二次創作小説(新・総合)

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.23 )
日時: 2019/02/23 07:46
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA (ID: aMCX1RlF)

 分ってる。サンチョの言っていたことは正しい。もしレヌールに憑りついた悪意が弱いと認識されていたら、すぐにラインハットが武力が掃滅していただろう。それをしないということは、危険度が低いということ以上に、魔物の勢力を脅威と判断したということ。
 そんな強大な勢力が集うであろうレヌール城に、少し魔物に対する知識をもった程度の子供が挑む。これを無謀といわずしてなんという。しかも助けようとしている対象は魔物らしい。ならばなぜ子供たちに対して無抵抗なのか。優しい魔物だっているかもしれない。そんなことを口にしても大人は聞いてくれないだろう。そんな魔物を助けるために動いてくれる誰かなど居るはずがない。それでも――――

「それでもかわいそうよ……」

 憔悴の滲む声でビアンカは言う。偽りのない本音だ。その一時の感情が、大きな厄災を導くかもしれない。小さいうちは従順でも、大きくなれば狂暴になる魔物だっている。獣や虫、植物のような生物的な要素の強い魔族には顕著にみられる傾向だ。
 魔物使いという稀有な才能を持った人間がこの世には存在するらしいが、ヒックスたちのどちらかがそうだったのだろうか。そんな無意味なことを考える。いっそのこと嘘をついてみようか。すぐにばれるだろう。レヌール城の状況などすぐに確認できる。いっそ強引に子供たちから奪ってしまおうか。

「ビアンカ、僕は付き合うよ」

 その言葉はビアンカにとって、青天の霹靂へきれきだった。彼もまた自分が行おうとしていることに対して反対なのだろうと思っていたからだ。あの黄色い毛並みの猫が魔物だと分かってなお、危険な場所へ赴こうとしている。本来ならば唾棄だきすべき蛮行であり、止めるべき行為。それに自分も加担しようといっているのだ。ビアンカは怪訝けげんに思い眉根をひそめる。

「えっ、どうして?」

 本気でアベルの言っていることが分からず、ビアンカは問う。

「お父さんがね、やってみろって……」

 アベルの言葉に二度目の驚倒。到底信じられない。父とはパパスのことだ。サンタローズの洞窟での一件から1週間も経っていないのに。パパスが何かを考えているのかも知れない。アベルの嘘の可能性もある。むしろ後者の方が高いと思う。馬鹿な子供が2人、無謀なことをして亡くなった。そんな噂話が語り継がれることになる可能性のほうが高い。

「……だが、その話、俺も同行させて貰う」
 
 逡巡するビアンカの後ろから、厳めしい声が響いた。パパスの声だ。