〜ケロロ君。いましがたはっきりと分かったよ。」
「そうそう!そこまで足は臭くないんでありますよ!」
「よーく分かったよ…。……てめぇがどれほど腹が立つ奴だってことをなぁぁぁぁぁ!!!クソ緑ィィィィィ!!!!」
銀時は木刀を右手に持ち、それでケロロを殴り付けた。
「ゲェェェェェェェェロォォォォォォォォ!!!」



「それで、彼はこんな風になっているのか。」
その後、ケロロと銀時は623に桂のもとに連れていってもらった。ケロロは全身包帯だらけの状態で、銀時の木刀に縄で縛られていた。
「しかしケロロ殿。人の欠点をドッキリに使うとは、いささかどうかと…。」
「人の欠点他人に言いふらしてる奴にそんなこと言えんのか?」
「ちょっ、あんま足近付けないで…。」
「いい加減にしろよ!どいつもこいつも足臭ぇって!」
そう言い、銀時は立ち上がり、桂を殴ろうとした。
「まあまあ、落ち着いてよ銀時さん。」
散々足の臭いのことを馬鹿にされ、少し機嫌が悪い銀時は、舌打ちをして座った。
「それで銀時。俺に用とは何だ?」
銀時はお茶を一口飲み、ようやく本題に入ることができた。
「お前、久坂についてどれ位知ってる?知ってる限りでいいから教えてくれねぇか?」
「久坂……だと?一体何故…?」
「実は、ある依頼人の弟が久坂一派だっていう疑いで逮捕されててよぉ。それで、その依頼人が無実を証明してほしいんだと。その上で、久坂一派について何か知っておきたくて、同じ攘夷浪士であるヅラに聞きに来たわけ。」
すると、桂は少し表情を曇らせた。そして、しばらく黙り込んだ。
エリザベスが『桂さん?どうしたんですか?』と書かれたプラカードを出した。
「……正直、久坂とはあまり関わりたくなかったから、あまり情報はないのだが、これだけは言っておこう。
久坂一派は、天人に対して異常な位の恨みを持った攘夷浪士達の集団で、数々の残虐非道な事件を起こしてきた。そして……、今度も何か企んでいる可能性が高い。」
「マジかよ…。それで、その何かって一体…。」
「具体的には分からぬ。だが、天人を標的とすることには間違いはなかろう。」
それを聞いて、銀時はケロロを縛り上げた木刀を持った。
「ってことは、こいつも標的ってことだな。」
「ゲロォ!?ちょっと銀時殿!何企んでるんでありますか!?」
「後できっちりとドッキリのお礼、させてもらうからなぁ。」
そう言い、銀時は薄ら笑いを浮かべた。
「だから悪かったって言ってるでありましょ!」
「桂さん、大変です!」
突然、部屋から1人の男が入ってきた。おそらく、桂一派の攘夷浪士だろう。
「どうした!?」
「真選組がここを突き止めたみたいです!すぐに逃げましょう!」
「何だと!?銀時、詳しい話は後だ!623殿、エリザベス!逃げるぞ!」
そう言い、桂と623はエリザベスに乗り、エリザベスは窓から飛び降り、逃げて行った。と、同時にすぐそこから爆発音が聞こえてきた。
「おわっ!危ねぇ!」
破壊された襖から、オレンジ色の髪をしたアフロな男性が出て来た。
実はこの男、真選組三番隊隊長で、『アフ狼』と恐れられているさいとうしまる。斉藤は、銀時を見るとカンペを取り出し、『あ、あなたは!』と書き銀時に見せた。
「おー。久し振りだなアフロ君。って言ってる場合じゃねぇぇ!早く俺も逃げねぇと!」
銀時は、ケロロを縛り上げた木刀を持ち、全速力で逃げた。
すると、それ以上の速さで斉藤が迫ってきた。
「!!!」
『まさか貴方が桂一派だったなんて…、粛清するZ!』と書かれたカンペを持ち、斉藤は銀時に切りかかった。
「いやいやいやいや待ってぇぇ!誤解だよ!俺はあのロン毛とは無関係な善良な一般市民です!むしろ、この緑が桂一派でぇす!」
「何擦り付けてるんでありますか!ていうか我輩、ヅラ殿と今日初めて会ったんでありますよ!そんなことよりも後ろ!」
後ろを振り向くと、斉藤に続いて大量の隊士達が追い掛けてきた。
「「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」








「準備は順調ですか?」
「はい。おかげさまで。」
とある廃ビルに、2人の男がいた。
「これでようやく、天人を……!」
「そう。ようやく私たちの夢が達成される……。決行は3日後の日が昇り始めた時。それまでに何としても終わらせて下さい。」
そう言い、赤い着物を着た男、久坂一派の首領である久坂玄帥は、赤黒いちぢれた髪を掻き分けた。

第20話 いざという時に頼れる奴もいる であります ( No.24 )
日時: 2018/11/03 19:20
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

斉藤に誤解だと何とか納得させることができたのに、丸2日かかったケロロと銀時。真選組屯所から出てきた後、ある一軒家に向かっていた。だが、
「何でお前までついてくんだ。ていうかその格好何なんだよ、ヅラ。」
「ヅラじゃない。ヅラ子よ。」
女装した桂が何故かついてきていたのだ。
「案ずるな銀時。ほんの少しの間だ。真選組がこの周辺を去っていくまで、しばらくお前達についていくことにした。」
「すげぇ迷惑なんだけど。こっちは仕事してんだ。てめぇみてぇな暇人に構ってる場合じゃねぇんだよ。」
「そんなこと言わないで下さいよ、あ・な・た?」
「『あ・な・た』って何だ!気持ち悪ぃ!!」
完全に女になりきった桂は、銀時の腕を掴んだ。
「しばらく夫婦のふりをしてくれ。幸い、子供要員もいるし、こうすれば……。」
そう言い、桂はケロロの方を見た。きょとんとした顔でケロロは、『え、我輩?』と自分に指差した。
すかさず、桂はケロロに服とカツラを付け、そしてケロロの緑色の肌を肌色に塗り立てた。
「どうよあなた?これなら絶対バレないわ。」
「ゲロォ……。」

確かに、パッと見は子供ですが…………、近くで見るとまんま軍曹ですよ?

「……そう見えなくはねぇけど……。まあいいわ。」
かれこれしているうちに、目的地へと着いた。銀時がインターホンを押すと、ある1人の男性が出てきた。
「あ、あなた方は…。」
「久し振りであります、十二殿!」
「一体…どうされたのですか?それと……その女性は…?」
やっぱり触れてきたか、と銀時が小声で言った。
「あ、初めまして。私、坂田銀時の妻の坂田ヅラ子です。夫婦で万事屋をやっています。よろしくおね、がぁぼぉ!!!」
言い終わる前に銀時が蹴りを食らわし、桂を路地裏へと連れ出した。
「お前やっぱどっか行け。後々面倒なことになんだろーが。つーか、俺についてくる意味あんのかよ?」
「随分冷たいじゃないのあなた!そんな男だったなんて……!」
「だからぁ!そのいい感じの奥さんキャラやめろぉ!」
これ以上は埒が明かないと、銀時は桂を縄で縛り上げ、たまたま近くにあった廃屋に放り込んだ。
「ちょっと銀時ィィ!」
「しばらくここでじっとしてろ。用が終わる頃には、もう真選組も帰ってんだろ。」
そう言い放ち、銀時は十二の家に入っていった。
「あの……奥様は?」
「奥様じゃない、攘夷浪士です。」
「き、今日はどのようなご用で?」
「……残念ながら、未だに手掛かりが掴めておりません。そこで、貴方の方から、百三さんのここ最近の言動についてお話をお聞かせできれば、と参りました。」
これを聞いておけば、少しは何か手掛かりを掴めると踏んだみたいだ。
「そうですか。なら、お話しします。
百三は昔から、心優しく、正義感に溢れた奴でした。こう言うのも何ですが、百三が弟で誇らしく思ってます。だから、決してあんなことをするような奴ではないんです。でも……。」
「でも、何なんでありますか?」
「……このことを言うのは、あなた方が初めてです。実は…、私達は幼い頃、両親を天人に殺害されました。」
「ゲロ!?さ、殺害!?」
「はい……。動機は理不尽なことこの上ありませんでした……。今でも悔しいです。あんな理由で両親は死んだと思うと、天人共が憎くて仕方ありません…!ですが、それ以上に…、百三はもっと悔しいことでしょう。目の前で両親の最期を見たのですから…。」
十二は歯を食い縛り、大粒の涙を流した。こんな悲惨な過去を聞かされて、前話とは違い、かなりシリアスな空気になっていた。
「ですけど、もうしょうがないんです。今更そう思ってもどうこうなる問題じゃないんで。百三も同じ考えです。結局、天人がいるこの世界を受け入れるしかないんですよ。」
「………………。」
銀時はしばらく黙り込んだ。
「坂田さん、どうされましたか?」
「………いや……、あんたの考え俺のに似てるなー、って思いまして…。」
「どゆことでありますか?」
「……実は、俺攘夷戦争に出てたんだよ。」
「え!?あ、あなたが!?」
「……え?攘夷戦争?我輩、全然話が分からないんでありますけど?」

ここで、分からない軍曹のために説明しましょう!
攘夷戦争とは、20年前、天人襲来によって起こった戦争のことで、天人を排除しようという考えを持つ『攘夷志士』と天人及び幕府軍が戦ったみたいですよ。そしてそれに、銀さんと桂さんも参加していたんです。

「ほーー。ご丁寧な説明、ありがとうございますナレーター殿。」
「しかし……、貴方が元攘夷志士だったなんて…!」
「なぁに。んな大したことじゃねぇよ。ただ、俺もあん時は天人のこと、心底恨んでたよ。大事な人を奪われたからな……。でも、俺もあんたとおんなじ考えだ。今更もうどうにもならねぇ、って思った次第だよ。」
「…やっぱりそうだ。弟から聞いたことがあります。『この辺りに伝説の攘夷浪士がいる。確か、白何とか、って言われてた』と。……あなたがそうなんですよね?白夜叉さん。」
「おいおいおい。随分勘が鋭いなぁ。まあ、そうなんだけど。」
銀時は少し渋そうな顔をして、頭を掻いた。
「銀時殿がそんな凄い人だったなんて……!今は足臭いだけのちゃらんぽらんなのに。」
「いつまで足臭ぇの引きずってんだてめぇは!!」
銀時はケロロの頭を掴み、窓から放り投げようとした。
「まあまあまあまあ、落ち着いて下さいよ。」
「……まあ、何があったにしろ、俺らがやることは1つだけ。弟のことは任しときな。」
「はい!よろしくお願いします!」
銀時とケロロは十二の家を出ると、桂を閉じ込めた廃屋の扉を開けて、桂を引きずり出した。
「おのれ銀時…。」
「むしろ感謝してもらいてぇな。真選組の追跡を逃れられたんだからなぁ。」
ふてぶてしそうにそう言うと、銀時は縄をほどいた。すると、ある1人の男がやって来た。
「桂さん!捜しましたよ!」
「おおすまない。白髪のテロリストに捕まってて、ぶべらぁぁ!!」
「誰がテロリストだゴルァ。」
そう言い、銀時は桂の顔面を蹴り飛ばした。
「何を言う銀時。俺達は共に戦った同士ではないか。いわば、俺とお前は今でも仲間なのだよ。」
「おめぇみてぇなのが仲間だったら、俺はどこぞの無能なド底辺カエル型天人とそうなるね。」
「誰が無能でド底辺でありますか!!」
「しかし、今回も君のおかげだよ。忍の力を使い屯所に忍び込み、事前に情報を俺に話してくれたおかげで、迅速に逃げることができた。」
その男は、桂に向かって少し頭を下げた。
「へぇー。お前にしては頭使ったな。」
「ああ。ここだけの話、俺は数人真選組にスパイを送っている。そして、事前に情報を掴み、行動しやすいようにしているのだよ。」
「へぇー。(ゲロゲロリ……。これは侵略作戦に使えるであります……。)」
ケロロは怪しげな笑みを浮かべた。
「スパイねぇ……。そういやぁ、百三もスパイだって疑われ……………………ん?」
銀時は何か引っ掛かったような顔をして、突然黙り込んだ。
「?どうした銀時?」
「…………………!!ヅラァ!たまにはおめぇも役に立つなぁ!緑、行くぞ!」
「よ、よく分からんが、あ、ありがとう…。」
何か思い付いたのか、銀時はケロロを連れては走り出した。
「ぎ、銀時殿!突然どうしたんでありますか!?」
「分かったんだよ。どうして真選組がスパイがいるって疑ったのかが。
これはあくまでも俺の推測なんだけどよぉ、久坂達もヅラ達と同じだよ。スパイを派遣して、事前に情報を掴んで、迅速に逃げれるようにしてたんだよ。そこで、あまりにスムーズに逃げられるもんだから真選組は、この中に内通者がいる、って疑ったんだろ。そして、百三が疑われて、逮捕された次第なんだろ。」
「確かに、筋は合ってるであります!しかし……、結局その内通者というのは…。」
「まだ分かんねぇ。だけどぉぉぉ!?」
「ゲロッ!?」
突然銀時が立ち止まったものだから、ケロロは銀時の足に激突した。
「ちょっと!いきなり走り出したと思ったら、今度はいきなり止まって、一体何なんでありますか!?」
「あれ?銀ちゃんとケロロ、何やってるアルか?」
「おじさま!銀時さんまで!」

おやおやおや!お久し振りですね!神楽ちゃん、モアちゃん、桃華ちゃん、小雪ちゃん………って、あれ?1人足りないような?

