二次創作小説(新・総合)
- いーデザ・嫌いなやつ ( No.20 )
- 日時: 2018/08/21 03:49
- 名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)
※過去編
ウルデラの事後マルクソウルがいなくなってから戻ってくるお話。
シリアス。ほんとに長い。分割も面倒だからまとめちゃいます(くそ)
僕には、僕ともう1人、僕の嫌いなやつがいる。
ずっと昔のあの日、一人ぼっちだった僕に突然話しかけてきたあいつ。
最初はどこにいるのか全然分からなかった。
誰もいないのに、話し声が聞こえてくるから。
どこにいるのか聞いたら、あいつはこう答えたんだ。
君の魂の中だよ。
「マルク」
カービィが不安そうな声で僕を呼んだ。
下に向けていた視線を上にすると、声だけでなく、
その星空のような瞳も、不安そうに僕を見つめていた。
カービィの「不安」と思うその気持ちは……僕に向けられているのかな。
「……どうしたの?」
「どうって……心配してるの。マルク、最近ずっと……」
寂しそうだったから。
寂しそう?
そんな事ないよ……ずっと嫌いだったあいつがいなくなって。
むしろ清々してるくらいなんだよ。
そんな事……ない。
「ねぇ……ちょっと聞いてもいいかな」
カービィが僕の横に座り込む。
「なに?」
「僕があの時戦ったのは……君じゃないんだよね」
「……どうしてそう思うの?」
僕がそう聞き返すと、カービィは一瞬戸惑ってから、ぽつりと答えた。
「その人がね、僕はマルクじゃない、全くの別人だって言ってた。
だから、ずっと気になってた。その人と、今マルクが寂しそうなのは、
なにか関係があるんじゃないかな……って」
カービィは、頭はあんまり良くないけど、
時々鋭い勘を垣間見る。
それは、ただ単にカービィの勘がいいんじゃなくて、
カービィに秘められた不思議な力が関係してるって、誰かが言ってた。
「そうかも、しれない」
「え?」
「カービィは僕が、寂しそうに見えるんでしょ?」
「うん。なんだか、大切なものを失ったみたいに」
「……あのね、カービィ」
カービィになら話してもいいかもしれない。
あの日から、誰にも話さず伝えず、僕しか知らない秘密だったあいつの事。
僕がこの広いひろい世界で、1番嫌いで…………
1番、大切にしてたやつ。
「どうしたの?」
「僕、誰にも伝えてない事があるんだ。誰にも教えられない事。
だから、カービィにだけ教える」
カービィに全部を伝えた。
僕の魂の中には、もうひとつ、全くの別人の魂がいた事。
カービィが戦ったのは、それだという事。
……カービィが戦ったあと、そいつがいなくなった事。
カービィは、黙って僕の話を聞いていた。
話が終わると、カービィは静かに口を開く。
「……ひとつ、教えて」
「なに……?」
「どうしてその人は……僕と戦ったの?」
あまり答えたくはない質問だった。
でも、いつまでも黙ってても……仕方がない。
「あいつは……本当、たまに……何もかもを忘れて……狂ってしまうんだ」
「狂う……?」
「元々一人用の体の中にふたつも魂が入ってるんだから、
そのうち色々なものが溢れ出てしまう。
あいつは、僕が壊れないようにするために、自分で自分を壊してる」
どうして……って、いつも思ってる。
あいつが僕を守る為に……何もかも失うなら、どうして?
どうしてあいつは僕と一緒にいるの?
「あいつは怒らないし、悲しまないし、喜ばない」
「……」
「その感情を忘れたから」
「……」
カービィは何も言わない。
「なんでだろうね……なんであいつと僕なんだろう」
「……マルクと、その人じゃないと駄目だったのかな」
「だって、無理やり……ひとつの体にふたつも魂を入れる理由ないじゃんか」
「何か……理由があるんだよ」
「なにかって、なに?」
「その人はきっと……君の心が成長できるようにしてくれてたんだよ」
カービィが言っている事の意味が正直理解出来ない。
あいつが?僕を?そんなわけない。
でも……
そうだったら、いいなって。
「ねぇ、カービィ」
「え?」
「カービィ……もしかして、自分があいつを倒したから……いなくなっただなんて、
考えてないよね」
「え……っと」
やっぱり。
カービィは、いつもいつも自分ばっかり責めるから。
「もしもカービィの言う通り、あいつが成長させてくれたんなら、
いなくなったのは……もう、自分が必要ないからなんじゃないの?」
「……そうかな?」
「カービィはなーんにも悪くない。ひとつも悪くない。
別に僕は、あいつの事が嫌いだし、いなくたって生きて行けるから」
そう言い切って、僕は立ち上がった。
カービィがまだ何か言いたそうにしてたけど、聞かないでその場を立ち去った。
その言葉を聞いたら、僕はきっと……。
あいつがいなくなってからもう数週間が経つ。
いつもなら2人で話して潰していた時間が、途方もなく長く感じる。
