二次創作小説(新・総合)

かかデザ・機械の従者 ( No.48 )
日時: 2020/11/10 02:05
名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)

※お久しぶりです(予定調和)かかマルとノヴァのお話。





本を読む。
近くの本棚から一冊を取り出し、椅子に座り机の上で広げる。
また見たことない本だった。
ポップスターに移り住む際に、森に捨てられていた廃洋館を見つけた。
丁度良いと思い掃除して今も住んでいるが、ここは洋館というよりも図書館だ。
住み始めてかなり経つが、未だにここにあった本を読み切れていない。
今回の本は……遠い星の、王様の話らしい。

ぱらぱらと頁をめくる。本を読む速度は早い方だと自負している。
前に誰かから「そんなに早く読んで内容を理解出来ているのか」とか、
そんな事を聞かれた記憶があるけど。
誰に聞かれたかは覚えてないけど。理解はしてるつもり。

「…………」

コトッ、と机に何かが置かれた。陶器の音。
ふたつ。ひとつはコップ。もうひとつはポット。中身は紅茶。淹れたてで、湯気があがる。
背後に誰かが立った。そいつは何を言うでもなく、ただただ僕の後ろに立つ。
紅茶に手を付けないでいると、視線を感じた。
見られている……飲むから。分かったから。
紅茶に手を伸ばし、ちら、とそいつを見る。
そいつは目を閉じていて、微動だにしない。
比喩でもなんでもなく、微動だにしない。
呼吸をしていないから、肩も動いていない。
そいつは機械だからだ。

『お味ハどうでショウカ』

人間でいう口を開き、機械チックな声で問いかけてくる。

「普通」
『………………』

目を開いて見つめてくる。僕と似たような紫色の目。
目……というか、カメラレンズのような光沢。

「…………美味しいです」

半ば無理やり言わされたが、こう言わないと諦めない。
そいつは、ノヴァは満足した様子でまた目を閉じた。
ギャラクティック・ノヴァ。銀河の果てにいる、機械仕掛けの大彗星。
まあ、何故こいつが僕の家にいるかというと。
あの月と太陽の喧嘩事件以降、正確に言えば暴走の後だけど……
とにかく、ノヴァの本体は、人型の端末を何故かこちらに寄越した。
それはそれは迷惑だが、あの図体でポップスターにまた来られたら大変なことになる。
端末であるだけましだと思いたい。

見た目は確かに人間だった。でも何故か女の姿をしていた。
そいつは頼んでもいないのに身の回りの世話をしてきた。
身の回りの世話くらい自分で出来るから、と言っても聞かず。
食事の味付けや紅茶の温度は指示通りに調整するのに、何をやるかだけはなぜか聞かず。
何回か破壊したがすぐに次の機体が送られてきた。
いつだったか、質問してみたこともあった。

「なんで僕の世話をするんだよ」
『アナタを世話しろ、との本体ノ命令デス』
「なんで女なんだ?」
『アナタが男性であるノデ、女性の方が良いダロウとイウ本体の思考によるモノデス』
「…………」
『ワタシは今四体目デス』
「聞いてないが」

住み着いて世話をするだけならまだ、まだいいが、いつの間にかこいつは
洋館の一室を改造し自分の部屋にしていた。入ってみると意外と女性らしかった。
いや、それはどうでもいい。
まあ僕も勝手に住んでいるし、そこはあまり攻められないけど……。
いやしかしとにかく邪魔だ、すごく邪魔だ。本を読んでいれば今みたいに背後に立たれる。
機械であろうと気配はあるから気が散る。
寝ていれば時折様子を見に来られる。機械のくせに歩いてもがちゃがちゃ音はならないが、
何が悲しくて寝顔を覗かれなければいけないのか……。
もう一度ノヴァの方を見てみる。相変わらず目は閉じられていた。
紅茶を飲んでみると、目を開いてこちらを見ていた。
機械で従者なのに我が強すぎるだろ。

「なあ」
『なんでショウカ』
「……」

従者か……色々考えてきたが、こいつはおそらく監視目的でここにいるのだろう。
あれだけ大きい事件を起こし、挙句魂の暴走までした僕を放っておく方がおかしい。
本来ならこの星を追い出されて当然。あのお人好しのせいでまだここにいるけど。
本当の意味で従者でないのなら、この強引な態度にも理由が付けられるというもの。

「……いや、なんでも」

直接聞くのは野暮……というか、まだ早いだろうか。
そんなことを考えていると、ノヴァはどこかから茶菓子を取り出して言った。

『アナタがマチガイを再びスルのナラ、ワタシはアナタを』

その言葉の途中で、コト、と机に茶菓子の入った皿が置かれる。

『……マア、楽しみニしておいてクダサイ』
「なんだそれ……僕がまたあんなことするって言いたいのサ?」
『どうでショウカ。アナタはどう思いますカ?』
「……そっちこそ、もしその時が来るんなら、どんなことをするか楽しみにしておけよ」

そう返して、僕は本に目を戻した。あぁ、別のこと考えてたせいで内容を全然見ていなかった。
どこまで読んだかな……。

『25ページ4行目、上から5文字デス』
「…………はい、ありがと」



(今回は珍しくストーリー性のありそうな絵を描いたのでそれに基づいて書きました。
余談ですがマホロアもウェイター姿のようなローアを従者に持っているので、
対のようななんというか、そういう立ち位置になってます)