「ゲロ?夏美殿はどうしたんでありますか?」
「そうなんです!突然、夏美さんがいなくなってしまったんです!」
「ゲロォ!?何ですとぉ!?」
「今、タマちゃんとドロロさんも捜しています。」
「ナッチーどこ行っちゃったアルか?」
「こんなこと考えたくないでありますが……、銀時殿……!」
「……その筋はあるな。早ぇところ見つけねぇと!」

ここでまさかの緊急事態!突然の夏美ちゃんの失踪!これもまさか、久坂一派の仕業なのか…!?次回に御期待です!

第21話 帰って来て であります ( No.25 )
日時: 2018/11/04 17:44
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「はぁ……はぁ……。駄目だ。全然見つからねぇ。」
「銀ちゃん、こっちも駄目だったアル。」
既に捜し始めてから4時間は経っている。もう日が暮れるというのに、夏美は一向に見つからない。冬樹と新八も途中で合流し、共に捜していたが、駄目だった。
「銀ちゃんどうしよう……。もし夏美が…夏美がケダモノ共に襲われでもしてたら……!」
「ケ、ケダモノ?」
「そうネ!男は夜になると、女を見境なく襲うケダモノに豹変するって、パピーが言ってたアル!冬樹だってそうなるはずネ!」
そう言い、神楽は冬樹を指差した。冬樹は何のことを言ってるのか全然分からなそうな顔をしていた。
「神楽殿……。冬樹殿に限って、そんなこと絶対ないであります……。」
ケロロと同じように、他の皆も同じような反応をした。
これにはしっかりとした理由があった。冬樹の恋愛に対する無関心さ、鈍感さには、一同は呆れる程だからだ。その為、桃華が冬樹に好意を抱いてるのにも、冬樹は全く気付いていない。
「確かにこいつ、女とかに一切興味無さそうだからな…。」
「あるのはせいぜいオカルト位であります。」
「僕今どういう心境していればいいのか分からないんだけど……。それより、姉ちゃんはどうするんですか!?」
「……しょうがねぇ。ポリ公共に任せるしかねぇ。もう日も暮れてるし、こんな時間帯に年頃のガキを外に出す訳にもいかねぇしな。お前らはもう帰りな。後は俺らに任せとけ。」
一同は浮かない顔をしていたが、さすがに危険だということもあり、各自それぞれ居候させてもらってる所へと帰っていった。一部を除いて。
「あ、あり?我輩達は?」
「何言ってやがる。おめぇらケロロ小隊は俺と一緒に仕事の続きだ。」
「えぇ!?何で僕達だけ!?」
「おめぇらみてぇなカエル型天人を襲う輩なんて、いる訳ねぇだろ。それと、ポリ公共に頼るなんざ、俺のプライドが許さねぇ。あれは嘘だ。休めると思うんじゃあねぇぞぉ?」
銀時は憎たらしい笑みを浮かべた。
「あんまりですぅ!今で言う、ブラック企業ですぅ!」
「そうであります!そうであります!」
「だったらてめぇら、俺のスクーターどうするつもりなんだぁ?」
「「!!」」
ケロロとタママは気まずい顔をした。あの後(詳しくは第13話を)、源外に直してもらうことになったのだが、未だに修理費を払ってなかったのだ。
この件を終え、その給料で払うつもりだったのだが……。
「……分かったであります…。」
「やるですぅ……。」
「物分かりのいい奴らだぁ。早速行くぞ。」
歩み出した銀時の後ろを、トボトボと歩くケロロとタママを、ドロロは黙って見てるしかなかった。
「隊長殿……、タママ殿……。💧」



その頃、とある廃ビルでは……。

「……山崎。見つかるリスクを減らすため、ひとまず二手に別れよう。」
「分かりました。」
ギロロと山崎が久坂の後をつけていた。この3日間、尾行を続けた結果、明らかに機械からくりを使って何かを企んでいることは明白だった。そして、夜明けにそれを決行することも。
そして今、久坂一派の本拠地である廃ビルに足を踏み入れたのだ。
「この件……。絶対にしくじることはできん…。何としても…。」
ギロロは柱の影に隠れ、見つからないように、慎重に上の階へと上がっていった。
「………………。」
そして、階段を上り、ある一室に入ると、急に動きを止めた。さらに何故か、銃を入口に向けた。
「………何故さっきから俺の後をつけている?気付かないとでも思ったのか?」
「………………。」
すると、ある人影がスッと出てきた。その人物にギロロは驚きを隠せなかった。
「な……………夏美!!?」
「……やっぱりバレちゃった?ギロロ。」
実は、夏美は久坂一派に連れ去られたのではなく、ずっとギロロの後をつけていたのだ。
約4時間前、神楽達と一緒に行動していた道中、たまたまギロロと山崎を見つけ、それからずっと後をつけていたらしい。
「な……何をしている!?ここは危険だ!早く帰れ!」
「そう言われて、『はい帰ります』って言う訳ないってのは、あんたが一番分かってるでしょ?」
「………………早く中に入れ。」
言い返す言葉が見つからなかったのか、ギロロは夏美を部屋に入らせた。
「腹減ってるだろ?これでも食べろ。」
そう言い、ギロロは1本の魚肉ソーセージを夏美に手渡した。
「あ……ありが…とう?(何で魚肉ソーセージ?)」
若干疑問に思ったが、断る理由もなかったので、これを食した。
「……これは、山崎が隠密行動をするときに必要不可欠な『真選組ソーセージ』だ。他の隊士達も、隠密行動をする際にはこれを食している。」
すると、夏美はプフッと吹き出しそうになった。
「…?何かおかしいことでも言ったか?」
「…いや、あんた……完全に真選組に馴染んでるなーって思っただけ。……昨日テレビで見たわよ…、真選組参謀として活躍してるあんたを。すっかり有名になってるじゃない…『真選組の赤い悪魔』ってさ。」
「……まあな…。今となっては、すっかり幕府のお偉いさんからも注目されてるみた」
言い終わる前に、部屋からパチンという音が響いた。それと同時に、ギロロは部屋の隅に飛ばされた。
「な…何をする!?」
「………………………。」
夏美の顔から一粒の雫が垂れてきた。
「何が『まあな』よ……。何が『真選組参謀』よ…。ふざけるのも程々にしなさいよ…。皆があんたのこと心配してたのに…、ボケガエルが必死にあんたのこと捜して、ようやく見つけたと思ったら………。皆あんたの帰りを待ってるのが分からないの!?……それなのに……それなのにあんたは…!」
夏美の泣き崩れた姿を見て、ギロロはケロロの手を払いのけたあの時のことを思い浮かべた。
「…………………………。」
皆、そこまで俺のことを……。それなのに俺は……。だがしかし……俺はどうすれば……。
「お願い…………帰って来て……ギロロ…。」
「夏美……………。!!!伏せろ!!」
突然、ギロロは夏美を伏せさせた。その直後、壁から銃弾が出て来た。
「まさか…………!!」
そして、扉から数十人が刀を持って、ボロボロになった壁から銃を持った者が部屋に入ってきた。
「おやおやおや…。こんな所でデートですか?フフッ…。」
不敵な笑みを浮かべて、赤い着物を着た男が現れた。
「ギロロ…あれって……!」
「ああ……。久坂一派の首領、久坂玄帥だ……!」
「……ほぉ。私のことを知っているなんて……いつの間にか有名人になっていたんですねぇ…フフッ…。」
久坂はちぢれた赤黒い色をした髪を掻き分けた。そして、刀と銃を下ろすように促した。
「…あなた方……あんな尾行で私が気付かないとでも思いましたか…?もうちょっとマシな尾行をしてもらいたかったですねぇ……。」
そう言うと、久坂は何かを出すように攘夷浪士に促した。すると、縄に縛られた何かが出て来て、地面に倒れ込んだ。
「や……山崎!!」
「すいません……しくじっちゃいました……。」
すると、久坂は刀を取り出し、それを山崎の首元に向けた。
「……少しでも抵抗するような真似をしてみて下さい……。このお方の首から、赤いものが噴き出しますよぉ……?フフッ…。」
「クソッ……。」
「……どうするの?」
「……………さぁ、御決断を。」
「………………分かった。好きにするがいい。」
そう言い、ギロロは持っていた銃、懐に入れていた手榴弾を全て床に置いた。
「ギロロ……。」
「いい決断です……。では、貴方たちにもショーを御見せ致しましょうか……。」
そう言い、久坂はギロロと夏美を縛るよう命令した。そして、縛られた3人をビルの最上階へと連れていった。
「フフッ…。さあ、着きましたよ…。ここがショーの舞台です……。」
何もない殺風景な場所だった。だが、一つ不自然な所をあげるとするならば、元々ヘリコプターの離着陸場の所にぽっかりと穴が空いていたことだった。
そして、柱に3人を縛ると、久坂はギロロをまじまじと見た。
「……いい……。貴方のその肌の赤……。実に私の好みにピッタリだ!!貴方を殺めるのは非常に勿体ない!!とてもいい赤色をしている!!フハハハハハ……!!!」
こいつ……何を言っている?
「おっと……私としたことが……。取り乱してしまったよ。どうやら、ショーの準備が出来たようです……。せっかくですから、今回の主役に登場してもらいましょうか……!」
そう言い、久坂は指を鳴らした。すると、すごい地響きが起き、ビル全体が揺れた。
「お前……一体何を…!」
「いやね…、この準備には機械からくり技師の協力無しでは出来ないため、少々時間が掛かりまして……。ですが今、ようやく完成した………!!今日の主役が……!!」
久坂が手を仰ぎぐと、巨大な穴から何かが出て来た。それは、何か大筒を思わせるような巨大な機械からくりだった。
「こ……これは……!!」







「そう!!これこそ、天人撲滅ウイルス発射砲、通称『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング久坂砲』だぁ!!!」
「いや下ネタじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

第22話 中坊は反抗期真っ只中 であります ( No.26 )
日時: 2018/11/11 15:43
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「そう!!これこそ、天人撲滅ウイルス発射砲、通称『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング久坂砲』だぁ!!」
「いや下ネタじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「下ネタ?一体何を言っているのですか?」
「いやそれもろにアレだろーがぁぁ!」
「玉2個の間に棒1本。これのどこが下ネタなんですか?」
「『銀魂』だけで扱うならまだしも、今回は『ケロロ軍曹』とのコラボ小説!こんな健全な作品を汚す訳にはいかないんだよ!コラボするのはいいけど、もうちょっとそういうの考えろよなぁ!」

いや山崎さん、あなたそれ誰に言ってるんですか?

