二次創作小説(新・総合)

いーデザ・理解 ( No.47 )
日時: 2020/01/19 22:54
名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)

※いーギャラさんとマルソのお話。
特になんでもないお話。





夕暮れ時の丘の上。

「やあ」

沈み行く夕陽を眺めていると、奥の見えない笑顔でマルクソウルが声をかけてきた。

「何してるの?ギャラ」

ギャラクティックナイトは長いから、と彼は私の事をそう略して呼ぶ。

「いや、…………」

別に、と小さい声で言う。まだこの星の言語に慣れていないから、
あまり表現を使えない。

「ただ、日を」
「日……夕陽ね。何か思うところでもあるのかい?」

特にないので、首を横に振る。

「そっか」

彼は私の横に座る。よく見ると、手には小さい石のようなものが握られていた。
宝石……陽の光を受けて淡く輝いている。

「それは?」
「あぁ、これ?これはさっき……」

宝石を親指で弾いて、上に飛ばす。重力に従い落ちてきた宝石を、
手のひらで受け止める。

「ジュエルに貰ったんだけど」

ジュエルはワムバムジュエルのこと。私たちは色々あってよくつるむ仲になっている。

「いるかい?」
「え?」
「僕にはどうにもね、価値があるとされるものの価値が分からないんだ」

価値は……希少なものや、人々の心を動かせるものに高く付けられるものだ、
と言いたいが、上手く言えない。
今度この星の言語の勉強をしたい。

「えぇと……その、価値は、人の……人にとっての……」
「とっての?」
「人を、豊かにするもの……かな」
「財的に?」
「感情的にも」

感情的、という言葉を聞いて彼は少し肩を落とす。

「そんなら分かるはずもないか」
「……」

彼は自分に感情はないというが、私にはそう見えない。
少し不思議で雲よりも掴めない性格だけど、私にはひとりの人に見える。
私も彼も、人と言うにはあまりにもかけ離れているが……。

「綺麗、だとは思える?」
「綺麗?分からない。見方によれば、人はどんなものでも綺麗に見えるものだけど」

夕陽に宝石をかざし、そう言う。

「宝石も、自然も、人も……僕はそうは思わない。思えない。
けれども群衆から”醜い”とされるものにも美しさを見出す者もいる」
「醜い?」
「虫……とかかな。虫はどうだろうか。あとは絵」
「絵……」

絵。醜い絵は見たことはない。

「絵は……心を映すもの」
「じゃあ醜い絵を描ける人は醜い心を持つか、醜いものを見てきた人だ」
「でもそれに美しさを見出す人もいる?」
「そうだね」

彼は理解の難しそうな顔をしている。
彼には分からないのだろう。人の思う美しさと醜さが。
彼はなんでも知っているようで、誰もが知っていることを知らない。
知ることが出来ない。

「はぁ、難しい」

宝石を、私に差し出す。

「じゃあ、やっぱり僕にはこれを必要なものにすることは出来ない。
プレゼントしてくれたジュエルには悪いけどね」
「いいの?」
「いいよ。君は分かるんだよね?美しさが」
「分かることには……」

いつの間にか夕陽は半分以上も地平線に食べられていた。
地上の明るさも消えていく。

「……」

私は宝石を受け取り、今日の陽にかざす。

「……貰っとく」
「うん」
「君の話は難しい」
「そうかい?じゃあもっと勉強しないとね」

空に星たちが見えてくる。地上から失われた光をまた与えて。

「人の心を知りたい?」
「知りたくない。知ったところで僕は僕。救いようのない狂った魂」
「……」
「人の心は人だけが知っていればいいんだよ。それは人のものだから」
「私……は」

陽の光は消え、頼りない星と月の光で照らされる。

「理解者にはなれない?」
「ならない方がいい。理解は恐ろしい。知っていることは、
その人に新しい価値観を見せてしまう。知らないことよりも、ほんの少し恐ろしい」
「でも、知ることは大事」
「そうだね。知らなければ、何も出来ない」

彼は目を閉じる。星は己を魅せてくる。

「……」
「考え過ぎた?ふふ、こんな話、本気にしないで大丈夫。知りたければ知ればいい。
理解者にだってなったっていい」

また、奥の見えない、感情も見えない笑顔で彼は言う。
少しだけ、彼を知れた気がした。
私は、彼の理解者になれるだろうか。



(書いてる本人もよく分からないね。
前回からめっちゃ間空きました。すいません)