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二次創作小説(新・総合)
- 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.14 )
- 日時: 2019/01/28 22:27
- 名前: 燈火 ◆UbVDdENJSM (ID: aMCX1RlF)
一向に痛みが来ない。意識が残っている。死んでいない。可笑しいと思い目を開けようとするが、怖くて目を開けられない。
「アベル、無事か」
居るはずのない人物の声が響く。誰よりも聞いてきた声。しかし今は誰よりも聞きたくない声だったと思おう。彼に頼りパなしで、彼のオプションのような存在であるのが嫌だから、力を求めた。彼パパスに助けられては本末転倒だ。激痛で霞む目を凝らす。そうであって欲しくなかった。
「……父、さん? なん……で?」
目の前には魔物の死体があった。止めの一撃を放とうとした兎は2つに裂かれ臓物を晒している。他のモンスターたちも皆、一撃のもとに仕留められているようだ。血と肉の中心に良く知る人物。浅黒くやけた肌に逞しい筋肉。ライオンの鬣のような黒髪に立派な髭をたずさえた堀の深い顔立ち。間違いなかった。
アベルは呻く。一方で強い安堵感が去来する。同年代と比べて自分の人生は過酷で多くのことを経験してきたと思う。しかしそれは今まで体験したことのない複雑な感情だった。生き延びたからこそ感じた二律背反の感情を彼は噛みしめ気を失った。
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