「な、何だ……?ネオアーム…ストロング……何だ?」
「ていうか、何あの形…………?」
健全な『ケロロ軍曹』出身のギロロと夏美には、当然それが何を示しているかなんて、分かるわけがなかった。
「あーあー!知らなくて大丈夫ですから!これは『銀魂』サイドの話なんで!」
あまり深入りしないように、山崎は話を遮った。
「これに電流を流し、筒を刺激する。そして、溜まるに溜まった白く輝くウイルスを発射す」
「いやそれも下ネタじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!もうちょっと言い方考えろぉぉ!」
やっぱりそれが何を意味しているのか、ギロロと夏美には、分からなかった。
「それより……、また観客が来てくれたみたいですね………。」
久坂の見る方向には、無数のパトカーがビルの前に止まっている光景があった。真選組だ。
「おやおや、真選組の皆さん!わざわざ私のショーを御覧に来られるとは!歓迎しますよ!」
「ああそうだよ。お巡りさんが残虐な攘夷浪士共を成敗するアクションショーをな。」
土方は刀を抜き、久坂のいる方向に刃を向けた。
すると、久坂は浪士3人に山崎とギロロと夏美を連れてくるように命じ、見せびらかすように、3人を縁に座らせた。そして、浪士3人は刀を3人に近付けた。
「妙な真似したら、この御三方から綺麗な赤が噴き出しますよ……フフッ……。」
「山崎!ギロロ!それに、あいつは……あん時の……!」
「そんなことになりたくないのなら……、ショーを見ていて下さいね………フフッ……。」
「近藤さん……どうする?」
土方が問い掛けたが、近藤は腕を組んで屋上の方を見ていた。
「トシ……………………、あの大砲随分完成度高けーなオイ。」
「いやどーでもいいわ、んな事!突入するのかどうか聞いてんだよ!」
「ああすまんすまん!そうだな………。トシ。」
「……行くか?」
「………どうすれば、あの大砲のように俺もデカい男になれる?」
「さっきから何考えてんだてめぇぇ!!あの大砲から離れろ!!」
さすがに近藤の意味深な発言にブチギレた土方は、胸ぐらを掴みツッコんだ。
「しかし……!突入したらしたで……!」
「だからと言って、アレが発射されてもいいのか……?」
近藤は言葉を濁らせた。下手に動けば、3人の命が危ない。かと言い、このまま立ち往生してても、あの大砲が発射されてしまう。完全に久坂の思い通りになってしまった。
「フフッ……。さあ、ショーの開演までもうしばらくです!!夜明けと共に、天人共が悶え苦しみ、無様に死んでいくザマを楽しんでいって下さい!!フフ……ハハハ…………ハハハハハハ……!!!」
笑い続けながら、久坂は天を仰いだ。その様子を真選組は黙って見ているしかなかった。



「おぉ〜。随分綺麗に直ってんじゃねぇか。」
その頃、銀時達は源外から、スクーターが直った、との連絡を得て、からくり堂にいた。ただ、1つ心配なのが……。
「何にも仕掛けてねぇよな?」
修理に出すと、毎度のように何かを仕掛けてくるので、そのことが少し心配だった。ましてや、今はクルルもいる。
「さぁ〜?どうだろうねぇ?くっくっく〜。」
クルルの憎たらしそうな笑みと嫌らしい声で、またか、と思うのはすぐだった。
「なぁに。んな大した仕掛けはしてねぇよ。ほれ。」
そう言い、源外はハンドルバーに付いていた黄色のボタンを押した。すると、スクーターから煙が出て来て、スクーターが変形し出した。
「……え?」
「く〜くっくっく〜。すげぇだろぉ?これが俺様発案『いつでもどこでもカレークッキングセット』だぜぇ〜。」
「これさえあれば、どんな時、どんな場所でもカレーを作れてまあ便利」
「じゃねぇんだよ!!もうスクーターとしての役目全然ねぇじゃねぇかぁぁ!!」
ブチギレた銀時は、クルルと源外を殴り飛ばした。
「よく見たらこれ、ちょっとカレーこびりついてんじゃねぇか。お前ら1回これ使ってカレー食っただろ?」
殴られて横たわっている2人は親指を突き立てた。
「よぉし。この横たわっている材料で『カエルとジジイのカレー』作ってみよーかなー。」
棒読みでそう言うと、2人を木刀で叩き付けた。
「まあまあ、落ち着くでごさる銀時殿。」
「……ったく。こんな事してる場合じゃねぇってのに……。」
大きくため息をつき、銀時は再び黄色のボタンを押して、スクーターに戻した。
外れかけたゴーグルを源外は調整し、クルルは先程殴られたことにより壊れた眼鏡を新しいのに取り替え立ち上がった。
「それと銀の字。用ってのはてめぇだけじゃねぇんだ。クルの字。」
「ああ?あーそうだったなぁ…。隊長、ドロロ先輩、ガキ。中に入りな。」
そう言い、クルルは3人をからくり堂の中に入れた。そして、すぐ正面にある布を取った。
「こ、これは……フライングボード!!」
「な、何故この世界に……!?」
何故か、元いた世界にあるケロロ達のフライングボードがそこにはあった。
「ここからでは呼び出せないはずでは……?」
「細けぇ話は後だ。急いでんだろぉ?」
今はその事より、夏美を見つけるのが先決。各自のフライングボードに乗り、銀時はスクーターのエンジンを掛けた。
「これなら行動範囲も広くなるであります!さあ銀時殿!行くであります!」
「ああ。………と、言いてぇ所なんだけども……。」
銀時は後ろを向いた。何だと思い、他の3人も振り向くと、
「……はぁ〜。中坊は反抗期真っ只中だっていうけどさぁ……。」
そこには、帰れと言われたはずの、冬樹、新八、神楽、定春、桃華、モア、小雪がいた。
「すいません銀さん…。僕も引き止めたんですけど……。」
「しっかりしろよな新八。一応最年長なんだからよぉ。」
気まずそうに新八は頭を掻いた。
「んで、何でここに来たんだ?」
「………やっぱり、姉ちゃんのことが心配で……!僕達にも、何かやれることがあるなら……!」
「夏美さんを助けたいんです!銀時さん、お願いします!」
他の者も一同に同じようなことを言ってきた。危険な目に逢わせたくないという銀時の気持ちを押し跳ねてまで、夏美のことが心配なのだろう。
「………………………。」
「銀ちゃん!お願いネ!」
「………銀時殿……。」
「………冗談抜きで、死ぬかもしれねぇんだぞ?……いいのか?」
「……銀さん。僕達、軍曹と数々の経験をしてきました…。楽しかったこともありましたし、本当にピンチだったこともあります……。覚悟くらいできてます!何かできることはありますか!?」
「…………定春。中坊4人、乗せられるか?」
定春は頷き、ワンと大きく吠えた。
「銀さん……!」
「その代わり、怪我しても一切責任問わねぇからな。いいな?」
「……はい!!」
冬樹は大きく返事をして、定春に乗った。桃華とモアと小雪も同様に。
「よっしゃー!しっかり捕まってるヨロシ!行くアルよ定春!」
「ワン!!」
「てめぇらぁぁ!!残業代は払わねぇからなぁぁぁ!!」
そう言い、銀時はスクーターを発車させた。それに続き、フライングボードに乗った3人と定春が出発した。

第23話 上映前には用を足しとけ であります ( No.27 )
日時: 2018/11/11 21:23
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「…ゲロ?あの塔みたいなのは何でありますか?」
「ん?あれは塔なんかじゃねぇな。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか。完成度高けーなオイ。」
「何であんな卑猥な物があんな所にあるんだよ!?一応『ケロロ軍曹』とコラボしてるんですからね!?作者そんなに『ケロロ軍曹』汚したいのかよ!」
『銀魂』内では唯一の常識人な新八は、アレが何を示しているかが見当がついていた。
「おいおい新八ぃ。あれのどこが卑猥なんだよ?どこに卑猥さを感じたんだよ?」
「ほんとマジキモいアル新八。一生話し掛けないで。」
「何で僕バッシング受けなきゃなんないの……?」
「あんなの、今までなかったのになぁ…。…………まさか……!!」
銀時は桂が言っていたことを思い出した。近いうち、久坂が何か企んでいるということを。
「おめぇら!あそこに夏美がいる可能性が高い!」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、ついてこい!」
そう言い、銀時は廃ビルの方へとハンドルを切った。それに続き、他の者達もその方向に曲がった。
「あそこが久坂一派のアジトかもしれねぇ!急ぐぞ!」
「凄いであります銀時殿!さすが伝説の攘夷志士『白夜叉』であります!」
「『元』をつけろ!ていうか、あんま言いふらすなよ。あんま知られたくねぇんだから。」
銀時は嫌そうな顔をしてそう言った。
「にしても、入江兄弟に知られてたなんてなぁ……。そういや十二の奴、百三から聞いたって言ってたな。真選組は俺が白夜叉だって知ってるみてぇだし……。」
「え?ちょっと待って下さい!」
突然、冬樹が話し出した。
「ゲロ?どうしたんでありますか?」
「……銀さん。それはないと思います。」
「……おいおい。そいつはどういうことだ?」
冬樹は手を顎に当てて、考えるような仕草を取った。
「……実は百三さん、十二さんとは、真選組に入隊してから一度も会ってないんです。ですよね、新八さん。」
「えっ、あっうん。仕事で忙しくて、連絡すらも取れなかったと…。それに、隊士達は基本的、屯所に泊まって生活してますから、まず会うことなんて出来ないんです。」
「……それが、どうかしたのか?」
「……僕、元の世界で『銀魂』を読んでいたので、大体のことは分かるんです。銀さんが白夜叉だと知っているのは、銀さんの周りにいる人達と攘夷浪士、そして真選組の人達しかいない、ということも。つまり、一般の人は知らないということ。」
「つまり、何が言いてぇんだ?」
「百三さんが銀さんのことを白夜叉だと知ったのは、真選組に入隊してから。入隊してから十二さんと1つも連絡がとれなかったのに、一般の人である十二さんはどうして銀さんが白夜叉だと知っているんですか!?」
「……………マジかよ…………!!」
「……はい。十二さんが銀さんのことを白夜叉だと知っているには、十二さんが攘夷浪士であることしか条件がないんです!」
「!!!」
一同は驚きを隠せなかった。
「つまり、最初から真選組に内通者なんていなかったんです……。本当の黒幕は……………………………………………入江十二さんである可能性が高いです。」



その頃、廃ビルでは、未だに真選組と久坂一派のにらみ合いが続いていた。かれこれ2時間が経過し、もうすぐ夜明けとなってしまう。
「フフッ……。もうすぐショーの幕開けです……!」
「くそっ……!近藤さん、マジでどうすんだ!?」
土方が焦りの表情を出した。このままでは、ウイルスが発射されて、天人の身が危ない。
「……地球にいる全ての天人に、ウイルス防止のマスクを付けることは考えたが……、とても出来ることじゃねぇ。」
「宇宙船使って天人を避難させるにしても、こんな朝っぱらに、天人全員起きてる訳がねぇ……!」
久坂は全てそのことも計算し、皆が寝静まったときに準備をし、夜明けに実行するようにしたのだろう。
「完全に久坂の手の上で踊らされちまったみてぇですねぃ……。」
「………………久坂。」
突然ギロロが声を発した。
「?」
「………俺を斬れ。その代わり、夏美と山崎は解放しろ。」
「!!?」
ギロロの発言に、一同は驚いた。
「な……何言ってるのギロロ!?やめなさいよ!」
「おやおやおや。一体どうしたのですかぁ?」
「…………すまんな夏美。こんなことに巻き込んで……。俺1人が犠牲になって、物事が収まるのなら、俺は喜んで犠牲になる。」
「何考えてんだギロロ!こうなったのは、局長である俺のせいだ!部下の責任は全て俺の責任だ!だから、切るなら俺の首を切れ!」
そう言い、近藤は刀を地面に置き、その場に座り込んだ。
「こ、近藤さん!!」
「近藤、やめろ!!」
「ほほぅ。これは随分見物ですねぇ……。真選組局長の打ち首とは…。ショーの余興のつもりですか?フフッ……。」
「てめぇ…………!!久坂ぁぁ!!」
「待て総悟!!」
久坂の発言に逆上した沖田は、刀を抜きビルの中へと入ろうとした。しかし、入ろうとした直前、沖田の目の前で横殴りの弾丸の雨が降ってきた。
すんでの所でかわせたが、横を見てみると、銃を持った久坂一派の攘夷浪士が何十人も茂みに隠れていた。
「あなた方が立ち往生している間、私が何もしなかったとでも……?それなりに考えていたんですよ……!」
完全に包囲されて、どうすることも出来なくなった真選組隊士は、全員刀を抜き身構えた。
「フフッ……。無駄だというのに……。武器を全て預からせてもらいますよ……そして、座って両手を挙げてもらいます……。」
言われるがままに、武器を全て地面に置き、両手を挙げてその場に座ると、久坂一派の攘夷浪士は隊士の後頭部に銃口を向けた。
「フフッ……。屈辱ですねぇ。私のような者にこんな風にされるなんて……。でも、所詮は幕府の犬。犬にはとってもお似合いな姿ですよ……!ハハハ…!!」
悔しそうな顔で隊士達は歯を食い縛った。このような光景を見て、夏美は涙を浮かべ、ギロロと山崎も隊士達と同じ様な顔をした。
全ては自分たちがしくじらなければ。
「フフッ……。さあ、局長殿。余興の方を。」
「……………分かった。」
「局長……やめて下さい!!」
「近藤!!早まるな!!」
だが、皆の言うようにはならず、近藤は目を瞑り、首元には刀が添えられた。
「すまねぇな皆。こんな不甲斐ねぇ大将でな。俺がいなくなっても、てめぇらは絶対に曲がるんじゃねぇぞ。どんなに後ろ指差されようが、どんなに蔑まれようが、絶対に自分の信念を貫き通せよ!
ギロロ!お前さんには、たった10日間だったが、随分世話になったよ。お前の的確な指示や戦術のおかげで、真選組の評判は右肩上がりだよ。市民に一切の被害を出さずに事件を解決してくれてあんがとなぁ!」
「ちょっと待て近藤!!おい!!」
「さあ!!切るなら切りな!!俺ぁもうとっくに覚悟できてるぜ!!」
攘夷浪士が刀を振り上げた。そして、思い切り振り下ろし、刃が近藤の首元へと向かっていった。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」