不気味なくらい感情の読み取れない笑い声も、
今は聞けない。聞きたくないけど、聞けない。
嫌いで、嫌いで、鬱陶しくて、鬱陶しくて。
二度と声も聞きたくないって、思ったり、
早くいなくなればいいって、いつも思ってた。
でも……やっぱり。
俯いて小さく呟いた。
「1人は……嫌だな、ソウル」
「あはは、そうだね」
…………………………
「……え?」
聞き慣れた、感情のない声、不気味な笑い声、
「1人にしててごめんね、マルク」
僕の……この世界で1番嫌いな、あいつ。
「……ソウル?ソウルなの?ねぇ」
「そうだよ、君の嫌いな僕」
「……どこにいるの?」
「君のそば」
咄嗟に顔をあげると、
僕の横に、僕によく似た、長身で、髪も長い……誰かが立っていた。
僕と目が合うと、そいつは、にっこりと笑った。
どこからも感情を感じられない笑顔で。
「なんで……なんで?」
「なんで、かぁ……さぁ、どうしてだろうね」
「……なんで、いなく……なったり、したんだよ!」
結構大きな声だったと思う。
でも、そいつは驚きもせず、怖がりもせず、こう言った。
「もう君の中にいる必要はなくなった」
「じゃあ……」
「でもね、側にいる必要がないわけじゃないんだ」
そいつは……ソウルは、しゃがんで僕の顔を覗き込んだ。
僕に似てるけど、よく見れば、少し大人びてて中性的な顔立ち。
瞳の色も、ソウルは暗く美しい赤紫色だった。
「……じゃあ、どうして今……」
「あはは、思った通り、だいぶセンチメンタルになってる」
「う、からかうな!」
……やっぱり、嫌いだ。
結局、なんでいなくなったか、
どうして僕のじゃない、別の体を持って外に出てきたのか、とかの、
細かい事情は説明してくれなかった。
でも、こいつは紛れもない、僕の中にいたあいつ。
なんだか暗く落ち込んでたのが馬鹿みたいだ。
「はぁ……魂の中にいた時以上にめんどくさそう……」
「んー、あぁ、そうだ」
ソウルは僕の方を見て言った。
「会わせたい人がいるんだ。ちょっとついてきてくれない?」
「帰ってきて早々なにそれ」
「あと、カービィも連れてきて欲しいな」
「はぁ?カービィにお前を会わせるわけないだろ」
「なんで?」
「……」
「まぁどうせ、僕達の事話したんでしょ」
これもこいつの嫌いなところ。
こいつは、まるで全部見えてるみたいに僕の心を読んでくる。
色々な事、僕の知らない僕の事までこいつは知ってる。
「いいのいいの。僕達の事知ってるから、カービィにも来て欲しい」
「……分かったよ」
……待って。
"僕達"って、どういう事?僕とソウルの事じゃないよな?
「まぁ、行けば分かるって」
「あ、マルク!大丈夫?しばらく見かけなかったけど……
って、その人だれ?」
カービィは僕の隣にいるソウルを見て、首を傾げた。
「説明はあとあと。さ、カービィも一緒に来て」
「え、なに?」
僕はカービィの腕を掴んで、先を歩いていったソウルについて行った。
そしてたどり着いたのは、深い森の奥に佇む、一軒のログハウス。
「わー……いかにも魔女が住んでそうだね」
「いるよ、魔女が」
ソウルがカービィに向かって言うと、カービィはまた首を傾げた。
扉をノックしてしばらく経つと、玄関が開いた。
「はーい、どちら様?」
「……あ、ドロシア!」
「え?あら、カービィじゃない!久しぶり!……と、そちらの2人は?」
この家の主は、大きな紫色の三角帽子を被った女性だった。
「初めまして。僕達は、君と同じだよ」
「同じ……?…………まさか」
ドロシアは一瞬、焦りの様子を見せると、僕達を家に入れてくれた。
「まさかとは思ったけれど……ソウルの言ってた事、本当だったのね」
「え?」
「驚いた?」
もしかして。
ドロシアが、僕に向き直った。
「えぇと……改めまして、私はドロシアよ。あなたと同じ……
かつて、ひとつの体にふたつの魂があった」
頭を打ち砕かれたような衝撃だった。
僕と同じ?どういうこと?
「驚くのも無理ないわ……私も、ソウルに言われた時はびっくりしたもの」
「……って事は、貴女も、こいつみたいなのが……?」
「えぇ。カービィと戦ったあと……ずっといなくなってたんだけれど、
最近戻ってきたのよ」
そう言うドロシアの声は穏やかで、安心感を感じた。
きっとドロシアとソウルとの関係は良好なのだろう、羨ましいかぎりだ。
「今は出かけてるけど、ソウルから私以外にも同じような人がいるって」
「……おい」
「なに?」
「どういう事だよ」
「あはは、さーぁ、知らない」
ソウルは僕の1番嫌いな笑い声で、小さく笑った。
(長いっすね。終わり方を見失いました。
いーデザのソウルさん達は元の人達の体にいた魂だけの存在です。
なので、分離した今でも、その体は入れ物にすぎないので、
いくら攻撃しても魂にダメージがいかないかぎり倒せません。
ストーリー上でカービィと戦った時は、
元の人の体を乗っ取って表に出てきているので攻撃は通ります。)