二次創作小説(新・総合)

いとデザ・星の戦士 ( No.28 )
日時: 2018/09/24 01:38
名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)

※シリアスかもしれない。あ、シリアスです。
カービィちゃんの心の叫びです。




「……あ、やっほー、ゼロー!」
「ん……なんだ、カービィか」
「何してるの?こんなところで」

ゼロは少し考えてから、困った顔をして首をかしげた。

「何してるんだろうか……今日は用事がないから、散歩をしていた……のだろう」
「なんでそんなに曖昧なの?」
「……あぁ、ちょっとな。散歩というのは建前で……」

カービィの横にゼロが腰掛け、呟いた。

「今日ここに来れば、カービィ、君に会えると思ったんだ」
「えぇ?何それ。じゃあ僕に用事があるの?」
「用事……そうだな。君に聞きたい事がある」
「いいよ。何でも聞いてね」
「君は自分が、"他の誰か"であるという感覚はあるか?」

カービィは突然問いかけられた質問に、困惑の表情を隠しきれなかった。
思いがけない質問の意図が分からず、返す言葉が見つからない。

「んーと……どういう意味?」
「自分は自分ではない。自分という人物は存在しないか?」
「え……っと……ううん、存在してるよ。ほら、今……」
「そうか、君は今そこにいるのか」
「そうだよ。それに、僕は僕。別の誰かなんかじゃないって」

カービィはいつもと違うゼロに疑問を感じながらも、とりあえず質問に答えた。

「僕は僕……か。そうだな。きっとそうだ」
「あー……ねぇゼロ、どうしちゃったの?なんか変だけど……」
「それが正しいな……たとえ君が、彼女の片割れだったとしても」
「彼女?片割れ?ねぇ、どういう……あれ?」

彼女がたった今会話していたはずのゼロが、跡形もなく消えていた。
周りを見渡しても誰もいない。
まるで、元からそこにいなかったかのように。

「…………なんだったんだろ……」


彼女は皆の英雄。
何度も何度も星を救ってくれた、皆の憧れ、皆の友達。

けど、そこに友情はあったの?
彼らは僕にいつも、"カービィ"という一人の人物ではなく、
"星を救ってくれた英雄"として接していた。
誰も僕の事を友達だなんて思ってなかったんだ。
星の住民も、かつて僕が戦い、救ってきた者達も。
住民達は僕を"神様"のように崇めてる。僕の事をそんな風に思ってる。
「自分達は何もしなくてもカービィが星を救ってくれる」
救われた者達は、僕の手を離そうとはしない。
縋って、縋って、もう見捨てられたくないって。体のいい精神安定剤?
「カービィさえいれば、自分達はもう苦しまなくて済む」
あぁ、そう。昔からそう。
僕に友達は一人もいない。
みんなみーんな、僕を………………


はぁ、と息をつき草むらに腰をおろす。
この前のゼロの一件があってから、心に仕舞い込んでいた本音が、
心から虫のように湧き出てくる。
誰も信用してない、薄汚い疑いの本音。
…………疑いか。自分が疑ってるだけだって、思い込みたいだけなのかもね。
ゼロはあの事を全く覚えてない。というか、知らない。
じゃああれは誰なの?
あのゼロは……彼女は、一体なんだったの?

「……カービィ」
「え?あー、えーっと、なに?ゼロ」
「何か悩んでいる顔だったからな」
「あはは……いや、大した事じゃないんだけどね」
「……」
「……僕って、やっぱ僕じゃないのかも」

あれはゼロじゃなかったけど、僕はゼロに話す事にした。

「皆の僕に対する本当の気持ち、全部分かってる。誰も僕を友達と思ってない。
それでもね、僕は明るく接し続けてたんだよ。自分の気持ち押し殺して。
…………自分の事、偽っててさ。こんなの、僕じゃないよね……」
「……」
「仕方ないよ。僕は星の戦士だから、誰かの理想じゃなきゃいけない。
誰かの為に、演じ続けなきゃいけない。僕じゃない僕を、ずっと。
だから……"カービィ"なんていないの。"星の戦士のカービィ"しかいない。
もういいの。カービィはいなくなったから」

ゼロは何も言わず僕の話を聞いていた。
僕は立ち上がって、その場を離れた。

「僕は自分の為に……生きられなくなっちゃったから」





(すっごいシリアスですがこれ、バットエンドでも何でもない本編です。
カービィは全て分かっててもなお、他人の為だけに戦うんです。
最初に出てきたゼロ様は一体誰なのかって?さぁ、誰だろうね)