「タママインパクトーーーーーーーー!!!!」
何事かと思い、一同は声のする方向へと顔を向けると、黄色い光線のような物がこちらに向かってきた。いや、その光線の先端にも何かがあった。
「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
よく見てみたら、光線の先端には、スクーターに乗った2人の男がいた。それは勢いよくビルの屋上に向かっていき、スクーターはそこに着陸した。
そして、その後を追うように、2つの浮遊物が向かっていった。
「な、何事です!?まさか、真選組の援護か!?」
着陸したと同時に、その光線によって立ち込められた煙の向こう側から、声が聞こえてきた。
「いやぁ〜。何とか間に合ったみてぇだなぁ。」
「あやうくショーが始まっちゃう所でしたね。」
そこには、煙で微かにしか見えないが、2つの人影、いや、もう2つ天人の影があった。そして、その4つの影は久坂の方へと近付いてきた。
「一体何のショーが始まるんでありますか?」
「何って……、決まってんだろぉ?」
完全に煙が晴れると、1人の男が木刀を久坂の方へと向けた。
「白い鬼と緑のカエルが極悪攘夷浪士共を成敗するショーだよ。」

第24話 加減知らず であります ( No.28 )
日時: 2018/12/08 19:38
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「よぉ。あんたが久坂玄帥か。初めまして……かな?」
銀時は木刀を向けたまま、久坂に近付いてきた。
「真選組の援護…………という訳ではないようですね……。」
「さあ!ギロロと夏美殿を返してもらうであります!」
ケロロは久坂を指差しそう言った。しかし、その割には足はガクガクと小刻みに震えていた。
分かりやすっ、とギロロと夏美は白々しい目でケロロを見た。
「………フフッ……ハハハ…………!そんな程度のことで、私達が怯むとでも……?丁度いい機会です。貴方達にも真選組局長の斬首を見……。」
久坂は真選組の方を向く前に、冷気のようなものを感じ取った。何だと思い、真選組の方を向いてみると、辺り一面が氷漬けになっていて、久坂一派の攘夷浪士全員もろとも氷漬けにされていた。
「!!?」
「凄いアル小雪!一瞬にして全員氷になったアル!」
「驚きました神楽ちゃん?これが小雪忍法です!」
そこには、神楽、定春、タママ、冬樹、桃華、小雪がいた。小雪の忍術により、何とか難を逃れたみたいだ。
「ナイスでござる小雪殿!しかし…………。」
ドロロは何故か言葉を濁らせた。その目線には……。
「真選組の人達まで氷漬けになってるでしょーがぁぁ!その人達味方ですから!!早く元に戻してあげて小雪ちゃん!」
「あ、すいません!今溶かしますね!小雪忍法火遁の術!」
小雪は手から炎を出し、氷を溶かした。しかし、あまりに火力が強すぎたのか……。
「……………!?な、何で俺達裸になってんだぁぁぁぁ!?」
服まで燃えてしまった。
「何してんの小雪ちゃんんん!!?」
「エヘヘ……。すみません。」
しかし、問題はそこだけではなかった。火力が強すぎて、久坂一派の攘夷浪士達も元に戻ってしまったのだ。そして、彼らも服を燃やされていた。
「お前ら……よくもやってくれたな!!真選組もろとも、お前らも斬り捨ててやる!」
攘夷浪士達は、狙いを神楽達に向け、刀を構えた。5人は後退りした。しかし、屋上にいる新八達は、
「パンツ一丁だから何にもシリアス感が伝わらない………。」
「ただ女子中学生襲おうとしてる変態集団にしか見えねぇな………。」
全然違う捉え方で見ていた。
「ここまで俺達を愚弄して、ただで済むと思うなよ!!うぉぉぉぉぉ!!」
一斉に斬りかかって来る、と思ったが、ある一人を除いて、全員地面に倒れ込んでいた。
「!!?……こ、これは……!?」
「それはこっちの台詞でぃ………。ここまで俺の大将を愚弄しといて、ただで済むと思うんじゃねぇぞ……。」
後ろを見てみると、『S』というアルファベットが大量に描かれたパンツを穿いている青年が刀を持って立っていた。
「ヒィ……!!」
たった一人残された攘夷浪士は、完全に激情した沖田に恐れを感じたのか、逃げ出す勇気もなく、その場に立ったまま動けなかった。
容赦なく沖田は彼を斬り、刀に付いた血を拭き取った。
「あーあー。これでまたお前らに借りが出来ちまったなぁ、でも感謝なんかしねぇぞクソチャイナ。」
「んだとコラ!私達がいなかったら今頃お前らは地面に倒れ込んでたんだぞ!」
「でもチャイナ何にもしてねぇだろぉ?それなのに何で感謝しなきゃいけねぇんだぁ?」
「やんのかクソサドコラァ!?」
「そんなに斬られてぇのかクソチャイナ?」
毎度のように、お互いの胸ぐらを掴みながら、また沖田と神楽の口喧嘩が始まった。
「神楽さん落ち着いてください……。」
「総悟いい加減にしろ。」
桃華と土方が仲裁に入るも、収まる気配は全然ない。
「まあまあ、神楽さ」
桃華が神楽に近付いて止めようとしたが、先に神楽の右肘が桃華にぶつかってしまった。
「……………。」
「………あ!桃華ごめんアル!」
「…………おめぇら、やめろってのが聞こえねぇのかーーー!!!」
桃華、いや裏桃華は神楽と沖田の顔面を掴み、投げ飛ばした。
この豹変ぶりに、土方も唖然とするしかなかった。
「え?」
しかも偶然なことに、2人が飛んでいった方向には、夏美達を押さえていた浪士3人がいて、運良く3人にぶつかっていった。そのままの勢いで、神楽と沖田は屋上へと倒れ込んだ。
「わお、なんて偶然。でかしたぞ桃華。」
銀時は裏桃華に向かって親指を立てた。それを返すかのように、裏桃華も親指を立てた。
「おのれ…………!!まさかここまでショーをぶち壊しにしてくれるなんて……!」
これまで不気味な薄ら笑いを浮かべていた久坂だったが、怒りを露にして、刀を抜き取った。
「言っただろぉ?このショーは、白い鬼と緑のカエルが極悪攘夷浪士共を成敗するショー、だって。」
それに対し、銀時は不敵な笑みを浮かべた。
「いいかお前ら。お前らはあれの電源を探せ。どっかにあるはずだ。見つけたら電源を切れ。そしたら俺達の勝ちだ。緑は夏美と赤いのを安全な所に連れていけ。」
「了解であります。」
「あの、すいません。俺もいるんですけど……。」
「ゲロ?」
山崎が自分の存在を指摘したが、ケロロは、『いつからいたんでありますか?』という眼差しで山崎を見た。
「最初からいましたけど!?」
「あー、悪いねジミー君。緑、『ついでに』こいつも連れていってあげて。」
「いや『ついでに』ってどういうことですか!?」
「仕方ないでありますなぁ。『ついでに』でありますよ?」
「………俺そんなに嫌われてたの………?」
「そんなことさせるとでも……?」
いつの間にか、久坂の背後には、無数の浪士達が刀を持って身構えていた。
「数では圧倒的にこちらの方が上………。その気になれば、貴方達なんて秒殺なんで」
「タママインパクトーーーーーーーー!!!!」
言い終わらないうちに、久坂のすぐ後ろを黄色い光線が通っていった。
後ろを振り向くと、さっきまで大量にいた浪士達が、ほんの数十人程になっていた。
「秒殺ですぅ〜〜!!!」
フライングボードに乗ったタママがドスの効いた声で久坂を見下ろし、そう言った。
「ナイスであります、タママ二等!」
「わぁ〜い!軍曹さんに褒められたですぅ〜!」
さっきの声が嘘だったかのように、タママはいつもの可愛らしい声で喜んだ。
「軍曹さん!僕がナッチーとギロロ先輩を連れて行くですぅ!」
「分かったであります!あと『ついでに』……えっと…………、モブ殿もお願いするであります!」
「了解ですぅ!」
「………やっぱ俺、嫌われてる……?名前すら覚えられていないんだけど……。」
泣きながら山崎はそう言った。
「ギロロ先輩、ナッチー、早く乗るですぅ。」
言われる通り、ギロロと夏美はフライングボードに乗った。しかし、
「やっぱり俺嫌われてますよね!?何で俺だけ縄で吊るされてるだけなんですか!?」
タママのフライングボードの下から、一本の縄が吊るされている。そこには、山崎が宙吊り状態で足だけ縛られていた。
「よろしくお願いするであります!」
そう言われ、タママは去っていった。途中、何かと何かがぶつかる音がし、それと同時に男性の悲鳴が聞こえてきたことは、触れないでおこう。
「………せっかくの観客が……。貴方達、覚悟は出来てますよね……?立派な営業妨害ですよ………。その代償はしっかりと払って貰いましょうか……。」
気付いた時にはもう遅かった。久坂が目にも止まらぬ速さでケロロの目の前に立ち、刀を振り下ろそうとしているのに。
「貴方達の命で。」
久坂がそう言うと同時に、刀が上に跳ね上げられた。そして、腹に衝撃が来て、久坂は後ろへと飛ばされた。
「ゲホッ………!!」
「……言ったよなぁ?死ぬかもしれないって。気ぃ抜いてる暇なんかねぇぞ。早く行け。こいつらの相手は俺だ。」
銀時がケロロの前に立ち、木刀を強く握り締め、身構えた。
言われる通りに、新八、ケロロ、ドロロ、そしていつから意識を取り戻したのか、神楽も電源を探しに行った。
「旦那ぁ。俺も忘れないで下せぇよ。」
沖田は起き上がると、あからさまにあくびをした。
「お前さては寝てたな?」
「んな訳ねぇじゃないです…ふぁ〜。」
「沖田君、眠気覚まさせてやろうかぁ?」
「そうですねぃ………、雑魚共がうじゃうじゃいやすねぇ。ちょいとあいつらで眠気覚ましてきやす。」
「いいの?あそこにもっといい眠気覚まし要員がいるけど?」
銀時は久坂の方を指差した。
「あれじゃ、眠気覚ますどころか、また眠っちまいますよ。あれは旦那のでしょ?」
「そうだなぁ。俺も一晩中寝てないから、ここらで眠気覚まさねぇと。」
銀時と沖田は久坂達の方へと歩いて来ると、木刀と刀をそちらに向けた。
「「ちょいと、眠気覚ましに付き合ってくれないかなぁ?」」





(作者・若大将から)
諸事情がありまして、1ヶ月程投稿できませんでした。申し訳ありません。今後このようなことがあるかもしれないので、そこの所はご了承下さい。
ですが、それ以外はいつも通り、1週間に2、3話投稿するので、今後ともよろしくお願いいたします。

第25話 真っ赤な魂 であります ( No.29 )
日時: 2018/12/09 18:29
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「私達が眠気覚まし要員ですか………。随分ナメられたものですねぇ……。でも安心して下さい。貴方達をとても深い眠りへと誘ってあげますから……。」
久坂は右腕を上げて手を広げた。それと同時に、後ろにいた浪士達が一斉に銀時と沖田の方へと向かってきた。
「旦那、よろしくお願いしやす。」
「分かってらぁ。」
そう言われ、沖田は浪士達に向かっていき、銀時は久坂がいる所へ飛びかかった。
木刀と刀がぶつかり合う音が響いた。しかし、木刀にしては、あまりにも音が重かった。
「フフッ……。まさか剣を交える時が来るとは思いませんでしたよ、白夜叉。」
「おいおい。最初から俺のこと知ってたのかよ。」
「私の世界では有名人どころの騒ぎではありませんよ…。」
「嬉しいねぇ。知らねぇ間に大御所扱いされてたなんざ。そしてどうだい?これからその大御所にぶっ飛ばされるてめぇの心情は?」
銀時は木刀を振り上げて、久坂の腹にもう一突き入れようとしたが、久坂はそれをひらりとかわし、刀を銀時目掛けて振り下ろした。間一髪、銀時はかわすことが出来たが、久坂は一瞬の隙も見せずに、すかさず銀時に襲い掛かってきた。
「(くそっ………。動きに全然隙がねぇ。こいつ、思ってた以上にやり手だな……。)」
「フフッ……。顔に出てますよ?それが白夜叉の限界ですか?」
煽るように久坂がそう言うと、銀時の肩に刀を突き刺した。
「ぐっ……!」
「フフッ……。ほぉ、貴方はこのような『赤』の持ち主なのですか……。とても綺麗だ。」
久坂は刀に付いた銀時の血を見た。
「てめぇ、血を見て興奮するとは言ってたけど、噂通りのサイコパスだな。」
肩を抑えながら銀時は木刀を握り直した。
「血を見て興奮する?とんでもない。私はただ単に赤色が好きなだけですよ。その中でも、最も『赤』を引き立ててくれるのが、生物の血なんです。それを追い求めていくうちに、『血染めの玄帥』となんて言われるようになりまして。」
「そうかい。だったら俺がその二つ名『血だらけの玄帥』にしてやらぁ。」
そう言い、銀時は久坂の方へと向かい、木刀を振り下ろそうとした。
しかし、そうしようとした直前、足元が突然崩れ出した。気付いた時にはもう遅く、銀時はそのまま落ちていった。
「フフッ……。このビルはかなり老朽化していましてね。さっき貴方がかわした私の一太刀によって、足場がかなり脆くなったのでしょう。」
久坂はぽっかり空いた穴に近づいた。
「そして、ここから先はずっと穴が続いていますからねぇ。重症どころの問題ではないはずなんですが……、そうでもなさそうですね。」
久坂の目線の先には、コンクリートの柱に木刀を突き刺し、何とか命だけは助かった銀時の姿があった。
「あっぶねぇ〜……。」
何とかよじ登り、先程突き刺された右肩を痛そうに抑えた。
「さて……、これからどうするか……。」
近くで、コンクリートが崩れる音が聞こえた。屋上で沖田が激戦を繰り広げているのだろう。
「さすがにあいつはまだ来ねぇだろ。今の内に緑達と合流しねぇと……。」
立ち上がり、下の階へと続く階段を探し始めた。若干右肩に痛みが走るが、数々の死闘を繰り広げてきた銀時にとって、耐えられないものではなかった。
「はぁ……。はぁ……。………!!!」
銀時はとっさに避けた。なぜなら、柱の影から突然、一本の刀が飛び出してきたのだから。
「てめぇ………。いつの間に……。」
柱の影から出て来たのは、そこにはいるはずのない久坂だった。
「簡単なことですよ。」
そう言い、久坂は天井を指差した。そこには、ぽっかりと穴が空いていた。
「成る程ねぇ。さっきの崩れる音はお前が出したのか。お前、頭良いんだな。」
「フフッ……。さあ、続きをしましょうか。」
久坂は身構えると、すぐさま銀時の方に向かってきた。それに対抗するかのように、銀時は久坂の一太刀を木刀で受けた。
「もっと見せて下さいよ、貴方の『赤』を……!」
「へっ!てめぇの黒ずんだ汚ぇ血でも眺めてらぁ!」
再び木刀と刀がぶつかり合う音が響いた。久坂の重い一太刀を銀時が防ぎ、隙あらば銀時が久坂に木刀を叩き突け、それをまた久坂が防ぐ。そのようなことが繰り返された。
両者共々、一切の隙も見せずに、刀を振り下ろし続けた。
よほどの実力者である銀時が、一向に久坂にダメージを与えられないのには、銀時自身も感付いていた。
こいつ、動きが素早過ぎる……!
久坂の動きには、1秒、いや0.1秒も隙がなく、目の前の敵を確実に斬る。そういう思考が、この素早さを引き出しているのだろう。
しかし、それに負けじと銀時もそれに対抗する。
動きが素早い。なら対処方法は1つだけ。それに自分が合わせればいい。
なかなか無茶で賢くはない考え方だが、そうするしか方法が思い付かなかった。
しかし、そうし続ければ当然、体力的にもかなりの負担がのし掛かってくる。さすがに疲労が溜まってきたのか、銀時は少しよろけた。
当然その隙を見逃す訳がなく、久坂は容赦なく銀時の左肩に刀を突き刺した。そしてそのまま、銀時を壁に突き飛ばした。
「がはぁっ……!!」
壁にぶつかった衝撃で、銀時は血を吐き出した。そして、ゆっくりと久坂が近付いてきた。
「やはり貴方の『赤』はとても素晴らしい……!これが白い鬼の『赤』……。とても情熱的で魅力的だ……!もっと、もっと私に見せて下さいよ……!」
久坂は口角を高く上げて、刀を大きく上げて、思い切り振り下ろした。
「…………………!?」
思いもしなかった。まさか、渾身の一太刀を素手で受け止めるなんて、想定外過ぎた。
「……おいおい久坂さんよぉ……。片手で受け止められる程度の一撃で、俺を斬ろうとしたのかぁ?そんなんじゃ、鬼どころか、人間すら斬れねぇんじゃねぇの?よくそんなんで天人斬ること出来たよなぁ……?いや、実際の所、ただ天人の体が脆すぎただけなのかもな。」
「……少し侮っていましたよ……。流石白夜叉。せっかくの機会です。少し話でもしましょうか……。
……何故です?何故貴方は刀を捨てたのです?貴方だって、元々は攘夷浪士。天人共に背いた逆賊。貴方も天人にそれなりの憎しみがあったはずです……!それとも、侍の国を守る、などの綺麗事の為ですか……?そうだとするならば、それは叶わぬ望みですよ。もうこの世界には侍など存在しない。完全に死滅した。せいぜいいるのは、私達のような逆賊と天人共に寝返った薄汚い犬っころですよ……。そして、そうなった原因は何か?そんなのは明白です。天人ですよ。全ては、奴等がこの世界にやって来たことが始まりなんですよ!!
奴等のせいで、何かを失った者達は山のようにいる!家族を殺された、下僕のような扱いをされた!!そんな奴等がどうしてのうのうとこの世界に生きている!?どうして私達は虐げられている!?ここは私達の国だぞ!!!」
「………………。」
「……私はそれが腹立たしくて仕方がない……。何故ですか?何故貴方は……刀を置いたのです……?」
久坂は歯を食い縛った。
「………教え。」
「?」
「……俺はただ、先生の教えに従っただけだよ…。」







それは、まだ地球に天人が襲来していない頃にまで遡る………。

ある所に、桜の木が植えてある一軒家のような所があった。そこには、数十人程の子供達がいた。
そして、その桜の木の上で、刀を持って眠っている1人の子供がいた。
「やっぱりここにいた。おい!」
「寝てないで早く降りてこい!」
その下に、長髪を束ねた男の子と、紫がかった髪をした男の子がいて、寝ている男の子を起こそうとしていた。しかし、一向に起きる気配はない。
「やれやれ……。相変わらずですね。」
後ろから声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、薄く灰色がかった長髪の持ち主の男性がこちらに来ていた。
「どれ。私が起こしてあげましょうか。」
そう言い、その男性は木の根元に寄って来ると、右手を広げ、桜の木をビンタするかのように叩いた。
その割には、物凄い衝撃で、上で寝ていた男の子は衝撃によって下に落ちてきた。
「……いってぇ……。何だよいきなり。天変地異でも起きたのかよ……。」
「起きたのは君の方ですよ、銀時。」
「………げ。」
寝ていた少年、銀時は気まずそうな顔をすると、男性にげんこつを喰らわされた。
「全く……。さ、授業を始めますよ。銀時。」
その男性、吉田松陽は、にっこりと笑顔を浮かべた。

第26話 赤と銀色 であります ( No.30 )
日時: 2018/12/15 23:21
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

ある一室。
そこには、数十人の子供が机の前に座っていた。先程の長髪の子供と、紫がかった髪をした子供もだ。
その前には、吉田松陽がある書物を手に持って、立ちながらその内容を読んでいた。そして、全員その書物を机の上に広げて、それをじっくりと見ていた。ある一人を除いて。
「なあ、あいつどうしたんだ?」
「先生が言うには、木の上で寝ていたら、そのまま落ちて、それで気絶してるんだってさ。」
ある2人の子供は、部屋の隅で、頭からたんこぶを出して白目を向いている銀髪の子供の方を見た。
「安心して下さい。銀時ならすぐ目覚めますよ。」
松陽はにっこりと彼らに向かってそう言った。
実際の所、彼によって喰らわされたげんこつのせいなのだが。
「皆さん。皆さんには、『道』というものがありますか?」
一同はきょとんとした。
それに対し、松陽はフフッと微かに笑った。
「確かに、ただ『道』と言われただけでは分かりませんよね。ですが、それは君達がこれから大人になる時に、とても大切にしなければならないことなのです。
『道』というのは、分かりやすく言うならば……そうですね……、ある目標に辿り着く為にある橋のようなものです。君達はこの先、この松下村塾を出て、自立して、大人になります。そして、己の人生を生きる為に、何かしらの目標を立てます。そして、それを達成する為に行動する。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私が大事にしてほしいのは、どんなことがあっても、その『道』を踏み外す、後ろを振り向くことをしないことです。
これから先、とても辛いことがあるかもしれません。人間は挫折からは逃れられない生物ですからね。しかし、それでも自分が目指す目標へと辿り着く。地を這ってでも辿り着く。絶対に後ろを振り向かない。踏み外さない。
私も当然、踏み外しそうになったことがあります。ですが……、『君達を立派に育て上げる』という私の目標の為に、その『道』を踏み外さないようにこらえたのです。是非、君達もそうなって欲しい。自分の大義を見失わないで下さい。」
笑顔で松陽は言い終わると、書物を閉じ、懐に入れると、そろそろ昼の時間だ、と言い、部屋を出ていった。
いつから目が覚めていたのだろうか、銀時もその話を聞いていた。
「………訳分かんねぇ……。」
興味無さげな感じで呟くと、また眠りについた。






そして、現在……。

「……教えですか………。貴方にとって、その教えを説いてくれた先生、という人が一番大事なものなのですか……。」
「………まあな。」
「なら、どうして!?どうして天人を憎まない!?奴等は私達にとって大事なものを根こそぎ踏みにじったのですよ!?」
久坂は腕の力を強くした。それと同時に、銀時の左手からさらに血が出てきた。だが、銀時は決して刀を離そうとしなかった。
「……松陽。あん時は意味分かんなかったけど、今ではよぉく理解出来るぜ……。過去を振り向くな。諦めるな。そう言いたかったんだろ?だったらよぉ、回りくどいように言わねぇで、俺みたいな馬鹿にでも分かるように、そう言えばよかったのによぉ。」
銀時はフッと笑うと、久坂の足元を右足で蹴った。久坂がバランスを崩した隙に、銀時は落ちていた木刀を右手で握り締めた。
「おのれ………!」
「久坂。てめぇはつまんねぇ男だよ。いつまでも過去のしがらみに捕らわれやがって…。随分ねちっこい性格だな。そんなんじゃ女にモテねぇぞ?」
左手で鼻をほじりながら銀時はそう言うと、いつの間にか、久坂が自分の背後に回っていたことに瞬時に気付いた。
とっさに木刀でガードしたが、とんでもない位力強く、押し出されそうな感じだった。
「ねちっこい!?ふざけるな!!目の前で家族全員皆殺しにされたことを忘れろとでも言うのか!?やはり、彼の言っていた通りだ!!『銀色の鬼がいつかお前の行く手を阻む。』と彼は言った!!やはりお前はこの場で斬り捨てなければならない!!坂田銀時ィィ!!」
完全に怒り狂った久坂は、とんでもないスピードで刀を振り、銀時を斬ろうとした。
「大義一つないお前なんぞに、私の目標を邪魔されてたまるかぁぁぁぁ!!!」
刀を銀時の心臓に一突きしようとした瞬間、銀時は木刀を横に振った。それと同時に、ガキィンという音がした。
「………!!!」
久坂の刀の刃が、宙を舞った。
「私の刀が…………!!」
「……もうてめぇに、人は斬らせねぇ。これ以上、てめぇに赤色は出させねぇ。
今度は………、てめぇが赤色を出す番だ。」
そう言い終わると同時に、銀時が折った刃が地面に突き刺さった。
「……刀なんぞ無くとも、『赤』を出すことなど容易いのですよぉ!!」
久坂は、銀時から離れて、着物の懐から無数の刃物を銀時に投げ付けた。
しかし、銀時は動じることなく、全て木刀で撃ち落とし、どんどん久坂の方へと歩いて来た。
「言っただろ?もうてめぇに、赤色は出させねぇって。」
「おのれぇ!!なら!!」
今度は、久坂の着物の裾から、鋭い熊手のような物が出て来た。
「これでお前の顔を切り裂く!!」
猛スピードで久坂は銀時の方へと向かって来ると、銀時は微塵も動じることなく、久坂の顔面を木刀で叩き突けた。
「ぐほぁ……!!」
久坂は吹っ飛び、柱に背中を強打した。
「何だ。お前の『赤』、結構綺麗な色してんじゃねぇか。」
「げほぉ…ごほっ…!!」
「久坂。さっき俺に、大義一つない、っつったよな?……ちゃんと俺にもあるよ。
『この世界を守り続ける』っつう、あん時から何にも変わっちゃいねぇ俺の大義。その為の『道』を俺は今歩んでいる。過去に何があろうと、絶対に振り向かねぇ。そんな物なんぞに、俺の目標の邪魔はさせねぇ!俺は、前だけを見続ける!!」
銀時は久坂の前に立つと、木刀を高く上げた。
「後ろばかり振り向いてるてめぇなんぞに、俺の行く手の邪魔はさせねぇぇぇぇぇ!!!」
高く上げた木刀を久坂の顔面にまた叩き突けた。
久坂は壁に激突し、そこから砂埃のような物が立ち込めた。
銀時は息を少し荒くしながら、久坂の方へと向かった。
そこには、壁にめり込み、頭から血を流している久坂の姿があった。
「……気絶してるだけか……。久坂。これを機に、お前も前を見ながら人生を生きようや。後ろばかり見てたって、つまんねぇだろ?」
そう言い残し、銀時はこの場を去った。





ある場所で、一つの人影が、ある装置を操作していた。
「……このまま行けば、やっと願いが叶う……!」
「いいえ、叶いませんよ。」
後ろから声が聞こえてきた。振り向いてみると、誰かがこちらに向かってるくのが分かった。
「だ、誰だ!?」
「……やっぱり。信じたくはありませんでしたけど、全ての黒幕は貴方だったんですね。入江十二さん。」
冬樹は装置を操作していた男、かつ、今回の依頼人である、入江十二の方へと向かって、立ち止まった。

第27話 終戦 であります ( No.31 )
日時: 2018/12/22 00:03
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

「……………。」
「最初から真選組にスパイなんていなかった。
貴方がここにいることが何よりの証拠ですけど、真選組でも銀さんの知り合いでもない貴方がどうして『白夜叉』を知っているのか。百三さんから聞いたとしても、入隊してから一つも連絡を取っていない貴方がどうして知っているのか。
これらから言えることはただ一つ。貴方が攘夷浪士だということです。」
しばらく沈黙が続いた。
「……まあ、確かに私は久坂一派ですけど、真選組にいない私がどうやって内通するのですか?まさか、勝手な憶測じゃないですよね?」
すると、冬樹はポケットからある物を取り出した。
「土方さんから頂いた物です。これが百三さんの隊服についていたみたいです。そして、これから貴方の指紋が検出されました。」
取り出したのは、チャック付ポリ袋。その中には、超小型盗聴機が入っていた。
「これで真選組のやり取りを聞いていたんですね?もう言い逃れは出来ませんよ。」
「……………はぁ。中学生にしては、かなりの推理力だね。完敗だよ。」
十二はあの装置の電源盤と思われる物から離れて、冬樹の方へと向かってきた。
危険だ。
そう感じ取ったのか、冬樹は後退りした。
「じゃあ、私がわざわざ万事屋に依頼してきたのは……?」
「……疑いの目を完全に真選組に向けさせる為…。」
「正解だよ。君、将来探偵にでもなったら?」
笑みを浮かべて、十二は冬樹の前で立ち止まった。
「……じゃあ、百三さんを内通者に仕立てたのも……!」
「そう、私だよ。」
「どうしてなんですか?実の弟を罠にはめるなんて……!」
「……あいつは……あいつは、この世界を受け入れたんだよ……。他の誰よりも、私よりも天人のことを恨んでいたはずなのに……!
それなのに、あいつはあの時……!」







今から半年前……。

「兄貴。俺、真選組に入隊するよ。」
「……え?」
「俺、分かったんだよ。いつまでも過去を引きずってたら駄目なんだって。ちゃんと前を見て生きていかなきゃいけないんだって。
もうあんな事が増えないように、俺はこの世界を守ることにしたよ。」
「……ああ、そうか……。」






「ふざけてると思いませんか?何がこの世界を守るだ。天人によって腐敗したこんな世界を守るだと!?冗談じゃない!!
いささか失望したよ。だったら…………、これからは私のいい道具として活躍してもらおうと思ってね……。」
十二の目には一切の光がなかった。よほど自分にとって、百三の事が許せなかったのだろう。
「……でも君、ここまで嗅ぎ付けたということは……、もう分かってるよね?」
十二は刀を取り出し、冬樹の首元に刃を近付けた。
「この計画を台無しにする訳にはいかないんだよ。悪いけど、消えてもらうね。」
しかし、冬樹は冷や汗一つかかず、表情を一切変えなかった。
「十二さん。失望したのは僕の方です。いつまでも過去を引きずって、前を見ようとしない貴方に、僕は失望しましたよ。」
その発言に対し、十二は顔を歪めた。
「百三さんは辛いことがあっても、前を見て生きようと心掛けたんですよ。それなのに貴方は、百三さんの未来を潰して、自分の勝手な都合だけで百三さんの邪魔をしたんですよ!
そんな人、絶対に許す訳にはいかない!」
「知ったような口で!!お前に何が分かる!?」
怒り狂った十二は刀を振り上げ、冬樹に斬りかかろうとした。
と、突然爆発音が聞こえてきた。
「な、何だ!?」
爆発音が聞こえた方へ顔を向けると、そこから、ある影がこちらに向かってくるのが分かった。
「冬樹。後は俺達に任せろ。ここまでよく耐えたな。貴様にも、戦士としての素質があるようだな。」
「伍長……。どうして……。」
そこには、バズーカを持ったギロロの姿があった。さらに、その後ろには、いつ服を着たのか、真選組の姿があった。
「どうして?決まってるだろ。この世界の平和を守るのが、真選組の役目。あんな怪我でへこたれていては、務まらん。」
「幕府の犬風情が……。調子に乗るなよ。」
十二の後ろには、数十人の浪士が皆、刀を持ってこちらを睨んでいた。
「さぁて、ギロロ殿。作戦の方はどうする?」
何故か一人だけ、パンツ一丁のまま、隊服の上着を着ている近藤がギロロにそう尋ねた。
小声でギロロは、ちゃんと服着ろ、とツッコんだが、笑みを浮かべて、
「フッ。作戦?悪いが、今において、作戦など必要ないな。」
「じゃあ、どうするつもりなんだ?」
土方がタバコの煙を吐き、ギロロに尋ねた。
すると、ギロロはバズーカから、機関銃へと持ち変えると、銃口を十二達に向けてこう言った。
「……ただ目前の敵を一掃しろ!!一人たりとも逃がすなぁーーー!!」
「おぉーーーー!!!!」
隊士達の叫び声が響いたと同時に、ギロロ達は十二達に向かって走り出した。
「ただの犬っころがぁぁぁぁ!!!」
それに対抗するように、十二ら久坂一派も一斉に走り出した。
「冬樹!今のうちに電源を切れ!」
「分かったよ伍長!」
言われる通り、冬樹は電源盤に向かおうとしたが、その目の前に、浪士が数人立ちはだかった。
「そう簡単に通すか、ぶほぉ!!」
言い終わる前に、浪士の顔面に、木刀がぶつかってきた。
他の浪士も何事だと思う前に、誰かに後ろから殴られたのか、その場に倒れ込んだ。
「何とか間に合いましたね。」
「にしてもお前、結構危なっかしい野郎だな。」
「待たせたであります!冬樹殿!」
銀時、新八、ケロロが何とか間に合ったみたいだ。
「軍曹!銀さん!」
「冬樹君、後は僕達に任せて、早く電源盤に!」
「新八さん、ありがとうございます!」
言われる通り、冬樹はケロロと共に、電源盤の方へと向かった。
「砲撃隊、用意!」
一方、真選組の方では、近藤が指示を出していた。近藤の後ろには、バズーカを構えた隊士達がいた。
「局長、準備完了です!」
「放てぇぇぇ!!」
近藤の合図と共に、バズーカが一斉射撃された。
「お、おい!バズーカだ!逃げろぉぉ!!」
恐れをなしたのか、浪士達はその場から逃げようとしたが、生憎間に合わず、爆発の餌食となった。
「ギロロ殿考案の『砲撃隊』、ここまで効果を成すとは思わなかったよ!流石だよ!」
近藤は腕を組み、そう言った。
「お前達!数で怯むな!進め!」
ギロロは隊士達にそう言ったが、ギロロの後ろに、浪士が刀を振り上げいたのに、ギロロは気付いていなかった。
「覚悟ぉぉ!」
斬ろうとしたが、その前に、一つの斬撃が飛んできて、その浪士は倒れ込んだ。
「戦うのは、拙者の役目でもあるでござる。助太刀致す!」
「ドロロ……。
何でだ。俺はお前達と縁を切ろうとしたんだぞ……。それなのに何で俺を助けようとする……?」
「……友達を助けるのに、理由など無いでござるよ、ギロロ殿。」
そう言い、ドロロはギロロに向けて笑顔を見せた。
「友達……か。」
ギロロは少し下を向き、フッと笑った。
「なら、背中は預けたぞ。ドロロ。」
「同じく。」
そう言い、ギロロとドロロは浪士達に向かった。
「あった!あれが電源盤だよ!」
「ゲロォォ!あと2分しかないであります!」
夜明けまであと2分。急がなくては、ウイルスが発射されてしまう。
「もう少しで辿り着くよ!」
「……ゲロ?」
あと少しで辿り着くと思った矢先、ケロロの頭を誰かが掴んだ。
「お前らなんかに……お前らなんかに……!」
それは、十二だった。
「軍曹!!」
「冬樹殿!早く行くであります!!この、離すであります!」
「お前らなんかに……邪魔されてたまるかぁぁぁぁ!!」
そう叫び、十二はケロロを投げ付けた。
「ゲロォォォォォォ!!」
飛んでいった方向は、丁度電源盤。あの青いレバーを下げれば、電源が落ちるのだが、生憎その隣にある、赤いボタンへとケロロはぶつかった。
「ハハハ……!!私達の勝利だぁぁ!!」
すると、電源盤の横に付いていた、ウイルス発射までのタイマーが、とんでもないスピードで時間が減っていくのが分かった。
「クソッ!!あの野郎!!」
「ハハハ!!久坂さん、私達の勝ちです!!いよいよ、天人がいない世界が再び始まるのです!!再び、侍の国が始まるのです!!
残念ですねぇ。あの赤いボタンを押したからには、もう止める事なんて出来ないんですから!!久坂一派の完全勝利だぁぁぁぁぁ!!」
そう言い、十二は横たわったケロロの頭を再び掴み、外へと放り投げた。
「軍曹!!」
「ゲロォォォォ!!……って、あり?」
完全に皆、落ちたと思っていた。ケロロ自身もそう思っていた。しかし、ケロロは宙に、いや、正式には、宙に浮いている何かによって、落ちずに済んだのだ。
「こ……これって……。」
「………おじさま……。」
「モア殿!?」
「モアちゃん!!」
モアはそっとケロロを地面に下ろすと、
「…誰です?…おじさまをいじめたのは誰です…?」
すると、モアから光が生じた。
一瞬にして、モアの髪は白くなり、服装も変わっていた。そして、宙に浮かんだ。
「え、えぇぇぇぇぇ!?」
「おい!!どういうことだよ!?何であいつあんな風になってんだよ!!?」
ビルから見ていた銀時と新八は驚きを隠せなかった。
「これはマズいでござる!!皆、早くビルから離れるでござる!!」
「悪いことは言わん!!早く離れろ!!」
ギロロとドロロは顔を青くして、皆に早く離れるように促した。
そして、モアがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング久坂砲の頭上で、動きを止めると、片方には隕石のような、もう片方には三日月のようなものが付いた物、ルシファースピアを両手で掴み、
「何者であろうと、おじさまをいじめる人は、まとめて吹き飛ばします!!」
「ちょっと待つでありますモア殿!!これじゃ、ここにいる全員が吹き飛」
「アンゴル族究極奥義『ハルマゲドン』!!十万分の一!!!」
ケロロの声など届くはずもなく、モアはルシファースピアを久坂砲へと叩き突けた。
その瞬間、廃ビル一面を、白い光が包み込み、大爆発が生じた。
それっきり全員何も分からなくなってしまった。

第28話 燃え尽きた魂 であります ( No.32 )
日時: 2019/01/13 17:19
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

目が覚めると、新八の目にはいつもの志村家の風景が入ってきた。
お妙の話によると、あの爆発の後、何事かと思い源外とクルルが廃ビルに向かうと、倒れ込んでいるケロロら、真選組、久坂一派がいた。そして、源外とクルルがケロン人3人、中学生4人、大人1人を志村家へ連れて来てくれたらしい。
しかし、何よりも衝撃的だったのが、廃ビルがあるはずの場所に、ぽっかりと巨大な穴があり、廃ビルが消滅していたことだった。
あれから5日が経ち、銀時の傷もすっかり癒えた。しかし、銀時と新八には、一つ気掛かりなことがあった。
「おい、そこの四字熟語女。」
スナックお登勢でイチゴ牛乳を飲んでいた銀時が、掃除をしているモアの方を指差した。
「え?わ、私のことですか?」
「当たり前だろ。お前以外に四字熟語頻繁に使う奴なんていねぇだろ。」
銀時はぶっきらぼうな感じでそう言うと、モアに尋ねた。
「……お前何者なの?」
突然の問い掛けに、モアは少し戸惑った。
「あの……、何者なの、というのは?」
「そのまんまの意味だよ。
お前あん時、姿を変えるなり、挙げ句の果てには廃ビル吹き飛ばすなり、何だったんだよ。普通の人間じゃ、んな事出来ねぇよ。
それとも何だ?斉○楠○みたいに、世界破滅されられる位の超能力持った高校生か何かなのか?Ψ難だらけの日常なんですかぁ?」

いや銀時さん、「Ψ」じゃなくて「災」です!それじゃ、他の作品ですから!

「そういえば、銀時殿達にはまだ話してなかったでありますな。」
ソファで寝転がっていたケロロが起き上がり、モアの方へと向かった。
「実は、モア殿は我輩達と同じ宇宙人なのであります。」
「はぁ!?」
「モアちゃんが宇宙人!?普通の高校生にしか見えないんですけど!?」
同じくスナックお登勢にいた新八も驚いた。
「実は、これは仮の姿で、本当は……。」
そう言い、モアは携帯電話を取り出し、番号を入力し、呪文のようなものを唱えた。
すると、モアの体が光り出し、宙に浮かんだ。そして、あの時と同じように、髪が白くなり、服装も変わった。
「ふぅ。これが私の本当の姿です。」
見るのは二度目だが、やはり銀時と新八は驚きを隠せなかった。
「マジでか。」
ところがさらに驚かされたのが、
「モア殿は元々、ペコポンを破壊するためにやって来た、アンゴ」
「ちょっと待て。今何て言った?」
言い終わる前に、銀時はケロロの話を遮断した。
「ペコポンを破壊するため、とか聞こえたんだけど……、ペコポンってこの地球のことだよねぇ?……ってことは……。」
銀時は恐る恐るモアの方を見た。それに対し、モアは笑顔を返した。しかし、銀時からは、その輝かしい笑顔が、邪気に包まれた恐ろしいものにしか見えなかった。
「新八。」
「はい。」
「………今すぐ荷物まとめろ。今日から万事屋は火星に移店だ。」
そう言い、銀時と新八はそそくさと店を出ようとした。しかし、それをケロロとモアは止めようとした。
「ちょちょちょ、ちょっと待つであります!一体どうしたんでありますか!?」
「どうしたんであります、だぁ!?これから地球消滅するっていう時に呑気にイチゴ牛乳飲んでる場合じゃねぇだろ!!」
「僕達だけでも絶対生き残ってみせる!!童○のまま地球と一緒に滅ぶのは嫌だぁぁぁ!!」
泣きながら新八は叫んだ。
「ちょっと銀時!何だいさっきの光は!」
モアから発せられた光が気になったのか、お登勢が出てきた。
「……何してんだいあんた達?」
「おい何してんだババア!早く地球から逃げるぞ!江戸中の皆にも伝えろ!」
「ちょっと待ちなよ。何言ってんだよあんた。……まさかあんた、それを言い訳に飲み逃げ企んでんじゃないでしょうね?」
「んな悠長なこと言ってる場合か!」
「モア!あいつらをそれで吹っ飛ばしな!」
「待て待てぇぇ………って、え?」
お登勢の発言に、銀時と新八は動きを止めた。
「おいババア……。お前、こいつの正体知ってたの……?」
「……私も初めて見たときは驚いたけど、そんな理由で締め出す程、器は小さくないよ。
あいつらがここで働き始めてから、客が殺到してね。その代わり、スケベ親父共のセクハラも増えて困ってた所なんだよ。生憎、たまは今修理中だし、かと言って私とキャサリンだけじゃ、手に負えなくてね。そこで、この子を使おうと思った次第よ。
それに、とてもと言っていい程、そんな大それた事する子だとは思えないのさ。」
お登勢はタバコの煙を吐き出し、そう言った。
「………な……なぁ〜んだ!だ、だったらあ…ああ、安心……だなぁ……!アハハハ……!」
「そそそそそううですよね!モアちゃんがそんな事す、する訳ないです……よねぇ!!」
そんな事を言っている2人だが、顔からは大量の汗が流れ出て、足はガクガクと震えていた。
「あ、そうだ。俺あいつと会う約束してたんだ。」
「ゲロ?どこか行くんでありますか?」
「ああ。じゃあな。」
そう言うと、銀時は店を出た。しかし、その後ろ姿は、何かから逃げるように見えた。
「……まさか銀時殿……。」
「あの腐れ天パ!!はなから飲み逃げするつもりだったなぁ!!」
ブチギレたお登勢は、モアに追い掛けるように指示した。
「分かりました!銀時さん、飲み逃げは許しませんよ!」
モアはルシファースピアに乗り、銀時を追った。
一目散に逃げる銀時の後ろ姿を、新八とケロロは呆れた目で見るしかなかった。



一方、こちら真選組屯所では、会議が開かれていた。
きっかり13時20分0秒。今日の会議はこの時刻に始められる。それを守らなかった場合、どんな理由であるにしろ、土方考案の『局中法度』によって切腹を命じられる。
「……よし。始めるか。と、言いてぇ所なんだが…、入ってこい。」
土方は襖の方を見てそう言うと、一人の男が入って来た。
「…………。」
それは、今まで内通の容疑で誤認逮捕されていた入江百三だった。
5日前、真犯人が兄の十二だと分かり、疑いの目が晴れたらしい。そして今日、正式に真選組へと復帰出来るようになった。
「百三、すまなかった!!お前にどれ程辛い思いをされてきたことか……!」
近藤は百三に向かって頭を下げた。
「や、やめて下さい局長!そんな、俺なんかに頭を下げないで下さい!
それに……、頭を下げるのは俺の方ですよ。兄・十二が色々とお騒がせして申し訳ございませんでした。」
そう言い、百三はその場に座り込み、土下座をした。
「……顔上げろ百三。この件に関しては、てめぇに非はねぇ。今日はその問題、入江十二についての緊急会議だ。そこ座れ。」
土方は、一つだけ空いている席を指差し、百三にそこに座るように促した。
言われた通り、百三は座ると、沖田が隊士に資料を配った。そこには、百三の兄・十二の写真が貼ってあった。
「入江十二。奴は今も逃亡中だ。久坂一派は一人残らずしょっぴいたと思ったんだが、こいつだけ逃しちまった。
首領の久坂も、知らない、としか言ってねぇ。
恐らく、あん時の爆発に巻き込まれる前に一人逃げ出したんだろう。」
土方がそう言うと、ギロロが立ち上がり、
「今日集まってもらったのは他でもない。奴を捕まえる。奴はかなり久坂に心酔している。このまま放置しておけば、また何か企てるかもしれん。
これ以上、奴等の好きにはさせん。いいな!?」
「はい!!!」
隊士一同は返事をすると、土方から、どこを捜索するか、各々に指示を出された。だが、一人指示を出されなかった者が……。
「あの……、俺は?」
百三が土方にそう尋ねた。
すると、近藤が百三の肩を掴み、こう言った。
「百三。お前には、この件から外れてもらう。……いくら犯人だとはいえ、お前の兄貴だってことには変わりねぇ。まだ立ち直れてねぇと思う。悪ぃな。」
「局長……。いいえ、俺も行かせて下さい。」
しかし、百三は近藤の頼みを拒否した。
「……確かに、兄貴は俺をハメて犯人に仕立てあげました。ましてや、俺を利用して、久坂に情報を流していた張本人です。決して許されることではありません。
だからこそなんです!だからこそ、罪を償い、もう一度、全うな人生を歩んで欲しいのです。そして、しっかりと自分の口で、兄貴ともう一度話をしたい。兄貴を捕まえて、ちゃんと償って欲しいんです。だから局長。行かせて下さい。」
百三は頭を下げた。近藤は拒否しようとしたが、土方が間に割って出て来て、百三にこう言った。
「そうか。だったら百三。早く行け。そして、兄貴のこと、ぶん殴ってこい。」
「……副長。ありがとうございます!」
土方に礼を言い、百三は屯所を出ていった。
「……トシ、いいのか?」
「あいつ自身がそうしたいって言ってきたんだ。俺等にそれを止める筋合いなんざねぇよ。
それより、ギロロはどうした?」
いつの間にか、ギロロの姿もなくなっていた。
「何か、用事があるから今日は抜ける、とか言ってやしたけど。サボりの口実なんじゃないですかぃ?」
「てめぇと一緒にすんな。」
「それよりも土方さん。あいつと面会をしたいっていう奴が来てやすぜ。」
「……あいつと?誰だそいつは?」
「それが……。」



真選組屯所の面会室。そこに、手錠を掛けられた男が入って来た。
「……そんな警戒しなくても、私は何もしませんよ。」
そう言うと、男は椅子に座った。
しばらくすると、アクリル板の向こう側の扉が開き、一人の男が入って来た。
「……ほぉ。まさか貴方が面会に来るなんて……。白夜叉。」
「獄中生活はどうだ?久坂。」
「快適……とでも言っておきましょうか。それよりよも貴方、その頭のこぶはどうしたんですか?」
久坂は、銀時の頭から出ている巨大なこぶを指摘した。
「………ヤンキーにバットで殴られた。」
そうは言っているが、実際の所、モアに追いつかれて、ルシファースピアで叩かれたのが事実。
「(ったく……、加減ってのを知らねぇのかよあいつ………。)」
だが、誰かに会うというのは嘘ではなかったみたいだ。
「……座ったらどうです?生憎、時間は限られていますから、早く話をしましょう。」
そう言われ、銀時は椅子に座った。
「……それで、私に何の用ですか?冷やかしにでも来たんですか?」
「テロリストを冷やかす程、俺も暇じゃないんでな。
……単刀直入に言うぜ。お前あん時、『彼の言っていた通りだ』って言ってたよな?その『彼』って誰のことだ?教えな。」
「…………。」
「俺の知り合いか?赤の他人か?」
「……知って、貴方はどうするつもりなのです?」
「……てめぇとやり合った時、俺には分かった。
てめぇはただ単にやり過ぎただけ。信念自体は、どこにでもいる一般人と同じ。
てめぇだけじゃねぇよ。皆、天人に何かを奪われたんだ。あのポリ公共もそう。俺だってそうだ。皆、何かしら天人に恨み持ってんだよ。
その『彼』って奴が、てめぇの憎悪を増幅させたんじゃねぇか、って俺は思ったんだよ。だから、俺はそいつを知って、ぶっ叩く。」
「確かな証拠でもお有りで?」
「……てめぇをここまで狂わせたんだ。ぶっ叩かれて当然の奴位、馬鹿な俺でも分からぁ。」
「……フフッ。随分単純な人ですね。私の為なんですか?」
「勘違いすんじゃねぇ。もし『彼』を野放しにしてたら、またてめぇみたいなモンスター生み出されちまうだろ?そいつを止める為だよ。
あ、やっぱてめぇの為でもあるな。もしてめぇが釈放されたら、また『彼』に会って、またあんな事やるかもしれねぇからな。」
「……フフッ。安心して下さいよ。そんな事はもうしませんから。」
「安心出来るかよ。まずその笑い方やめてから言えよ。」
「ちゃんと自信を持って言えますよ。なぜなら、もう面会室に来るのもこれで最後。最後に会話する人も貴方が最後かもしれません。」
「……てめぇ、まさか……。」
久坂は頷き、立ち上がった。
「おっと、本題からずれてしまいましたが、時間が来てしまったみたいですね。」
隊士が、時間だ、と言い久坂を退出させようとした。
「お、おい!」
「……時間はしっかり守る主義でして。申し訳ありませんが、お別れです。貴方ともっと話をしたかったのですが。」
「……へっ。せいぜい、嫁の尻に敷かれてきな。」
「……とっくに、尻に敷かれていましたよ。」
久坂はにっこりと笑顔を浮かべると、面会室から出ていった。
それに続き、銀時も面会室から出ていった。



その日の夜、どこか森林のような所で、一人の男が左腕を押さえて走っていた。
「はぁ……。はぁ……。もう少しで着く……!もう少しで……!
久坂さん、貴方はもう捕まってしまいましたが、私が絶対に貴方の夢を……!」
その男は、森を抜けて、草木を掻き分けた。
その先には、廃屋があり、そこに一隻の飛行船があった。
「やっと……やっと辿り着いた……!
『困ったときはここに来い』とあの人は言っていたからな……。やっとですよ久坂さ……。」
言い終わる前に、背後から何か衝撃が来た。何だと思い、腹を見てみると、刀のような刃物が背後から突き刺さっていた。
「……ごふっ……!」
口から血を吐き出すと、男は倒れ込んだ。男は、突き刺した者を見ようとした。それは、彼にとって、とても見覚えのある人物だった。
「な……何故……。お前は……かわ」
言い終わる前に、心臓を一突きされ、男は息絶えた。
すると、数人の男がやって来て、刀を持った男が指示した。
「これで久坂一派は完全に消滅。入江十二も死んだ。後の始末は任せた。」
そう指示し、数人の男は十二を持ち上げ、森の奥深くまで運んでいった。
そして、男は刀に付いた血を拭き取り、鞘に入れると、携帯電話を取った。
「もしもし。つんぽです。」

第29話 ギロっと睨まないでね であります ( No.33 )
日時: 2019/01/13 17:22
名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)

翌朝、とある路上である男が血だらけの状態で発見された。とても無惨な状態だった。
「……まさか、こんな展開で久坂一派が最後を迎えるなんてな……。」
真選組は現場検証を行い、辺りの住人に聞き込みを始めていた。
「百三……。」
近藤は言葉を濁らせた。まさか、こんな状態で実兄と再会するなんて、思ってもいなかっただろうに。
百三はしばらく黙り込んでいた。
「……百三。気持ちは分かるが、ちゃんと現実を受け止めな。」
「お、おいトシ……!」
土方の手厳しい発言に、近藤は百三を庇おうとしたが、百三は、
「………兄貴は……、兄貴は最後まで侍の国を求め続けていたんですね………。たった一人になっても、誰も頼れる人がいなくなっても、最期まで求め続けていた。……兄貴は兄貴なりに、しっかり生きようとしてたんですね……。」
百三はうっすら笑顔を浮かべたが、目からは涙が流れ出てきた。
近藤と土方は、ただ百三を見てることしか出来なかった。



場所は変わり、江戸のとある公園。
ギロロは隊服を着ないで、歩いていた。
「(……一体、昨日のあいつは何だったんだ?)」
実は昨日、会議の後、ケロロに呼び出されていたのだ。しかし、用件はあっさりと終わった。
明日、同じ時間に公園に来てくれ、と言い、ケロロは帰っていったのだ。何の為にとは言わず。
「………それにしてもあいつ、時間を守らんのは昔からだな……。」
ケロロ、ギロロ、ドロロは子供からの馴染み。気弱な性格で病弱なドロロ、真面目なギロロ、いい加減でマイペースなケロロ。いつもこの3人で行動してきたのを、懐かしく思えてくる。
「………ん?」
誰かがこちらに来ているのが目に見えた。さらに、その誰かは、ギロロにとってとても見覚えのある人物だった。
「……………!?な、夏美!?どうしてお前が!?」
「どうしてって……、あんたが話があるって言ったから来たんじゃないのよ。」
……さては、あいつ……!
「ボケガエルが昨日、ギロロから話がある、っていうから来たのに、何であんたが驚いてるのよ?」
「………そ、そうだったな。とりあえず座ろうか。」
適当に相づちをうつと、ギロロは近くにあったベンチに腰を掛けた。その隣に、夏美も座った。
まんまとしてやられた、と呟き大きくため息をついた。
「ちょうどよかったわ。私もあんたに話があるから。」
「……そ、そうか……。」
2人で話すのはいつぶりだろう。ましてや同じベンチに並んで、2人きりで話すなんて。
実は、ギロロは夏美に淡い恋心を抱いていた。その為、ベンチに腰を掛けてから、赤い顔をさらに赤くさせていたのだ。
「……それで、話というのは何なんだ……?」
「……………あんた、本当にこの世界に残るつもりなの……?」
ずっと真っ赤っ赤だった顔が、一瞬にしていつもの赤い顔に戻った。
「……あんた、本当にこれでいいの……?あいつらのことは……、ケロン星のことは別にどうなったっていいの……?」
何て返せばいい。
俺は真選組参謀として生きていくことを決意した。男に二言はない。今までの軍人としての俺は死んだ。あいつらとの関係も断ち切った。
それなのに、何であいつらは俺のことを心配してくれたのか。どうしてあの時、ケロロ達は俺を助けに来てくれたのか。
「……ねぇ……何とか言いなさいよ……!」
「………そうか。やっと分かったよ。」
「……え?」
「……俺に拒絶されたお前達が、どうして俺のことを心配してくれたのか。一瞬だが、今までの自分を捨てたはずの俺が、どうしてあの時、お前達に助けを求めたのか……。
………切っても切っても、絶対に切れることはない腐れ縁とかいうやつで繋がっていたのかもな。
………どうやら、うつつを抜かしていたのは俺の方だったようだな。勝手な行動をし、挙げ句の果てには、お前達のことを拒絶したのだから。
俺には、あんな風な連中と、共に星を侵略しているのが、お似合いのようだな。」
「ギロロ……。」
夏美は目から涙を流した。
「……だが、この世界にいる以上は、真選組を脱退するつもりはない。」
「……え?ど、どうして?」
「……実は……、近藤にかなり気に入られてな……。どうも脱退しにくくなったのが理由で……。」
ギロロの脳裏には、脱退しちゃヤダ、と言いながらギロロにしがみつき、駄々をこねる近藤の姿があった。
「……フフッ。あんたの好きにすればいいわよ。でも、たまにはこっちにも顔出してよね?」
「………暇があったらな。」
ギロロはぶっきらぼうにそう答えた。
「ったく、素直じゃないんだから!」
強めにそうは言ったが、夏美の顔はにこっとしていた。
それを見て、ギロロは少し顔を赤くさせて、顔を反らした。
「?どうしたの?」
「い、いや…。何でもない。」
「え〜、気になるなぁ。」
夏美は顔をギロロに近付けた。
「お、お前が……気にすることではない……。(か、顔が近い……!)」
「教えてよぉ〜。」
夏美はさらに近付いてきて、今度はギロロの手を握り始めた。
「はいぃ!?な、夏美!?」
「お願い、ギ・ロ・ロ?」
顔をさらに近付けて、ギロロをじっと見続けた。
どんどんギロロの顔が赤くなってきて、しまいには、体から蒸気のようなものが出てきた。
「な……夏美……。」
「ギ・ロ・ロ?」
「…………いやいやいや!いかんいかん!そういうことは、お前にはまだ早い!ちゃんと段取りというものをだなぁ……!そういう時になったら……俺と……俺と……俺とぉーーー!」
「『俺と』何なんでありますかぁ?」
「…………は?」
夏美から、とても聞き覚えのある声が聞こえてきた。さらに、夏美はニヤッと笑っており……。
「はいカットォーー!!」
声がした方向から、一人の男が出て来た。
「ばっちしだせ!」
「いやいやいや、それほどでもないでありますよ、銀時殿!」
そう言い、夏美、いや夏美と思われたそれには、背中の部分にジッパーらしき物が付いていた。
そして、そこから蛙を思わせる生物が出てきた。
「いやぁ〜、着ぐるみの中は蒸し暑いでありますよぉ〜。」
「お前すげぇなその着ぐるみ。今度俺にも貸してくれよ。」
「いいでありますよ、5000円で。」
「おいおいおい、金取るのかよぉ。んなケチ臭ぇこと言わねぇでさぁ、負けてくれよ。
侵略作戦をあいつに邪魔されないようにする為のVTR、上手く編集するからさぁ。」
「んなこと言われてもでありま」
「おい。」
声のする方向に、2人は顔を向けると、
「そういえばお前、銀時という名前だよなぁ?……あの時、ケロロと共に俺を助けに来てくれたお礼がまだだったよ………。」
ドス黒いオーラを出しながら、ギロロは目を光らせ、2人を睨みつけた。
「………あ……あのぉ……ギロロきゅうん……?」
「お、おいおい、勘違いすんなよ……。こ、こいつは、今日来れない夏美の代理で来たんだよ……誤解すんなよ……!」
ケロロと銀時は滝のように汗を流して、後退りしようとした。
「ちょうどいい機会だ。今、ここでお礼をさせてもらうよ……。」
そう言うと、ギロロの背後から、無数の機関銃、バズーカ、ミサイル等の兵器が次々と出てきた。
それに対し、ケロロと銀時は顔を真っ青にして、お互いに抱き合った。
「「ひ、ひぃ………!」」
「………この度は、俺を助けてくれて、どうもありがとうございましたぁーーー!!!!」
そう叫ぶと同時に、背後のミサイルやバズーカが一斉射撃された。
「ゲェェェェェロォォォォォ!!!」
「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
爆発音と共に、2つの悲鳴が響いた。
「待てぇーーー!!!真選組の赤い悪魔の恐ろしさ、ここで思い知らせてやる!!!」
銃とバズーカを乱射しながら、ギロロはケロロと銀時を追いかけた。
まさにその形相は、悪魔といっていい程だった。
その様子を、遠くから見る者が……。
「…………だから僕はあれほどやめろって言ったのに……。」
「はぁ……。相変わらずでござるなぁ……。ま、これでいいんでござるよ。」
「あんたらいつもこんな感じなんですか……?」
「うむ。これでいいんでござるよ。」
心配そうな顔をしている新八に対し、にっこりとしているドロロはそう言った。
「待てぇーーー!!!」
「ギロロ君落ち着いてーー!!クールダウン、クールダウン!!」
「とりあえず、これだけは言わせて欲しいでありますなぁー!!」
「「ケロロ小隊に戻って来てくれて、ありがとぉーーー!!!」」
そう言うと同時に、再び2つの悲鳴が江戸中に響き渡った。







その晩………。
「……本当にこれで良かったのでござるか?」
「何がだ?」
ある川に、一隻の屋形船が流れていた。そこに、2人の男がいた。
一人は三味線を引き、もう一人はキセルの煙を吐き出していた。
「……久坂一派を完全に消滅してしまって、本当に良かったのでござるか?」
男は三味線を引くのをやめ、キセルを持った男に尋ねた。
「……くくっ。愚問だな。久坂は俺以上の黒い獣の持ち主だと思ったんだがなぁ……。俺の見当違いだったらしい。
……あっさり斬首を受け入れるような奴に、この世界を壊せる訳ねぇだろ。そんな甘っちょろい奴ら、いた所で何の価値もねぇよ。」
「……だから、ただ一人逃げ延びた入江十二を始末しろ、と拙者に命じたのでござるか?」
「ふぅ………。まぁ、そういうことだよ。
だが、銀色の鬼が現れなかったら、話は別だったんだがなぁ……。」
「……その銀色の鬼についてなんだが、どうやら今回の騒動、鬼だけではなかったみたいでござるよ。」
「どういうことだ?」
「噂で耳にしたのでござるが、何やら、緑色の天人と10代の童も、その鬼と共にいた、と……。」
すると、男は外に出て、夜空に浮かぶ満月を見た。
「くくっ………。こいつぁ近ぇうちに、ドでけぇ祭が始まりそうだなぁ……。」
いつもは黄色く綺麗に輝く満月が、今日だけは、薄気味悪く紫色に輝いているように見えた。
まるで、よからぬことが起きる前兆を思わせるようだった。